1 青少年の健全育成を阻害するおそれのある営業への対応

資料2
青少年の健全育成を阻害するおそれのある営業への対応について
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青少年の健全育成を阻害するおそれのある営業の現状
青少年の健全育成を阻害するおそれのある営業は、これまでに様々なものが出現し、
そのときどきの社会経済情勢や青少年を取り巻く社会環境の変化を反映して、その営業
内容や態様も時代によって大きく変化している。
これらの営業については、その営業の青少年の健全育成阻害の程度、社会問題化の程
度、地域的な広がり等に応じて、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(以下「風営法」という。)や神奈川県青少年保護育成条例(以下「保護育成条例」と
いう。)などの法令による規制や関係法令に基づく取締り、行政指導による営業者の自
主的な取組の要請、青少年や保護者などに対する普及啓発などの様々な手法により、国、
地方公共団体、警察、関係団体等がそれぞれ、対応を図っている。
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本県における特徴的な状況
近年、東京秋葉原において、女子高校生(通称「JK」)に制服姿で男性客に対する
マッサージ等の接客をさせる「JKリフレ店」など、女子高校生と密着、接近できるこ
となどを売りにする、いわゆる「JKビジネス」と呼ばれる営業が次々と出現し、全国
各地の繁華街に広まりつつあり、本県においても横浜駅など主要駅周辺で、いくつかの
営業が確認されている状況にある。
(1) JKビジネスの業態(別紙1の表1参照)
JKビジネスについては、次々と新種の業態が出現してきており、一方で、数ヶ月
程度で廃業されてしまうものもあるなど、その実態を的確に把握することは困難であ
るが、代表的な業態としては、男性客の身体に接触して行う簡易的なマッサージと会
話を売り物とする「JKリフレ」や、学生服やメイド服等を着させ、卑わいなポーズ
を取らせて男性客に写真撮影させる「JK撮影会」、高校の制服を着用させ構外で男
性客と仮想デートをさせる「JKお散歩」等がある。
(2) JKビジネスの青少年の健全育成阻害性
JKビジネスは、いずれも表向きは、「性的サービスを目的としていない」、「タ
ッチは禁止」などとしており、風営法の規制を受ける営業に該当しないような営業形
態をとっている。
そのため、青少年を雇用することができるが、男性客の中には性的なサービスを求
める者も多く、青少年が性的な犯罪の被害に遭うケースも多く、児童買春などの福祉
犯罪の温床となっているとの指摘も受けている。
また、他のアルバイトよりも時給が高額であり、出勤時間等の店側の規則も緩く、
仕事も専門性を必要としない内容のものであることから、簡単に短期間で高額なアル
バイト代を稼ぐことができる。
給料については、基本的に時給制であるが、指名料やオプション料金等が歩合制の
店や、人気が高くなると多額のボーナスを支給する店もあり、オプションサービスの
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内容が過度なものへとエスカレートするなど、青少年の正常な倫理観や労働観を喪失
させるおそれも懸念されている。
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県の取組状況
(1) 立入調査の実施
個室等を設けて営む営業施設において、性被害等の青少年の福祉が害される事件が
発生していることから、保護育成条例第 27 条では、個室等を設けて営む営業で、その
営業の内容が同条第1項各号に規定する業態に該当し、かつ、青少年の健全な育成を
阻害するおそれがあると認められるものについて、(児童福祉審議会社会環境部会へ
の諮問・答申を経て)知事が当該営業施設を個別に指定し、青少年を立入らせること
や接客業務に従事させることを禁止できることとしている。(別紙2参照)
県では、JKビジネスの多くは個室等を設けて営まれており、これらの営業施設に
ついては、同条による知事の指定対象となる可能性があるため、保護育成条例第 51 条
に基づき、施設の状況、営業内容、青少年の雇用状況等に関する立入調査を実施して
おり、指定対象となりうる場合は、その旨を告知し、改善を指導している。(別紙1
の表2参照)
(2) 広域的な情報収集等
JKビジネスは、一度出現すると近隣の都県などに急速に広まることが多いため、
毎年、関東甲信越静地区で開催される青少年健全育成関係条例担当者の会議において、
各都県のJKビジネス店の現状、条例の規定及び今後の対策等について情報交換して
いる。
昨年度までは、東京都及び本県以外にJKビジネス関係店の存在はなかったが、各
県とも今後のJKビジネスの展開に関心を持っており、今後も当該会議において、継
