2015 年投資環境見通し

ご参考資料
2014 年 12 月
2015 年投資環境見通し
~アルファ獲得に向けて~
2014 年 12 月
イーストスプリング・インベストメンツ株式会社は英国プルーデンシャル社の間接子会社で、同社は主に米国で
事業を展開しているプルデンシャル・ファイナンシャル社とは関係がありません。
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目次
3 株式は一定のリターンをもたらし、投資家のインカム志向は持続
ロバート・ラントリー
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
グローバル・ストラテジスト
9 投資の基本原則に集中 - 安く買い、高く売る
ケビン・ギブソン
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
株式 チーフ・インベストメント・オフィサー
15 連動性の低いアジアの金利サイクルは最適な投資機会を提供
ブン・ペン・オイ
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
債券 チーフ・インベストメント・オフィサー
21 2015 年以降、投資対象として魅力が高まるグローバル株式
ケルビン・ブラックロック
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
グローバル・アセット・アロケーション チーフ・インベストメント・オフィサー
26 当資料に関してご留意いただきたい事項
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株式は一定のリターンをもたらし、
投資家のインカム志向は持続
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
グローバル・ストラテジスト
ロバート・ラントリー
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大きな変化を遂げた
1 年!
ロバート・ラントリー
グローバル・ストラテジスト
イーストスプリング・インベストメ
ンツ(シンガポール)リミテッド
世界の市場・経済のトレンド分
析、個人投資家向けの投資啓
蒙等を担当。金融業界において
38 年の実務経験を有する。
2003 年にイーストスプリング・イ
ンベストメンツ(シンガポール)リ
ミテッド入社。
物理学、経済学、統計学の学士
号および、経営学の修士号を保
有。
2014 年初め、市場のコンセンサスは、「インカム投資の
時代は終わり、米国株式と欧州株式に投資すべきであ
る」というものでした。しかし実際には、前者は半分も正
しくなく、後者は米国株式についてのみ正解でした。
一方、私たちは、米国の利上げは市場の予想よりも緩や
かになるとのハト派的な見方から、インカム投資の時代
は続くと主張していました。そして、インカムを(キャピタ
ル・ゲインが限定的な)債券の利子として得るのか、株式
の配当として得るのかが重要だと考えました。
米国株式と欧州株式がさらに上昇する余地を残している
ことは認識していましたが、同時にこれらの市場のバリュ
エーションは割高感を増しており、やがては上昇相場が
終わるだろうと考えていました。一方、多くのアジア市場
は魅力的な水準にあり、「アジアの割安な市場へ投資ポ
ジションを構築するために、先進国市場の上値余地をど
れくらい諦めることになるか」を自らに問いかけました。
結果的に、インドネシア、インド、(世界で最も割高な市
場の一つである)フィリピン、タイが株価レースの上位に
入りました。中国と日本に見られた(今も見られる)割安
感は未だ解消されていませんが、この点については後
述いたします。
2014 年の上昇相場から得られた教訓は、個別市場の
上昇とそのきっかけを事前に特定することは難しいとい
うことでした。
割安なものに忍耐強く投資することが
成功の秘訣である。
5
6
「私たちの 2015 年投資レーダーは、株式を捉えて
います」
ある市場が上昇(または下落)するのに必要な条件が整
っている場合、ちょっとしたきっかけで上昇(下落)すること
があります。だからこそ、投資家は日本や中国から目を離
してはいけません。両国が現在の流れを維持すれば、い
くつかの重要な連鎖が働き、健全な上昇相場をもたらす
可能性があります。
米国株式は、企業の売上高が増加すれば
予想以上に堅調となる可能性がある。
1
米国株式はその好例です。約 7~8%の増益 という今後
12 ヵ月間のコンセンサス予想を踏まえると、米国株式は
それほど魅力的には見えませんが、この利益成長の要因
は変化している可能性があります。
この数年間、1 株当たり利益の伸びは主に企業のコスト
削減と自社株買いにけん引されたものでしたが、そのい
ずれも永遠に続くものではありません。購買担当者景気
指数(PMI)がこのところ示唆している新規受注の著しい
増加は、2014 年末にかけてようやく実際の数字に表れて
きているようです。この傾向が続けば、企業の売上高がま
ず増加して、次いで業績の上方修正が相次ぐ可能性があ
ります。2015 年の米国企業の予想利益成長率が 15%近
くまで上方修正された場合、米国株式にとって再び堅調な
一年となるでしょう。したがって、まさにレーダーで絶えず
注意深く「モニター」するべきであると私たちは考えていま
す。
米国経済の成長加速に伴い、
一部のアジア市場は魅力的な割安銘柄へ
