4 月地方選までに株価 1 万 9000 円台

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株式会社ジャパンエコノミックパルス
Japan Economic Pulse Co., Ltd.
4 月地方選までに株価 1 万 9000 円台
新たに「官制相場」の装置に包含されたゆうちょ銀行
安倍官邸が描く株高「資産効果」による消費刺激と
景気浮揚シナリオは、苦戦必至の 4 月中下旬の統一
地方選挙までに株価 1 万 9000 円台の奪取とされ、ゆ
うちょ銀行の資産運用見直しと社長・副社長交代劇
は、統一地方選に向けた新たな株高『官制相場』の
舞台装置に他ならない。
アベノミクス波及遅延に苦戦必至の地方選
ある政界筋は、
「首相の最側近であり懐刀である菅官
房長官が描く株高『資産効果』による消費刺激と景
気浮揚シナリオは、苦戦を強いられる 4 月下旬の統
一地方選挙までに株価 1 万 9000 円台の奪取に他なら
ない」と打ち明ける。
そして、新たな株高「官制相場」の舞台装置に組
み込んだのが、ゆうちょ銀行の資産運用見直しと社
長・副社長交代による組織改革とされる。2 月 17 日
の海外市場 21:25(日本時間)
、豪州大手新聞 AFR
紙が「日本郵政が豪物流最大手の TOLL ホールディン
グに約 50 億豪ドル(約 39 億ドル)で買収を提案」
と報じて豪ドル/円は上げ幅を広げ、一時 93.40 円
近辺の高値へ上昇した。
そして、この日の海外市場 01:30 頃、日経電子版(17
日付)が、
「ゆうちょ銀行が国債に偏っている資産運
用方針を見直し、国内株式などリスク資産の比率を
高める」と報じて日経 225 先物は 17 日大証終値 1
万 8000 円から 100 円高の 1 万 8100 円で NY 市場を引
けた。
官邸周辺筋によれば、成長戦略といった曖昧かつ抽
象論でなく、昨年の GPIF 運用改革の如く、直接株式
需給に訴えることで株高を牽引し、
「資産効果」の浸
透で消費を刺激し景気浮揚を図る。ゆうちょ銀行の
国債比率は未だ高く 10-15%落とすだけで 20-30 兆
円の余資が発生する。むろん、市場を混乱させない
ため償還分から落としていく。
そして、現在 0%の株式比率を数%引き上げるため
の組織改革に幹部人事で踏み込んだ。官邸主導の株
高対策は、菅義偉官房長官が仕切っている。
「坂篤朗
氏がどさくさ紛れで斉藤次郎元社長の後任に就いた
際、烈火の如く怒ったのが菅官房長官であり、早々
に坂氏を追い落とし西室氏を社長に据えた」
(ある政
界筋)。
西室社長は安倍首相が今夏発表する戦後 70 年談話
に関する有識者会議の座長に就任、これも菅官房長
官の人選とされる。何より、西室氏は日中両国有識
者による「新日中友好 21 世紀委員会」の日本側座長
も兼務、中国に太いパイプがある。
アベノミクスの是非を問うた昨年末の師走総選挙
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2015/2/25
(14 日投開票)直前の 12 月 8 日、日経平均は 1 万
8030 円に駆け上がり、アベノミクス司令塔である菅
義偉官房長官が待望した 1 万 8000 円台を回復した。
その後、自民党「単独で 300 議席超」といった大勝
観測を嫌気した売りに押されるも投票日直前 12 日、
何とか 1 万 7500 円水準を維持して自民党は大勝した。
株高による「資産効果」は、成熟社会にあって消費
を刺激し景気を浮揚させる有効な経済政策であり、
内閣支持率を支える重要なポリティカルキャピタル
(政治資本)獲得ツールでもある。
安倍内閣は、
「株価命の政権」と自認し、昨年は GPIF
(株高「資産効果」を最大限に重用してデフレ脱却
と経済再生に邁進してきた。だが、岩盤規制改革に
踏み込みつつ潜在成長率引き上げの果実をアピール
するには時間を要する。
4 年ごとに実施される統一地方選は、都道府県と政
令市の首長、議員選挙が 4 月 12 日、それ以外の市町
村の首長、議員選挙が 4 月 26 日に予定される。その
前哨戦として注目された 1 月 11 日投開票の佐賀県知
事選で、
「改革派」候補を擁立した自民党が、農協や
地元首長らの離反で敗北を喫した。
そもそもアベノミクスは、異次元緩和で市場や市中
にお金を回し、金利を下げて民間需要を喚起し、円
高デフレを是正し産業競争力を引き上げて日本経済
を安定成長路線に乗せる戦略だ。 実際、安倍政権
発足後の 2 年間でデフレから脱却、株価が上昇、賃
金も上がり、円安により多くの製造大企業の収益が
改善した。
