水稲の基肥値代施肥体系における 緩効性肥料の効率的利用について 1 試験のねらい 近年、稲作を基幹とする農家の省力で低コストの良質米生産が大きな課題となっている。そこ で、ここでは主に緩効性肥料の使用により施肥窒素の利用効率を高め、施肥回数及び施肥量の削 滅をはかるため昭和59年∼61年までの3年問検討した結果を集約したので報告する。 2 試験方法 農業試験場内水田の厚層多腐植質多湿黒ポg土(猪倉統λにおいて、緩効性肥料の種類としてI B、 被覆尿素及びI B化成を供試して基肥施肥量の節減について検討し、また穂肥利用にっいては、 緩効性肥料のうちI B,GU及び被覆尿素を供試して、施肥回数の減少についてそれぞれ検討し た。また、緩効性肥料以外の窒素は塩安を用いた。 栽培概要は、コシヒカリを供試品種とし、移植は稚苗を1株4本櫨とし・栽植密度30㎝× 15㎝(22.2株/㎡)、1区面積12㎡の2連制で試験を行った。 3 試験結果及ぴ考察 緩効性肥料を供試して、基肥施月瞳の節減について検討した結果は、表一1のとおりである。 塩安と比べて基肥窒素量を25%減肥した緩効性肥料各区は、茎数は少なめに経過したが、.有効 茎歩合が高くて穂数はほぼ同程度となり、玄米収量では差がなく施肥量節減の効果が認められた。 また、I Bの割合を変えて検討した結果ではI B100%区は塩安区と同等、I B50%区は穂 数減により若干減収、I B化成(I B−N80%)区はやや増収した・ 表一2は、I B及びG Uを供試して穂月甲施用による施肥回数の滅少にっいて検討した結果であ る。59年は塩安の穂肥、実肥施用と比べて緩効性肥料の穂肥1回施用は、出穂期25日前施用 で玄米収量が増加し効果が認められた。しかし、出穂期15日前施用では若干劣り、肥料の種類 ではI草がやや良かった。60年の結果では、緩効性肥料の穂肥施用による肥効の持続性は認め られたが、施肥時期及び肥料の種類の差は判然としなかった。 61年には塩安、IB、被覆尿素を供試して肥料の種類と施用時期について検討したが、塩安 の穂肥、実肥分施に対してI Bは、穂数増により増収したが被覆尿素は塩安と同程度であった (表一2)。しかし、出穂期が遅れたため穂肥施用時期が目標より4日程度早まり、塩安、IB の穂肥1回施用は倒伏程度が大であった。また、被覆尿素は倒伏程度が小さく、I Bと比べて肥 効の現れ方が緩やかであったためと思われる(図一2)。また、窒素の吸収経過にも肥料の特徴 が現れており、緩効性肥料施用各区は出穂期以降の吸収量が多い傾向であった(図一1)。 4 成果の要約 以上の結果、緩効性肥料の便用により基肥窒素施肥量の節減、穂肥施用による施肥回数の減少 が可能であり、低コストに繕びつくものと思われる。 しかし、肥料の特性を生かして積極的な生産性の向上に結びつけ、コスト低減を図るためには、 土壌型別の養分供給予測と品種別の窒素吸収パターンの把握を前提とした利用技術の確立、価格 の低廉化などが今後に残された間題である。 (担当老 土壌肥料部 植木与四郎) 一59一 表一ユ 緩効性肥料の基肥施用による水稲の生育・収量 年次 肥料の種類 茎数 (本/㎡) 基 肥 移植後47日同54日 同68日 635 6ユ5 480 塩 安(04) I B(0.3) 昭60 562 508 〃 (O.2) 被覆尿素50日(O.3) 〃 70日(0.3) 5ユ3 508 606 665 576 584 578 I B化成(0.4) 塩 安(0.4) 昭6五 IB50%(0.3) I B100%(0.3) I B化成(0.3) 568 502 511 491 635 623 557 562 534 穂翠わら重精玄米重(指数) 本/㎡ Kg/a Kg/a 344 455 355 41ユ 309 413 337 402 340 488 362 563 410 470 375 559 414 490 4ユユ 63,3 65,2 60,9 65,8 59,3 67.0 66,5 61,8 63,6 65.4 54.4 ( ユ 00 ) 53.7( 99) 52.8( 97) 54.4 ( 1 00 ) 5 4.3 ( 1 00 ) 54.6 ( 1 00 ) 55.0(100) 5311( 97) 55.0(ヱ00) 58.5 ( ユ06 ) 表一2 緩効性肥料穂肥施用による水稲の生酋・収量 肥 料 年次 塩安 IB GU IB GU 昭59 の 種 類 穂 数 わら重 精玄米重(指数) 本/㎡ Kg/a Kg/a 肥 実 肥 (出穂前15日、0.2) (出穂前15日、0.4) 塩安(出穂期、0.2) 314 ( 〃 ) 342 312 321 (出穂前25日、0.4) ( 〃 ) 塩安 30ユ (出穂前16日、0.2) 塩安(出穂期、O.2一) 344 (出穂前23日、0.4) 353 〃 ( 〃 ヱ7目 ”) 362 昭60 ( 〃 23日 〃) 362 〃 ( 〃 ユ7日 〃) 375 1塩安(出穂前18日、0.2) 塩安(出穂期三〇.2) 410 〃 2.〃 (・ 24目 0.4) 405 IB GU 3.〃 ・( 0.4) 〃 ’24日 0.4) 〃 24日 0.4) 〃 〃 〃) ’15o 窒 圃5/10−6/25 攻100 9≡:≡ヨ 7/21−8/8 蚊 % .ロー 9 / ㎡ 囮 8/8−9/25 :∼ 5 … o 禺 伏 程 度 魎 6/25−7/3 困9 7/3−7/21 素 量 413 438 426 390 415 〃) 29日 24日 29目 〃 昭614.I B( 5.〃 ( 61LP50( 7LP70( 4一 ’# 劃髪 纈1醐 “ % 掘 篶 彫 劣 調査時期 茗。鶉 ! 曽 ’蔓 = … ≡;1 ) 2 3 4 5 6 =. 閉 7 試 験 区 95,9 50.0 ( 1 00 ) 93,9 48.3( 97) 95.8 46.8( 94) ユ03,2 53.5(107) 98.3 510(102) 63,3 54.4 ( ユ 0 0 ) 63,5 55.2(101) 61,8 56,4(104) 61,7 55.3(102) 63.3 55.2(101) 66,5 55.0(ユ00) 67,4 56.2(102) 64,1 55.1(100) 69,5 62.ユ(113) 67,6 ■’58.3 ( 1 06 ) 67,0 二55.3(101) 64.9 、55.1(100) 2 3 4 5 1 試2 3 験4 5 区6 7 図一2 倒伏程度(61年) 図一1 時期別窒素吸収量(61年) 一60一
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