投資する機会を提供しています。
米国の景気回復の恩恵を受けて上昇が期待できる市場
は他にもあります。米国株式に割高感が生じている一方
で、米国経済の成長加速から恩恵を受けると見込まれる
市場(韓国、シンガポール、台湾等)は、米国と比べては
るかに割安に見受けられます。なかでも、韓国市場は著し
く割安のようです。
「日本買い」ではなく日本「企業」買い。
日本株式については、7-9 月期の実質国内総生産(GDP)
がマイナス成長となったにも関わらず、興味深い投資対
象です。日本では、先に投入された「アベノミクス」の施策
にいまだ明白な成果が見られないことから、センチメント
が顕著に悪化してきました。例えば、2012 年後半以降の
急速な円安にも関わらず、輸出受注は言うまでもなく受注
全体が上向く兆しはほとんどみられません。円安の影響
もあり、輸出受注は円ベースで増加したものの、投資家は
この名目上の数値に惑わされませんでした。
この状況が今まさに変わろうとしているようですが、それ
は日本銀行が金融緩和策のアクセルを再び強く踏み込ん
だことだけが理由ではありません。2 年近く停滞してきた
民間の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、足元の数ヵ
2
月間において増加の兆しを見せています 。しかし判断す
るには時期尚早であり、今後の指標を確かめる必要があ
ります。回復傾向が確認されれば、日本株式は急上昇す
る可能性があります。
これまでの金融緩和の効果が表れ始めた
時期のマイナス成長に、日本銀行はショックを
受けた模様。今後も景気動向には要注目。
投資家は、過小評価された市場に狙いを定め、その価値
を実現するきっかけを見つけたら、躊躇はしません。日本
の 2013 年における上昇が十分に示しているように、状況
変化の認識は迅速に起きるため、もしその時点で投資し
ていなければ、将来においても投資できない可能性があ
ります。ここで得られる教訓も、市場が割安である時にポ
ジションを構築しておくことが長期的に高いリターンを得る
ために極めて重要であるということです。
2014 年を通じて投資家が日本株式に対してどれだけ懐
疑的であったかは、相場を大きく動かした要因から容易に
推し測ることができます。投資家は、アベノミクスによる明
白な成果が見られないことに加えて、消費税率の引上げ
に注目したため、企業が(円安によって押上げられた部分
があるものの)明らかな好決算を発表しても反応しません
で し た 。 結 果と し て 、 株 式市 場 は 上 昇 相 場 が始 ま った
2012 年 11 月よりも割安な水準に留まっています。
1
2
2014 年 11 月時点。出所:データストリーム。
2014 年 11 月 24 日時点。出所:内閣府、データストリーム。
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中国は「ハニートラップ」ではない。上昇相場の
きっかけがまだ見出せないからといって、
今後上昇しないというわけではない。
中国株式は日本とやや似た状況にあります。株価は割安
な水準にあり、適正に評価されていない例も多くあります。
例えば、中国政府が進める経済改革から恩恵を受けるセ
クター(一般消費財・サービス)のバリュエーションは、恩
恵を受けないセクター(固定資本投資に関係するセクター)
と同水準にあり、明確な上昇のきっかけをつかめていま
せん。それでも、投資家は中国市場から目を離すべきで
はありません。時期が来れば、株価は高く、急速かつ急
激に反発する可能性があります。
私たちは、他の多くの投資家とは異なり、中国の不動産
市場、シャドー・バンキング、関連する理財商品等の問題
を過度に心配していません。これらの問題は長らく存在し
ており、十分な分析が行われてきました。一部の銀行は
株価純資産倍率(PBR)が 0.8 倍に近い水準で取引され
ており、投資家はバランスシート上の資産が 20%ほど毀
損することを既に織込んでいます。これはかなりの過小評
価です。
米国のバリュエーション指標は先行
中国はいつ追いつくか?
“Z”スコア 3
割高
米国
借入れの増加が売上の増加をもたらすならば問題はあり
ませんが、これまでのところ、そのような結果にはなって
おらず、営業利益率や投下資本利益率は低下しています。
今後、利益率の上昇、または借入れの伸びの鈍化のいず
れかが見られれば、安心できるでしょう。
それでも中国市場に投資するのかと問われれば、私たち
の答えは「イエス」です。しかし、魅力的なバリュエーション
に基づく投資とし、マーケット・タイミングを計ることはしま
せん。
割安なユーロ圏市場。企業の売上高が停滞する
なかでは「忍耐」が重要。
同じように割安であるという観点から、ユーロ圏株式市場
への投資を検討する価値があります。企業のファンダメン
タルズは安定しておらず、売上高は伸び悩んでいますが、
現在の低いバリュエーション指標はこうした状況を大部分
織込んでいます。忍耐強い投資家にとっては、2014 年
10 月の下落によるバリュエーションの低下は、魅力的な
投資機会として映るでしょう。
ASEAN 諸国の株式は 2014 年に堅調に
推移した後、2015 年初めに「一服」する可能性。
フェアバリュー
割安
中国
一方、私たちが懸念しているのは中国企業の債務増加で
す。借入れの増加に伴い、事業が生み出すキャッシフロー
からより高い割合を銀行への借入返済に充てています。
結果として、将来の投資や株主への配当に充てる資金が
