通貨政策・制度に係る諸論点について

資料2
通貨政策・制度に係る諸論点について
関税・外国為替等審議会
外国為替等分科会
平成27年3月3日
1
2
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
3
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
4
世界経済の推移と見通し
○
BRICS諸国をはじめとして、新興国の経済は台頭してきており、これら
の国の通貨が今後台頭する可能性。
名目GDPの推移と見通し
10億ドル
米国
日本
ドイツ
英国
フランス
イタリア
カナダ
G7計
2008
14,719
4,849
3,641
2,710
2,937
2,318
1,543
32,716
(24%)
(8%)
(6%)
(4%)
(5%)
(4%)
(2%)
(53%)
中国
インド
ブラジル
ロシア
南アフリカ
BRICS計
4,548
1,223
1,654
1,661
273
9,359
(7%)
インドネシア
マレーシア
タイ
フィリピン
シンガポール
メキシコ
トルコ
ポーランド
アルゼンチン
EM(除くBRICS)計
510
231
273
174
192
1,101
731
529
404
4,145
(1%)
(2%)
(3%)
(3%)
(0%)
(15%)
(0%)
(0%)
(0%)
(0%)
(2%)
(1%)
(1%)
(1%)
(7%)
2013
16,768
4,899
3,636
2,523
2,807
2,072
1,827
34,532
9,469
1,877
2,246
2,097
351
16,040
870
313
387
272
298
1,261
820
518
610
5,350
(22%)
(7%)
(5%)
(3%)
(4%)
(3%)
(2%)
(46%)
(13%)
(3%)
(3%)
(3%)
(0%)
(21%)
(1%)
(0%)
(1%)
(0%)
(0%)
(2%)
(1%)
(1%)
(1%)
(7%)
世界経済におけるシェア(推移と見通し)
2018
21,158
5,295
4,394
3,508
3,263
2,377
2,109
42,104
14,353
2,908
2,739
2,463
407
22,870
1,137
491
467
462
356
1,613
1,022
706
588
6,840
(22%)
(6%)
(5%)
(4%)
(3%)
(2%)
(2%)
(44%)
(15%)
(3%)
(3%)
(3%)
(0%)
(24%)
(1%)
(1%)
(0%)
(0%)
(0%)
(2%)
(1%)
(1%)
(1%)
(7%)
その他
16,088
(25%)
18,778
(26%)
23,896
(25%)
世界計
62,308
(100%)
74,699
(100%)
95,711
(100%)
(出所)IMF, WEO 2014 October
5
外国為替市場の取引高(通貨別、国別)
○
外国為替市場取引は、依然として米ドル・ユーロ・円に集中しているも、
人民元が顕著な伸びを見せている。
○ 国別取引によれば、シンガポール市場が東京市場を上回った。
各通貨取引高
外国為替市場別取引高
(2013年4月における1営業日平均取引高)
(2013年4月における1営業日平均取引高)
(%)
2004年
通貨
シェア
2007年
順位
シェア
2010年
順位
シェア
(単位:億㌦)
2013年
順位
シェア
2004年
順位
米ドル
44.0
1
42.8
1
42.4
1
43.5
1
ユーロ
18.7
2
18.5
2
19.5
2
16.7
2
円
10.4
3
8.6
3
9.5
3
11.5
3
ポンド
8.2
4
7.4
4
6.4
4
5.9
4
豪ドル
3.0
6
3.3
6
3.8
5
4.3
5
スイスフラン
3.0
5
3.4
5
3.2
6
2.6
6
カナダドル
2.1
7
2.1
7
2.6
7
2.3
7
メキシコペソ
0.6
12
0.7
12
0.6
14
1.3
人民元
0.0
29
0.2
20
0.4
17
ニュージーラン
ド・ドル
0.5
13
0.9
11
0.8
スウェーデンク
ローナ
1.1
8
1.4
9
ロシアルーブル
0.3
17
0.4
18
市場
取引量
2007年
順位
取引量
2010年
順位
取引量
2013年
順位
取引量
順位
英国
8,353
1
14,832
1
18,536
1
27,260
1
米国
4,986
2
7,452
2
9,044
2
12,628
2
シンガポール
1,336
4
2,418
5
2,660
4
3,831
3
日本
2,074
3
2,502
4
3,123
3
3,742
4
香港
1,060
7
1,810
6
2,376
6
2,746
5
スイス
853
8
2,536
3
2,495
5
2,164
6
8
フランス
665
9
1,268
8
1,516
8
1,899
7
1.1
9
オーストラリア
1,071
6
1,763
7
1,921
7
1,817
8
10
1.0
10
オランダ
521
11
248
20
183
24
1,123
9
1.1
9
0.9
11
ドイツ
1,204
5
1,014
9
1,086
10
1,109
10
0.5
16
0.8
12
デンマーク
421
12
882
10
1,205
9
1,028
11
カナダ
593
10
640
11
619
11
648
12
ロシア
298
14
502
12
417
14
607
13
ルクセンブルク
146
20
439
15
334
15
512
14
韓国
205
17
352
18
438
13
475
15
(注)BISの報告書においては、全体の取引高に占める各通貨の割合
の合計は200%となる(為替取引は2通貨間で行われるため。)が、
本表においては、便宜上、2で除したシェアを示している。
(出所)Triennial Central Bank Survey, Report on global foreign exchange market activity in 2013, BIS
