Title γ-グロブリンのCr-51による標識 : 透析濃縮及び分子量分布

Title
γ-グロブリンのCr-51による標識 : 透析濃縮及び分子量分布
に関する実験
Author(s)
広田, 恒和
Citation
[岐阜大学教養部研究報告] vol.[7] p.[175]-[179]
Issue Date
1971
Rights
Version
岐阜大学教養部化学教室 (Faculty of General Education, Gifu
University)
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/47447
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
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7-グロブ リンのCr-51による檀識゛
透析, 濃縮 及び分子量分布に関す る実験
広
田
恒
和
岐 阜大学教養部化学教 室
( 1971年10月30日受理)
An Atteml】t tOlal】el y- GlOl】Ulin With Cr- 51
SeveraI E xperiments by Dialysis,
Concentration and Gel F iltration
T suNEKAzu H I RoTA
Giμ
U7山 er8雨
Bovine t globulin standard solutions and Cr ( III ) - アーglobulin resultant miχtures
were dialyzed for several days or more, using col lodion membranes, and concentrated to the definite volume,
respectively, at the low temperature.
T he greenish C r ( HI ) - アーglobulin resultant miχtures w ere passed to the columns
of
Sephadeχ G- 200,
and several
data on the
molecular
distributions
w ere
obtained.
At the same ways,
the radioisotopic eχperiments ( containing the procedures of
dialysis, concentration and gel filtration) were tried in order to labe1 ? globulin
w ith Cr- 5 1.
L. 緒
言
前報1) におけ る実験において , 鳶グ ロ ブ リ ン溶液 と , di! CrC13水溶液を含む系 の電気抵抗
値 の変化を追跡 し てい る と き, Cr ( HI ) イ オ ンと CI ( I ) イ オ ンを除 き反応を停止さ せた い
と い う要求が起 って きた。 こ の要求に沿 う最 も簡単な方法は, これ ら り 溶液の透析を 行 う こ
と であ る。 こ のた め コ ロ ジオ ン膜を 用い, 換水透析法 ( 一 日毎) に よ り,
アーグ ロ ブ リ ソー
Cr( m) 系の透析に関す る基礎的な研究2) を , ラ ジオアイ ソ ト ープCr-51を も併用 して, 行 っ
た。
また透析後, 濃縮 も試みた。 これは, 7- グロブ リ ソーCr( m)
反応液を, 分子箇カ ラ ムに
通過 さ せ る 目的のた めに必要 と な った も ので あ る。 また使用 し て い る
ウシ ーアーグロ ブ リ ン
は各社の試薬を 直接用いてい るので, 当然 lgG, lgA, lgM 等に相当す る分子量 と構造が異
※
日 本 化 学 会 第 22年 会
生物化学 部 門に て講 演発 表
日本化学会第23年会
生物化学部門にて講演発表 ( 於 東京経団連会館)
19
(於 東 京 社 会 文 化 会 館 )
昭 44 . 4 . 2 ( 1969)
昭45. 4.4 ( 1970)
広
176
田
恒
和
なる数種の? グロブリンが混在しているものと考えられる;)3) いずれにせよ, 分子箇カラム
に 7- グロ ブ リ ソーCr( III ) 反応液 (透析, 濃縮 した もの) を通過 さ せ, そ の分子量分布を推
測することは/ これら一連の研究に一つの明るい展望を与えることになるものと考えられた1)
即 ち , 今回は主 と し て , アーク ロ ブ リ ン溶液 とdiI CrC13 水溶液 ( 及び ラ ジオ アイ ソ ト ープ
Cr-51 ※
CrC13 水溶液) と の反応操作法に 検討 と 改良 と を 加 え た 後, 透析と濃縮について
の基礎的な研究を行い, つ いで これ ら の処理を行 った反応試液を Sephadex G-200カ ラ ムに
通過 さ せ, 溶離各分画液の電気抵抗値を それぞれ測定 した結果について報告す る。
2 。 試薬およ び装置
2.1
試
薬
1) 7- グ ロ ブ リ ン :
ウ シーノーグ ロ ブ リ ン
SI GMA, NBC製
For Chemical lnvestigation Only.