減少します。
非常に割安
(年)
10 年間の平均
全ての計測値の約 70%が収まる範囲の上下限
出所:2014 年 11 月 26 日時点。MSCI、IBES、データストリームのデータに基
づきイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。
※最終ページ参照。
3
Zスコアで示すバリュエーション指標は、過去の株価純資産倍率(PBR)お
よび予想株価収益率(PER)それぞれの長期トレンドからのかい離を等加重
して合成しています。上下に離れた黒の点線は、全ての計測値の約 70%が
収まる範囲の上限と下限を表しています。中央の赤の点線は、10 年間の平
均を示しています。
多くの東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の株式市場と
インド株式市場において 2014 年の上昇相場が継続する
ならば驚きでしょう。他の地域を上回るパフォーマンスを
上げてきたこれらの市場は、少なくとも 2015 年前半には
「一服」する可能性が高いと思われます。私たちは各市場
の投資テーマが終わったとは考えていませんが、バリュエ
ーション面での割高感が高まっているなかで、投資家が
相場への追随に疲れを感じている可能性があります。イ
ンドネシアとインドではバリュエーションが過去 10 年間の
平均に近い水準にありますが、投資家は 2014 年の選挙
公約と照らして、インドネシアのジョコ大統領とインドのモ
ディ首相が何を実現するかに注目しています。また、少な
くとも経常赤字がさらに縮小するまでは、長引く通貨安の
恐れも懸念材料となると見込まれます。総じて、投資家が
(少なくとも当初は)両国以外で簡単に見出される投資機
会に注目することは、容易に想像できます。
8
「社債(特にアジア社債)とインカム型のアジア株式
から得られるインカムは、依然として魅力的」
2015 年に目を向けると、私たちのインカム型投資に対す
る見方は変わらず、インカムを求める投資家にとっては、
社債、なかでもアジア社債の利回りは魅力的です。米国
の利上げについては、長期社債に適度に織込まれている
と考えており、それほど心配していません。それでも、米
国の利上げに対する不安が揺れ動くなかで値動きの荒い
展開も予想されるため、何らかの備えが必要だと考えま
す。投資家が社債市場の変動に不安を感じるならば、値
上がり益の可能性も考慮すると、アジア株式から得られる
配当の方が、取ったリスクに見合うインカム収益となると
思われます。
一言で言えば、2015 年も多くの
投資機会が見込まれる。
ただし、多くの市場では上昇のきっかけが熟成
段階にあるため、今はポジションを構築して忍耐
強く待つことが必要でしょう。米連邦準備制度理
事会(FRB)による量的緩和は終了したものの、
世界の流動性は引続き豊富であるため、2015
年も株式には堅調なリターンが見込まれます。
米短期金利が上昇したとしても債券の利回りは魅力的 アジア債券の利回りは米国債を上回る
最終利回り(%)
アジアハイイールド社債
米国ハイイールド社債
アジア現地通貨建て債券
アジア投資適格社債(米ドル建て)
米国投資適格社債
米国 10 年国債
(年)
出所:2014 年 11 月 24 日時点。バークレイズ、JP モルガン、データストリームのデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。
アジア現地通貨建て債券の他は米ドル建て。
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投資の基本原則に集中
- 安く買い、高く売る
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
株式 チーフ・インベストメント・オフィサー
ケビン・ギブソン
10
投資機会を探す
ために未来を映す
水晶玉は不要
ケビン・ギブソン
株式 チーフ・インベストメント・
オフィサー
イーストスプリング・インベストメ
ンツ(シンガポール)リミテッド
8 つの株式運用チームを統括す
る他、日本株「コンサバティブ・バ
リュー」戦略の運用を担当。
2004 年にイーストスプリング・イ
ンベストメンツ(香港)リミテッドに
入社。2008 年よりイーストスプリ
ング・インベストメンツ(シンガポ
ール)リミテッド。
金融業界で 26 年以上にわたる
実務経験を有し、そのうち 20 年
間は日本株式を担当。1989 年、
英国アバディーン大学にて修士
号を取得。
2015 年以降の投資機会について考えると、引続きアジ
ア全域の市場とエマージング市場において割安な銘柄
を見出すことができます。注目すべき点は、市場に見放
されて極めて割安な(および割安度が増している)銘柄
が増え続けているということです。日本と中国の金融株
がその好例です。株価がフェアバリュー(適正価値)から
かい離した割安銘柄は、忍耐強い投資家に最大のリタ
ーンをもたらすでしょう。
一方、割高であるにも関わらず、もてはやされて株価が
上昇を続けている銘柄もあります。特に、ディフェンシブ
(非景気敏感)色の強い銘柄は、利益を生み出す確実性
が高いという期待から、市場が過大評価していると考え
ています。この傾向は、特にエマージング市場において
顕著です。私たちは、これらの割高銘柄を避けるとともに、
バリュエーション指標が発するシグナルに基づいて割安
銘柄を選別しています。足元では、シクリカル(景気敏感)