6
世界の外貨準備の通貨別割合
○ 外貨準備の通貨割合(2013年末)は、ドル61%、ユーロ25%、円4%。
○ 近年は、加ドルや豪ドルのような「new safe haven status」通貨の保有が増加。
○ 他方で、通貨構成が不明の外貨準備の割合も増加しつつある。
通貨割合(※)
外貨準備の推移
(bl US$)
(出所)IMF , COFER
※通貨配分のデータは、通貨構成の配分が明らかな外貨準備(Allocated reserves)における各通貨の割合。
通貨割合については、2012年10~12月期分から、加ドルと豪ドルを開示。
7
債券残高及び銀行債務に占める通貨割合
○
欧州債務危機等を背景に、国際的に発行された債券残高及び銀行のクロスボー
ダー債務に占めるユーロの割合は減少。
○ 近年はドル建て債券の発行残高や銀行のドル建て債務残高がともに増加傾向。
国際的に発行された債券残高の通貨割合(%)
(出所)BIS, Debt Securities Statistics
銀行のクロスボーダー債務の通貨割合(%)
(出所)BIS, International Banking Statistics, immediate borrower basis
8
支払い通貨の使用割合(SWIFTベース)
○
○
○
支払い通貨の大半は、依然として米ドルとユーロが占めている。
円の割合はほぼ横ばい(2013年1月:2.56%⇒2014年12月:2.69%)。
人民元の使用割合は比較的小規模にとどまっているが、2013年初と比べ、
13位から5位に浮上。
2013年1月
2014年12月
順位
通貨
割合
順位
通貨
割合
順位
通貨
割合
順位
通貨
割合
1
EUR
40.17%
11
SEK
0.96%
1
USD
44.64%
11
THB
0.88%
2
USD
33.48%
12
NOK
0.80%
2
EUR
28.30%
12
SEK
0.78%
3
GBP
8.55%
13
CNY
0.63%
3
GBP
7.92%
13
NOK
0.72%
4
JPY
2.56%
14
DKK
0.58%
4
JPY
2.69%
14
PLN
0.56%
5
AUD
1.85%
15
RUB
0.56%
5
CNY
2.17%
15
ZAR
0.45%
6
CHF
1.83%
16
ZAR
0.42%
6
CAD
1.92%
16
DKK
0.40%
7
CAD
1.80%
17
NZD
0.35%
7
AUD
1.79%
17
NZD
0.39%
8
SGD
1.05%
18
MXN
0.34%
8
CHF
1.39%
18
MXN
0.39%
9
HKD
1.02%
19
TRY
0.29%
9
HKD
1.27%
19
RUB
0.36%
10
THB
0.97%
20
HUF
0.25%
10
SGD
0.90%
20
TRY
0.32%
(出所)SWIFT, RMB Tracker (January 2015), “RMB as world payments currency in value”,
9
新興国通貨の位置づけ
○
新興国通貨は、「外準」「支払」「外国為替市場での取引」いずれにお
いてもまだ「国際通貨」としての地位を得るには至っていない。
(出所)Maziad, Faramand, Wang, Segal, and Ahmed, 2011, “Internationalization of Emerging Market Currencies: A Balance between Risks and Rewards,”
IMF Staff Discussion Note 11/17.
10
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
11
国際的な通貨の利益とリスク
利益
リスク
取引コストの削減
通貨の増価
国際的なシニョリッジ(通貨発行益)
対外的な制約
マクロ経済上の柔軟性
政治的責任
政治的影響力(ハード)
評判(ソフト)
取引コストの削減
利益
国際的なシニョリッジ
自国通貨建てビジネスの海外進出が容易となり、外国為替取引コストが削減される。
中央銀行が金銭債務を無利子で負うことができる。また、資産需要が増加し、
外国での自国通貨建て金銭債権が蓄積される。
マクロ経済上の柔軟性 国際収支圧力が弱まることで、財政金融政策の自律性が得られる。
政治的影響力
評判
金融制裁等による政策手段として利用できる。また、国際通貨の外国利用者は
強制しなくとも通貨発行者の嗜好や要求に適応することとなる。
国際的な通貨の流通が、地位や威厳の源となる。
リスク
通貨の増価
需要の高まりを受け、通貨が増価し、輸出競争力を阻害する。
対外的な制約
投機資金の流出入によって金融政策に一定の制限が科される。
政治的責任
(出所)Cohen, 2011.
基軸通貨を支える立場として一定の貢献が求められる。
12
金融政策のアンカーとしての「対ドルレート」
○ 対ドルレートを金融政策のアンカーとして使用している国
は金融危機後、減少傾向。
金融政策の枠組みと為替のアンカー(2008年~2014年)
(IMF加盟国・地域(2014年4月30日時点)の中で占める割合) 1/
米ドル
ユーロ
通貨の組合せ
その他の通貨
マネー
サプライ
インフレ・
ターゲット
その他 2/
2008 3/
33.0
14.4
8.0
3.7
11.7
22.9
6.4
2009 3/
28.7
14.4
7.4
4.3
13.3
15.4
16.5
2010 4/
26.5
14.8
7.9
3.7
13.2
16.4
17.5
2011 5/
25.3
14.2
7.4
4.2
15.3
16.3
17.4
2012 5/
22.6
14.2
6.8
4.2
15.3
16.8
20.0
2013
23.0
14.1
6.8
4.2
13.6
17.8
20.4
2014
22.5
13.6
6.3
4.2
13.1
17.8
22.5
(出所) IMF Annual Report on Exchange Rate Arrangements and Exchange Restrictions (AREAER) database.
