2014/12/5 ⾬の不確実性と流量の不確実性 uncertainty of rainfall and discharge 河川情報シンポジウム t 2014.12.05 ベルサール半蔵門 不確実な情報に基づくリスクの評価手法の提案 ‐決定論から確率評価に向けて‐ 降⾬の不確実性 input(t) output(t) 流出量の不確実性 中央大学教授 山田正 t Chuo University Prof. Tadashi Yamada 降⾬の不確実性がもたらす流出量の不確実性を求めたい! 降雨の不確実性(時間分布,空間分布) 降雨の不確実性(空間分布) uncertainty of rainfall uncertainty of rainfall 100 60 40 20 20 40 60 80 100 1.0倍 0.8倍 1.1倍 80 60 40 0.005 0 0 0.5倍 0.004 20 20 地上雨量 mm 60min 40 60 地上雨量 mm 60min 80 100 Density 80 0 0 S22-降雨入替計算結果 60分雨量 レーダ:東京(関東),半径0〜60kmの精度 XRAIN雨量:関東 mm 60min XRAIN雨量:新横浜 mm 60min 60分雨量 レーダ:新横浜,半径0〜60kmの精度 100 S22の降雨イベント(0.5, 0.8, 1.0, 1.1, 1.2倍)の 流量ヒストグラム・Gauss分布の比較 0.003 0.8倍 0.002 1.0倍 1.1倍 1.2倍 0.001 0.000 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 Discharge m3 s 降雨の不確実性(時間分布) 降雨の不確実性(時間分布) uncertainty of rainfall uncertainty of rainfall ・降雨の空間分布,時間分布に起因する不確実性 ・観測誤差に起因する不確実性 PDF 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 標準偏差 = 4.8 mm/60min 1時間雨量 図 レーザ ー雨滴計による雨滴及び雪粒子の観測例 山田ら(1996.5):新しいタイプのレーザー雨滴計の開発とこれを 用いた降雨の雨滴粒径分布の観測, 土木学会論文集No.539 降雨の偏差に関する 確率密度関数は正規分布に近似できる 1 2014/12/5 確率微分方程式(SDE) 降雨流出計算の基礎式 連続式: 運動則: h q re (t) t x v h m , q vh h m 1 ksi D w 1 m m 1 1 a0 1 L v:断面平均流速[mm/h], h:湛水深[mm] q:単位幅流量[mm2/h], q* :流出高[mm/h] ,m:流出パラメータ 集中化 「直接流出は河道近傍のみから発生する」とすると,流出 量は斜面長に比例すると考えることができる. Brown運動を記述したEinsteinの論文が始まり.同時期に SmoluchowskiもBrown運動に関する論文を発表. LangevinがBrown運動を確率微分方程式の形で示した. q( x, t ) xq* (t ) dx(t) (x(t)) R(t) → Fokker-Planck方程式 dt 斜面長Lの末端で考えx=Lとすると dq* (t) a0 q* (t) {re (t) q* (t)} dt dq aq b {r q} dt 降雨流出の基礎式は貯留関数法と本質的に同じである. 伊藤清によって数学的基礎付けが行われた(1942) 伊藤の確率微分方程式 dx(t) y(x(t), t)dt z(x(t), t)dw(t) dw(t)はWiener過程N(0,1)に従う 確率微分⽅程式とFokker-Planck⽅程式の関係 伊藤の確率微分⽅程式 dx(t) y(x(t), t)dt z(x(t), t)dw(t) p(x(t),t) Fokker-Planck⽅程式 p(x(t), t) y(x(t), t)p(x(t), t) 1 2 z 2 (x(t), t)p(x(t), t) t x 2 x 2 伊藤の確率微分⽅程式とFokker-Planck⽅程式が数学的に等価であ ることは確率微分⽅程式論で明らかにされている. Deterministic & Stochastic Calculation Deterministic Calculation Stochastic Calculation 2 2014/12/5 流出⾼の分布がわかったとき, 流量・⽔位の分布はどうなるのか? 