2008 年版
位相入門
距離空間の位相
酒 井 克 郎
筑波大学・数学系
Introduction to Topology
Topology of Metric Spaces
c
2008
K. Sakai
はじめに
トポロジー (位相) の概念は , 現代数学における基本的かつ重要な概念の一つであ
る. 何故なら , この概念があって初めて, 極限や連続性を論じることが出来るからであ
る. 位相構造を持った集合を位相空間と呼ぶのであるが , 数学で扱う様々な集合の上
に位相構造を導入することにより, 様々な位相空間が定義されて, 極限や連続に関連
する議論が展開されるのである. しかしながら , 位相構造は順序構造や代数構造と比
べてより抽象的で捉えにくい概念であるので , 「 位相入門」の講義では , 一般的な位
相空間を扱う「トポロジー I 」への導入として, 距離空間における点列の収束や写像
の連続性などの位相的な概念を学ぶ.
トポロジー (位相幾何学) に興味が持てるように, トピックスとして, ペアノ曲線
(平面や空間の領域を埋め尽くすような閉区間からの連続写像) の構成も内容に含めた
が , これは点列コンパクトと一様収束の概念の応用となっている. 可分距離空間がヒ
ルベルト立方体やヒルベルト空間の部分空間に同相になることや, どんな距離空間も
バナッハ空間に等長に埋め込めることなども扱っている. また , 1 章では , 微積分で学
んだ事柄の復習であるので, 飛ばしても構わないが , 微積分で学んだ事柄がここでど
の様に一般化されているのか , 随時参照してもらいたい.
このテキストは , 教科書というより学習帳として, 「 位相入門」の講義で扱う事柄
をまとめたものである. 先生の板書を学生が自分のノートに書き写すだけいう講義を
避けるために , 準備されたものである. 定義や例の後に , 定理や補題などの命題が証明
なしに掲げられている. 講義では , 新しい概念の意味を解説し , 定理や補題などの命題
の意味と証明を行う. 完成した証明を板書するのを避け , 演習で完成させるものも多
い. その他に , 本来なら命題, 定理, 系とすべき命題が演習に含まれているが , 講義の
時間の許す限り, そうした演習では , 何を示すべきなのかを説明を加える. 定理や補題
などの命題および演習の証明をつけることにより, 独自の講義録を完成させてもらう
ことを意図している. 講義での説明を聞いても納得のいかない場合には , 先輩や教師
などに相談したり, 参考書などを調べたりするなら , 最終的に自分にとって最も納得
のいく証明を付けることが出来る. この様にして, 自分独自の講義録を完成させるな
ら, 講義で扱われる事柄を確実に自分のものとすることが出来るであろう.
筑波大学の数学系の諸先生方, 特に演習を担当した先生方から , また講義を受けた
学生の皆さんからも有益なご 指摘を沢山頂いたことに , 心から感謝致します.
2008 年 3 月
酒井 克郎
記号
• ∀x — すべての x に対して, . . . [for all x];
• ∃x (such that) — (次のような) x が存在する [there exists x] ( ∃x — ∃x の否
定);
• p ⇒ q — p ならば q [p implies q (or) if p then q] (p ⇒ q — p ⇒ q の否定);
• p ⇔ q — p は q と同値である [p if and only if q] (p ⇔ q — p ⇔ q の否定);
• p = q (p ⇔ q) — p (であること ) を q (であること ) と定義する;
def
def
• ∅ — 空集合 [empty set];
• x ∈ A — x は A の元, 要素 [element] (x ∈ A — x ∈ A の否定);
• A ⊂ B — A は B の部分集合 [subset] (A ⊂ B — A ⊂ B の否定);
• A ∪ B,
• A ∩ B,
λ∈Λ
λ∈Λ
Aλ — A と B, および (Aλ )λ∈Λ の和集合 [union];
Aλ — A と B, および (Aλ )λ∈Λ の共通部分 [intersection];
• A \ B — A から B を除いた差集合 [difference];
• A × B,
λ∈Λ
Aλ — A と B, および (Aλ )λ∈Λ の (直) 積集合 [(direct) product];
• X n = X × · · · × X — n 個の X の累乗積 [n-th power];
n times
N
• X — 可算無限個の X の累乗積 [countable power];
• P(X) — X の巾集合 [power set];
• f : X → Y (x → f (x)) — 写像 [map, function];
• id (idX ) — (X の) 恒等写像 [identity (map)];
• N = 1, 2, . . . — 自然数全体の集合 [natural numbers];
• Z = 0, ±1, ±2, . . . — 整数全体の集合 [integers];
• Q — 有理数全体の集合 [rationals];
• R = (−∞, ∞) — 実数全体の集合 [reals], 数直線 [real line];
• I = [0, 1] — 単位閉区間 [unit closed interval].
目次
1
2
実数の連続性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
ノルム空間と距離空間 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
5
3
4
収束と連続
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
同相写像, 埋め込み . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
16
5
6
近傍, 開集合, 閉集合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
18
22
7
8
点列コンパクト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
26
28
9
トピックス — ペアノ曲線とカントール集合 . . . . . . . . . . . . . .
31
閉包, 内部, 境界 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
各点収束と一様収束
iii
1
実数の連続性
ここでは , 微積分で学んだ数列の収束と関数の連続に関する事柄を復習する.
定義 1.1 数列 [sequence] (xn )n∈N は , N から R への写像 n → xn である. 順序を保
つ N から N への写像 i → ni (n1 < n2 < · · · ) との合成 (xni )i∈N (i.e., i → ni → xni )
が (xn )n∈N の部分数列 [subsequence] である.
定義 1.2 つぎの条件が成立するとき, 数列 (xn )n∈N は x に収束 [converge] する, また
は x は (xn )n∈N の極限 [limit] であるといい, xn → x (n → ∞), または limn→∞ xn =
x と表す:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n n0 ⇒ |xn − x| < ε
実数 x, y ∈ Ê に対して, |x − y| は数直線 Ê 上における 2 点 x, y の距離なので ,
上の定義は , xn が x にいくらでも近くに接近して行くことを意味している.
演習 1.1 収束する数列 (xn )n∈N の極限は一意的であることを示せ.
演習 1.2 収束する数列 (xn )n∈N に対して, つぎを示せ:
∀n ∈ N, xn b ⇒ lim xn b
n→∞
また, つぎが成立しない例を上げよ:
∀n ∈ N, xn < b ⇒ limn→∞ xn < b
演習 1.3 数列 (xn )n∈N , (yn )n∈N , (zn )n∈N に対して, つぎを示せ:
∀n ∈ N, xn yn zn , lim xn = lim zn = x0 ⇒ lim yn = x0
n→∞
n→∞
n→∞
定義 1.3 つぎの条件を満たす数列 (xn )n∈N をコーシー列 [Cauchy sequence] と呼ぶ:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n, m n0 ⇒ |xn − xm | < ε
演習 1.4 数列 (log n)n∈N は , つぎの条件を満たすがコーシー列でないことを示せ:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n n0 ⇒ |xn − xn+1 | < ε
演習 1.5 収束する数列 (xn )n∈N がコーシー列となることを示せ.
演習 1.6 コーシー列 (xn )n∈N が収束する部分列を持てば , (xn )n∈N 自身も収束す
ることを示せ.
1
演習 1.7 単調増加数列 (または単調減少数列) (xn )n∈N が収束する部分列を持て
ば ,1 (xn )n∈N 自身も収束することを示せ.
定義 1.4 数列 (xn )n∈N は , 集合 {xn | n ∈ N} が有界 (上に有界, 下に有界) のとき, 有
界 [bounded] (上に有界 [upper bounded], 下に有界 [lower bounded]) であるという.
演習 1.8 コーシー列 (xn )n∈N は有界であることを示せ.
定義 1.5 つぎの条件を満たす R の空でない部分集合の組 (A, B) を R におけるデデ
キント 切断 [Dedekind cut] と呼ぶ:
(i) R = A ∪ B ;
(ii) ∀x ∈ A, ∀y ∈ B, x < y
定理 1.6 (実数の連続性) R における任意のデデキント切断 (A, B) に対して, A が
最大値を持ち B が持たないか , あるいは B が最小値を持ち A が持たないかのいずれ
かが成立する.
定理 1.7 (ワイエルシュト ラス [Weierstrass] の公理) R の空でない部分集合が上に有
界であれば上限を持つ. (下に有界であれば下限を持つ)
定理 1.8 上に有界な単調増加数列は収束する.
定理 1.9 (実数の完備性) コーシー列は収束する.
定理 1.10 (ボルツァーノ・ワイエルシュト ラス [Bolzano-Weierstrass] の定理) 有界
な数列は収束する部分列をもつ.
上の 5 つの定理は実数に関する基本定理であり, 互いに同値な命題である. すなわ
ち, そのうちの 1 つを仮定すれば他の 4 つの命題を導ける. (補足参照)
定義 1.11 関数 f : R → R がつぎの条件を満たすとき, f は x0 ∈ R で連続 [contin-
uous] であるという:
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − x0 | < δ ⇒ |f (x) − f (x0 )| < ε
大まかに言えば , 数直線 Ê 上において , x0 の近くの点は f によって f (x0 ) の近
くの点に写されるという意味である.
定理 1.12 関数 f : R → R が x0 ∈ R で連続であるためには , x0 に収束するどんな
数列も f (x0 ) に収束する数列に写すことが必要十分条件となる. すなわち,
lim xn = x0 ⇒ lim f (xn ) = f (x0 )
n→∞
1 ここでは ,
広義単調増加数列 x1
n→∞
x2
· · · を意味する.
2
証明 まず , f が x0 で連続と仮定して, limn→∞ xn = x0 とする.
∀ε > 0 に対して, 連続の定義における δ > 0 を取る.