銘柄のなかで、こうした割安銘柄が多く見られます。
2015 年に堅調となる市場を予測することは可能でしょう
か。「確実性は高くはないけれども(できる)」というのが、
シンプルな答えです。
市場は短期的に不合理な動きをすることが
あります。投資のトレンドやテーマを正確に
予測することはほぼ不可能と考えています。
11
12
「著しい上値余地がある銘柄に照準を絞り、
『ショック耐性を備えた割安銘柄』を選別」
将来を予測する能力を過信することは、投資家が陥りや
すい罠です。投資家はしばしば、単純な投資テーマへ簡
単に飛びついて、資産価格をフェアバリューから大きくか
い離させます。都合のよい材料は、ギリシャ神話のセイレ
ーン(海の怪物)の歌のように、投資家にとって魅惑的で
あるものの危険をはらんでおり、不合理かつ予測不能な
市場のなかで偽りの安心感をもたらします。その結果、
数々の投資テーマが現れるものの、投資家が気づかない
うちに消えるため、多くの場合に損失を生じさせます。
私たちは、将来は本質的に不確実なものと認識している
ため、長期的に成果が得られる確率を高めるような投資
アプローチを採用しています。
株式運用チームのデスクに水晶玉を置いていますが、私た
ちが何度お願いしても、何一つとして優れた投資アイデアを
映し出してくれません。この水晶玉は、私たち人間が重要で
はないものに執着しがちであることを思い起こさせる役割を
果たしています。
シクリカル銘柄は強力な割安シグナルを放っている。
アジア地域全般にわたって、2014 年には強力な割安シ
グナルが放たれていました。世界の景気循環に連動する
銘柄は、世界経済の成長に対する短期的な懸念を受け、
当初売込まれました。
私たちが保有する全ての銘柄に共通する重要な要素は、
発行企業のファンダメンタル・バリュー(実体価値)と比べ
て株価が割安であることです。つまり、著しい上値余地が
ある銘柄に照準を絞り、『ショック耐性を備えた割安銘柄』
を選別するのです。
アジア市場の割安なシクリカル銘柄への投資を通じて成長性と利回りの両方を追求
株価純資産倍率(PBR、倍)
ディフェンシブ株
(非景気敏感株)
シクリカル株
(景気敏感株)
利回りを追求する投資家には
アジア市場のシクリカル株
配当利回り
=
アジア市場のディフェンシブ株
配当利回り
=
(年)
ディフェンシブ株(生活必需品・サービス、ヘルスケア、公益、通信)
シクリカル株(石油・ガス、建築資材、工業、金融)
出所:2014 年 11 月 24 日時点。データストリームのデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。各系列を構成するセクターの株価
純資産倍率を平均。点線は 2000 年 1 月 1 日以降の株価純資産倍率の平均。
13
売込まれたことで割安度が目立つようになったことから、私
たちはこの好機を捉えてそれらの銘柄をポジションに組入
れました。例えば、インドとインドネシアの割安銘柄は、そ
れぞれの国で 2014 年に行われた選挙の後に、力強く上
昇しました。その後、私たちは多くの銘柄を一部売却して
利益確定しました。
市場を上回るパフォーマンスを達成するために、
私たちは株価とバリュエーション指標に基づいて
投資機会を追い求め、他の投資家との差別化を
図ります。
ディフェンシブ銘柄とシクリカル銘柄とのバリュエーション格
差が開いた状態が続いているため、私たちは多くの輸出関
連銘柄とシクリカル銘柄にはまだ割安感があると考え、そ
れに応じてポジションを構築しています。最も確信度の高
い保有銘柄には、中国とインドのエネルギー生産会社、中
国・韓国・インド・ブラジルの銀行と保険会社、韓国・ブラジ
ルの公益事業会社等があります。
2014 年は好決算ながら投資家心理の悪化が
重しとなる結果に
(%)
ここで、私たちが確信度の高いと考えるポジションに中国
の銀行が含まれることは、私たちの逆張り的な運用アプロ
ーチを際立たせます。
市場心理は不確実な経済状況と銀行システムに潜む信用
損失を懸念しており、中国の銀行株のバリュエーションを
魅力的な水準にまで押し下げました。その結果、株価収益
率(PER)は 4 倍から 5 倍、配当利回りは 6%程度と相対
的に高い水準にあります。これらの指標が示す魅力的な
バリュエーションは、中国銀行等の銘柄の保有に大きな安
心感を与えています。私たちの分析では、中国銀行は好調
な国内と海外の事業を下支えする強固なバランスシートを
有しています。
日本株式への投資は魅力的。
日本株式も過小評価されているようです。日本にも極めて
割安な銘柄が多く存在しますが、健全な財務状況と強固な
バランスシートが、投資家に十分に認識されていないよう
です。加えて、多くの日本企業が構造改革を推進する姿を
見せていますのでこの組合せは強力だと考えています。
「日本株式会社」は、力強い利益成長を達成していますが、
まだ株価の上昇という形で反映されていません。日本の株
式市場は、2013 年から 2014 年にかけてファンダメンタル
ズの改善を背景に上昇しましたが、バリュエーションの水
準に大きな変化は見られません。
2012 年以降に大手銀行の株価が堅調に
推移したことは、いかに市場が戦術的な
テーマに群がるかを示す好例であるとともに、
いかに私たちの運用アプローチがこうした
投資家行動を活用するかを示しています。
米国
ユーロ圏
日本
アジア
(日本を除く)
■株価指数の変化=■投資家心理の変化(株価収益率 1 の変化で測定)+
■現実の変化(企業収益の変化で測定)
