たくみ 青森県産業技術センターの匠のお話あれこれ⑫ おっきなねぶた「プロテオグリカン」 地方独立行政法人 青森県産業技術センター 工業総合研究所 阿部 馨 (元弘前地域研究所) 1.PG ってご存知? れるサケの鼻軟骨にPGが含まれていることに 注目し、抽出が難しいとされていた技術を開発 最近話題のプロテオグリカン(以下PG:ピ するため、地元企業の株式会社角弘(本社:青 ージー)という物質をご存知でしょうか? 森市) との共同研究をはじめたことにあります。 PGは保水性に優れ、お肌のハリや弾力を保 つために重要で、コラーゲン、ヒアルロン酸な 3.PG商品の急速な広がり どと合わせて体の組織を維持している物質です が、構造が複雑なことから研究例も少なく、こ PG事業の開始に先立ち、平成21年4月に化 れまでPGを用いた製品はほとんどなかったと 粧品用のPG素材が、平成22年4月に食品用の いう状況でした。 PG素材が発売されましたが、平成22年8月の そうした中、平成22年に文部科学省からの 事業採択以来、積極的な商品化支援を展開した 「プロテオグリカンをコアとした津軽ヘルス& 結果、化粧品と健康食品を併せて約100品目が ビューティークラスターの創生」事業(以下 発売され、累計の製造出荷額は約15億円に達 PG事業)が採択され、当センターが中核機関 しました。現在でも、複数の大手健康食品や化 としてPGを利用したサプリメントやコスメテ 粧品メーカーが参入し、商品数も増加傾向が続 ィックの商品化のために取り組んだ約2ヶ年半 いています(図1)。 20 15 ൨ 2.サケ鼻軟骨から抽出するPG PG事業のきっかけは、弘前大学遠藤正彦前 学長が主催する弘前大学医学部第一講座による 30年間のPG研究が基礎となり、平成10年に弘 ⣼ィ〇㐀ฟⲴ Ⲵ㢠 ⣼✚ရ┠ᩘ 75 10 50 5 25 0 0 前大学医学部生化学第一講座の高垣啓一助教授 (後に教授、故人)が、青森県でもたくさん獲 100 ရ┠ を紹介します。 図1 商品数と製造出荷額の推移 23 発売されている食品は、 美容やロコモ対応(加 称・価格・表示・販路といった課題に直面する 齢による運動機能低下の予防)の健康食品がメ ケースが多かったため、そうした状況を踏まえ インで、りんご酢や菓子、ジュースが多く(写 て、参画企業の要望に沿った商品化支援を行っ 真1)、化粧品では、保湿効果が期待される化 てきました。 粧水や乳液などのスキンケア商品がメインであ り(写真2)、多様な機能を有していることから、 他の商品にも広く応用されています。 (1)商品開発研究会 時間を要する難しい技術に関することをテー マとせず、短期間での商品開発を優先させた技 術や情報に絞った研究会を開催してきました。 例えば、PGを企業技術者と一緒に溶解し、り んごジュースなどを作り、味・色・テクスチャ ー等の変化を一緒に体験し議論を重ねました (写真3)。 写真1 PG配合の健康食品 写真3 商品開発講習会 写真2 PG配合の化粧品 (2)商品化コーディネーター 商品化コーディネーターを起用し、企業訪問 も展開しました。商品化コーディネーターと 4.PG事業の「攻める仕掛け」 我々センター研究員が企業に直接訪問すること で、企業が要望するPG商品について、具体的 青森県は、化粧品や健康食品を製造発売して に個別アドバイスができました。 いる会社が特に多いわけではなく、PG事業の 参画企業のほとんどが、初めて化粧品や健康食 (3)PGフォーラム 品の商品開発に取り組む状況でした。 年2回、春夏コレクション、秋冬コレクショ PG商品の試作は、既成品の素生に合った ンと題したPGフォーラムを開催して、研究成 PG量を配合する方法により、開発期間を短縮 果の発表や新商品の発表、美容・健康食品で活 するメリットがある一方で、発売後すぐに、名 躍されている業界人や地域イノベーションの専 24 れぢおん青森 2013・7 門家の基調講演などを通じてPGのプロモーシ 「アレッラPG」をオープンしたものです。ち ョンを行い、毎回300名を越す参加者がありま なみに、名付け親は現センター理事長です(本 した(写真4)。 誌2011年9月号: 「赤ちゃんの名前はアレッラ」 で紹介) 。 写真4 PGフォーラム (4)PGカンファレンス 専用のホームページを開設してPG事業の進 写真5 アレッラPG(さくら野青森店内) 捗状況の発信に努め、年間20件を超える県内 外での各種イベントに出展したほか、東京丸の (7)名誉ある受賞 内で企業やマスメディアに説明するPGカンフ 平成23年度の第10回産学連携功労者表彰農 ァレンスを開催しました。 林水産大臣賞受賞を機に、マスメディアに多く 取り上げられるようになり、知名度アップにつ (5)青森県PGブランド推進協議会 ながったことは望外の喜びでした。さらに、イ 消費者に対し、PGの正しい情報を提供して ノベーションネットワークアワード2013文部 ブランド力の向上を図るため、弘前地域研究所 科学大臣賞を受賞し、PG事業関係者や参画企 が事務局を務める協議会を設立し、一定の基準 業の努力が認められたことを痛感しました。 を満たした商品に対してブランド認証マークを 提供する制度を開始しました。協議会は、「ブ 5.PGに期待すること ラ協」という愛称で呼ばれています。 楽しさいっぱいの津軽の夏が近付いており、 (6)アレッラPG この季節になると、「おっきなねぶたは、後か 県内の顧客や観光客のために、さくら野青森 らくる」という言葉を耳にします。「PGはお 店にPG専門ショップ「アレッラPG」を開店 っきなねぶた」であり、近い将来、ヒアルロン しました(写真5)。 「アレッラ」は平成23年 酸やコラーゲンが「ちっちゃなねぶた」になる 度に当センターが開発支援した商品のPRとテ かも知れません。それまで、頑張れ! PG ! ストマーケティングを兼ねて、青森市新町に1 年間だけ開設したテナントの名称です。顧客か らの継続要望もあって、その名称を引き継いだ 25
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