1/ 188のメンバー国と 3地域(アルバ島及びキュラソー島、シント・マールテン島(以上、オランダ領)、並びに香港特別行政区(中国))を含む。
2/ 名目アンカーは明記されていないが、その代わりに、金融政策を実施する際に様々な指標をモニターする国を含む。このカテゴリーは、
関連する情報が入手できない国も含む。
3/ コソボ共和国 、ツバル及び南スーダン共和国は含まない(それぞれ、 2009年 6月 29日、 2010年 6月 24日、 2012年 4月 18日に IMFに加盟。)。
4/ ツバル、南スーダン共和国は含まない(それぞれ、 2010年 6月 24日、 2012年 4月 18日に IMFに加盟。)。
5/ 南スーダン共和国は含まない( 2012年 4月 18日に IMFに加盟。)。
13
政治的影響力:金融制裁
○ アメリカの市場や銀行へのアクセスと、ワシントンのそれ
らを利用しようとする能力と意欲は、外交・安全保障政策の
手段としてさらに重要になっている。金融の兵器化
(weaponization of finance)以上にこのトレンドを示す例は
ない。すなわち、強制外交のツールとして、アメ(資本市場
へのアクセス)とムチ(様々な制裁措置)を体系的に利用す
るということである。
○ 長期的にみると、他国は、ドルやアメリカが優位を占める
制度から脱却し多角化を図るであろう。特に、中国が独自の
制度を創る実力と動機を持っており、US建て債券の少ない東
アジアにおいて、それが当てはまる。
※
2015年1月8日(木) Eurasia Group “Top Risk 2015” から抜粋
14
米国による大手金融機関に対する主な制裁金等
制裁対象国に対する
不正送金等
銀行名
発表時期
金額
三菱東京
UFJ
3.2億ドル
2014年11月
(NY州)
コメルツ
2014年9月
スタンダード
・チャーター
ド
BNPパリバ
6.5億ドル
(司法省)
2014年8月
3億ドル
(NY州)
2014年7月
90億ドル
(司法省)
26億ドル
(司法省)
クレディ
・スイス
2014年5月
三菱東京
UFJ
2013年6月
2.5億ドル
(NY州)
三菱東京
UFJ
2012年12月
860万ドル
(財務省)
香港上海
2012年12月
19億ドル
(司法省)
スタンダード
・チャーター
ド
3.3億ドル
2012年12月
(司法省)
ロンドン銀行間取引金利
住宅ローン担保証券
(LIBOR)等の不正操作 (RMBS)の不正販売等
銀行名
発表時期
金額
ロイズ
1.9億ドル
2014年7月 (商品先物
取引委員会)
バンクオブ
アメリカ
(バンカメ)
2014年8月
167億ドル
(司法省)
ラボバンク
8億ドル
2013年10月 (商品先物
取引委員会)
モルガン・ス
タンレー
2014年7月
2.8億ドル
(SEC)
シティ
グループ
2014年7月
RBS
4.8億ドル
2013年2月 (商品先物
取引委員会)
70億ドル
(司法省)
UBS
12億ドル
2012年12月 (商品先物
取引委員会)
銀行名
バークレイズ
発表時期
2012年6月
金額
3.6億ドル
(商品先物
取引委員会)
JPモルガン
130億ドル
2013年11月
・チェース
(司法省)
バンカメ、シ
246億ドル
ティ、ウェル
2012年2月
ズ・ファーゴ、
(司法省)
JPモルガン
外為指標の不正操作
銀行名
発表時期
金額
シティ、HS
BC、JPモ
ルガン、RS
B、UBS
2014年11月
24億ドル
(商品先物
取引委員会)
(注)当局名は主なもの
(出所)各種報道より
15
特別引出権(SDR:Special Drawing Right)
特別引出権(SDR)とは
○ IMFが既存の準備資産(金やドル等)を補充する必要が生じたとき、IMFにより創出され、
加盟国へ配分される公的準備資産。IMF加盟国等の公的主体のみ保有。
SDRの配分と利用
○ SDR配分を受けた国は、対外的な資金繰りが悪化し外貨不足に陥った際に、いつでも他の加
盟国より、SDRと引き換えに等価の自由利用可能通貨を取得できる。従って、SDRは、使用す
る国には「通貨貸出請求権」であり、自由利用可能通貨を提供する国には「通貨貸出義務」と
なる(次ページ)。
○ SDRには、外貨準備の補完の他に、主として低所得国が外貨調達を行う際、外貨建債券を発
行するより安い金利での外貨調達を可能にする、という機能もある。
SDRの価値と金利
○
SDRの価値は、主要通貨の加重平均により決定される。その構成通貨、構成比は5年毎に
見直され、直近の改定時(2011年1月1日)の通貨構成は、米ドル41.9%、ユーロ37.4%、
日本円9.4%、英ポンド11.3%である。2014年6月現在、1SDR=約1.50米ドル(約150円)。
16
SDRの配分・使用のメカニズム
2015年2月現在
1SDR≒1.4ドル
・
・
SDRを使用する国は、使用するSDRと等額の自由利用可能通貨(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド)を取得する。
IMFから指定を受けた場合には、自国へのSDRの純累積配分額の3倍まで、自由利用可能通貨を提供する義務がある。
17
国際通貨体制の改革(概要)①
周小川・中国人民銀行総裁(2009年3月23日)
(今次危機は現在の国際通貨体制が内包している問題を提起)
・ 経済危機の発生とその世界への拡大は、国際金融の安定を確保し、世界経済の成長を実現するにはい