出所:MSCI、IBES、データストリームのデータに基づきイーストスプリング・
インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。期間は 2014 年 1 月 1 日か
ら 11 月 24 日まで。※最終ページ参照。
1
株価収益率(PER)は、MSCI各指数とIBESによる年初から2014年11月24
日までの利益(公表ベース)に基づく実績PER。日本は円ベース、その他は
米ドルベース。
2013 年を通じて、銀行株は私たちが最も確信度が高いと
考えるポジションの一つでした。2013 年の初めに、安倍首
相が新たに導入した「アベノミクス」によって刺激された強
気な市場心理を背景に、短期志向の投資家は日本株式に
殺到しました。その結果、銀行株は最もパフォーマンスの
高い投資対象の一つとなりました。
14
割安銘柄の発掘は、
極めて大きな利益を
もたらすでしょう
2014 年には一転して、戦術的な投資家はアベノミクスに
対する忍耐を失いました。このことは、金融市場における
投資期間は実体経済が移りゆく期間よりもはるかに短いも
のだという事実を喚起しました。補足すると、銀行株の下
落を受けて、私たちは確信度の高い銘柄を選別的に買い
戻しました。2015 年に向けて、私たちは確信度が高い日
本の大手銀行株のポジションを維持する方針です。
要約すると、2014 年の経験から投資家
が学ぶことのできる教訓の一つは、
割安銘柄の反発は、極めて力強く、
かつ急速なものとなり得ること。
既に明白だと思いますが、私たちは特定の年に
パフォーマンスの良い銘柄や市場を選別しようと
しているのではありません。むしろ、極めて割安
な銘柄を発掘し、忍耐強く待つのです。
大胆な予測は何もありません。ジョン・ケネス・ガ
ルブレイスの次の言葉は、「予測」というテーマ
に関する私たちの考え方を表すものです。
「経済予測の唯一の効用は、星占いを
立派に見せることである」
15
連動性の低いアジアの金利サイクルは
最適な投資機会を提供
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
債券 チーフ・インベストメント・オフィサー
ブン・ペン・オイ
16
2014 年は厳しい環境の
なかでも総じて良好な
パフォーマンスを達成
ブン・ペン・オイ
債券 チーフ・インベストメント・
オフィサー
債券運用を統括。2007 年にイ
ーストスプリング・インベストメン
ツ(シンガポール)リミテッドに入
社。投資および外貨準備の運用
において 27 年以上の経験を有
する。
シンガポール国立大学にて建築
学の学士号を取得。CFA 協会
認定証券アナリスト。
2014 年における最大の驚きの一つは、債券利回りの世界
的な低下です。
予想された米国金利の上昇はなく、10 年物米国債の利回
1
りは 0.6%以上低下して約 2.3%となりました 。それ以上
に利回りの低下が著しかったのはドイツ国債で、10 年債利
2
回りは 1.1%低下して 0.83%となりました 。アジアの債券
利回りも概ね米国債同様低下しましたが、一部の市場では、
国内要因が利回りの低下に寄与しました。
こうした環境下、私たちのファンドの
パフォーマンスは総じて良好でした。
ポートフォリオでは、今年のほとんどの期間において(金利
上昇を予想していたコンセンサスに反して)、デュレーション
を長めに維持したことが、パフォーマンスにプラスに貢献し
ました。また、2013 年以降の米国の量的緩和(QE)縮小
観測や「フラジャイル・ファイブ」として売られたエマージン
グ・アジア債券を割安と捉えた投資戦略も奏功し、インドと
インドネシアのオーバーウェイトがプラスに寄与する結果と
なりました。
一方、通貨のパフォーマンスはまちまちでした。アジア地域
にお ける セン チ メ ン トの改 善や米連邦 準備制 度理事 会
(FRB)による金融引締め観測の後退にも関わらず、総じて
アジア通貨に対して米ドル高傾向となったことが重しとなり
ました。
1、2
11 月初旬の本稿執筆時点。
17
7
18
「戦略的に『ハト派姿勢』を維持しつつ、投資機会を
捉えて戦術的にポートフォリオを調整する方針」
年末が近づくなかで、2015 年に金利が世界的に上昇する
か否かの難しい判断を迫られています。状況は複雑ですが、
債券戦略に関して言えば、「ハト派姿勢」を維持しています。
これには様々な理由があります。
例えば、主要先進国の経済成長や金融政策の道筋が異な
るため、金利動向も市場によって異なる可能性があります。
G3(日、米、ユーロ圏)諸国のなかで、より顕在化しているリ
スクは米国の金利上昇です。これは米国の経済成長が相
対的に堅調であるためです。
しかし、今後の金利上昇は緩やかになることが予測されま
す。なぜなら、世界的な需要も旺盛とは言えず、また十分な
財政支援が見られないこと等から米国経済の成長ペースが
抑えられる可能性があるためです。また重要な点として、労
働市場において労働力余剰の状態が継続しています。これ
は、FRB がフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標の引上
げを早めるというより、むしろ遅らせるとの見方を裏づけて
います。FF 金利先物は現在、2015 年の早い時期における
0.50%の利上げを織込んだ水準で推移しています。
2015 年後半に 0.25%の利上げが行われると
予想しています。
2015 年の利上げは織込み済み 今後の利上げの幅とペースは?
