球状黒鉛鋳鉄の黒鉛組織および基地組織に及ぼす Cu と Sn の影響

G-12
球状黒鉛鋳鉄の黒鉛組織および基地組織に及ぼす
Cu と Sn の影響
08-1-035-0176
山中
数大
緒言
1.
鋳鉄は黒鉛および Si の存在によって,耐摩耗,
耐食,耐酸化,切削性など優れた特性を有してい
る.中でも,高強度球状黒鉛鋳鉄の製造には,パ
ーライト安定化元素 Cu,Sn などの添加が行われ
ている.本研究では,Cu,Sn 添加試料に肉厚変動
を与えた際,鋳鉄の黒鉛組織や基地組織にどう影
図1
響するのか知見を得ることを目的とした.
肉厚と機械的性質の関係
(Cu1.0,Sn0.05mass %)
実験方法
2.
2.1.
試料の溶製
高周波誘導電気炉にて溶解を行った.銑鉄,電解
10μm
鉄を 1500℃に昇温し,Fe-Si,Fe-Mn,Cu,Sn を
(a)添加前
添加後 5 分間保持し,球状化処理,接種を行い,
図2
鋳込んだ.供試試料の目標組成を表 1 に示す.
表 1 目標組成
(b)Cu1.0,Sn0.05mass%
Cu,Sn添加前と添加後(3%ナイタール液腐食)
(mass%)
C
Si
Mn
P
S
Mg
3.7
2.3
0.6
<0.006
<0.006
0.045
2.2.
10μm
Cu
Sn
0.0~
0.00~
2.0
0.08
引張試験および硬さ試験
溶製試料をテストピースに加工し引張試験を行
った.引張試験後,持ち手部分 10mm をマイクロ
図3
肉厚と黒鉛粒数の関係 (Cu1.0,Sn0.05mass%)
カッターで切断,研磨,バフ琢磨を行い,ブリネ
ル硬さ試験を行った.ブリネル硬さは,2.5mm の
Cu,Sn添加により,基地組織が緻密なパーライ
超硬合金球を用い,187.5kgf の荷重を加え計測し
トとなったため,引張強さが増大し,伸びが減少,
た.
また硬さもCu,Sn添加前と比較し大きくなってい
るものと考えられる.
2.3.
供試試料の組織観察および解析
硬さ試験と同様の供試試料を用意し,レーザ顕
微鏡で組織の観察を行い,解析ソフトを用いて黒
鉛粒数・粒径の測定を行った.
4.
結言
(1) Cu 添加により引張強さは増大するが,
1.0mass%から 2.0mass%に添加量を増加させて
も,引張強さの変化は少なく,伸びが減少した.
3.
実験結果および考察
引張強さ800MPa以上,伸び6%程度と良好な結果
が得られたCu1.0,Sn0.05(mass%),肉厚2~10mm間で
肉厚を変え得られた実験データを下記に示す.
(2) Cu,Sn 添加によって,ブリネル硬さは大きく
なり,肉厚が薄くなるとさらに硬くなる.
(3)肉厚の増大により,黒鉛粒数が減少し黒鉛粒径
は大きくなることがわかった.