かなる国際準備通貨が必要かという、古くから存在するがまだ残されたままとなっている問題を提起。
・ 国際準備通貨は、①安定的な基準によって支えられ、明確なルールに従って発行されるべきであり、
②その供給が需要の変化に応じて調整できるよう十分に柔軟であるべき、また、③供給の調整がいかな
る個別国の経済環境や国家関心からも分断されるべきものである。
・ 今般の経済危機を契機として、世界経済の保全と金融安定という目的を達成するために、現状の国際
通貨システムを創造的に改革し、安定した価値、ルールに則した発行、管理可能な供給を持つ国際準備
通貨を実現することが求められている。
・ 危機の発生とその世界への拡大は現状の国際通貨システム自体がもつ不安定さと構造上のリスクを反
映している。準備通貨の発行国は、国内金融政策と国際金融政策(準備通貨に対する他国からの要請へ
の対応)との間のジレンマに常にさらされている。準備通貨の発行国は国際流動性を供給すると同時に
準備通貨の価値を維持できないというトリフィンのジレンマは現在もなお存在する。
・ 国際通貨システムの望ましい改革は、個別の国家から分断され、長期的に安定を維持することが可能
な国際準備通貨の創設である。これにより、個別国通貨を使用することによる根源的な欠陥を取り除く
ことができる。
(最終的には超国家準備通貨の創設が求められるが時間がかかる)
・ 超国家準備通貨の創設が提案されてからかなりの時間が過ぎたが、実質的な進展はない。1940年代に
ケインズは「バンコール」と呼ばれる30種の商品を基礎とした国際通貨を提唱したが、採用されなかっ
た。ブレトンウッズ体制の崩壊はケインズ案の先見を証明している。また、IMFは1969年にSDRを
創設したが、その配分と使用範囲の制限により完全な役割を果たしてはいない。しかしながらSDRは
国際通貨システム改革の重要なヒントとなっている。
・ 国際機関が管理する超国家準備通貨は、信用に基づく個別国通貨の根源的なリスクを取り除くだけ
でなく、安定した流動性供給を可能とする。
・ 改革は大局的な見地から主導されねばならず、特別な成果から始めなければならない。全ての国に利
益をもたらすためには漸進的に進める必要がある。
18
国際通貨体制の改革(概要)②
周小川・中国人民銀行総裁(2009年3月23日)
(短期的にはSDRの役割強化が必要)
・ 超国家準備通貨の創設には時間がかかるが、短期的には、国際社会特にIMFは現状の国際金融シス
テムがもたらすリスクを認識し、 定期的な監視・評価を実施し、早期警戒を適宜行う必要がある。
・ SDRは、超国家準備通貨としての可能性を持っており、SDRの機能拡大に特別な配慮が払われる
べき。SDR割り当ての拡大はIMFの資金問題や発言権改革問題にも資する。
・ メンバー国の需要に十分に応えられるようにSDRの使用範囲を拡大すべき(以下を提案)。
① SDRと他国通貨との決済システム構築(これにより、SDRが貿易や金融取引の決済手段として
利用可能に)
② SDRの貿易、投資、商品価格設定、企業会計への使用
③ SDR建ての金融資産の創設
④ SDRの評価と構成通貨の改善(構成通貨に主要国の通貨を含めることとし、GDPに基づくウェ
イト付けを行う)
(IMFによる外貨準備の集中管理とSDRによる運用)
・ メンバー国の外貨準備の一部をIMFの集中管理下に信託することは、国際社会の国際通貨・金融シ
ステムの安定維持と危機への対応能力を増強させるだけでなく、SDRの準備通貨としての役割拡大に
つながる。
・ IMFは投資家の求めに応じ現状の準備通貨での引き受けや償還を認める市場原理に基づくオープン
エンド型のSDR建てファンドの創設が可能。これによりSDRを徐々に準備通貨に置き換えることが
可能となる。
19
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
20
円の利用拡大に向けたこれまでの取組み等
東京外為市場・オフショア市場
1986
東京オフショア市場の創設
オフショア勘定において経理された預金等の利子の非課税措置の導入(2008年に恒久化)
1998
改正外為法施行。対外取引の自由化(「金融ビッグバン」の一環)等を実施
2012
円・人民元の直接交換の開始
決済の円滑化、円の利便性向上
2001
日銀が即時グロス決済化(RTGS)及び稼動時間を拡大
2003-
有価証券のペーパーレス化(CP:2003年~、一般債(社債、国債):2006年~、株式等:2009
年~)
2011-15
日銀と泰、星中銀との間で、クロスボーダー担保取極の締結(尼、比とも基本合意)
2014
民間事業者がアジア域内のATM相互接続ネットワーク(APN:Asian Payment Network)へ加盟
2015-16
新日銀ネット全面稼動に伴う稼動時間の拡大等
クロスボーダー債券投資等の促進
1999
非居住者等が受け取る国債利子及びFB/TBに係る償還差益の非課税措置の導入
2002-04
上記非課税適格範囲の拡充(国債利子:2002年、FB/TBの償還差益:2004年)
2007
非居住者等が受け取る地方債利子等の非課税措置の導入
2010
非居住者等が受け取る振替社債利子等の非課税措置の導入、公社債利子非課税制度の簡素化・拡充
非居住者等が受け取る民間国外債利子等に係る非課税措置の恒久化
2010
国際協力銀行(JBIC)が新規サムライ債発行支援ファシリティ(GATE)を設立
21
円の国際化に係る議論の経過について①
1983年10月~1985年3月 外為審議会
背景:円・ドル委員会