0. 01N十
2) CrC13 dil水溶液 :
CrC 13 ・ 6H 20
特級
昇華 精製せ る も の
3) Cr- 51 Commissariat A L Energie Atomique (仏 )
T ・ = 27 . 8 日
E C,
7
0 . 320 , 0 . 325 , 0 , 650
MeV
4) リ ソ酸緩衝液 :
KH2PO。-NaOH緩衝液 ( Clark-Lubs法)
KH2PO。-Na2HPO。 緩衝液
5) コ ロ ジオ ン :
6) セ フ ァ デ ク。ス
2 。2
装
特級
G-200 :
いずれ も特級
コ ロ ジオ ン膜
径
3 . 50 , 高 さ
20口
superfine
置
1) シ ンチ レ ー シ ョ ン ・ カ ウ ンタ ー :
日東原子工業株式会社製 , DHW- 1型
2) 電気抵抗測定装置 :
柳本製作所
MY- 7
電気伝導度測定装置
800 c/s
3) 恒温槽 : Yamato-Komatsu Coolnics
4) 濃縮 装置 : CoIlodion Bags エ ムエ ス機器㈱
5) セ フ ァ デ クス
カ ラ ム : 自製
カ ラ ム 1000 , 内径 2. 0a
冷水還流外套付
3 。 実験 と結果およ び考察
3. 1
7- グ ロ ブ リ ン 溶 液 お よ び 7- グ ロ ブ リ ン ーC r ( m ) 反 応 液 の 透 析
アーク ロブ リ ン溶液 ( 濃度 250昭/50が) 50れを コ ロジオ ン透析膜中に入れ, 脱イ オ ン水 200
がにた い し , 5 °
cにおいて透 析を 行 った。 (毎 日換水透析法) また 7- グロ ブ リ ン溶液 ( 濃度
250弓/ 50が ) 50れに0. 01N CrC13水溶液 4こo~ 10. 0れを 添加 し た試 液 につ い て も透 析 を 行 っ
20
7- グr=・ プ リ ンのCr-51に よる標識
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た。 つ ぎに透析済の 7- グ ロ ブ リ ンーCr( III ) 反応液50れに, 再 び 0. 01N CrC13水溶液を 滴下,
再透析を行 っ て, それぞれ抵抗値の追跡比較を 行 った。
始めの? グロブ リ ン溶液 ( 濃度 250弓/50が) ( これを 標準溶液 とす る) では, 長時間 ( 87
日間) の透析の結果, 抵抗値は一定値 と な り, これを比抵抗値であ らわす と, ( 280~ 340) ×103
Ω口 ( 5. 0で に て 測定) と な り, それ以上変化はなか った ( 図 1 )。
アーク ロ ブ リ ン溶液 ( 濃度
250弓/50が) に, 0. 01N CrC13水溶 液 4. 0 がお よび 10. 0れ を 添加 し た試 液 の透 析 ( 毎 日換 水
法に よ る) 結果を 図 2 に示す。 透析に よ り抵抗値は一定 と な り, これを比抵抗値であ らわす
す と , 170χ103 Ω 回 と な り, 標 準溶 液透 析後 の比 抵 抗値 ( 280~ 340) ×103 Ω口 ( 5 .0°
C) には
及ばなか った。 また透析済の標準溶液に0. 01N CrC13水溶液を 添加 し, 再透析を 行 っ た場合
も, 比抵抗値で 130×103 Ω口 (5. 0°
C) で停止 し, そ れ以上は上昇 し なか った ( 図 1右) 。
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図
3. 2
→
1
図
2
アーク ロ ブ リ ン 溶 液 の C r- 51と の 反 応
ウシーアーグよプ リ ン溶液に 51CrC13溶液を添加, 冷蔵庫温度 ( 5 で) で放置, 透析, 濃縮後,
シ ンチ レーシ ョ ン ・ カ ウ ンタ ーでそ の放射能を 測定 し, 併せて透析に よ る Cr-51放射能の液
→ 膜→液, 移動の状態を 求めた。
即 ち, ウシーアーグロ ブ リ ン溶液 ( 濃度 250昭/50が)
50れに, リ ン酸緩衝液 ( pH8. 6, 7, 8, 7. 0, 6. 2) を 添加 し
た 各試液に, それぞれ錨 mCi( 125μCi) の 5七rC13溶液
を , 0 . 01N CrC13水 溶 液 を キ ャ リ ヤ ー と し て 加 え , 緩
衝液非添加ト グロ ブ リ ン試液 と , 脱 イ オ ン水を 対照 と
して用卜,
せた後,
6 日間, 冷蔵庫温度 ( 5 °
C) で放置反応 さ
コ ロジオ ン透 析膜を 用い, 同温度で, それぞ
れ, 脱 イ オ ン水 200 れにた い し て透析 し ( 8 日間, 毎
日換水) 10°
C以下の低温で濃縮 し, 一定容積に した試
液の放射能を シ ンチ レー シ ョ ン ・ カ ウ ンタ ーで計測 し,
また透析膜 外の水の放射能を も併せて測定 した。
図 3 は透析外水の放射能 (cpm) の減少を示す。 毎
日換水法で 5 回換水以後, 放射能の減少はゆ るやかに
連作 ぶ。1
図
3
7
な り,
7 回以後は変化が極めて僅かであ る も の と認め
られ る。
21
広
178
田
恒
和
図 4, 図 5はこの
透析 と濃縮操作に よ
Ω。
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沈眸 濃縮 ,ヽよ琵 心瓦り
乙電気筏れ値 り妾化 丿沁 鎚 勁乞
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る試液容積 と, 電気
透竹違縮 にり 試反9刄持変イヒ
抵抗値の変化の状態
4S
4j4 1 9
t 気 砥 坑 値
を 示 し た 例 で あ る。
4 111
透析中, そ の試 液容
S
積は任意に変え る こ
7 ぷ
透
1 1 1 1 11 1 1 1
と がで き る。
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また, (透析終了時
瓦
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尺.