すなわち, |x − x0 | < δ ⇒ |f(x) − f (x0 )| < ε.
この δ > 0 に対して, limn→∞ xn = x0 の定義を適用すると
∃n0 such that n n0 ⇒ |xn − x0 | < δ.
δ > 0 の取り方より, n n0 ⇒ |f(xn ) − f (x0 )| < ε.
limn→∞ f (xn ) = f (x0 ).
次に , 上の条件を満たすが , f は x0 で連続でないと仮定して, 矛盾を導く.
∃ε > 0, ∀δ > 0, ∃x ∈ Ê such that |x − x0 | < δ, |f(x) − f (x0 )| ε.
∀n ∈ Æ に対して, ∃xn ∈ Ê such that |xn − x0 | < n−1 , |f(x) − f (x0 )| ε.
このとき, limn→∞ xn = x0 だが limn→∞ f (xn ) = f (x0 ) となり矛盾.
定義 1.13 関数 f : R → R が各 x ∈ R で連続であるとき, f は 連続 [continuous] で
あるという:
∀x ∈ R, ∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − y| < δ ⇒ |f (x) − f (y)| < ε
定義 1.14 関数 f : R → R がつぎ の条件を満たすとき, f は一様連続 [uniformly
continuous] であるという:
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that |x − y| < δ ⇒ |f (x) − f (y)| < ε
注 連続の定義において , δ > 0 は x ∈ Ê と ε > 0 に依存して決まり, たとえ
ε > 0 の値が同じでも x ∈ Ê が変われば , δ > 0 の値は変わってもよいが , 一様連
続では , δ > 0 は ε > 0 だけに依存しており, x ∈ Ê が変わっても ε > 0 の値が
同じなら δ > 0 の値は変わらない. 明らかに, 一様連続であれば連続であるが , 逆
は一般には成立しない.
演習 1.9 f : R → R を f (x) = 2x と定義すると , f は連続だが一様連続にならな
いことを示せ.
定義 1.15 R の部分集合 A 上で定義された関数 f : A → R に対しても, 連続および
一様連続が同様に定義できる. すなわち, 定義における x, y, x0 などを , f の定義域 A
に限ることにより, 連続と一様連続の定義が得られる.
注 関数 f : Ê → Ê が (一様) 連続であれば , f の A ⊂ Ê への制限 f |A : A → Ê
も (一様) 連続であるが , f が不連続であっても f |A : A → Ê は (一様) 連続にな
り得る.
演習 1.10 関数 f : R → R をつぎのように定義する:
f (x) = n if n x < n + 1, n ∈ Z
(1) f は不連続であるが , f |Z は一様連続になることを示せ.
(2) f |R \ Z は連続であるが一様連続ではないことを示せ.
3
補 足
ワイエルシュトラスの公理, 実数の連続性, 上に有界な単調増加数列は収束すること, 実数の
完備性, ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理が , それぞれ互いに同値であることは , 次の
ようにして示せる.
実数の連続性
ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理
ワイエルシュトラスのの公理
⇐
⇓
実数の完備性
⇑
上に有界な単調増加列は収束する
(1) 実数の連続性 ⇒ ワイエルシュトラスの公理
ヒント 上に有界な集合 A ⊂ Ê の上界 B とその補集合 Ê \ B でデデキント切断を作り,
実数の連続性を適用せよ. max(Ê \ B) が存在しなければ , min B = sup A が存在する.
(2) ワイエルシュトラスの公理 ⇒ 実数の連続性
ヒント デデキントの切断 (A, B) の A に対して , ワイエルシュトラスの公理を適用せ
よ. sup A が max A または min B.
(3) ワイエルシュトラスの公理 ⇒ 上に有界な単調増加数列は収束する
ヒント supn∈xn = limn→∞ xn を示せ. supn∈xn の存在に , ワイエルシュ
トラスの公理が必要となる.
注 下に有界な単調減少数列 (xn )n∈ も収束し , inf n∈xn = limn→∞ xn .
(4) 上に有界な単調増加数列は収束する ⇒ 実数の完備性
ヒント コーシー列 (xn )n∈ に対して, yn = inf i n xi とすれば , (yn )n∈ は
有界な単調増加列. limn→∞ yn = limn→∞ xn となることを示せ.
注 上 2 つの証明により, コーシー列 (xn )n∈ に対して, supn∈inf i
limn→∞ xn が成立. 同様に , inf n∈supi n xi = limn→∞ xn も成立.
n
xi =
(5) 実数の完備性 ⇒ ワイエルシュトラスの公理
ヒント 上に有界な空でない部分集合 A ⊂ Ê の上界を B ⊂ Ê とするとき, 帰
納的に xn ∈ A, yn ∈ B (n ∈ Æ) を以下のようにして取る: 12 (xn + yn ) ∈ B
または ∈ B に応じて,
xn+1 = xn ,
yn+1 = 12 (xn + yn ),
または
xn+1 > 12 (xn + yn ),
yn+1 = yn .
(yn )n∈ はコーシー列となり, limn→∞ yn = sup A が示せる. ((xn )n∈ を用
いてもよい.)
(6) 実数の完備性 ⇒ ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理
ヒント 有界な数列 (xn )n∈ は , コーシー列となる部分列を持つことを示せ.
(7) ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理 ⇒ 実数の完備性
ヒント 演習 1.8, 1.6 を適用.
注 演習 1.7 を用いれば , “ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理 ⇒ 上に有
界な単調増加数列は収束する” も容易に示せる.
4
2
ノルム空間と距離空間
定義 2.1 線形空間 E において, つぎの条件を満たすように, 各 x ∈ E に対して, 実数
値 x 0 が定義されているとき, x を x のノルム [norm], 関数 · : E → [0, ∞)
を E 上のノルム [norm] と呼び , E = (E, · ) をノルム空間 [normed space] と呼ぶ:
(N-1) x = 0 ⇔ x = 0
(N-2) tx = |t|x
(N-3) x + y x + y
(三角不等式 [triangle inequation])
ノルムはベクトルの大きさを表し , 実数や複素数の絶対値の拡張である. 同一の線
形空間上に , 様々なノルムが定義でき, 異なるノルムが与えられるとノルム空間と
しては別のものになる.
例 2.2 (1) R = (R, | · |) はノルム空間である.
(2) ユークリッド 空間 Rn において, 各点 x = (x1 , . . . , xn ) ∈ Rn のノルムはつぎ の
ように定義される:
x = x21 + · · · + x2n 0
このノルムをユークリッド ・ノルム [Euclidean norm] と呼ぶ.
三角不等式の証明 上の定義より, 三角不等式 (N-3) は下の不等式となる:
n
n
n
(xi + yi )2 x2i + yi2
i=1
i=1
両辺を二乗して, 次の不等式を得る:
n
(xi + yi )2
i=1
2
左辺の各項は (xi + yi ) =
n
x2i +
i=1
x2i
+
n
i=1
n
n
yi2 + 2
x2i yi2
i=1
yi2
i=1
i=1
+ 2xi yi なので , 次を示せばよい:
n
n
n
x i yi x2i yi2
i=1
i=1
i=1
この両辺を二乗して得られる次の不等式を示せばよい:
n
i=1
2 n
n
2
2
x i yi
xi
yi
i=1
i=1
この不等式は , コーシー・シュワルツの不等式 [Cauchy-Schwarz inequality]
m
2
と呼ばれる. この不等式の証明には ,
i=1 (xi t + yi ) を展開して得られる t
に関する次の 2 次式を考える:
m
x2i
i=1
2
t +2
m
i=1
5
x i yi
t+
m
2
yi
i=1
これは負の値を取らないので , この判別式は正にはならない. すなわち,
m
x i yi
2 m
m
2
2
−
i=1
xi
i=1
yi
i=1
0
(3) 実数列全体は可算無限積 RN として表せるが , 各項ごとに和とスカラー倍を定義
することにより, 線形空間となる. 次のようにノルムが定義される RN の線形部
分空間がある.
2 =
x = (xi )i∈N
def
∞
∞
N 2
∈R xi < ∞ , x = x2i ;
i=1
i=1
∞
∞
N 1 = x = (xi )i∈N ∈ R |xi | < ∞ , x =
|xi | ;
def
i=1
i=1
N ∞ = x = (xi )i∈N ∈ R sup |xi | < ∞ , x = sup |xi |.
def
i∈N
i∈N
2 はヒルベルト 空間 [Hilbert space] と呼ばれる. 1 2 ∞ RN に注意. 実
際, (1, 12 , 13 , . . . ) ∈ 2 \ 1 , (1, 1, 1, . . . ) ∈ ∞ \ 2 , (1, 2, 3, . . . ) ∈ RN \ ∞ .
2 のノルムの三角不等式の証明
∞
(xi + yi )2 =
n
lim (xi + yi )2
n→∞
i=1
n
lim x2i + lim
i=1
n→∞
n→∞
i=1
n
∞
∞
yi2 = x2i + yi2
i=1
i=1
i=1
注 次の無限級数に関するコーシー・シュワルツの不等式も, 同様に有限和の
極限として得られる:
∞
i=1
2 ∞
∞
2
2
x i yi
xi
yi
i=1
i=1
演習 2.1 以下のものも Rn 上のノルムとなることを示せ:
x1 = |x1 | + · · · + |xn | ;
x∞ = max{|x1 |, . . . , |xn |}
演習 2.2 単位区間 I = [0, 1] 上の実数値連続関数全体のなす集合 C(I) は , 自然
に定義される演算で線形空間となるが , 以下のものが C(I) 上のノルムとなることを
示せ:
|f (t)|dt ;
f 1 =
f 2 =
f (t)2 dt ;
t∈I
t∈I
6
f ∞ = sup |f (t)|
t∈I
定義 2.3 集合 X において , つぎの条件を満たす関数 d : X × X → [0, ∞) を X 上の
距離 (関数) [metric] と呼ぶ:
(M-1) d(x, y) = 0 ⇔ x = y
(M-2) d(x, y) = d(y, x)
(M-3) d(x, y) + d(y, z) d(x, z)
(三角不等式 [triangle inequation])
このとき, X = (X, d) を距離空間 [metric space] と呼び , d(x, y) を 2 点 x, y 間の距
離 [distance] という.