(%)
米国フェデラル・ファンド
(FF)金利先物 3 30 日物:
2014 年 9 月 16 日時点
2014 年 11 月 28 日時点
イーストスプリング・インベストメンツ
(シンガポール)リミテッド 予測値
(年)
米国フェデラル・ファンド(FF)実効金利
出所:2014 年 11 月 28 日時点。Bloomberg L.P.のデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。
3
金利見通しは、各時点における 2017 年 10 月までの各月の FF 金利先物 30 日物。
19
米長期国債利回りは、レンジ内に留まると考えています。イ
ンフレ圧力が落ち着いているなかで、インカムを生み出す資
産に対する構造的な需要が引続き長期債投資の必要性を
高めるからです。
私たちは「ハト派姿勢」を維持していますが、世界的に金利
は過去最低水準にあります。米国の債券利回りがレンジ内
で推移するとの予想に基づくと、金利が予想レンジの上限ま
たは下限に近づいた局面を投資機会と捉える戦術的なデュ
レーション戦略が有効だと考えます。さらに、長期債や高利
回り社債をオーバーウェイトするキャリー戦略は、短期金利
の緩やかな上昇による影響を相殺すると考えられます。こう
した戦略は、米ドル建て債券ポートフォリオにおいてプラス
のリターンを生み出すと思われます。
世界経済の成長と金利上昇が予想通り緩やかなものに留ま
れば、米国金利の上昇が既に織込まれているため、アジア
の現地金利の上昇は抑制されるものと思われます。また、ア
ジア諸国の金融政策のサイクルは連動しておらず、例えば、
インドネシアの中央銀行は、最近実施された燃料補助金の
削減によって生じる可能性があるインフレ率の上昇を抑制す
るために、利上げを行いました。一方、その他のアジア諸国
の中央銀行は現在の金融政策を維持するか、中国、韓国、
タイのように、減速している経済状況とインフレ率の低下を
受けて金利を引下げることも考えられます。中国に関しては、
ごく最近利下げを実施したところです。
連動性の低いアジアの金利サイクルに
最適な投資機会があると見ています。
なかでも、バリュエーションの観点から
相対的に魅力的なインドやインドネシア等の
現地通貨建て債券市場を選好しています。
インドとインドネシアでは選挙が実施される等、アジアでは政
治リスクの低下も強い支援材料になると考えられます。アジ
ア諸国の国際収支と外貨準備は総じて改善しており、より脆
弱なアジアの新興国でリスク・プレミアムが再び拡大する状
況を回避することに役立つと考えられます。
しかし、アジアの経済成長見通しは依然として不透明である
ため、社債や通貨等のリスク資産のボラティリティが高まる
可能性はあると認識しています。生産性の低下や G3 経済
への依存度の低下等アジアにおける構造的な変化により、
アジアが以前ほど世界経済の成長に左右されることはなくな
りました。一方で、アジアの新興国における構造改革の進展
や経済の不均衡是正は、困難な道のりであり、逆風を伴う
かもしれません。予想を下回る中国の経済成長、投資資金
の流出の可能性、無秩序な貸出しの増加、地政学リスク、
パンデミック・リスク等、懸念材料は少なくありません。
しかし、そのようななか、私たちはより楽観的な姿勢をとって
います。例えば、中国については、財政支援により固定資産
投資の急減が回避されるほか、金融緩和が企業の活動を
支えると考えており、これらにより経済成長は安定すると予
想しています。
改革を一段と推進する施策の実施や
政府の規律が改善することにより、
アジアに明るい材料がもたらされるかもしれません。
インドとマレーシアでは、既にそうした政策が
発表されています。インドネシアの燃料補助金の
削減も、同国の金融市場を長期的に支える材料と
なるでしょう。
20
「キャリー収益は優れたリターンを期待できますが、
一部のアジア債券は、超過リターンの向上に
寄与すると考えられます」
楽観的なマクロ経済見通しに加えて、2015 年の企業の借
換えニーズに対応可能との見通しは、私たちの社債をオ
ーバーウェイトする戦略を裏づけています。社債スプレッド
の縮小から期待されるリターンは(スプレッドが過去最低
水準にあるため)限定的だと思われますが、アジア社債の
利回りは、国債や格付けが同程度の米国社債と比べても
魅力的です。この利回り格差は、特に欧州中央銀行(ECB)
と日本銀行による量的緩和策が世界的な流動性を支え続
けるため、利回りを追求する投資家の需要を満たすと考え
られます。(一部の中国不動産銘柄において見られたよう
に)センチメントを要因とした市場の下落局面は、より割安
な水準で社債を組入れるチャンスとなることがありますが、
投資家は選別的でなければなりません。上記の中国の例
では、不動産市場が更なる価格調整に見舞われる可能性
から、デフォルト・リスクが若干上昇することも考えられま
す。
アジア現地通貨建て債券のリターン要因
(%)
2014
年初来
(年)
■為替要因 ■キャピタル要因 ■インカム要因
◆トータル・リターン(米ドルベース)
出所: HSBC ALBI、Bloomberg L.P.のデータに基づきイーストスプリング・
インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。年初来は、2014 年 1 月 1
日より 2014 年 10 月 31 日まで。
米ドルについては戦術的な態度をとっています。相
対的に安定した経済ファンダメンタルズと量的緩和の
終了が間違いなく米ドルの下支えとなる一方で、金
利の上昇余地は限られると見ています。また、インド
やインドネシアのように金利水準やファンダメンタル
ズの改善が見込まれる国の通貨は投資価値が高い
と思われます。これらの通貨が下落した時や、米ドル
の買いポジションが極端に積上がった場合が、これ
ら通貨の買いシグナルとなるでしょう。
総じて、2015 年は債券投資家にとって
手腕が問われる年に。
米国の量的緩和が終了し、FRB による最初の
利上げが近づくなかで、債券の高いリターンを得
ることは難しくなるでしょう。しかし、投資家は利
上げの幅とペースが重要であることを忘れがち
です。予想さ れる 緩や かな 利上げ サ イクルで
は、キャリー収益は優れたリターンをもたらすほ
か、一部のアジア債券は、超過リターンの向上
に寄与すると考えられます。
21
2015 年以降、投資対象として
魅力が高まるグローバル株式
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
グローバル・アセット・アロケーション チーフ・インベストメント・オフィサー
ケルビン・ブラックロック
22
2014 年は
相対的に厳しい環境
ケルビン・ブラックロック
グローバル・アセット・アロケーショ
ン チーフ・インベストメント・オフィサ
ー
グローバル・マルチアセット・ファン
ドの投資戦略およびタクティカル・
アセット・アロケーション全体の責
任者。また、戦略的アセット・アロケ
ーションの助言および当社グルー
プのアジア地域における保険事業
資産の資産負債管理(ALM)にお
いて重要な役割を果たしている。
2001 年にイーストスプリング・イン
ベストメンツ(シンガポール)リミテッ
ドに入社。1989 年にスコットランド、
グラスゴーのストラスクライド大学
にて数学の学士号を優等な成績で
取得。
2014 年は株式の配分を中立としてスタートしましたが、10 月
に成長減速の恐れから下落した機会を捉えて選別的に組入
れを引上げ、若干オーバーウェイトした状態で年末を迎えます。
また、主に米国ハイイールド債を組入れている債券の配分を
削減(引続き債券のアンダーウェイトを維持しつつ、米国ハイ
イールド債についてはオーバーウェイト)してキャッシュを積増
し、株式を再度組入れる(10 月に生じたような)機会を探りま
した。
米国株式は平均を上回るリターンをあげて
年末を迎える可能性が高いものの、割高感が
あるため米国以外の株式を選好しました。
欧州、中国、日本の経済成長と企業収益が予想を下回った
ことを受けて、10 月に成長減速の懸念が広がりました。ロシ
アの政治的冒険主義は、市場センチメントの改善には寄与
しませんでした。年初から 9 ヵ月間にわたり欧州全体のオー
バーウェイト幅を徐々に引下げてきましたが、10 月に資産横
断的にボラティリティが急上昇した機会を捉えて欧州の保有
内容を変更(および保有を追加)しました。ロシア、イタリア、
オーストリアのオーバーウェイトを維持しただけでなく、価格
調整後に割安となったことから欧州「中核国」の保有を積増
しました。
予想を下回る世界経済の成長率に加えて、資源価格の下落
とインフレ期待の低下が、中核国における主要市場の国債
の利回り低下と高いリターンに寄与しました。ポートフォリオ
では、この動きを捉えず、国債(なかでも米国債)のアンダー
ウェイトを維持する選択をしました。国債の利回りが低く、株
式により魅力的な投資機会が生じていたためです。
23
24
「2015 年以降、投資対象として魅力が高まる
グローバル株式」
グローバル株式全体のリターンは、過去の標準的な水準
と比較して良好でした。ただし、前述のとおり、その大半
は米国が寄与したものです。一方、エマージング株式は
全体として小幅に下落しました(本稿の執筆時点)。
2015 年のみならず、中期的にもグローバル
株式に関して楽観的に見ている理由は、
主に 4 つあります。
第 2 に、米国経済はトレンド(約 3%)を上回るペースで成
長していると見ています。さらに、企業収益は 2015 年に 7
~8%成長すると予想しています。
インフレ率は、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標であ
る 2%を下回る水準に留まっています。そのため、米国の
金融政策は緩和寄りで維持される可能性があります。企業
収益をグローバル・ベースで見ると、欧州と中国の期待外
れの経済成長によって押下げられていますが、それでも増
加傾向にあり、2007 年のピークをわずかに下回る水準を
保っています。
第 1 に、世界株式指数の益利回り(株価収益率の逆数で
期待実質リターンの代替指標)は約 7.1%です。このリタ
ーンは、主要国の国債の平均最終利回り 1.2%を大きく
上回っています(この利回りは、インフレ率を考慮した実
質ベースではさらに下がる可能性があります)。国債が生
み出すほぼゼロの実質リターンに対して、株式は中期的