外為審議会答申「円の国際化について」
① 金融の自由化(特に、金利の一層の自由化や、オープンな短期金融市場の一層の整備・拡充)
② 非居住者にとっての円の利便性向上の第1 ステップとしてのユーロ円市場の自由化
③ ユーロ円取引を東京においてもできるようにするとの観点からの東京オフショア市場の創設
1998年7月~1999年4月 外為審議会
背景:アジア通貨危機、改正外為法(金融ビッグバン)、ユーロの誕生
外為審議会答申「21世紀に向けた円の国際化」
① 日本経済の安定と金融システムの再建
② 円の価値の安定
③ アジア各国の為替制度における円の役割の見直し
④ 円の国際化を進めるための環境整備の推進(金融・資本市場の整備、決済システムの改善等)
⑤ 貿易・資本取引における円を積極的に活用していくための取り組み
1999年9月~2001年6月 円の国際化推進研究会
背景:上記答申の検証
構成:貿易・資本取引部会、通貨制度研究部会、決済システム調査WP+委嘱調査
「円の国際化推進研究会報告書」
① 日本経済・金融システムの再生と一層の市場開放
② 円の利便性向上に向けた環境整備の推進、
③ 貿易・資本取引における通貨建て選定慣行の見直し
22
円の国際化に係る議論の経過について②
2002年9月~2003年1月 円の国際化推進研究会
「座長とりまとめ」
① 貿易取引の円建て化に向けて取るべき方策
② アジアにおける域内金融協力
③ 我が国の金融・資本市場の国際金融センターとしての活性化
等
研究者による円の国際化政策の評価(例)
Eichengreen and Kawai, 2014
・ 日本は、1980年から円を国際的な通貨へと変えていこうとし、失敗した。
・ 円の利用が低迷している理由は以下の通り。
① 日本の当局が1980年代以前まで円の国際化に消極的であったこと、
②「失われた20年」により日本のプレゼンスがさがったこと、
③ 貿易インボイス通貨が米ドル中心となったこと、
④ 短期金融商品の市場が、ロンドンやニューヨークに比べて十分に発達して
いなかったこと
23
日本の貿易建値通貨の構成(%)①
輸
出
輸
入
(出所)財務省貿易統計
24
日本の貿易建値通貨の構成(%)②
輸出:平成26年下半期
輸入:平成26年下半期
25
日本の輸出インボイス通貨の選択①
日本の輸出インボイス通貨選択:企業サーベイデータによる実証分析
伊藤隆敏、鯉渕賢、佐藤清隆、清水順子(2013年)
日本の輸出企業の輸出インボイス通貨の選択要因
(1) 輸入国通貨の特性:輸入国通貨は煩雑な資本規制などがなく決済しやすいのか。(基軸通貨であるドルを含
めて)どの通貨のヘッジコストが低いのか。
(2) 財・製品の特性:製品差別化の高い財、世界市場における高い市場占有率、特にトップシェアの財
(3) 企業レベルの特性:企業規模、為替ヘッジ手段の利用状況
(4) 取引経路に関する特性:企業内貿易なのか、企業間貿易なのか、生産現地法人は第三国向け輸出拠点なのか
実証分析結果(要約)
1.インボイス通貨選択は企業内貿易もしくは企業間貿易といった取引経路に大きく依存している。企業間貿
易では円建て取引、企業内貿易では相手国通貨建て取引が選択される傾向が顕著である。つまり、企業内
貿易において相手国通貨を選択することにより、グループ内企業の為替リスクを日本の本社が集約・管理
している。同様に、アジア現地法人向け輸出では、ドル建て取引が選択されている。
2.企業規模が大きい(小さい)ほど、企業内(企業間)貿易を行う傾向が顕著であり、企業規模とインボイ
ス通貨選択に強い相関をもたらしている。
3.企業数では円建て取引はドル建て取引を上回るものの、企業規模によってウェイト付けした場合、ドル建
て取引は円建て取引を凌駕する。これは日本の大規模企業はグローバルな生産販売構造を構築しており、
特にアジア生産拠点から米国市場を仕向け先とする「三角貿易」の取引経路において、ドル建て取引の選
択が支配的であることに起因している。
26
日本の輸出インボイス通貨の選択②
日本の輸出インボイス通貨選択:企業サーベイデータによる実証分析
伊藤隆敏、鯉渕賢、佐藤清隆、清水順子(2013年)
政策インプリケーション
○
日本の輸出企業が為替リスク負担を回避するために円建て輸出を増加させたいならば、世界市場でトップ
シェアを占めるような製品競争力があり、製品差別化の度合いの高い財に製品構成をシフトさせることが重
要である。
○
グローバルな生産販売構造を構築し、多様な輸出仕向け先を持つ日本企業が、個々の海外現地法人ではな
く日本の本社において為替リスクを集約・管理していることは合理的な為替戦略である。この観点で、日本
の本社と海外現地法人の間の貿易がドル建てや国際通貨である相手国通貨建てで取引されるのは合理的なイ
ンボイス通貨選択である。グローバル企業の中核としての日本の本社が、多様な通貨取引から発生する為替
リスクを効率的に管理できるような東京市場の環境整備が重要である。
○
アジア新興国が現在の厳格な為替・資本規制を自由化して通貨の国際化を進め、その結果として通貨の取
引コストを大幅に低下させることに成功するならば、それはグローバル企業としての日本企業のアジア向け
輸出における相手国通貨建て取引を促進する可能性がある。
○
米国や欧州のグローバル企業が、日本のグローバル企業と同様のインボイス通貨選択と為替リスク管理を
志向しているのかどうかは興味深い研究課題である。ドルとユーロは世界の二大基軸通貨であり、それゆえ
に米欧企業は輸出の相手先に自国通貨建て取引を選択させる交渉力を持つのか、あるいは日本のグローバル
