台湾の産業競争力の現況と経済政策の新動向

台湾の産業競争力の現況と
経済政策の新動向
台湾経済研究院
所長 林欣吾
2014/02/28
研究三所
2
目次
1. 近年の台湾の経済パフォーマンス
2. 近年の主要な成長の原動力
3. 台湾製造業の競争力の現状と課題
4. 台湾の産業政策の主要な方向性
5. 日台ビジネスアライアンスの機会
6. 日台の協力関係の発展を促進する台湾の
経済政策の新しい動向
3
近年の台湾の経済パフォーマンス
2012年日本の一人あたりの国民所得
は46,707ドル、台湾は20,336ドル。
台湾の経済成長率は一般的に日本よ
りかなり高い。
台湾の失業率は、2001年以前は日本
よりもかなり低かった。2002年以降
はほぼ日本と同水準である。両国と
も最近5年は30歳以下の失業率が特
に高くなっている。
GDP成長率%
失業率%
日本
台湾
出典:台湾行政院主計総処、日本:台湾経済研究院研究三所。
日本
台湾
4
近年の主要な成長の原動力(1)
台湾のGDPのうち個人消費、資本及び
貿易の割合が比較的高く、成長に対
する寄与度は、貿易及び個人消費が
大きい。
GDP
推移
個人
消費
在庫
政府 総固定資
品増
消費 本形成
減
輸
出
輸
入
過去10年間の個人消費のうち、通信費
の支出以外では、レジャーとカル
チャーの支出の成長が最も大きい。
2012年/ 10年間の 2012年の
2002年の 年平均成 消費支出
消費支出 長率%
の構成
食品、飲料(アルコールを含まない)
Food and non-alcoholic
beverages
1.23
2.29
12.01%
Alcoholic beverages and
tobacco
0.85
-1.07
1.93%
Clothing and
衣服、靴
1.16
1.45
4.38%
Housing, water, electricity, gas
住宅、水道、電気、ガス、
その他の燃料費
and other fuels
1.24
1.95
17.51%
Furnishings, household
家具、家庭用具、メインテナンス費
equipment and routine
household maintenance
1.46
2.99
4.61%
1.38
1.22
2.93
1.99
1.04
1.31
2.98
0.69
12.87
5.98
0.68
2.77
9.00%
11.18%
6.19%
11.51%
4.26%
6.48%
1.01
1.34
10.95%
酒、たばこ
2011 60.07 12.38
20.91 -0.05 75.96 69.26
footwear
健康
Health
交通
Transport
コミュニケーション
Communication
レクリエーションと文化
Recreation and culture
民間消費
政府消費
総固定資本形成
在庫品増減
輸
輸
Education
教育
Restaurants and hotels
レストラン(外食)やホテル(宿泊)
出
入
Miscellaneous goods and
services
その他財・サービス
出典:行政院主計総処および台湾経済研究院研究三所。
5
近年の主要な成長の原動力(2)
近年台湾への観光客の数が大幅に伸
びている。
台湾への観光客は外貨収入をもたらし、
また一人あたりの消費金額も微増して
いる。
百万米ドル
台湾への来訪者数
来訪者の総数
うち外国人
出典:交通部観光局及び台湾経済研究院研究三所。
一人当たりの消費金額
訪問者による外貨収入
6
近年の主要な成長の原動力(3)
CR.電子部品製造業
CR.電子部品製造業
CR.電子部品製造業
CR.電子部品製造業
GA.卸売業
GA.卸売業
GA.卸売業
GA.卸売業
CJ.化学材料製造業
CJ.化学材料製造業
CJ.化学材料製造業
CR.電子部品製造業
CJ.化学材料製造業
GB.小売業
GB.小売業
GB.小売業
GA.卸売業
GB.小売業
CP.一次金属製造業
CP.一次金属製造業
CP.一次金属製造業
CJ.化学材料製造業
CP.一次金属製造業
GB.小売業
CS.PC、電子製品及び光学製品製造業
CP.一次金属製造業 CS.PC、電子製品及び光学製品製造業
CQ.金属製品製造業
CQ.金属製品製造業
CU.機械設備製造業