続して情報交換をすることとなっている。
(3) 県警察との連携
平成 24 年より、保護育成条例第 27 条に係る個室等を設けて営む営業施設での青少
年の福祉を害する事件について、県警察から情報提供を受けており、事件発生店舗に
対して迅速な立入調査を実施している。
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県警察の主な取締り状況
前述のように、JKビジネスは、合法的な営業を装っているが、実際には、青少年に
性的なサービスなどを行わせるなどしている場合もあり、県警察が労働基準法違反や児
童福祉法違反などにより経営者等を摘発する事例も発生している。
(1) 密着エステ摘発
平成 22 年2月、アルバイトの女子高生4人に対し、男性客に体を密着させるマッサ
ージをさせたとして、密着エステ店「横浜リラックス」の従業員ら3人が児童福祉法
違反(有害支配)で逮捕された。
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(2) JK見学クラブ摘発
平成 23 年5月、アルバイトの女子高生の下着をマジックミラー越しに客に覗かせた
として、女子高生見学クラブ「横浜マンボー」の経営者が、労働基準法違反(危険有
害業務の就業制限)で逮捕された。
(3) 女子高生専門ガールズバー摘発
平成 25 年4月、高校1年生、高校3年生の女子生徒をホステスとして働かせ、客に
酒類を提供させたり、談笑させたりしたとして、女子高生専門ガールズバー「ディス
ティーノ」の経営者が、風営法(無許可営業、年少者使用)違反で逮捕された。
(4) JKリフレ店摘発
平成 26 年5月、アルバイトの女子高生に、客の身体に密着させるサービスを行わせ
たとして横浜リフレ学園「レインボーカラー」の経営者が、労働基準法違反(危険有
害業務の就業制限)で逮捕された。
(5) JK撮影会2店舗摘発
平成 26 年6月、アルバイトの女子高生にみだらなポーズを取らせて男性客に撮影さ
せたとして「みるきーはーと撮影会」及び「コスマリン撮影会」の経営者らが、児童
福祉法違反(有害支配)と労働基準法違反(危険有害業務の就業制限)で逮捕された。
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課題
(1) 新種のJKビジネスに係る情報の早期把握
JKビジネスについては、新種の営業形態が次々と出現しているが、これらについ
て的確な対応を行うためには、早期にその情報を把握することが重要である。
しかしながら、マンションの1室を利用するなどして簡単に開業が可能な場合や限
られた専門サイトのみでしか広告・宣伝をしていない場合も多く、早期に情報を把握
することが難しい状況にある。
(2) 本県にも出現する可能性のあるJKビジネスへの対応
JKビジネスは、一度出現すれば短期間のうちに他の都市にも広まることが多い。
特に、本県は、多くのJKビジネスの発祥地となっている東京都に隣接し、横浜・川
崎などの大都市を抱えていることから、「JKお散歩」や「コミュニティルーム」な
ど、現在、本県における営業が確認されていないものであっても、本県にも出現した
場合に迅速な対応が図れるように情報収集や調査に努め、対応方針等について検討を
進めておく必要がある。
(3) 青少年及び保護者の危機感の希薄性
JKビジネスで稼動する青少年は、危険な店舗で稼動しているという危機感が希薄
であり、正常な倫理観や労働観を喪失しつつある場合も多い。また、その保護者も、
青少年がそのような店舗で稼働している事実を把握しておらず、青少年が警察に保護
されて、はじめて事実を知るに至ることがほとんどである。
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今後の対応の方向性
(1) 早期情報把握に関する取組
・専門サイトからの情報収集の継続
・市町村等の関係機関及び青少年指導員等の青少年関係団体と連携した積極的なJ
Kビジネス関係情報の収集
・個室営業施設における事件発生の有無にかかわらず、県警察の各種警察活動によ
り把握したJKビジネス関係情報の収集
(2) 他都道府県と連携した広域的な取組
・他都県との合同会議等での情報交換及び対応策の検討
・新種の営業形態に対する先進的な取組を実施している都道府県に対する調査の実
施等
(3) 青少年及び保護者に対する取組
・警察と合同での立入調査の実施による、現に青少年の健全育成を阻害するおそれ
のある営業に従事する青少年の保護(警察は補導)
・保護者等に対し、ホームページ等によるJKビジネスの実態及び危険性等を呼び
掛ける広報啓発活動の実施
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別紙1
(表1)
【県内のJKビジネス営業の状況】
業
態
H26.9.30 現在
営業内容
青少年雇用店の状況
JK(メイド)リフレ
