"花のソコが知りたい!"トルコギキョウ編

品質カイゼン室の
花のソコが知りたい!!
トルコギキョウ またの名をリシアンサス、ユーストマって一体…??
トルコ帽に似た花形・トルコ石のような色だから、キキョウに似ているからなど諸説ありますが、実はリンドウの仲間。
トルコ共和国ともキキョウとも無関係の花です。
本来、自然環境下では夏に開花する長日植物ですが、現在、高冷地の夏秋季出荷・暖地の冬春出荷の連携に
よって周年生産が行われています。
夏のトルコを冬に作るためには??トルコギキョウの冬春生産に注目していきます。
● 夏開花と冬開花の違い –冬のトルコの作り方夏と冬の大きな違いは温度・日照条件です。そこで、冬でも夏と同じ条件になるようにトルコの生育環境を作ってい
きます。重要なのは長日・温度・高日照。この 3 つによって花芽が分化発達していきます。
生産工程 ※1 月出荷予定 ボレロホワイトの場合
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
※長日処理
(20 時間日長)
播種
育種
大苗定植
開始
←種子冷蔵→
発蕾
収穫
暖房設定
←クーラー育種→
夜温 10℃
目標昼温 30℃
15℃
25℃
【種子冷蔵・クーラー育種】
Question:1
種子と苗を冷やすのはなぜ??
A:冬の生理現象「ロゼット化」させないため
ロゼット化とは、茎が伸長せず節がつまった状態です。苗の状態のときに高温であると発生します。
丈が短いと切花としてはあまり適さないのであまり好ましくないのですが、冬の寒さをしのぐためにはロゼット化は冬
春栽培では避けては通れないことなのです。
じゃあどうしたらいいの?!
実は、種・苗(定植前)を冷やすことによってロゼット化
しない性質を持たせることが出来るのです。
種は光を遮断し、暗黒条件の中一ヶ月間 10℃で
湿潤な冷房環境に置きます。
苗は昼温 25℃夜温 15℃設定で冷房したハウス内
で定植まで育種します。
【長日処理(20 時間日長)】
Question:2
長日処理ってナニ??
A:人工的に夏の日長を擬似的に作り出す!
白熱電球を使用し、日長が 20 時間になるように設定。花芽分化と開花促進効果が期待できます(下図)
2時
4時
6 時 8 時 10 時
電照
12 時
14 時 16 時 18 時 20 時 22 時 24 時
日中明期
★
電照
20 時間
★
【温度】
Question:3
夏の花だから
ずっと高温がいいの?
A:ずっと高温でいいワケではない!
繊細な温度管理で品質アップ!!
品質向上と開花促進のために細かい温度管理がなされています。
昼温は 25℃よりも 30℃の方が成育量が優れ花芽分化が早いとされていますが、主茎頂花の発蕾以降 8 時間程度
30℃続く場合は花弁数が減少してしまうので、25℃換気を実施します。また、低温曇雨天日も昼温が上がらないの
でボリュームの低下につながります。夜温は長日処理終了後 10℃から 15℃へ設定。10℃設定では花しみ(灰色カビ
病)の好発条件となってしまうため。さらに 15℃設定の方が花持ち日数が増加する結果が出ています。
【高日照】Question:4
太陽光って強ければ
強いほどいい?
A:強い方がたくさん光合成出来る!
でも大敵もいるので腹八分目がベスト。
高日照は光合成を行い、生育に必要な糖を作り出すために必要不可欠です。
夏場に比べて冬場は日射量が約半分になってしまうので必然的に光合成で
作り出される糖も半分になってしまいます。
糖は植物体の呼吸・窒素同化(吸収した窒素からアミノ酸・タンパク質を合成する過程)でも消費されてしまいます。
冬は夏よりもブラスチングや開花遅延が生じやすくなります。
大敵その 1
ブラスチング現象
ブラスチングとは、胚珠(種子の元)が花芽分化せず、蕾が生育を停止
して枯死してしまうこと。黄変、褐変した蕾の他、上位節の蕾より小さい
場合にブラスチングと判断します。
原因は、低照度や、植物体の糖分量の低下によるもので、主に花芽分
化から雌ずいが完成するまで(蕾長 1cm 程度)の時期が要注意です。
冬春出荷では在圃期間が長くなればなるほど、暖房コストがかかり
計画生産を阻害してしまうので温度管理・長日処理・高日照の環境調整
は重要です。
大敵その 2
チップバーン現象
チップバーン現象とは葉の先端が枯れてしまうこと。直接の原因はカルシウムの欠乏でありますが、茎葉伸長期に
生育の旺盛な部位において一時的な欠乏によって発症すると考えられています。
ブラスチング現象とは逆に高照度に当てられ葉の蒸散が少ない高温状態が発症条件になります。
※ 発症程度は品種間差あり
●良いトルコの見分け方 –こんなトルコは長持ちします!!その1:葉は肉厚
その 3:花弁も肉厚
ハリがある!!
その 2:節間が等間隔
でしっかりしている
その 4:
茎の中の髄が太い
上の 2 つのトルコは生育途中でのピンチの仕方(仕立ての違い)や、定植から収穫までの期間が異なります。
このように冬場のトルコは夏場より一層手間隙かけて繊細に作られています。日持ちは品種によって異なりますが、
常温 25℃で約2週間前後鑑賞できます。
●トルコギキョウのかかりやすい病害
トルコは花弁が薄いため、病害にかかりやすく進行もとても早いです。また、トルコの場合花弁内側で受粉すること
により糖が分泌され、花粉の部分から菌(カビ)が繁殖し、病害が発生しやすくなります。
以下のものは市場でよく見られるもので特に多い病害です。
【その 1 ボトリチス】灰色カビ病 (※左:菌)
水浸状の病斑が発生。施設内の残渣や枯葉が
病気の巣になっており、越冬する。
残渣を圃場に放置しないのに加えて産地では
微生物防除剤(ボトキラー水和剤)のダクト内
投入散布・温度管理と喚起による除湿で対策。
菌の形は丸い粒子型!!
貴腐ワインにも利用♪
【その 2 アルタナリア】黒斑病
ボトリチスよりも濃いしみで外側花弁の先端に
発生しやすい。乾燥している環境で菌を飛散させ
葉の表面・茎から侵入。
土中で越冬。菌が密集することによって花しみが
黒く見える。発生した部分は直ちに摘み取る。
菌の形はマラカス型!!
アレルギーの原因に…
【その 3 フザリウム】芽腐病・萎縮病
花弁脈にそって花しみが広がっていく。土壌中の
残渣や根で越冬し、根圏部や弱い新芽から
侵入し導管を犯す。土壌・種子で伝染するので
土壌消毒・種子消毒を徹底して対策する。
菌の形はミカヅキ型!!
実は水場の赤い汚れの正体…
★トルコギキョウ第 2 弾では花持ち試験を実施し、より深い情報をお届けします。お楽しみに!!
参考文献:農研機構 花き研究所 「トルコギキョウの低コスト冬季計画生産の考え方と基本マニュアル」
農文協 宇田明・桐生進著 「花屋さんが知っておきたい 花の小事典」
http://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/network/field-h23/kaki1110.html
写真: 直鞍農協様
(圃場写真)
品質カイゼン室 病害調査写真より(病害・菌写真)