だが、実質賃金が物価上昇を下回り、国民の暮らし
がなかなか良くならない。特に、大都市と地方との
格差、大企業と中小企業の格差が拡大、地方では景
気回復の実感が持てない人が多い。大手新聞の世論
調査では、アベノミクスに対し、成功より失敗との
意見の方が多数派になっている。ゆうちょ銀行のリ
スク資産拡大は、4 月統一地方選へ向けた株高「官
制相場」の新たな舞台装置に他ならない。
追加緩和の追い風となる IMF の成長戦略
さらに、
もう一つ、
統一地方選挙前の株高 1 万 9000
円台回復支援策に組み込まれている期待がある。4
月展望レポート公表時の日銀の追加緩和期待だ。
「円安を恐れて追加緩和を手控えるべきではない」
-。日銀審議委員候補にも名前が挙がっている河合
正弘東大教授が 20 日、黒田日銀総裁にこうエールを
送った。
河合教授は、黒田総裁が財務省財務官時代、東奔
西走の通貨外交を副財務官として影で支えた。黒田
総裁のアジア開発銀行総裁時代には、アジア開発銀
行研究所長として総裁を支えた。さらに同教授は
2002 年、黒田総裁と連名で日銀は 3%のインフレ目
標を掲げ、資産購入を通じてマネタリーベースを拡
大すべきとの論文を発表している。
その河合教授が 20 日、外資系通信社のインタビュー
で、
「経済や物価情勢を精査して決めるべきで、円安
を懸念して躊躇すべきではない」との考えを示した。
また、為替レートについては、
「日本経済にとってプ
ラス」と評し、
「為替レートが経済ファンダメンタル
ズを反映している限り、企業や家計は適応するだろ
う」と強調、
「中長期的には 1 ドル=120 円を超えて
円安が進む」と予想した。
なお、円高デフレに逸早く警鐘を鳴らした慧眼溢
れる良識派の経済学者である河合教授だけに、6 月
30 日に任期満了を迎える森本宣久審議委員の後任
候補の 1 人に挙げられている。
黒田総裁は 18 日の会見で、輸出や生産中心に景気判
断を上方修正すると共に、
「原油価格下落でも物価の
基調は変わっていない」とし、むしろ追加緩和「不
要論」が醸された。
与党には、4 月の統一地方選を控えて、市会議員
や町会議員から「これ以上円安が進むといろいろな
弊害も大きくなってくる」と苦情が相次ぐ。12 日に
は一部通信社が「一段の追加緩和は日本経済にとっ
てむしろ逆効果になるとの見方が日本銀行内で浮上
している」と報じられた。
追加緩和を行えば円安となって折角の原油安の慈雨
が霧消、回復しつつある消費マインドに 水を差すな
ど悪影響の方が大きいとの声が、特に地方に轟いて
いる。実際、アベノミクスの理論を支えるトリクル
ダウン効果が弱く、その浸透速度が落ちてアベノミ
クスの景気回復感がなかなか地方に波及しない。そ
うした都市と地方、大企業と中小企業の景況感格差
のジレンマが、4 月統一地方選に色濃く反映されて
いる。
トリクルダウン効果は、
「富める者がより富むことで、
貧しい者にも自然に富が浸透する、滴り落ちる(ト
リクルダウン)
」という理論。
サプライサイド経済学の中心的な思想であり、新自
由主義の代表的な主張の一つ。同学説を忠実に実行
したのが米国レーガン元大統領のレーガノミクス
(レーガン大統領の経済政策)であり、ジニ係数が
上昇しても、自由競争と国際貿易によって貧困層も
含む全体の「所得が底上げされる」と考えられる。
だからこそ、アベノミクス強靭化の一環として「第
3 の矢」成長戦略とともに株高「資産効果」の浸透
による消費刺激が地方経済にこそ不可欠だ。
一方、河合教授に加え、もう一人追加緩和期待の
醸成で援軍が現れた。IMF(国際通貨基金)の篠原尚
之副専務理事が 19 日、朝日新聞とのインタビューで
「いずれ量的緩和拡大を」と声高にしたのだ。
篠原副専務理事は近く退任、後任の副専務理事に
古澤満宏元財務官が就くが、IMF 副専務理事として
最後のメッセージだろう。IMF ラガルド専務理事は
先のG20 で成長戦略の実行により前年に約した成
長率目標を達成すべきと檄を飛ばす。そうした IMF
の成長強化を代弁して篠原氏は、
「日銀はいずれ量的
緩和をさらに拡大していくことを必要に応じ、やら
ざるを得ない」と追加緩和への期待を滲ませた。
金融緩和による通貨安が経済ファンダメンタルズを
規定する「尻尾が犬を振り回す」リスク・オン経済
の時代にあって、その衝撃に目を伏せ「デフレ 15
年」を看過、
「独り負け」を続けた日本がようやくア
ベノミクスの異次元緩和で蘇った。株高「資産効果」
には依然として追加の「一の矢」異次元緩和が有効
である。
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