CT.電力設備製造業
CQ.金属製品製造業
CQ.金属製品製造業
CU.機械設備製造業
CU.機械設備製造業
CU.機械設備製造業
CT.電力設備製造業
CT.電力設備製造業
IB.飲食業
CT.電力設備製造業
IB.飲食業
CQ.金属製品製造業
CV.自動車及び精密部品製造業
• 過去10年間、台湾の
GDPへの貢献からみる
と、電子部品、化学
材料、一次金属、金
属製品及び機械設備
といった分野の成長
が著しい。
• 卸売、小売及び飲食
などのサービス業も
成長が顕著である。
なかでも、小売及び
飲食業の発展は、海
外展開できる水準に
達してきている。
CV.自動車及び精密部品製造業
Data Source: Directorate General of Budget, Taiwan, TIER DIV III
出典:行政院主計総処及び台湾経済研究院研究三所。
7
近年成長している主要な輸出産業
主に中国市場へ輸出している
五大産業の成長の状況
(2008-2012年)
(%)
主に米国市場へ輸出している
五大産業の成長の状況
(2008-2012年)
石油化学工業
石油化學工業
光電材料及び部品製造業
光電材料及元件業
非金属鉱物製品製造業
非金屬礦物製品製造業
紡績業
紡織業
(%)
電子部品製造業
電子零組件製造業
光電材料及元件業
光電材料及び部品製造業
金属工業
金屬工業
通訊業
通信業
輸送機器及び部品製造業
運輸工具及零件製造業
電子零組件製造業
電子部品製造業
80
80
60
60
40
40
20
20
0
0
-20
-20
-40
-40
-60
2008
2009
2010
2011
2012
出典:台湾経済研究院研究三所。
2008
2009
2010
2011
2012
機械設備製造業
機械設備製造業
総合用品製造業
電子部品製造業
電力設備製造業
輸送機器及び部品製造業
情報電子業
通信業
紡績業
製紙業及び印刷業
食品業
非金属鉱物製品製造業
一次金属工業
台湾の中国市場における
輸出競争力のRCA指標
光電材料及び部品製造業
石油化学工業
バイオ医薬品製造と医療保険業
出典:台湾経済研究院研究三所。
総合用品製造業
電子部品製造業
電力設備製造業
輸送機器及び部品製造業
情報電子業
通信業
紡績業
製紙業及び印刷業
食品業
非金属鉱物製品製造業
一次金属工業
光電材料及び部品製造業
石油化学工業
バイオ医薬品製造と医療保険業
8
台湾製造業の競争力の現状(1)
注:□=2012年のデータ、○=2000年のデータ
台湾の米国市場における
輸出競争力のRCA指標
9
台湾製造業の競争力の現状(2)
• 台湾が米国のUSPTOで取得した特許の数は、各産業において増加の傾向にあ
る。これは台湾の主要製造業における研究開発能力が継続的に蓄積され、
アップグレードしていることを示している。
• 台湾の特許は光電、情報電子及び電子部品の3つの産業に集中している。こ
の3つの産業の技術力の蓄積は、台湾産業の今後のデジタル化、ネットワー
ク化及びビッグデータ分析など、重要な領域を跨がった共通基盤の発展に寄
与している。
台灣がUSPTOにて毎年取得する特許-産業別
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 趨勢
傾向
運輸工具及零件製造業
9
9
8
15
21
17
24
20
17
18
17
20
12
輸送機器及び部品製造業
機械設備製造業
機械設備製造業
25
27
19
56
34
35
52
32
46
74
94
80 115
一次金属工業
金屬工業
8
12
17
22
37
26
36
15
22
46
36
36
65
光電材料及び部品業
光電材料及元件業
30
41 105 172 266 311 450 443 484 580 756 815 898
情報電子業
資訊電子業
202 271 392 430 602 531 685 708 774 847 820 869 1110
バイオ医薬品製造と医療保険業
生技製藥與醫療保健業
1
2
12
5
6
17
19
9
22
18
20
21
25
石油化学工業
石油化學工業
12
20
24
26
16
17
15
14
14
18
25
25
28
通信業
通訊業
20
34
36
48
65
70
88
68
70
84