企業と同様に輸入国通貨を選択し、自国の本社において多様な通貨から生じる為替リスクを集約管理してい
るのかは、基軸通貨の特性を理解し、国際通貨体制の今後を展望する意味からも重要である。
○
日本の輸入企業が他国の輸出企業に対して円建て取引を選択させることができているかどうかは、これま
で注目されてこなかった新たな論点である。本研究の結果は、日本市場が世界の企業の最終仕向け地として
の重要性を持つならば、輸入面から円建て取引が促進される可能性を示唆している。
27
ASEAN に展開する中小企業の海外現地法人の資金調達方法
○
○
中小企業の海外現地法人は、その資金を親子ローンを中心に調達。
現地金融機関からの資金調達は微減(2013年:33%⇒2014年:30%)。
28
貿易取引上扱っている外国通貨の為替リスク管理上の問題点
○
依然として、アジア通貨は資本規制・為替取引規制を原因として取引
を忌避される傾向。
(出所)独立行政法人経済産業研究所「日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択」伊藤 隆敏、鯉渕賢、佐藤清隆、清水順子
29
アジア地域の最終消費市場としての潜在性
○
今後、アジアの中間層が育ち、アジアが「製造拠点」から「最終消費市場」へと
発展していく中で、アジアの現地通貨と円が利用されていく可能性がある。
アジア新興国における所得階層別人口の推移
(億人)
(出所) 通商白書 2010
アジアのサービス消費額の実績と予測
(%)
(兆ドル)
(出所) 通商白書 2013 (2020年は予測)
30
アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI:Asian Bond Markets Initiative)
ASEAN+3の現地通貨建て債券市場の規模
ABMI開始の背景
○
アジア通貨危機以前、アジア諸国は、ドル等の外貨を海外から短期で
借り入れ、自国通貨建てで国内の長期の融資を実施。
⇒「通貨(外貨と自国通貨)」と「期間(借入が短期、貸付が長期)」
の二重のミスマッチ
○ 二重のミスマッチを解決し、アジアにおける貯蓄をアジアに対する投資
へ活用する観点から、 2003年8月のASEAN+3財務大臣会議において現地
通貨建て債券市場の促進に合意。
8
(兆ドル)
7.2兆ドル
7
6
5
4
ベトナム
フィリピン
インドネシア
シンガポール
タイ
マレーシア
韓国
中国(香港除く)
ASEAN
1.1兆ドル
6.5倍
中・韓
6.1兆ドル
3
今までの主な成果
2
1.1兆ドル
ASEAN+3域内の債券市場規模の拡大
・
1.1兆ドル(2002年末)から7.2兆ドル(2013年末)に拡大。
ASEAN
1
0.3兆ドル
中・韓 0.8兆ドル
0
2002
2013
(出所)アジア開発銀行“Asian Bonds Online”
(注)数値は国債及び社債の年末発行残高(除く日本)。
CGIF:Credit Guarantee and Investment Facility
ASEAN+3域内の現地通貨建て債券発行を円滑化することを目的
に、信用度が低い企業の発行する債券に信用保証を付与する信託基
金。2010年に資本金7億ドルで設立し、2013年にレバレッジにより
保証枠を7億ドルから17.5億ドルに拡大。
・ 2013年の第一号保証案件成立。2015年2月末現在で7件の保証案
件が成立。
CGIFのスキーム図
・
保証
出資
(7億ドル)
ABMF:ASEAN+3 Bond Market Forum
・
クロスボーダー債券取引促進に向け、市場慣行や規制の調和を議論する
ための官民の専門家会合として、2010年に設立。
・ プロ投資家向け債券市場への上場に必要な書類の共通化や、債券決済に
使われる当事者間のメッセージ(指図)の項目とフローの標準化が検討さ
れている。
投資家
ASEAN+3
各国
CGIF
(ADBの信
託基金)
資金調達
現地通貨建
て債券発行
アジアの
企業
ADB
保証料
31
アジア諸国との二国間金融協力の進展①
1.アジア各国との二国間スワップ
契約
締結
基本
合意
国名
従前規模
合意後規模
危機予防機能
インド
150億㌦
500億㌦
―
インドネシア
120億㌦
227.6億㌦
新たに危機予防機能を追加
フィリピン
60億㌦
120億㌦
新たに危機予防機能を追加
シンガポール※
30億㌦
30億㌦
タイ※
60億㌦
―
(再締結に向け引き続き交渉)
協議中
マレーシア※
10億㌦
(注1)※は再締結へ向けた協議(シンガポールは2011年11月、タイは2010年11月、マレーシアは2007年10月失効)。
(注2)危機予防機能とは、スワップ要請国のマクロ経済状況に問題がなくとも、周辺国や他地域の経済状況・政策の余波を受けるおそれがあるときに
予防的に資金を引出すことができるもの。
32
アジア諸国との二国間金融協力の進展②
2.日系企業による現地通貨建て資金調達支援
●
通貨スワップ取引に対する保証:
・ JBICが邦銀=現地民間銀行間の通貨スワップに係る現地民間銀行の信用リスクに対し保証に向け協議
【インドネシア】
・ 通貨スワップ保証:インドネシア中央銀行は、ルピア建て貸出のために行う通貨スワップ等について、為替リスクをヘッ
ジ(3年以内)する制度を新設(邦銀等が日系企業に貸し出すルピアを調達する際に利用可能)
【インドネシア】