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におけ る試液の放射
ぱツμX9ぶ芸,。
能測定値)/ (透析前
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の試液の放射能測定
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値) の比について計
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算 してみる と, 緩衝
図
4
図
液を 添加 した も の と
5
し な い も の と で は,
あ ま り大 き い差はな
い ( 0. 125~ 0. 066) ,
が ? グロブ リ ン を ふ
く まない試 液( Cr- 5卜
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t(り(匈ごr-がふ・& ヽな心
を 示 し , ( 7 . 65×10¯4
~ 5 . 63 × 10¯4
補正
値) アーク ロ ブ リ ンと
Cr( m) ( Cr- 51を ふ
く む ) と の 間の相互
作用, 結合を示唆す
る も の と 考え られ る。
(図 6)。
また 図 7 は (透析
託4y
Zg
6
終了時の試 液の放射
能測定値) / (透析終了時 の透析外水の放射能測定値)
図
( 1)
UD
7
の比を 示 し , 脱 イ オ ン水 (対照) に比
較 し て, いずれ も100以上の値を示 し, この場合, 透析が十分有効であ った こ と を示 して い る。
3. 3
玲 グ ロ ブ リ ン ーC r( III ) 反 応 液 の S ephadex G - 200 カ ラ ム に よ る 分 離
ウシーアーグロ ブ リ ッ溶液 と CrC13水溶液 と の反応液を透 析, 濃縮 した試液は外観が美 し 卜
淡緑青色の透 明な液体 で あ っ て , 10れにお卜て, 6. 289×10 Ω口 (5. 0・(コ) を 得た。 これを ,
前記 Sephadex G-200カ ラ ムに通 し, 引 きっ づ き, 脱 イ オ ン水10がずっ を 通 し て, 流出 し た
液を 10がずつ分画採取 し, そ の電気抵抗値を 測定 した。 流 出速度は 5 が/h (0. 083が /min)
で あ る。 図 8 は こ の結果を 示す。
縦軸は電気抵抗値の対数を と った。 これか ら分 る よ う に, 最初 の ピー クは分画試験管で 8
22
アーク ロ ブ リ ンのCr- 51に よる標識
179
本 目にあ ら われた。 縦軸は抵抗値の大 き
い方 を 下方 に と って い るので, こ の値は
全分画液中の最小値を示 し, こ の位置か
ら, 恐 ら く こ の分画液が, 重要な分画 で
あろ う と 考 え られ る。 第 2 , 第 3 , 第 4
の ピー クが存在 して28本 目以後32本 目ま
で採取 した が変化はなか った。 第 2 , 第
3 , 第 4 の ピー クは分解生成物で あ るか,
最初 のアーク ロブ リ ン試液中に, 始めか ら
混在 し て い た も のか, 現在の段階 で はな
迄 a 試 4i、 j & 、J 6t・
図
8
お定かで な いが, 第 1の ピークは量的に
最大で, 第 2,
3,
4 の ピー クは極めて
僅かであ る こ と は, 縦軸が逆対数 目盛 で あ る こ と か ら 明 らかで あ る と 考え られ る。
4 。結
語
先ず, 7- グロブ リ ン溶液 と 7- グl==・ブ リ ソーCr( m) 反応液の透析を行い, 長時間の透 析の
結果, 電気抵抗値が一定値 を示す こ と を 認め, つ ぎにCr- 51を 用 い る透 析 と 濃 縮 で は, 二
三の重要な基礎的な結果を 得, また透析が有効であ る こ と を 認 めた。第三に, セ フ ァ デ ク ス カ
ラ ムに よる分離法に よ り, これ ら の反応生成物の分子量分布を 知る端緒をつかんだ。
なお こ の研究の中でCr-51を 用い る実験は, すべて, 岐阜大学放射 性同位元素共同利用研究室に おいて
行 った。 此の期間中研究室の利用について お世話にな っ た農学部友枝幹夫教授 と清水英世講師に感謝 し ま
す。
文
1) 岐阜大学教養部報告
2) 免疫の生化学
7- グロブ リ ンとCr( m) と の相互作用
平衡透 析法
p. 118- p. 122
3) R. J. Henry : Clinical Chemistry
Harper and Row
3) 日本分析化学会
献
7 号 ( 1971)
共立出版株式会社 ( 昭42)
Principles 叩 d Technics
Hoeber Medical Division of
p. 240- p. 245 ( 1966j
分析化学
進歩総説
臨床生化学分析
p. 169 R ( 1970)
4) F. J. Wolf : Separation Methods in Organic ChQmistry and Biochemistry p. 103- p. 135
A cademic Press ( 1969)
23