距離が与えられている (定義されている) 集合が距離空間である. この場合, その
元 (要素) は点と呼ぶ. 同一の集合上に , 様々な距離が定義でき, 異なる距離が与え
られると距離空間としては別のものになる.
例 2.4 ノルム空間 E = (E, · ) において, d(x, y) = x − y が E 上の距離になり,
これをノルム · より導入される距離 [induced metric] と呼ぶ. 断りのない限り, ノル
ム空間 E = (E, ·) は , この距離で距離空間とみなす. 数直線 R は d(x, y) = |x − y|
を距離とする距離空間であり, ユークリッド 空間 Rn は次の距離が与えられた距離空
間である:
d(x, y) = x − y =
(x1 − y1 )2 + · · · + (xn − yn )2
ここで, x = (x1 , . . . , xn ), y = (y1 , . . . , yn ) ∈ Rn . この距離を ユークリッド の距離
[Euclidean metric] と呼ぶ.
例 2.5 単位区間 I = [0, 1] の可算無限積 IN は次のように定義される距離を持つ:
d(x, y) = sup n−1 |xn − yn |.
n∈N
ここで , x = (xn )n∈N , y = (yn )n∈N ∈ IN . 距離空間 IN = (IN , d) をヒルベルト 立方体
[Hilbert cube] と呼ぶ.
演習 2.3 集合 X の 2 点 x, y に対して, つぎ のように定義される d0 (x, y) が X
上の距離になることを示せ:
⎧
⎨0 if
d0 (x, y) =
def ⎩1 if
x = y,
x = y,
定義 2.6 上の演習で定義された距離 d0 を X 上の離散距離 [discrete metric] と呼び ,
X = (X, d0 ) を離散距離空間 [discrete metric space] と呼ぶ.
7
命題 2.7 有限個の距離空間 X1 = (X1 , d1 ), . . . , Xm = (Xm , dm ) の直積集合 X =
X1 × · · · × Xm の 2 点 x = (x1 , · · · , xm ), y = (y1 , · · · , ym ) ∈ X に対して, 以下のよ
うに定義される d(x, y) は X 上の距離である:
d(x, y) =
def
d1 (x1 , y1 )2 + · · · + dn (xm , ym )2
三角不等式の証明 上の定義より三角不等式 (M-3) は次の不等式となる:
m
m
di (xi , yi )2 + di (yi , zi )2
i=1
i=1
左辺を二乗すると
m
m
di (xi , zi )2
m
2
di (xi , yi ) +
i=1
di (yi , zi )
2
i=1
m
m
2
+2
di (xi , yi ) di (yi , zi )2
i=1
i=1
i=1
各 di に関する三角不等式を二乗すると, 次の不等式を得る:
di (xi , yi )2 + di (yi , zi )2 + 2di (xi , yi )di (yi , zi )
di (xi , zi )2
よって, 次の不等式を示せばよい:
m
m
m
di (xi , yi )2 di (yi , zi )2 di (xi , yi )di (yi , zi )
i=1
i=1
i=1
この両辺を二乗して得られる次の不等式を示せばよい:
m
di (xi , yi )2
i=1
m
di (yi , zi )2
i=1
m
2
di (xi , yi )di (yi , zi )
i=1
この不等式は , di (xi , yi ) = ai , di (yi , zi ) = bi とおけば , コーシー・シュワルツの
不等式となる. (例 2.2(2) 三角不等式の証明参照)
定義 2.8 上の命題で定義された距離 d を X = X1 × · · · × Xm 上の直積距離 [product
metric] と呼び , X = (X, d) を直積 (距離) 空間 [product (metric) space] と呼ぶ.
注 ユークリッド 空間
Ên は , n 個の数直線 Ê の直積空間である.
演習 2.4 命題 2.7 において , 以下の ρ1 , ρ∞ も直積集合 X = X1 × · · · × Xm 上の
距離になることを示せ:
ρ1 (x, y) = d1 (x1 , y1 ) + · · · + dn (xm , ym ) ;
def
ρ∞ (x, y) = max{d1 (x1 , y1 ), · · · , dn (xm , ym )}
def
注 上の演習における距離も直積距離と呼ぶ場合もある. — 演習 3.12 参照.
8
定義 2.9 距離空間 X = (X, d) において, 点 x ∈ X の ε-近傍 [ε-neighborhood]
BX (x, ε) をつぎのように定義する (しばしば X を省略して, B(x, ε) と書く):
BX (x, ε) = y ∈ X d(x, y) < ε .
def
演習 2.5 座標平面 R2 = R × R において , ユークリッド の距離 d (例 2.4), 演習 2.1
のノルム x1 と x∞ によって定義された距離 d1 , d∞ を考え , それぞれに関して,
原点 0 = (0, 0) ∈ R2 の ε-近傍を図示せよ.
演習 2.6 離散距離空間 X において, x ∈ X の ε-近傍 B(x, ε) はどんな集合にな
るか ? (ε > 0 の大きさによって, 場合を分けよ)
定義 2.10 集合 X 上の距離 d を部分集合 A ⊂ X 上に制限すれば , A 上の距離
dA = d|A × A が 得られ るが , A = (A, dA ) を X = (X, d) の部分 (距離) 空間
[subspace] と呼ぶ. 混乱の恐れのない場合には , dA を同じ記号 d で表す.
演習 2.7 ユークリッド 平面 R2 の部分空間
A = {(x, y) ∈ R2 | (xy)2 1} ⊂ R2
において , 点 a = (1, 1) ∈ A の ε-近傍を, ε > 0 の値を変えて図示せよ.
定義 2.11 距離空間 X = (X, d) において , 空でない部分集合 A ⊂ X の直径 [diam-
eter] をつぎのように定義する:
diam A = sup d(x, y) x, y ∈ A
def
diam A < ∞ のとき, A は有界 [bounded] であるという. 全空間 X が有界 (i.e.,
diam X < ∞) となる距離 d を有界 [bounded] な距離と呼ぶ. さらに , X の空でない
部分集合 A, B の間の距離 [distance] をつぎのように定義する:
d(A, B) = inf d(x, y) x ∈ A, y ∈ B
def
A = {x} のとき, d({x}, B) は d(x, B) と書く. すなわち, d(x, B) = inf y∈B d(x, y).
演習 2.8 距離空間 X = (X, d) の空でない部分集合に関して, つぎを示せ.
(1) A ⊂ B ⇒ diam A diam B.
(2) A ⊂ A , B ⊂ B ⇒ d(A, B) d(A , B ).
(3) |d(x, A) − d(y, A)| d(x, y).
(4) diam A ∪ B d(A, B) + diam A + diam B.
9
定義 2.12 距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への距離を変えない写
像 f : X → Y (i.e., dY (f (x), f (y)) = dX (x, y)) を等長写像 [isometry] あるいは等長
埋め込み [isometrically embedding] と呼ぶ.
演習 2.9 等長写像が単射になることを示せ.
定義 2.13 距離空間 X = (X, dX ) と距離空間 Y = (Y, dY ) は , 全単射となる等長写
像 f : X → Y が存在するとき, 等長 [isometric] であるといい, X ≡ Y と表す. 上の
演習より, 全射となる等長写像は全単射であることに注意せよ.
距離空間 X と Y は , 等長であるとき, 距離空間として全く同じ 性質を持ってい
る. 等長写像 f : X → Y が存在するとき, X と Y の部分空間 f (X) は等長なの
で , 両者は f によって同一視でき, X は Y に等長に埋め込まれる [isometrically
embedded] という. そのような意味で , 等長写像を等長 埋め込み とも呼ぶので
ある.
距離空間 X, Y , Z に対して, つぎが成立する:
X ≡X ;
X ≡Y ⇒Y ≡X ;
X ≡ Y, Y ≡ Z ⇒ X ≡ Z
例 2.14 距離空間 X = (X, dX ), Y = (Y, dY ) の直積距離空間 (X × Y, d) において,
任意の y ∈ Y に対し , 写像 iy : X → X × Y を iy (x) = (x, y) と定義すれば , iy は等
長写像になる. また, 直積距離 d を演習 2.4 における距離 ρ1 , ρ∞ で置き換えても iy
は等長写像である.
10
3
収束と連続
定義 3.1 距離空間 X = (X, d) における点列 [sequence] (xn )n∈N とは , N から X へ
の写像 n → xn である. 順序を保つ N から N への写像 i → ni (n1 < n2 < · · · ) との
合成 (xni )i∈N を点列 (xn )n∈N の部分点列 [subsequence] と呼ぶ.
定義 3.2 距離空間 X = (X, d) において , つぎの条件が成立するとき, 点列 (xn )n∈N
が点 x ∈ X に収束 [converge] するといい, xn → x (n → ∞) または limn→∞ xn = x
と表す:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n n0 ⇒ d(xn , x) < ε
i.e., n n0 ⇒ xn ∈ B(x, ε) .
演習 3.1 収束する点列の収束先は一意的に決まること , すなわち, 点 x ∈ X に収
束する点列 (xn )n∈N は x 以外の点には収束しないことを示せ.
定義 3.3 直積集合 X = X1 × · · · × Xm から各成分 Xi への射影 [projection] を
pri : X → Xi と表す. すなわち, pri (x1 , . . . , xm ) = xi . また可算無限個の X の累乗
積 X N に関しても, 同様に射影 prk : X N → X, k ∈ N, を prk ((xi )i∈N ) = xk と定義
する.