● 邦銀による代理・媒介の拡充:邦銀が代理・媒介業務(日系企業への貸出等を含む)を提供可能な地場銀行の対象範囲を拡充。
更に各国における代理・媒介の範囲を明確化すべく確認中【インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ】
● 現地通貨建て債券市場の発展支援:域内のプロボンド市場における債券上場申請時の書類及び手続きの共通化に向けた検討を
開始【タイ、シンガポール、マレーシア】
● イスラム金融の発展支援:邦銀によるイスラム金融商品の提供開始、スクークへの投資促進等を目的とするイスラム金融ワー
クショップを開催【マレーシア】
≪緊急時の対応≫
● 邦銀が日本国債または日本円を担保として現地通貨建て資金を調達できる取極を構築【完了: シンガポール、タイ、基本合意:
インドネシア、フィリピン】
3.その他
● 投資信託(ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(PAIF))への投資:域内の債券市場の発展を促進するため、PAIFを
通じインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの国債へ投資
● 災害復旧スタンドバイ借款:台風30号(ヨランダ)被害を受け、フィリピンに対し供与(限度額500億円)【フィリピン】
● サムライ債保証:インド輸出入銀行が発行するサムライ債(総額200億円)に対するJBIC保証の実施【インド】
● 人材育成・能力構築:CLMV諸国に対し中央銀行、中小企業金融、金融監督、証券市場分野等で支援)【カンボジア、ラオス、
ミャンマー、ベトナム】
33
クロスボーダー担保取極
○
円資産の利用により、アジアの現地通貨へのアクセスを向上・改善。
アジアの中央銀行と日本銀行との間の
クロスボーダー担保取極
取極締結年
タイ中央銀行
2011年
シンガポール
通貨監督庁
2014年
日本国債
フィリピン
中央銀行
2015年に基本合意
担保受入れを連絡
適格担保
日本国債、
円(現金担保)
インドネシア
2013年に基本合意
中央銀行
クロスボーダー担保取極による現地通貨建て
資金供給のスキーム例
日本国債
日本銀行
(担保の保管人)
タイ中央銀行
日本国債、円(現金担保)
タイ・バーツ
A銀行
日本拠点
A銀行
タイ拠点
円(現金担保)
(出所)日本銀行資料
34
中国と各国の金融協力
※△は両国間で合意されるも、実施されていない。
35
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
36
新日銀ネット
○
稼動時間の拡大により、決済を一層円滑化。
稼動時間のオーバーラップ
日本時刻ベース、欧米冬時間、オセアニア夏時間
0
東
京
香港 人民元RTGS (-1h)
米
Fedwire (-14h)
欧 TARGET2 ( -8h)
英 CHATS ( -9h)
稼動時間
(現地時刻)
8:30
前日19:30 -18:00
2:00
-
3:30
15:00
18:30
稼動時間のオーバーラップによるメリット
○
アジア地域間での当日中の円建て顧客
送金
○
日本-欧州(午前中)間での当日中の
円建て顧客送金
○
米国、欧州での資金運用・調達、海外
清算機関への迅速かつ安全な担保差入

19:00
24
11:00
1:20
6:00-16:20
21:00
9:30
前日21:00-18:30
(注)HK CHATS(HKD決済システム)は、8:30
延長前(9:00-19:00)
8:30
0:30
8:30-23:30
(注)
シンガポール 20:00
バンコク、ジャカルタ
円決済の利便性の向上

グローバルベースでの効率的な
資金管理

わが国決済全体の安全性・効率
性の向上
37
アジアにおけるリテール分野の決済
○ 国際ブランドであるVISA、MASTERに代わる現地通貨引き出しスキームとして、Asian
Payment Network(APN)(※)の他、インド(2012~)やミャンマー(2012~)などが各
国独自のカード取引ネットワークを構築。
○ ロシアでは、経済制裁によりVISA、MASTERの使用が規制されたことを受け、2014年に
ネットワークを構築。
(※)ASEAN経済統合の一環として、クロスボーダーのリテール決済に関する連携を深めるため、ASEANの一部の国の決済事業者をメン
バーとして2006年に設置。現在は、現加盟国(シンガポール、マレーシア、タイ、及びインドネシア)にフィリピン、ベトナム、韓国、
中国、豪州、ニュージーランド、及び日本(NTTデータ/2014年)が加わり、11ヵ国14事業者が加盟。
カード取引ネットワークを有する国々と国際ブランド(アジア太平洋)
国際ブランド
NSPK
JCB
銀聯
カード取引ネットワーク例
国際
APN
印
National Payment
Corporation of India
緬
Myanmar Payment Union
露
NSPK
尼
AKKI (計画段階)
38
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
39
開発金融機関と通貨の選択
ADB(OCR)による貸付残高の通貨構成比率
IBRDによる貸付残高の通貨構成比率
(出所)International Bank for Reconstruction and Development Financial Statements, Asian Development Bank Financial Report.