99 112 167
電子部品製造業
電子零組件製造業
1739 2106 1731 1574 1864 1598 2098 2012 2143 2273 2845 2803 3824
電力設備製造業
電力設備製造業
23
36
59
90 113 109 140 155 148 160 157 199 199
出典:USPTO資料をもとに台湾経済研究院研究三所作成。
10
台湾製造業の競争力の現状(3)
• ICT産業の長期的な研究開発投資は、ICT製品の国際マーケットシェアの獲得
に貢献している。台湾のノートブックPC、液晶パネル、マザーボード、モデ
ムなどの製品や部品は国際マーケットで非常に高い競争力を持ち、さらに一
部の製品のマーケットシェアは拡大し続けている。
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シェア
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4G Access Device、
出典:『資訊工業年鑑』(1991-2012)、『通訊工業年鑑』(2012)をもとに台湾経済研究院研究三所作成。
11
台湾製造業の競争力の課題(1)
• 中国大陸や新興国のマーケットでの競争
• 中国国内の産業のサプライチェーンはますます整備され、需要を満たせな
い分野は少なくなり、輸入代替が進展している。
• 韓国は中国でのマーケットシェアの拡大を持続している。特に電子部品、
石油・石炭製品、化学材料の分野では、韓国による代替が進んでいる。
• 技術的な自主性を強化する必要がある。基幹的な先端技術、革新的かつ主導
的な大型技術によって、台湾産業の将来における技術の自主性を確保する必
要がある。
台湾技術貿易額の推移
技術貿易収支 (百万台湾ドル)
技術貿易収支/技術貿易額
出典:『科学技術統計要覧』(2012)をもとに台湾経済研究院研究三所作成。
12
台湾製造業の競争力の課題(2)
• 台湾は研究開発投資総額や特許の取得総数では先進国と同じ水準にあるが、
製造業の付加価値率では、他の先進国と未だ一定の距離がある。
ドイツ
韓国
米国
日本
台湾
出典:日本のデータは、OECD STAN database rev.3から算出。そのため、2010年のデータはなし。
その他の国は、OECD STAN database rev.4から算出。
台湾のデータは、行政院主計総処のデータをもとに台湾経済研究院研究三所算出。
13
台湾の産業政策の主要な方向性(1)
• 産業の付加価値創造能力の向上--「三業四化」
1.
2.
3.
4.
製造業のサービス化:カスタマイズされたサービスの高度化によっ
て、サービス収入を創出するとともに、関連するサービス業の派生を
促す。
サービス業の科学技術化:ICTなどの科学技術ツールの使用によって、
サービスの質を向上させるとともに、コストを下げ、新規のサービス
需要を生み出す。
サービス業の国際化:国際的競争力を備え、サービス業の海外展開を
進め、かつ台湾経済にも実質的な貢献をする。
「伝統産業」の特色の強化:科学技術、デザイン、新素材、新ビジネ
スモデルなどの革新によって、「伝統産業」を強化し、特色を発揮
し、付加価値を高める。
• 第1段階のパイロット的産業:ファッション衣料や物流サービスの科
学技術化、工作機械によるスマートマニュファクチュアリング、情
報サービス業の国際化、スマートライフ産業の創造。
• 第2段階の重点産業:スマート・モバイル機器産業、自転車産業、ヘ
ルスケア産業及びデザイン産業。
14
台湾の産業政策の主要な方向性
(2)
自転車の品
質とイメー
ジの向上
自転車関
自転車利用
連商品の
の普及
発展
サイクリン
グへのサー
ビス
http://www.youbike.com.tw/
15
日台ビジネスアライアンスの機会
2000年代、台湾企業は製造能力
の向上にともない、日本企業の
信頼できるパートナーとなり、
双方の関係は水平化するととも
に、協力関係のレベルも高度化
した。
• 統一、頂新及び旺旺と多くの日本食品企業(1990s)
• 維鍇実業が日新リフラテックのASEAN市場展開に協力(1994
年)
• 富強鑫精密工業とマイダス(MIDAS Co., Ltd.)(2006)(日
本企業が研究開発担当、台湾企業は製造担当)