演習 3.2 距離空間 X1 = (X1 , d1 ), . . . , Xm = (Xm , dm ) の直積距離空間 X =
X1 × · · · × Xm において , 点列 (xn )n∈N が x に収束するための必要十分条件は , 各成
分 Xi における点列 (pri (xn ))n∈N が pri (x) に収束することであることを証明せよ.
演習 3.3 ヒルベルト立方体 IN において, 点列 (xn )n∈N が x に収束するための必
要十分条件は , 各 i ∈ N に対し , I における数列 (pri (xn ))n∈N が pri (x) に収束するこ
とであることを証明せよ.
定義 3.4 距離空間 X = (X, d) において , つぎ の条件を満たす点列 (xn )n∈N をコー
シー点列 [Cauchy sequence] と呼ぶ:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n, m n0 ⇒ d(xn , xm ) < ε
演習 3.4 距離空間 X = (X, d) における収束点列 (xn )n∈N はコーシー点列である
ことを示せ.
演習 3.5 距離空間 X1 = (X1 , d1 ), . . . , Xm = (Xm , dm ) の直積距離空間 X =
X1 × · · · × Xm における点列 (xn )n∈N がコーシー点列であるための必要十分条件は ,
各成分 Xi における点列 (pri (xn ))n∈N がコーシー点列であることを証明せよ.
11
定義 3.5 距離空間 X = (X, d) において , どんなコーシー点列もある点に収束すると
き, X (または d) は完備 [complete] であるという.
例 3.6 定理 1.9 によれば , R は完備である.
演習 3.6 離散距離空間が完備となることを示せ.
命題 3.7 完備距離空間 X1 , . . . , Xm の直積距離空間 X = X1 × · · · × Xm は完備で
ある. 特に , ユークリッド 空間 Rn は完備である.
証明概略 演習 3.5 と演習 3.2 を組み合わせる.
定義 3.8 完備ノルム空間を バナッハ空間 [Banach space] とよぶ.
例 3.9 (1) ユークリッド 空間 Rn = (Rn , · ) はバナッハ空間である (例 2.2(2)).
(2) 1 , 2 , ∞ はバナッハ空間である (例 2.2(3)).
2 の完備性の証明 2 のコーシー点列 (xn )n∈ が収束することを示す.
∀i ∈ Æ に対し , (pri (xn ))n∈ がコーシーなので , Ê の完備性より,
∃yi = limn→∞ pri (xn ) ∈ Ê
このとき, y = (yi )i∈ ∈ 2 であることと (xn )n∈ が y に収束することを示す.
∞
まず , y ∈ 2 であること, すなわち,
i=1
(xn )n∈ がコーシーより有界
∃r > 0, ∀n ∈ Æ, xn < r
∞
2
i=1 yi
k
= ∞ と仮定すると
∃k ∈ Æ such that
i=1
yi2 < ∞ を示す.
このとき, xn 2 < r 2
yi2 > r 2 + 1
各 i = 1, . . . , k に対して, yi2 = limn→∞ pri (xn )2 より,
∃ni ∈ Æ such that n ni ⇒ |pri (xn )2 − yi2 | < 1/k
m = max{n1 , . . . , nk } とおくと
xm 2
k
k
pri (xm )2
i=1
i=1
> r2 + 1 − 1 = r2
yi2 −
k
|yi2 − pri (xm )2 |
i=1
— 矛盾!
次に (xn )n∈ が y に収束することを示す.
∀ε > 0 に対して, (xn )n∈ がコーシーなので ,
∃n0 ∈ Æ such that m, n n0 ⇒ xn − xm < ε/2
このとき, ∀k ∈ Æ, ∀m, n
k
i=1
n0 に対して,
(pri (xn ) − pri (xm ))2
∞
(pri (xn ) − pri (xm ))2 < ε2 /4
i=1
各 i = 1, . . . , k に対して, yi = limn→∞ pri (xn ) より,
√
∃ni ∈ Æ such that n ni ⇒ |pri (xn ) − yi | < ε/2 k
12
m = max{n1 , . . . , nk } とおくと
k
(pri (xn ) − yi )2
i=1
k
(pri (xn ) − pri (xm ))2 +
k
i=1
(pri (xm ) − yi )2
i=1
< ε2 /4 + ε2 /4 = ε2 /2
したがって, 次を得る:
∞
(pri (xn ) − yi )2 = sup
k∈
i=1
すなわち, ∀n
n0 , xn − y
k
i=1
(pri (xn ) − yi )2
ε2/2 < ε2
ε
演習 3.7 1 と ∞ の完備性を示せ.
定義 3.10 集合 X 上の 2 つの距離 d と ρ がつぎの 2 条件を満たすとき, 互いに同
値 [equivalent] であるという:
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that d(x, y) < δ ⇒ ρ(x, y) < ε;
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that ρ(x, y) < δ ⇒ d(x, y) < ε
演習 3.8 集合 X 上の距離 d に対して , つぎのように定義される d∗ と d˜ が d と
同値な距離となることを示せ:
d∗ (x, y) = min{1, d(x, y)} ;
def
˜ y) =
d(x,
def
d(x, y)
1 + d(x, y)
演習 3.9 線形空間 X 上の 2 つのノルム · , · によって導入された距離 d と
d が互いに同値になるためには , つぎの 2 条件を満たすことが必要十分であることを
示せ.
∃δ > 0 such that x < δ ⇒ x < 1;
∃δ > 0 such that x < δ ⇒ x < 1.
演習 3.10 (1) 演習 2.1 における Rn の 2 つのノルム x1 , x∞ により導入さ
れる距離は , ユークリッド 距離と同値になることを示せ. よって, Rn はこれらの
ノルムに関してもバナッハ空間となる.
(2) 例 2.2(3) において, 1 ⊂ 2 ⊂ ∞ であるので , 2 および ∞ のノルムを 1 上に
制限することにより, 1 上に 3 つのノルムを考えることができるが , これら 3 つ
のノルムの導入する 1 上の距離は , 互いに同値にはならないことを示せ.
ヒント 演習 3.9 の否定を示せ. なお, “x < δ ⇒ x < 1” の否定は, “∃x
such that x < δ , x 1” となる.
13
(3) 例 2.5 で定義したヒルベルト立方体 IN の距離 d が以下の 2 つの距離 ρ1 , ρ2 に
同値であることを示せ:
ρ1 (x, y) =
def
∞
2−n |xn − yn | ;
∞
ρ2 (x, y) = n−2 (xn − yn )2 .
n=1
def
n=1
(4) 以下の距離 ρ∞ はヒルベルト立方体 IN の距離 d に同値にはならないことを示せ:
ρ∞ (x, y) = sup |xn − yn |.
def n∈N
ヒント 定義 3.10 の否定を示せ.
演習 3.11 集合 X 上の完備距離 d と同値な距離 ρ が完備になることを示せ.
演習 3.12 演習 2.4 の距離 ρ1 , ρ∞ は命題 2.7 の直積距離 d に同値になることを
示せ.
定義 3.11 距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への写像 f : X → Y
がつぎの条件を満たすとき, 点 x ∈ X で連続 [continuous] であるという:
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX (x, y) < δ ⇒ dY (f (x), f (y)) < ε
i.e., f (BX (x, δ)) ⊂ BY (f (x), ε)
各点 x ∈ X で連続であるとき, f は連続 [continuous] であるという. すなわち,
∀x ∈ X, ∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX (x, y) < δ ⇒ dY (f (x), f (y)) < ε
注 上の定義において , δ > 0 は x ∈ X と ε > 0 に依存する.
定義 3.12 距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への写像 f : X → Y
がつぎの条件を満たすとき, 一様連続 [uniformly continuous] であるという:
∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX (x, y) < δ ⇒ dY (f (x), f (y)) < ε
注 δ > 0 は ε > 0 だけに依存して決まり, x ∈ X の取り方には依存しない.
注 集合 X 上の距離 d と ρ が同値であるというのは, idX : (X, d) → (X, ρ) お
よび idX : (X, ρ) → (X, d) が一様連続であることを意味する.
定理 3.13 距離空間 X = (X, dX ), Y = (Y, dY ), Z = (Z, dZ ) に対して , 連続写像
f : X → Y と g : Y → Z の合成 gf : X → Z は連続である. さらに , f , g が一様連
続ならば gf も一様連続である.
14
定理 3.14 距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への写像 f : X → Y
が点 x ∈ X で連続であるためには , つぎの条件が必要十分である:
∀xn ∈ X (n ∈ N), lim xn = x ⇒ lim f (xn ) = f (x).
n→∞
n→∞
演習 3.13 定理 1.12 の証明に倣って, 上の定理を証明せよ.
定理 3.15 距離空間の間の (一様) 連続写像 f : X → Y は , X と Y の距離を同値な
距離で置き換えても (一様) 連続である.
定理 3.16 距離空間 X1 = (X1 , d1 ), . . . , Xm = (Xm , dm ) の直積空間 X = (X, d)
(i.e., X = X1 × · · · × Xm ) に対して, つぎが成立する:
(1) X から各成分 Xi への射影 pri : X → Xi は一様連続である.
(2) X への写像 f : Y → X が連続であるための必要十分条件は , 各 Xi への写像
fi = pri f : Y → Xi が連続となることである.
演習 3.14 距離空間 X からヒルベルト立方体 IN への写像 f : X → IN が連続と
なるためには , 各 fi = pri f : Y → I が連続となることが必要十分条件であることを
示せ. ただし , pri : IN → I は第 i 座標への射影である.
演習 3.15 距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への一様連続写像
f : X → Y は X のコーシー点列を Y のコーシー点列に写すことを示せ.
演習 3.16 完備距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への一様連続な
全射 f : X → Y が存在すれば , Y は完備となるか ? 証明または反例を与えよ.