に年率 7~8%の実質リターンを生み出すと予想していま
す。
株式の益利回りは国債より魅力的
アジア新興国輸出額と世界鉱工業生産
(%)
前年比(%)
前年比(%)
(年)
(年)
(年)
世界鉱工業生産(左軸)
シティグループ世界国債インデックス、最終利回り
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス、益利回り(IBES 集計)
出所:2014 年 10 月 28 日時点。データストリームのデータに基づきイーストス
プリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。
世界鉱工業生産予測(左軸)
アジア新興国輸出額(右軸)
出所:2014 年 10 月 28 日時点。データストリームのデータに基づきイーストス
プリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作成。
25
「状況に応じて米国ハイイールド債のオーバー
ウェイト幅を引下げる」
第 3 に、欧州、日本、中国における 2014 年の経済成長率
は予想を下回る水準となっていますが、徐々に安定してい
る模様です。原油価格、金利、通貨(対米ドル)の急落によ
り金融情勢が緩和され、2015 年の経済成長と企業収益を
支えると予想されます。さらに、金利の低下と通貨の下落は、
米国以外の国々で企業収益を押上げることになります。
また、米国の力強い経済成長は、欧州とアジアの経済成長
を支えると考えられます。しかし、世界的な生産の回復と比
べてアジア地域の輸出や世界貿易が依然として弱いことに
は留意しており、今後の進展を注視しています。
第 4 に、資源価格の下落とインフレ率の低下によって、多く
の企業が原材料コストを削減でき、中央銀行は金融緩和策
を維持することができます。実際、FRB が 2014 年 10 月に
資産購入プログラムを終了した一方で、欧州中央銀行
(ECB)は民間部門の証券購入額を拡大する可能性があり
ます。日本銀行は、2014 年の消費税率引上げによる国内
経済の落込みを埋合わせるため、2015 年に資産購入額を
大幅に拡大する政策を既に発表しています。インフレ圧力
が世界的に低下し続けるならば、多くの新興国で中央銀行
(インド準備銀行、インドネシア中央銀行、中国人民銀行等)
が緩和方向に動くと予想しています。
まとめると、2015 年以降、グローバル株式の魅力が高まる
理由は次のとおりです。
株式のバリュエーションと期待リターンは国債に比べて魅
力的である。
米国の力強い経済成長が企業収益を支えると考えられる。
原油価格、金利、通貨の下落が経済成長と企業収益を支
えると考えられる。
資源価格の下落によって、中央銀行は緩和的な金融政
策を維持することができる。
以上を受けて、最適なアセット・アロケーションではグロー
バル株式を相対的に選好すべきであると考えています。し
たがって、グローバル・ポートフォリオでは、株式をややオ
ーバーウェイトして 2015 年を迎えます。特に、北アジア市
場(韓国、日本、台湾)と欧州をオーバーウェイトしています。
これらの市場では、投資開始時点のバリュエーションが低
いため、高いリターンが期待されると考えています。
一方、債券全体を若干アンダーウェイトしつつ、そのなかで
米国ハイイールド債を選好しています。2014 年と同様、米
国ハイイールド債のオーバーウェイト幅を引続き引下げま
すが、そのペースと幅は、前述の予想に関連して状況がど
う進展するかによります。
しかしながら、2015 年においてもリスク
がないわけではありません。主なリスク
は 2015 年初における米国の金融政策
の「正常化」です。
FRB の利上げについては盛んに報じられていま
すが、利上げが予想よりも早く行われる場合、特
に予想外のインフレ圧力が原因となる 場合に
は、厳しい状況となる可能性があります。そうな
れば、債券および一部の通貨、グローバル株式
のなかでこれまでのゼロ金利環境から恩恵を受
けてきた割高なセクターが打撃を被る可能性が
高いでしょう。
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<当資料に関してご留意いただきたい事項>
当資料はイーストスプリング・インベストメンツ株式会社がイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド作
成の資料を、ご参考資料として抄訳・編集したものです。情報提供のみを目的とするもので、特定の金融商品等の勧誘・
販売を目的とするものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示資料でもありません。抄訳には正確性を期し
ていますが、必ずしもその完全性を担保するものではありません。また、必ずしも原資料の趣旨をすべて反映した内容に
なっていない場合があります。
当資料には、現在の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれることがありますが、イーストスプリング・インベスト
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