40
開発金融機関と通貨の選択
世銀及びADB(以下「世銀等」という)においては、 1990年代後半までは、
自らの資産と負債の通貨構成をマッチする観点から、負債の通貨構成(ドル、
ポンド、マルク、円等)と整合的になるよう貸出通貨・返済通貨を借入国ごと
に指定。
○ 1990年代後半、借入国より、債務管理の観点から借入通貨等を自由に選択し
たいとの要望があり、世銀等は貸付及び資金管理ポリシーを変更。具体的には、
・ 借入国が借入通貨を自由に選択する。
・ 資金管理は原則ドル建てに変更。具体的には、ドル建て以外で債券を発行
しても、すべてドルに通貨スワップする。
○ 以降、世銀等の円による貸付は減少傾向。
○ 世銀等の円による借入(円建て債券の発行)についても、近年の低金利環境
では、①格付けが高く、②スワップコストを加味しなければならない世銀等の
債券は、基本的にマイナス金利でなければ発行できず、減少傾向。
○
(参考)外国為替等審議会答申「21世紀に向けた円の国際化ー世界の経済・金融情勢の変化と日本の対応ー」(抄)
III.円の国際化を進めるにあたっての課題<円の国際化のために何をすべきか>
2.提言
(5)円を積極的に活用していくための取り組み
③ その他
(イ)国際機関による円建て融資の拡大
借入国のニーズに基づくものではあるものの、国際機関による融資は現在ドル中心になっている。国際機関の
円建て融資の比重が増していけば、円市場の厚みを増すことが期待できる。
41
新興国の対外債務における外国通貨と国内通貨の割合
○
新興国(※)の対外債務は、依然外国通貨建てが多いものの、インド、
メキシコ、タイ、韓国では国内通貨の割合が僅かながら増加している。
2010年第1・四半期
2014年第3・四半期
(出所)The World Bank, QEDS
※ QEDS(Quarterly External Debt Statistics)における、2010年第二四半期と2014年第三四半期の両方でデータ取得が可能なIMF基準上の新
興国(したがって、韓国はIMF基準では新興国ではないが本表には掲載)。
42
カンボジア、ラオス、ベトナムのドル化の割合
(注)ドル化比率=外貨建預金/M2。
(出所)IMF4条協議。点線は計画値。
43
現地通貨建て海外投融資の導入(2014年6月)
実施の背景
海外投融資による支援が想定されるインフラ案件においては、事業収入はドル建てまたは現地通貨建ての
場合が大半であるが、現状のJICA海外投融資での融資通貨は円のみであるため、為替リスクは借入人である
民間企業等が負担している。
制度の概要
借入人の為替リスクを低減し、日本企業の海外でのインフラプロジェクト進出支援に向けた海外投融資
の戦略的な活用のため、現地通貨建て融資を行うもの。
JICAと民間金融機関の間で
スワップ取引
融資契約に基づき、JICAは
借入人に貸付(現地通貨建て)
貸付時
①
借入人
③
現地通貨建て貸付
JICA
円/米ドル
民間金融機関
(スワップ取引相手)
②
現地通貨
借入人はJICAからの現地通貨建ての海外投融資借入により、インフラ事業等の案件を実施。
返済時
④
⑤
現地通貨建て返済
借入人
JICA
融資契約に基づき、借入人は
JICAに返済(現地通貨建て)
現地通貨
民間金融機関
(スワップ取引相手)
⑥
円/米ドル
44
目次
1
通貨を巡る現状
2
ドル基軸通貨体制と国際通貨システム
3
円の国際化とアジア現地通貨
4
通貨と決済インフラ
5
開発政策・経済協力と通貨
6
今後考えられる論点
45
今後考えられる論点(例)
○
いわゆる「円の国際化政策」の今日的意義
○
企業のサプライチェーン管理及びクロスボーダー投資行動の側面からみ
た通貨選択の動機の分析
○
国際通貨システムにおけるドル、ユーロ、円、その他の先進国・新興国
通貨のプレゼンスの変容
○
アジアにおける「円」「人民元」「そのほかの現地通貨」の共存の在り
方や、アジア諸国との二国間・多国間金融協力の推進策
○
円の使い勝手(調達、貿易、投資)をよくするための東京金融・資本市
場の活性化策(円決済の利便性向上等)
○
ドル化が継続する途上国等に対する、円建て融資の役割
○
東京外為市場の市場環境整備等
46