15
4
同相写像, 埋め込み
定義 4.1 距離空間 X から距離空間 Y への全単射 f : X → Y が連続で, その逆写像
f −1 : Y → X も連続になるとき, f を同相写像 [homeomorphism] と呼ぶ. また, 同
相写像 f : X → Y が存在するとき, X と Y は互いに同相 [homeomorphic] であると
いい, X ≈ Y と表す.
命題 4.2 同相写像の逆写像も同相写像であり, 2 つの同相写像の合成写像も同相写像
である.
これより, 距離空間 X, Y , Z に対して, つぎが成立する.
X≈X ;
X ≈Y ⇒Y ≈X ;
X ≈ Y, Y ≈ Z ⇒ X ≈ Z
定義 4.3 集合 X 上の 2 つの距離 d と ρ に関して, 恒等写像 idX : (X, d) → (X, ρ)
が同相写像となるとき, d と ρ は X に同じ位相 [topology] (または , 同じ位相構造
[topological structure]) を導入するという. これは , つぎの条件と同値である:
∀x, ∀xn ∈ X (n ∈ N), lim d(xn , x) = 0 ⇔ lim ρ(xn , x) = 0
n→∞
n→∞
注 ここでは, 位相 (構造) が何であるかを定義していないが , “点列の収束や写像
の連続を扱うことの出来る構造” と理解しておいてもらいたい. 次の章で , 位相
(構造) が何であるかを定義する. 点列の収束や写像の連続を扱う場合, 同じ 位相
を導入する距離であれば , どの距離を用いてもかまわない.
命題 4.4 互いに同値な 2 つの距離は X に同じ位相を導入する.
定義 4.5 距離空間 X がある性質をもつならば , それと同相な距離空間 Y もその同
じ性質をもつとき, その性質を位相不変的な性質 (位相不変量) [topological invariant]
と呼ぶ.
位相不変的な性質 (位相不変量) は, 距離に依存しない性質であり, これによって,
2 つの距離空間が同相であるか否かを判定できる. 同相であることを示すのには ,
同相写像を作ればよいが , 同相でないことを示すのには , ある位相不変量を共有し
ないことを示せばよい. トポロジー (位相幾何学) という学問は位相不変的な性質
を調べる学問といえる.
例 4.6 完備であるという性質は位相不変的な性質ではない. 実際, 普通の距離で数直
線 R は完備であるが , 開区間 (−1, 1) は完備ではない. しかし , R と (−1, 1) は同相
である.
演習 4.1 2 つの離散距離空間が同相であるためには, それぞれの濃度が等しいこと
が必要十分であることを示せ.
16
定義 4.7 距離空間 X から Y への全単射 f : X → Y が一様連続で , その逆写像
f −1 : Y → X も一様連続になるとき, f を一様同相写像 [uniform homeomorphism]
と呼ぶ . また , 一様同相写像 f : X → Y が存在するとき, X と Y は互いに一様同相
[uniformly homeomorphic] であるといい, X ∼
= Y と表す.
例 4.8 全射である等長写像は一様同相写像であり, 一様同相写像は同相写像である.
また,
X≡Y ⇒ X∼
=Y ⇒ X≈Y
であるが , 逆は成立しない. 例えば , R ≈ (−1, 1) だが R ∼
(0, 1) である.
=
命題 4.9 一様同相写像の逆写像も一様同相写像であり, 2 つの一様同相写像の合成写
像も一様同相写像である.
これより, 距離空間 X, Y , Z に対して, つぎが成立する.
X∼
=X ;
X∼
=Y ⇒Y ∼
=X ;
X∼
= Y, Y ∼
=Z⇒X ∼
=Z
演習 4.2 距離空間 X と距離空間 Y が一様同相であるとき, X が完備ならば Y も
完備になることを示せ.
定義 4.10 距離空間 X から距離空間 Y への写像 f : X → Y が X から Y の部分空
間 f (X) への写像 f : X → f (X) とみて , 同相写像となっているとき, f を (位相的)
埋め込み [(topological) embedding] と呼ぶ. また, f : X → f (X) が一様同相写像と
なっているとき, f を一様埋め込み [uniform embedding] と呼ぶ. 位相的 (一様) 埋め
込み f : X → Y が存在するとき, X は Y に f によって位相的に (一様に) 埋め込ま
れるという.
演習 4.3 2 つの (一様) 埋め込み f : X → Y と g : Y → Z の合成 gf : X → Z は
(一様) 埋め込みであることを示せ.
演習 4.4 ヒルベルト立方体 IN がヒルベルト空間 2 の部分距離空間である可算無
限積 n∈N [−1/n, 1/n] と同相であることを示せ.
ヒント h : I → 2 を h((xn )n∈) = ((2xn − 1)/n)n∈ と定義して, h : I →
h(I) = i∈[−1/n, 1/n] が同相であることを示せ. h−1 の連続性の証明には演
習 3.14 が適用できる.
17
5
近傍, 開集合, 閉集合
定義 5.1 距離空間 X において , 点 x ∈ X のある ε-近傍を含む集合 U ⊂ X を点 x
の近傍 [neighborhood] とよぶ. すなわち
U ⊂ X が点 x ∈ X の近傍 ⇔ ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ U
def
点 x ∈ X の近傍全体を X における x の近傍系 [neighborhood system] と呼び ,
NbdX (x) と表す.
例 5.2 離散距離空間 X においては , 各点 x ∈ X に対して, {x} は x の近傍となる.
定理 5.3 距離空間 X における点 x ∈ X の近傍に関して, つぎが成立する:
(1) ∀x ∈ X, X ∈ NbdX (x) ; ∀U ∈ NbdX (x), x ∈ U
(全空間 X はすべての点の近傍; x の近傍は x を含む)
(2) U ∈ NbdX (x), U ⊂ V ⇒ V ∈ NbdX (x)
(x の近傍を含む X の部分集合は x の近傍)
(3) U, V ∈ NbdX (x) ⇒ U ∩ V ∈ NbdX (x)
(x の 2 つの近傍の共通部分は x の近傍)
(4) ∀U ∈ NbdX (x), ∃O ∈ NbdX (x) such that O ⊂ U , ∀y ∈ O, O ∈ NbdX (y)
(x の近傍は x の近傍でそれ自身が含む各点の近傍となっているものを含む)
(5) x = y ∈ X ⇒ ∃U ∈ NbdX (x), ∃V ∈ NbdX (y) such that U ∩ V = ∅
(X の異なる 2 点は互いに交わらない近傍を持つ)
証明概略 (1) と (2) は定義から明らか .
(3) は , B(x, ε1 ) ⊂ U , B(x, ε2 ) ⊂ V ととして, ε = min{ε1 , ε2 } > 0 を考えよ.
(4) では , B(x, ε) ⊂ U として, O = B(x, ε) を考えよ.
(5) は , ε = d(x, y)/2 > 0 として, U = B(x, ε) と V = B(y, ε) とすればよい.
注 条件 (5) をハウスド ルフの分離公理 [Hausdorff separation axiom] と呼ぶ.
演習 5.1 つぎの条件が , 距離空間 X の点列 (xn )n∈N が点 x ∈ X に収束するため
の必要十分条件であることを示せ:
∀U ∈ NbdX (x), ∃n0 ∈ N such that n n0 ⇒ xn ∈ U
演習 5.2 距離空間 X から距離空間 Y への写像 f : X → Y が点 x ∈ X で連続で
あるためには , つぎの条件が必要十分であることを示せ:
∀V ∈ NbdY (f (x)), ∃U ∈ NbdX (x) such that f (U ) ⊂ V
これはつぎと同値である:
∀V ∈ NbdY (f (x)), f −1 (V ) ∈ NbdX (x)
18
この演習から , つぎの 2 つの定理が導かれる.
定理 5.4 距離空間 X から Y への全単射 f : X → Y が同相写像となるためには, つ
ぎの条件が必要十分であることを示せ:
∀x ∈ X, U ∈ NbdX (x) ⇔ f (U ) ∈ NbdY (f (x))
定理 5.5 同じ集合 X 上に 2 つの距離 d1 , d2 が与えられているとき, それぞれによっ
て定義される距離空間を X1 = (X, d1 ), X2 = (X, d2 ) と表せば , d1 と d2 が同じ位相
を導入するためには , 各点 x ∈ X に対して, NbdX1 (x) = NbdX2 (x) となることが必
要十分である.
注 この定理は , 距離空間 X の位相構造が近傍系の族 (NbdX (x))x∈X によって
決まることを示している. さらに , 各点の近傍が何であるかが分かれば , その前の
2 つの演習により, 点列の収束や写像の連続が定義できることが分かる.
定義 5.6 距離空間 X の部分集合 O ⊂ X は , それに属する任意の点 x ∈ O の近傍に
なっているとき, X の開集合 [open set] 集合と呼ばれる. すなわち,
O が X の開集合 ⇔ ∀x ∈ O, O ∈ NbdX (x)
def
⇔ ∀x ∈ O, ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ O
X の開集合全体を X の開集合系 [system of open sets] と呼び , TX と表す.
例 5.7 (1) 数直線 R において , 開区間は開集合である.
(2) 離散距離空間 X においては , どんな部分集合も開集合となる. すなわち, X の巾
集合 P(X) が X の開集合系となる.
定義 5.8 開集合となる x ∈ X の近傍を x の開近傍 [open neighborhood] と呼ぶ . 点
x ∈ X の開近傍とは x を含む開集合に他ならない. (定義 5.6 を参照)
注 定理 5.3(4) は , “x のどんな近傍も x の開近傍を含む” と言い表せる. その
証明において, つぎの命題を示した. (証明概略を参照)
命題 5.9 点 x ∈ X の ε-近傍は x の開近傍である.
定理 5.10 距離空間 X において, U ⊂ X が点 x ∈ X の近傍となるための必要十分
条件は , x ∈ O ⊂ U となる X の開集合が存在することである.
