深良用水(裾野市)のかんがい施設遺産への登録決定について 韓国光州

☆深良用水(裾野市)のかんがい施設遺産への登録決定について
韓国光州市で開催された国際かんがい排水委員会(ICI
D)
総会の国際執行理事会において、
「深良用水」
(裾野市)が、
かんがい施設遺産に登録されることが決定しました。
建設当時の卓越した技術や、施設が長い間、適正に維持
されてきたことが、高い評価に繋がったと思います。
本施設は、平成 17年度の農林水産省主催「全国疏水百
選にも選ばれております。
深良用水の深良側穴口
○深良用水の歴史
今から 350年ほど前、深良村(裾野市)やその近
くの村では、時折干害に苦しめられておりました。
それを見た深良村の名主大庭源之丞は、山を掘り抜
き芦ノ湖の水を引くことを考え、そして、用水開発
の経験を持つ江戸の商人友野与右衛門に工事を依頼
しました。
工事は寛文 6(1666)年、湖尻峠を挟んで深良側
と湖尻側の両方から掘り進められ、開削には「のみ」、
灯火には「菜種油」が使われました。隧道は直線的
に掘られておらず、岩石の質により蛇行しておりま
す。また、隧道の特徴として、「息抜き穴」という換気孔が掘られました。
工事は 3年 8か月を費やし、寛文 10(1
670)年 2月に完成しました。そして、念願の芦ノ湖
の水は、同年 4月に隧道をとおり、深良村に流れ落ちました。
隧道は全長 1,
280.3
m、平均勾配 13
0分の 1、芦ノ湖側と深良側の標高差は 9.8
mで疏水として
は理想的であります。また、隧道の結合点は上穴口から 520
mの地点でわずか 1m程の差であり、
当時の技術の高さがうかがえます。
深良用水の水は現在も、裾野市、長泉町、清水町、御殿場市の田畑に引かれ、農業用水をはじ
め、生活用水や防火用水、また水力発電にも使われております。
○地元中学生の取組み
裾野市立深良中学校では、平成 23年度より「深良用水」建設の歴史をテーマにした演劇「い
のちの用水」を上演し、地域の人々から高い評価を受けております。
この演劇を手掛けたのは、同中学校の前 鈴木史良校長。平成 2
3年度に校長に赴任し、「深良
用水」の歴史的価値と技術水準に着目。建設から完成に至る経緯を研究し、「いのちの用水」の
シナリオを書き上げました。
劇の上演には、PTAや地域の人々の理解が深く、この取り組みを絶やすことなく継続し、本学
校の伝統教育として残してほしいという声があがっております。
事業を遂行した人を偲び、深良用水に感謝し、深良区民の交流を図るため、4月に開催された
「深良用水まつり」は、深良中学校の取組が発端となっていると聞いております。
○深良地区郷土資料館
裾野市深良支所の2階にある深良地区郷土資料館は、郷土
の歴史的遺産である「深良用水」の開削の歴史や用水の大切
さ、名主大庭大庭源之丞や友野与右衛門たちの偉業を伝える
ために建設された資料館です。
深良用水の模型をはじめ、開削時に使われた「のみ」や「あ
んどん」、当時の「古文書」などが展示されております。是
非、お立ち寄り下さい。
開 館 日 :毎週月曜日~金曜日(休日の予約可)
開館時間 :午前 10時~午後 4時
入 館 料 :無料
問合せ・予約先:裾野市役所深良支所
電話
05
5-9920400
深良地区郷土資料館の展示
○「深良地区美しい水と緑保全の会」の取組
農林水産省の事業である日本型直接支払制度多面的
機能支払により、地域資源の保全に取り組む活動組織
「深良地区美しい水と緑保全の会」では、深良用水に
つながる深良川において、通水機能等に障害が生じな
い様、法面の雑草や河床に生い茂ったアシなどの草刈
りを実施しております。
会長の小林哲雄氏は、活動を通じて地域の関心を高
めたいと話しておりました。
「深良地区美しい水と緑保全の会」
による深良川の草刈り