• エプソンと元太科技(2007)(電子ペーパーの共同開発)
• DLEとGreen Paddy(2009)(アニメの共同制作)
• マザーコスモと業強科技(2010)(共同販売)
日台ビジネスアライアンスの機会
16
日台の特許から見た技術力の潜在的な相乗効果
技術大領域 /
0K
國家別
年代生技醫藥
電資光通
機電運輸
材料化工
バイオ医薬品
技術領域 / 年代
化学・材料
特許数
5K
40K
35K
30K
25K
20K
15K
10K
出典:USPTO Weekly Dataをもとに台湾経済研究院研究三所作成。
電子・情報・光学・通信
機械・電機・輸送
国別
日本
台湾
A+革新的な研究開発計画
17
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(1)
「A+革新的研究開発計画」
大きい
プロジェクトの規模
統合された
技術
ITASP
革新的なア
プリケー
ションや
サービス
先端技術
「伝統産業」
TDP
小さい
短い
マーケットへのリードタイム 3年
長い
A+革新的な研究開発計画
18
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(2)
• 「伝統産業」のTDPは54の国際的研究開
発センターの設立を促した。
「A+革新的研究
開発計画」は、
今後、国際的研
究開発センター
の強化に戦略的
に焦点を当て
る。
オペレーションセンターの設立
19
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(3)
• 外国企業が台湾に「オペレーションセンター」を設立す
ることを促す
• 台湾に子会社を有する外国企業は、一定条件を満たす場合、当該
子会社をオペレーションセンターとすることを申請できる。
• 少なくとも以下の1項目の業務を行うことを促す
①人的資源のオペレーション:人的資源管理または人材の育成。
②知識のオペレーション:設計、研究開発、ビジネスモデル、経営戦
略、財務、または知的財産のオペレーション。
③製造のオペレーション:購買、検査、メンテナンス、組立、加工、ま
たは物流、流通のオペレーション。
④マーケティングのオペレーション:市場調査・研究、またはオペレー
ション情報の支援。
⑤パイロット・プロジェクトのオペレーション:量産の準備、またはテ
スト・マーケティング。
• 優待
•外国人技術者の採用、中国から台湾への招聘などに対する規制の緩和。
•特区での税の減免や払い戻し、融資に対する便宜、研究開発役員枠の増
加など。
自由経済モデル区
20
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(4)
• 2013年12月26日行政院にて「自由経済モデル区特別条
例」が通過。
• 「自由経済モデル区」の計画ポイント
経済のダイナミズム
経済と
産業の
発展
規制
と障害
自由化と
国際化の
モデル活動
TPP
RCEP
就業・
投資・
経済の
成長
自由経済モデル区
21
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(5)
推進戦略
ヒト、モノ、カネの自由な流れ 国際租税競争への対応
迅速・簡潔な土地の取得
市場を開放し世界と結びつく 外国との産業協力の推進 良質な経営環境の整備
 高付加価値の
ハイエンドサ
ービス業をメ
インに
 サービス業の
発展を促進す
製造業をサブ
に
スマート物流
国際的な健康産業
農業の髙付加価値化
金融サービス
教育の革新
N
自由経済モデル区
22
日台の協力関係の発展を促進する
台湾の経済政策の新しい動向(6)
第1段階の
モデル区の位置
自由貿易港区は港湾6、空港
1、計7
屏東農業バイオテクノロジ
ー区、1
4カ所の国際空港に優先して
国際医療サービスセンターを
設置
主管機関が新しいモデル区
の設置案を策定した場合、行
政院での審査通過後、設立さ
れる
台北港
自由貿易港
区
桃園空港
自由貿易港
区
台中港
自由貿易港区
安平港
自由貿易港
区
高雄港
自由貿易港
区
屏東農業バ
イオテクノ
ロジー区
基隆港
自由貿易港
区
蘇澳港
自由貿易港区
23
ご清聴ありがとうございました
台湾経済研究院
所長 林欣吾
研究三所