注 開集合は近傍を用いて定義したが , どんな集合が開集合であるかが分かれば ,
この定理により, 開集合を用いて各点の近傍を定義できる. したがって, 点列の収
束や写像の連続も定義できることが分かる.
19
演習 5.3 距離空間 X から距離空間 Y への写像 f : X → Y が連続であるために
は, つぎの条件が必要十分であることを示せ:
V が Y の開集合 ⇒ f −1 (V ) が X の開集合
この演習から , つぎの 2 つの定理が導かれる.
定理 5.11 距離空間 X から距離空間 Y への全単射 f : X → Y が同相写像となるた
めには , つぎの条件が必要十分である:
U が X の開集合 ⇔ f (U ) が Y の開集合
定理 5.12 集合 X 上に 2 つの距離 d1 , d2 が与えられているとき, X1 = (X, d1 ),
X2 = (X, d2 ) と表せば , d1 と d2 が同じ位相を導入するためには , TX1 = TX2 となる
ことが必要十分である.
注 この定理は , 距離空間 X の位相構造が X の開集合系
とを示しており, つぎの定義の根拠となっている.
ÌX によって決まるこ
定義 5.13 距離空間 X の開集合系 TX を X の位相 [topology] あるいは位相構造
[topological structure] と呼ぶ.
演習 5.4 距離空間 X の開集合に関して, つぎが成立することを示せ:
(1) X, ∅ ∈ TX
(X と ∅ は X の開集合)
(2) U, V ∈ TX ⇒ U ∩ V ∈ TX (X の 2 つの開集合の共通部分は X の開集合)
(3) Uλ ∈ TX (λ ∈ Λ) ⇒ λ∈Λ Uλ ∈ TX (X の開集合の族の和集合は X の開集合)
(4) x = y ∈ X ⇒ ∃U, V ∈ TX such that U ∩ V = ∅, x ∈ U, y ∈ V
(X の異なる 2 点は , 互いに交わらない開集合にそれぞれ含まれる)
注 条件 (4) は定理 5.3(5) と同値であり, これもハウスドルフの分離公理と呼ぶ.
定義 5.14 距離空間 X の開集合の補集合を X の閉集合 [closed set] と呼ぶ. すな
わち,
A が X の閉集合 ⇔ X \ A が X の開集合
def
注 開集合でないからといって閉集合にはならない. また, 閉集合でないからと
いって開集合にはならない.
例 5.15 (1) R において, 閉区間は閉集合である.
(2) 離散距離空間 X においては , どんな部分集合も閉集合となる.
20
つぎの命題は , 閉集合の定義と演習 5.4 から明らかである.
命題 5.16 距離空間 X の閉集合について, つぎが成立する.
(1) X および ∅ は X の閉集合である.
(2) X の閉集合 A と B の和集合 A ∪ B は X の閉集合である.
(3) X の閉集合の族 Aλ (λ ∈ Λ) の共通部分 λ∈Λ Aλ は閉集合である.
演習 5.5 距離空間 X において , 有限部分集合 F = {x1 , . . . , xn } ⊂ X は閉集合と
なることを示せ.
演習 5.6 距離空間 X において , G を開集合とし , F を閉集合とするとき, G \ F
は開集合となり F \ G は閉集合となることを示せ.
定理 5.17 距離空間 X の部分集合 A が X の閉集合となるためには , つぎの条件が
必要十分である:
∀xn ∈ A (n ∈ N), lim xn = x ∈ X ⇒ x ∈ A
n→∞
証明概略 A が閉集合であるが , 上の条件が成立しないとすれば ,
∃xn ∈ A (n ∈ Æ) such that
lim xn = x ∈ X \ A
n→∞
このとき, 収束の定義から矛盾を導く.
逆に , A が閉集合でないとすれば , X \ A は開集合でないので ,
∃x ∈ X \ A such that ∀ε > 0, B(x, ε) ⊂ X \ A
これより, xn ∈ A (n ∈ Æ) を limn→∞ xn = x となるように取れることを示す.
これは , 上の条件の否定.
この定理によれば , 閉集合とは収束に関して閉じている部分集合と言える.
演習 5.7 距離空間 X において , 完備である部分集合 A ⊂ X は X の閉集合であ
ることを示せ.2
ヒント
定理 5.17 を適用.
演習 5.8 距離空間 X から距離空間 Y への写像 f : X → Y が連続であるために
は, つぎの条件が必要十分であることを示せ:
A が Y の閉集合 ⇒ f −1 (A) が X の閉集合.
2 ここで ,
部分集合 A ⊂ X が完備であるとは , 部分距離空間として完備であることを意味する.
21
6
閉包, 内部, 境界
定義 6.1 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, A を含むすべての閉集合の共通
部分を (X における) A の閉包 [closure] とよび , cl A (または clX A) と表す. 閉包の
点 x ∈ cl A を A の触点 [closure point, adherent point] という.
定義により, A ⊂ X の閉包 cl A は A を含む最小の閉集合である. よって, つぎの
命題は明らかである.
命題 6.2 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X が閉集合になるためには , A が閉包 cl A と
一致することが必要十分である. すなわち,
A ⊂ X が閉集合 ⇔ clX A = A
演習 6.1 距離空間 X において, つぎが成立することを示せ:
(1) cl ∅ = ∅
(2) A ⊂ cl A
(3) cl(A ∪ B) = cl A ∪ cl B
(4) cl(cl A) = cl A
定理 6.3 距離空間 X = (X, d) において , x ∈ X と A ⊂ X に関するつぎの条件は互
いに同値である:
(a) x ∈ cl A
(b) ∀U ∈ NbdX (x), U ∩ A = ∅
(c) ∀ε > 0, B(x, ε) ∩ A = ∅
(d) d(x, A) = 0
(e) ∃xn ∈ A (n ∈ N) such that limn→∞ xn = x
証明概略 (a) ⇒ (b) ⇒ (c) ⇒ (d) ⇒ (e) ⇒ (a) を示す.
(a) ⇒ (b) : (b) が成立しないとすると ,
∃U ∈ Nbd(x) such that U ∩ A = ∅
定理 5.10 より, x ∈ O ⊂ U となる X の開集合 O が取れる
このとき, X \ O は閉集合で O ∩ A = ∅ より A ⊂ X \ O
cl A ⊂ X \ O — これは x ∈ O ∩ cl A に矛盾
この定理により, x ∈ cl A は A に触れている点と言える.
系 6.4 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, つぎが成立する:
cl A = {x ∈ X | d(x, A) = 0}
22
演習 6.2 距離空間 X から Y への写像 f : X → Y が連続となるためにはつぎの
条件が必要十分であることを示せ:
∀A ⊂ X, f (clX A) ⊂ clY f (A)
定義 6.5 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X は clX A = X を満たすとき, X において
稠密 [dense] であるという. 稠密な可算部分集合を持つ距離空間を可分 [separable] で
あるという.
例 6.6 (1) Q と R \ Q は R において稠密である. よって, 数直線 R は可分である.
(2) ∞ は可分ではない.
証明概略 ∞ の非可算部分集合 {0, 1} の各点の
∞ の稠密な部分集合とは交わる.
1
-近傍は互いに交わらないが ,
2
演習 6.3 ユークリッド 空間 Rn , ヒルベルト空間 2 , ヒルベルト立方体 IN がそれ
ぞれ可分であることを示せ.
定義 6.7 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, x ∈ clX (A \ {x}) を満たす点
x ∈ X を A の集積点 [accumulation point] という. A の集積点全体の集合を Ad と
表し , A の導集合 [derived set] とよぶ. A の集積点ではない A の点を A の孤立点
[isolated point] という.
注 A の孤立点は A の点であるが , A の集積点は A の点とは限らない. また, A
の集積点は常に A の触点となる.
例 6.8 (1) 数直線 R において , Q の導集合は R 全体となる.
(2) ユークリッド 平面 R2 の部分空間 A = {(1/n, 1/m) | n, m ∈ N} に関しては ,
Ad = {(1/n, 0), (0, 1/n) | n ∈ N}, (Ad )d = {(0, 0)}, ((Ad )d )d = ∅ となる.
定理 6.9 距離空間 X = (X, d) において , x ∈ X と A ⊂ X に関するつぎの条件は互
いに同値である:
(a) x ∈ Ad
(b) ∀U ∈ NbdX (x), U ∩ (A \ {x}) = ∅
(c) ∀ε > 0, B(x, ε) ∩ (A \ {x}) = ∅
(d) ∀U ∈ NbdX (x), A ∩ U は無限集合
証明概略 (a), (b), (c) の同値は , 定理 6.3 を参照.
(b) ⇒ (d) : (d) を否定すれば , ∃U ∈ NbdX (x) such that A ∩ U は有限集合.
演習 5.5 より, 有限集合は閉集合なので , V = U \ ((A \ {x}) ∩ U ) = U \ (A \ {x})
は x の開近傍で V ∩ (A \ {x}) = ∅.
23
この定理により, A の集積点とは , その周りに A の点が集積している点と言える.
演習 6.4 距離空間 X において, つぎの同値を示せ:
A ⊂ X が閉集合 ⇔ Ad ⊂ A
定義 6.10 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, A に含まれるすべての開集合
の和集合を (X における) A の内部 [interior] と呼び , int A (または intX A) と表す.
内部の点 x ∈ int A を A の内点 [interior point] と呼ぶ.
定義により, A ⊂ X の内部 int A は A に含まれる最大の開集合である. よって, つ
ぎの命題は明らかである.