流出⾼の確率密度関数 流量の分布がわかったとき, ⽔位の分布はどうなるのか? ⽔位の確率密度関数 2r q1b 2 2 q 2b p(q) p0 exp 2 2 (aq b )2 a 1 b a 2 b ph (h) pQ (g1 (h)) f y (y) f x (g1 (y)) ? h 3 Q C x=g-1(y) dg1 (y) dy µh = 7.33 m σh = 0.30 m µQ = 1384 m3/s 抵抗則 m = 4 降雨の偏差 σ = 4 σQ = 93.5 m3/s 流域面積A=100 km2 平均降雨 r = 50 mm/h 抵抗則 m = 4 河道幅 B = 50 m 粗度係数 n = 0.025 河道勾配 i = 1/1600 dg1 (y) dy3 h CQ 55 y=g(x) 流域面積A=100 km2 平均降雨 r = 50 mm/h dg1 (h) dh 3 流量の不確実性 pQ (Q) pq* ( 2 dQ 5 5 3 C h dh 3 3.6Q 3.6 ) A A 流量の確率密度関数 pQ (Q) pq* (g1 (Q)) これが⽔位の不確実性 dg1 (Q) dQ 5 h 3 5 3 2 ph (h) pQ ( ) C 5 h 3 C 3 堤防の余裕⾼の理論的解釈 堤防の余裕⾼の理論的解釈 r r 2 mmmm/h, 50 mm h, Σr=50 h, m σ4 = 4 mm/h, m=4 9.0 余裕高 H.W.L. 8.0 h m 余裕⾼:堤防に必要とされる⾼さの余裕 吹き寄せ,波(⾵浪,うねり),跳⽔,流⽊の漂着,⽔防,右左岸の⽔位差等… Risk = ◯◯する恐れ この面積が 越水するリスクになる 8.5 ph 堤防高 0.6 m 7.5 7.3 m 堤防高 7.0 この他に,⾬による不確実性が⼊るのではないか! 堤 防 6.5 6.0 0.0 水位の分布 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.02 1.2 越水するリスク PDF(h) 余裕⾼:吹き寄せ,波(⾵浪,うねり),跳 ⽔,流⽊の漂着,右左岸の⽔位差等… + ⽔位の分布(不確実性) 出典:河川砂防技術基準 p(q) aq {r q}p(q) 1 (aq ) p(q) t q q 2 2 2 b [参考] 交通事故で死亡:1/1万 ⾶⾏機死亡事故:1/50万 薬剤死亡リスク:1/200万 避難の意思決定の考え⽅1 流出高の確率密度関数(非定常) b 1 1.4 2 堤防⾼ H.W.L. Time[h] 40% 10% 1% 堤防⾼ H.W.L. はん濫危険⽔位 q*[mm/h] はん濫危険⽔位 PDF(q*) 堤 防 q*[mm/h] PDF(q*) Time[h] Fokker-Planck方程式: g(x, t)p(x, t) 1 2 2 (x, t)p(x, t) p(x, t) x 2 t x 2 dq aq b {r q}dt aq b dw g(q) aq b {r q} , f (q) aq b h 例えば ある求められた⽔位hの時点で, 避難判断の基準となる⽔位 (例えば,はん濫危険⽔位など) を越える確率を求めることができる. [参考] 交通事故で死亡:1/1万 ⾶⾏機死亡事故:1/50万 薬剤死亡リスク:1/200万 3 2014/12/5 堤防の余裕⾼の理論的解釈 避難の意思決定の考え⽅2 , r = 50 mm/h, σ = 4 mm/h, m=4 8.5 堤防⾼ H.W.L. 余裕高 H.W.L. はん濫危険⽔位 はん濫危険⽔位 空振る確率 Risk = ◯◯する恐れ ph 堤防高 0.6 m 7.5 7.3 m 堤防高 7.0 はん濫危険⽔位の予測が 堤 防 8.0 h m 堤防⾼ H.W.L. 堤 防 6.5 6.0 0.0 例えば ある求められた⽔位hの時点で,その値が 避難判断の基準となる⽔位を越えていた場合, 基準となる⽔位を越えない確率(空振る確率) を求めることができる. , 9.0 水位の分布 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.02 1.2 1 1.4 越⽔するリスク PDF(h) H.W.Lが100年確率で定められている場合, [参考] 交通事故で死亡:1/1万 ⾶⾏機死亡事故:1/50万 薬剤死亡リスク:1/200万 まとめ 降雨流出の基礎式と伊藤の確率微分方程式の関係から 雨の不確実性(標準偏差)σに対する流量の不確実性p(Q), 及び水位の不確実性p(h)を数学的に厳密に示した. 0.01×0.02=0.0002となる. これが1年間に越水するリスクである! このリスクが許容できるか?! Tunnel Effect in Quantum Mechanics Incident and reflected wave Transmitted wave 降雨流出過程の非線形性が強くなるのに従って, 流量,水位の分散は大きくなる. 流量,水位の分散は降雨の平均値 rも影響し, 降雨の平均値が大きくなるに従って,流量,水位の 分散は大きくなる. 河川堤防を越水する確率を理論的に説明した.その解釈には, 降雨の不確実性によって生じる水位の分布が含まれる可能性を 示した.同時に,他のリスクと比較できるようになる事を示した. [参考] 交通事故で死亡:1/1万 ⾶⾏機死亡事故:1/50万 薬剤死亡リスク:1/200万 Probability of Transmission Schrödinger Eq. ≒ Fokker-Plank Eq. Potential Barrier Analogous or similar Probability of Overflow Designed water level Levee 4
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