球状黒鉛鋳鉄のチャンキー黒鉛生成条件に関する研究

G-5
球状黒鉛鋳鉄のチャンキー黒鉛生成条件に関する研究
10-1-035-0025
1.緒言
足立
智勇
3.実験結果および考察
球状黒鉛鋳鉄は,延性や靭性などの優れた高強
表 2 に示すように,冷却速度が小さくなるほど
度材料として高く評価されている.しかし,球状
チャンキー黒鉛は観察された.図 1 の a は 8K/min
黒鉛鋳鉄には問題がある.その一つに,異常黒鉛
で 20min 保持したもの,
b は同じ冷却速度で 40min
(チャンキー黒鉛)がある.鋳物の内部にチャンキ
保持,c は 60min 保持した結果を示す.保持時間
ー黒鉛が発生すると,鋳物の信頼性を損なうこと
が長いほど Si が拡散し偏析することで強い反応
となり,製造にあたっては異常黒鉛の発生防止に
が観察された.
大きな労力がかけられている.
本研究では,スーパーカンタル炉を用いて, Si
表 2 再溶解における実験結果
の濃化および冷却速度がチャンキー黒鉛の生成
8K/min
12K/min
26K/min
の有無と生成量にどのような影響を及ぼすか,調
20min
Y21.4
Y11.8
Y1.7
査・検討を行った.
40min
Y23.5
Y13.3
Y7.2
60min
Y46.7
Y31.1
Y8.0
Yes:YX(%) (X:volume of chunky graphite)
2.実験方法
2.1 試料の溶製
初めに母材の溶製を行った.目標組成に基づき,
高周波誘導電気炉を用いて溶製した.その後スー
a
b
パーカンタル炉にて高純度 Si 棒と共に供試材を
再溶解した.
表1 試料の目標組成(mass%)
CE 値 C
Si
Mn
P
S
c
Mg
100μm
4.35 3.60 2.30 <0.10 <0.005 <0.005 0.045
図1 冷却速度 8K/min の EPMA 観察結果
2.2 各供試材の組織観察および解析
溶製した供試試料をマイクロカッタで切断,研
磨,バフ琢磨後,レーザー顕微鏡を用いて試料の
4.結言
組織観察を行い,解析ソフトを用いて黒鉛組織の
(1) 冷却速度が小さいほどチャンキー黒鉛は生成
解析を行った.EPMA を用いて Si の偏析を観察し
た.
する.
(2) Si が拡散するほどチャンキー黒鉛は生成する.