命題 6.11 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X が開集合になるためには , A が内部 int A
と一致することが必要十分である. すなわち,
A ⊂ X が開集合 ⇔ intX A = A
演習 6.5 距離空間 X において, つぎ 同値を示せ:
x ∈ int A ⇔ A ∈ NbdX (x) ⇔ ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ A
演習 6.6 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, つぎが成立することを示せ:
X \ cl A = int(X \ A)
よって, int A = X \ cl(X \ A) かつ cl A = X \ int(X \ A) となる.
演習 6.7 距離空間 X において, つぎが成立することを示せ:
(1) int X = X
(2) int A ⊂ A
(3) int(A ∩ B) = int A ∩ int B
(4) int(int A) = int A
定義 6.12 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して,
bd A (= bdX A) = cl A \ int A
と表し , これを (X における) A の境界 [boundary] と呼ぶ. 境界の点 x ∈ bd A を A
の境界点 [boundary point] と呼ぶ.
演習 5.6 によれば , bd A は閉集合である.
24
演習 6.8 距離空間 X の部分集合 A ⊂ X に対して, つぎを示せ:
(1) cl A = A ∪ Ad
(2) bd A = cl A ∩ cl(X A)
(3) cl A = int A ∪ bd A
(4) X = int A ∪ bd A ∪ int(X A)
次の定理より, ヒルベルト立方体 IN の部分空間の位相的性質を調べれば , すべての
可分距離空間の位相的性質を調べれたことになる.
定理 6.13 どんな可分距離空間 X = (X, d) もヒルベルト立方体 IN に埋め込める.
証明概略 同値な距離で置き換え , diam X 1 としてよい. (演習 3.8 参照)
可算稠密集合 {xi | i ∈ Æ} ⊂ X を取り, h : X → I を次のように定義する:
h(x) = (d(xi , x))i∈
演習 3.14 より h は連続. h の単射性は {xi | i ∈ Æ} の稠密性を用いる.
h−1 の連続性は , ∀x ∈ X, ∀ε > 0 に対し , d(xn , x) < ε/3 となる xn を取る.
d(h(x), h(y)) < ε/3n とすれば n−1 |d(xn , x) − d(xn , y)| < ε/3n より,
d(x, y)
d(xn, x) + d(xn, y) 2d(xn , x) + |d(xn , x) − d(xn , y)| < ε
この定理と演習 4.4 より, 次を得る:
系 6.14 どんな可分距離空間もヒルベルト空間 2 に埋め込める.
25
7
点列コンパクト
定義 7.1 距離空間 X = (X, d) において , どんな点列 (xn )n∈N も収束する部分列を
持つとき, X は点列コンパクト [sequentially compact] であるという.
命題 7.2 数直線 R の有界閉集合 A は点列コンパクトである.
証明 A の点列は有界であるから, ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理に
よれば , Ê において収束する部分列を持つが , A は閉集合なので , この部分列は A
において収束する.
演習 7.1 点列コンパクト距離空間は完備であることを示せ.
ヒント
コーシー点列が収束する部分列を持てば , それ自身が収束する.
演習 7.2 点列コンパクト距離空間 X の閉集合 A ⊂ X は点列コンパクトになる
ことを示せ.
演習 7.3 距離空間 X の点列コンパクト部分集合 A ⊂ X は X の有界閉集合にな
ることを示せ.3
ヒント A が有界でなければ , 収束する部分列を持たないような点列を A の中に
作れる. また, A が閉集合になることは , 演習 5.7 を参照.
演習 7.4 点列コンパクト距離空間 X から距離空間 Y への連続写像 f : X → Y
の像 f (X) は点列コンパクトになることを示せ.
ヒント f (X) における点列から X の点列を作り, X の点列コンパクト性と f
の連続性を用いて , 収束する部分列の存在を示せ.
上の 3 つの演習 7.2, 7.3, 7.4 を組み合わせれば , つぎの定理が容易に得られる:
定理 7.3 点列コンパクト距離空間 X から距離空間 Y への連続な全単射 f : X → Y
は同相写像になる.
演習 7.5 ユークリッド 空間 Rn において, 部分集合 A ⊂ Rn が点列コンパクトに
なるためには , A が有界閉集合となることが必要十分であることを示せ.
ヒント
有界閉集合であることが必要性はすでに見た.
逆に , A が有界閉集合のとき, A における点列の各座標に対して, ボルツァーノ・
ワイエルシュトラスの定理を適応して, Ên において収束する部分列を見付けよ.
このとき, A は閉集合であるので , この部分列は A において収束する.
3 ここで , 部分集合 A ⊂ X が点列コンパクトであるとは , 部分距離空間として , 点列コンパクトである
ことを意味する.
26
演習 7.6 点列コンパクトな距離空間 X と Y の直積空間 X × Y が点列コンパク
トになることを示せ.
ヒント
演習 7.5 のヒントを参照.
演習 7.7 ユークリッド 空間 Rn の有界閉集合 A 上の実数値連続関数 f : A → R
は最大値と最小値を持つことを示せ.
ヒント 演習 7.5, 7.4 より, f (A) は Ê の有界閉集合. ワイエルシュトラスの公
理から sup f (A) と inf f (A) の存在が分かるが , f (A) が閉集合であることより
sup f (A) = max f (A) と inf f (A) = min f (A) が出る.
演習 7.8 点列コンパクト距離空間 X = (X, dX ) から距離空間 Y = (Y, dY ) への
連続写像 f : X → Y は一様連続になる.
ヒント 一様連続でないとすれば ,
∃ε > 0, ∀n ∈ Æ, ∃xn , yn ∈ X
such that dX (xn , yn ) < 1/n but dY (f (xn ), f (yn )) ε
点列コンパクト性を用いれば , n1 < n2 < · · · を (xni )i∈ と (yni )i∈ が共に収
束するように取れるが , それらが収束する点における連続性に矛盾.
27
8
各点収束と一様収束
ここでは , X = (X, dX ), Y = (Y, dY ) は距離空間とする.
定義 8.1 写像の列 fn : X → Y (n ∈ N) が写像 f : X → Y に各点収束 [pointwise
converge] するとは , 各点 x ∈ X に対して, Y の点列 (fn (x))n∈N が f (x) に収束する
ことをいう. すなわち,
∀x ∈ X, ∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n n0 ⇒ dY (fn (x), f (x)) < ε
それに対して, つぎの条件を満たすとき, (fn )n∈N は f に一様収束 [uniformly converge]
するという:
∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that ∀x ∈ X, n n0 ⇒ dY (fn (x), f (x)) < ε
注 各点収束のときの n0 ∈ Æ は点 x ∈ X と ε > 0 に依存して決まるが , 一様収
束のときの n ∈ Æ は ε > 0 だけに依存して決まり, 点 x ∈ X には依存しない.
明らかに , (fn )n∈ が f に一様収束すれば , (fn )n∈ は f に各点収束する.
命題 8.2 写像 f, g : X → Y に対して,
dˆY (f, g) = sup dY (f (x), g(x)) x ∈ X
と定義すれば , 写像の列 fn : X → Y (n ∈ N) が写像 f : X → Y に一様収束するた
めには limn→0 dˆY (fn , f ) = 0 となることが必要十分である.
注 上の命題の定義において , dˆY (f, g) = ∞ となることもあるが , 命題の主張に
は , 十分大きな n ∈ Æ に対して, dˆY (fn , f ) < ∞ (i.e., ∃n ∈ Æ such that ∀m n,
dˆY (fm , f ) ∈ Ê) となることも含まれている.
定義 8.3 写像 f : X → Y が有界な像を持つとき, すなわち, f (X) が Y において有
界となるとき, f は有界 [bounded] であるという. X から Y への有界な写像全体の
なす集合を B(X, Y ) と表す.
演習 8.1 命題 8.2 のように dˆY を定義すれば , 各 f, g ∈ B(X, Y ) に対して, 常に
dˆY (f, g) ∈ R となり, dˆY は B(X, Y ) 上の距離となることを示せ. さらに, dY が完備
ならば dˆY も完備になることを示せ.
定理 8.4 連続写像の列 fn : X → Y (n ∈ N) が写像 f : X → Y に一様収束すれば ,
f は連続となる.
注 連続写像の列 fn : X → Y (n ∈ Æ) が写像 f : X → Y に各点収束しても, f
は連続とは限らない.
28
演習 8.2 各 n ∈ N に対して, fn : I → R を fn (x) = xn と定義するとき, (fn )n∈N
は各点収束するが , 一様収束しないことを示せ.
演習 8.3 X から Y への有界な連続写像全体のなす集合 CB (X, Y ) は , 距離空間
B(X, Y ) = (B(X, Y ), dˆY ) の閉集合となることを示せ.
この演習により, Y が完備ならば CB (X, Y ) も完備であることが分かる.
演習 8.4 B(X, R) は自然に定義される演算で線形空間となるが , 次のようにノル
ムが定義できる (演習 2.2 参照):
f = sup |f (x)| x ∈ X
このノルムで B(X, R) は バナッハ空間となることを示せ.
上の 2 の演習より, CB (X, R) も部分空間として, バナッハ空間となる.
注 X = Æ のとき, B(Æ, Ê) = CB (X, Ê) = ∞ となる.
命題 8.5 距離空間 X = (X, d) の一点 x0 ∈ X を固定して, 各 x ∈ X に対して,
ϕ(x) : X → R を ϕ(x)(y) = d(x, y) − d(x0 , y) と定義すれば , ϕ(x) ∈ CB (X, R) とな
り, ϕ : X → CB (X, R) は等長写像となる.
証明概略 各 ϕ(x) の有界性は |ϕ(x)|
d(x, x0 ) を示すことにより, また, ϕ の
等長性は ϕ(x) − ϕ(y) = d(x, y) を示すことにより得られる.
注 上で , −d(x0 , y) の項は ϕ(x) を有界にするために必要.
˜
˜ = (X,
˜ d)
定義 8.6 距離空間 X = (X, d) を稠密部分集合として含む完備距離空間 X
2
˜
˜
で d が d の拡張 (すなわち, d|X = d) となっているものを X の完備化 [completion]
と呼ぶ.
定理 8.7 どんな距離空間も完備化を持つ.
証明概略 命題 8.5 により, X を CB (X, Ê) に等長に埋め込めば , 閉包 cl X が
X の完備化となる.
定義 8.8 距離空間 X のコーシー点列全体のなす集合を Cs(X) と書く. これは, X
の加算累乗 X N の部分集合である. つぎのように Cs(X) 上に同値関係 を定義する:
(xi )i∈N (yi )i∈N ⇔ lim d(xi , yi ) = 0
def i→∞
=
コーシー点列 x = (xi )i∈N ∈ Cs(X) の による同値類を [x] と表す. 商集合 X
Cs(X)/ 上の距離 d˜ をつぎのように定義する:
˜ i )i∈N ], [(yi )i∈N ]) = lim d(xi , yi )
d([(x
def i→∞
29
演習 8.5 上で定義した が Cs(X) における同値関係であることを示せ.
演習 8.6 上の定義において , d˜ が well-defined であり, Cs(X) 上の距離になるこ
とを示せ.
演習 8.7 任意の 2 点 x, y ∈ X に対して, つぎが成立することを示せ:
˜
d(x, y) = d([(x,
x, . . . )], [(y, y, . . . )])
と同一視して, X ⊂ X
と見なすとき, X
演習 8.8 各点 x ∈ X を [(x, x, . . . )] ∈ X
が X において稠密であること , すなわち, 次を示せ:
˜
y) < ε
∀x = (xi )i∈N ∈ Cs(X), ∀ε > 0, ∃y ∈ X such that d([x],
ヒント 最初の n 座標は変えずに , それ以降の座標を xn で置き換えてできるコー
˜
シー点列を x とすると, [x ] = xn ∈ X となる. n を大きく取れば d([x],
[x ]) は
小さくなる.
上の 2 つの演習により, つぎが得られる:
と同一視して, X ⊂ X
と見なすとき, X
は
命題 8.9 各点 x ∈ X を [(x, x, . . . )] ∈ X
X の完備化となる.
注 コーシー列の同値類を用いて完備化を構成する方法は, 有理数から実数を構
成する方法の 1 つでもある.
30
9 トピックス — ペアノ曲線とカント ール集合
定理 9.1 単位閉区間 I = [0, 1] から正方形 I2 への連続な全射が存在する. このよう
な, 写像をペアノ曲線 [Peano curve] と呼ぶ.
証明概略 正方形 I2 の各辺を半分にして 4 つの正方形に分割し , その 4 つの正
方形の各辺をさらに半分にして
4 つの正方形に分割していくと, n 回目には , 直径
√
が 2−n−1 2 となる 4n 個の正方形に分割される.
単位閉区間 I = [0, 1] を 4n 等分して , それぞれの区間が 4n 個の正方形の 1 つず
つに納まるように写す写像を, 前の段階の 4n−1 個の区間の 4n−1 個の正方形へ
の納まり方を変えないように作ることにより, つぎの条件を満たす連続写像の列
fn : I → I2 (n ∈ Æ) を作れ :
√
√
ˆ n , fn−1 ) < 2−n−1 2
∀x ∈ I2 , d(x, fn (I)) < 2−n−1 2, d(f
ˆ の完備性より ∃f = limn→∞ fn ∈ C(I, I2 )
C(I, I2 ) = (C(I, I2 ), d)
√
√
ˆ n , f ) 2−n−1 2
このとき, ∀n ∈ Æ, d(f
∀x ∈ I, d(x, f (I)) < 2−n 2
2
よって, f (I) は I において稠密.
f (I) が閉集合であれば , f (I) = I2 .
f (I) = I2 を示すのに , 点列コンパクト性を用いる.
f2 (I)
f3 (I)
f1 (I)
図 1: ペアノ曲線
数学的帰納法を用いれば , 上の定理 9.1 の n 次元版が得られる.
系 9.2 単位閉区間 I から n 次元立方体 In への連続な全射が存在する.
2an /3n an = 0 or 1 をカント ール集合 [Cantor
∞
set] と呼ぶ. このとき, 単位閉区間 I にある実数を 3 進法展開 ( n=1 2an /3n , an =
0, 1, 2, という級数) で表わせば , カントール集合 C は単位閉区間 I から, 下の小開区
定義 9.3 実数の集合 C =
∞
n=1
間と次々に取り除いた集合であることが分かる.
(1/3, 2/3); (1/32 , 2/32 ), (2/3 + 1/32 , 2/3 + 2/32);
(1/33 , 2/33 ), (2/32 + 1/33 , 2/32 + 2/33 ), (2/3 + 1/33 , 2/3 + 2/33 ), . . .
31
0
1
0
1
9
0
2
9
···
1
3
2
3
1
3
2
3
···
1
5
9
8
9
···
1
···
図 2: カントール集合
∞ 2/3n = 1, ∞ 2/3n = 1/3, ∞ 2/3n = 1/32 = 1/9,
n=1
n=2
n=3
∞
2/3n = 2/3 + 1/32 = 5/9, . . .
注
2/3 +
n=3
命題 9.4 対応 ϕ :
∞
n=1
2an /3n →
∞
n=1
an /2n は , C から I への連続な全射になる.
∞
∞
n
n
証明概略 x =
n=1 2an /3 , y =
n=1 2bn /3 , an , bn ∈ {0, 1} に対して,
|x − y| < 1/3k とすれば , a1 = b1 , . . . , ak = bk となり, |ϕ(x) − ϕ(y)| 1/2k .
系 9.2 と命題 9.4 より次の定理が得られる.
定理 9.5 カントール集合 C から n 次元立方体 In への連続な全射が存在する.
注 この定理は , 系 9.2 と命題 9.4 とは独立に示すことができ, 定理 9.1 はこの定
理から簡単に導ける.
命題 9.6 ヒルベルト立方体の部分空間 {0, 1}N ⊂ IN はカントール集合 C と同相で
ある.
証明概略 ϕ : (xi )i∈ →
∞
i=1
2xi /3i は , {0, 1} から C への同相写像となる.
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参考書
最近では , 様々なレベルの位相に関する書籍が数多く出版されている. そのうちの
初等的なものを以下に上げる.
• 小林 貞一 [著] : 集合と位相, 培風館, 1977.
• 志賀 浩二 [著] : 位相への30講, 朝倉書店, 1988.
• 内田 伏一 [著] : 位相入門, 裳華房, 1997.
• 太田 春外 [著] : はじめよう位相空間, 日本評論社, 2000.
• 一楽 重雄 [監修] : 集合と位相 そのまま使える答えの書き方,
講談社サイエンティフィク, 2001.
• 瀬山 士郎 [著] : なっとくする 集合・位相, 講談社, 2001.
• 高橋 渉 [著] : 距離空間と位相空間, 横浜図書, 2001.
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索引
ε-近傍, ε-neighborhood, 9
触点, closure point, adherent point, 22
位相, topology, 16, 20
位相構造, topological structure, 16, 20
位相的埋め込み, topological embedding, 17
位相普遍量, topological invariant, 16
一様埋め込み, uniform embedding, 17
一様収束, uniformly converge, 28
一様同相, uniform homeomorphic, 17
一様同相写像, uniform homeomorphism, 17
一様連続, uniformly continuous, 3, 14, 27
数列, sequence, 1
稠密, dense, 23
直積距離, product metric, 8
直積 (距離) 空間, product (metric) space, 8
直径, diameter, 9
デデキント切断, Dedekind cut, 2
点列, sequence, 11
点列コンパクト , sequentially compact, 26
上に有界, upper bounded, 2
埋め込み, embedding, 17
導集合, derived set, 23
同相, homeomorphic, 16
同相写像, homeomorphism, 16
同値な距離, equivalent metric, 13
等長, isometric, 10
等長埋め込み, isometrically embedding, 10
等長写像, isometry, 10, 29
開近傍, open neighborhood, 19
開集合, open set, 19
開集合系, system of open sets, 19
各点収束, pointwise converge, 28
可分, separable, 23
カントール集合, Cantor set, 31
完備, complete, 12, 26
完備化, completion, 29
内点, interior point, 24
内部, interior, 24
境界, boundary, 24
境界点, boundary point, 24
極限, limit, 1
距離, distance, 9
距離, metric, 7
距離関数, metric, 7
近傍, neighborhood, 18
近傍系, neighborhood system, 18
ノルム, norm, 5
ノルム空間, normed space, 5
ハウスドルフの分離公理, Hausdorff separation
axiom, 18, 20
バナッハ空間, Banach space, 12, 29
ヒルベルト空間, Hilbert space, 6, 17, 25
ヒルベルト立方体, Hilbert cube, 7, 17, 25
コーシー・シュワルツの不等式,
Cauchy-Schwarz inequality, 5, 6
コーシー点列, Cauchy sequence, 11
コーシー列, Cauchy sequence, 1
孤立点, isolated point, 23
部分 (距離) 空間, (metric) subspace, 9
部分数列, subsequence, 1
部分点列, subsequence, 11
ペアノ曲線, Peano curve, 31
閉集合, closed set, 20
閉包, closure, 22
最小値, mimimum, 27
最大値, maximum, 27
三角不等式, triangle inequation, 5, 7
有界, bounded, 2, 9, 28
有界な距離, bounded metric, 9
有界閉集合, bounded closed set, 26
ユークリッド ・ノルム, Euclidean norm, 5
ユークリッド の距離, Euclidean metric, 7
下に有界, lower bounded, 2
射影, projection, 11
集積点, accumulation point, 23
収束, converge, 1, 11
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離散距離, discrete metric, 7
離散距離空間, discrete metric space, 7
連続, continuous, 2, 3, 14, 28
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