個室で男性客の足腰など身体に接
触して行う簡易的なマッサージと
会話を提供する。
横浜、藤沢、小田原に4店舗営
業。青少年を雇用している店舗
は横浜の1店舗のみ。
密着(洗体)エステ
個室で泡等を使用して男性客の身
体に密着したマッサージを提供す
る。(性的行為なし)
横浜、川崎に5店舗営業。
青少年の雇用なし。
JK撮影会
個室スペースで、学生服やメイド
服等を着させ、卑わいなポーズ等
を取らせて男性客に1対1で写真
撮影させる。
県警による今年6月の2店舗摘
発後、青少年雇用店なし。
JKお散歩
高校の制服を着用させ構外で男性
客と仮想デートをさせる。
営業の把握なし。過去横浜に1
店営業するも廃業。
JK見学クラブ
マジックミラー張りの部屋に制服
姿の女子高生を待機させ、マジッ
クミラー越しに男性客に女子高生
の下着等を覗き見させる。
以前横浜に2店舗存在したが、
平成 23 年県警の摘発及び条例規
則改正を受け廃業。
コミュ二ティール
ーム
個室スペースで、女子高生とテレ
ビゲーム等の遊興や会話等を提供
する。
メイド服など店のコンセプトに合
わせたコスプレ姿の店員との会話
と飲食物(酒類を含む)を提供す
るカフェ、バーや、青少年を雇用
し露出の多い衣装で接客させる居
酒屋。
営業の把握なし。
JK(メイド)カフ
ェ、バー、居酒屋
カフェ、バー、居酒屋合わせ約
50 店舗把握。横浜市西区のカフ
ェ、小田原の居酒屋の2店舗で
青少年を雇用。
(表2)
【条例第 27 条第1項有害個室指定対象営業施設に係る立入調査実績】
対象店舗
第 27 条第 1 項
H23 年度
H24 年度
H25 年度
計
第1号
同伴喫茶
0
0
0
0
第2号
JKリフレ、密着エステ店
6
11
1
18
第3号
カラオケ、インターネットカフ
ェ・まんが喫茶
130
161
146
437
第4号
娯楽、遊戯、遊興、異性交際等
に類するものに関する営業で規
則に定めるもの(JK見学クラ
ブ、JK撮影会等)
1
1
2
4
137
173
149
459
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別紙2
神奈川県青少年保護育成条例・施行規則・指定基準対照表
神奈川県青少年保護育成条例
(個室等営業施設に係る制限等)
第27条
神奈川県青少年保護育成条例施行規則
神奈川県青少年保護育成条例に基づく
指定基準
(個室に類する設備等)
知事は、個室又はこれに類す 第11条
神奈川県青少年保護育成条例(以下
条例第27条第1項に規定する
る 設 備 で 規 則で 定 め るも の( 以 下
規則で定める設備は、ついたて、
「条例」という。)第27条第1項の規
「個室等」という。)を設けて営む
棚、カーテンその他の施設の内部を
定に基づく指定については、この指定
営業の内容が次の各号のいずれかに
仕切ることができるもの又は椅子
基準によるものとする。
該当する場合であつて、青少年の健
(高さが80センチメートル以上で、
全な育成を阻害するおそれがあると
背当があるものに限る。)により区
認めるときは、当該営業に係る施設
画された個室に準ずるものとする。
の全部又は一部を青少年に有害な施
設として指定することができる。
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(1) 専ら異性を同伴する客に飲食さ
せる営業(風営法第2条第1項第
条例第27条第1項第1号にかかる
営業の指定基準
1号から第3号まで、第5号及び
(1) 客 同 士 で 行 う 性 的 な 接 触 行
第6号に規定する営業を除く。)
為、又は性的感情を著しく刺激
する行為等を、施設内で容認し
ているもの
(2) 施設内に性的感情を著しく刺
激する絵画、写真、彫刻、照
明、その他の装置装飾等、又は
有害設備・器具等を使用してい
るもの
(3) (1)及び(2)に掲げるもののほ
か、営業方法、施設の設備等に
より官能的雰囲気を醸し出して
いるもの
(2) 専ら異性の客の身体に接触する
2
役務を提供する営業(風営法第2
条例第27条第1項第2号にかかる
営業の指定基準
条第6項第1号及び第2号に規定
(1) 客の身体に接触する役務に従
する営業を除く。)
事している者が、肌の露出が高
い衣類等を着装して当該役務に
従事しているもの
(2) 役務の内容が、胸部、腹部、
大腿部、でん部を客の身体に接
触させるものであるもの
(3) (1)及び(2)に掲げるもののほ
か、役務の内容が、性的な行為
を連想させる内容であるもの
(3) 前条第1項第1号及び第2号に
3
規定する営業(個室等でその内部
条例第27条第1項第3号にかかる
営業の指定基準
が当該個室等の外部から容易に見
(1) 個室等の出入口に、室内から
通すことができないものを設けて
施錠できる設備をしてあるもの
営むものに限る。)
(2) 個室等内の状況を、当該施設
を営む者が把握する手段を講じ
ていないもの
(4) 前各号に掲げるもののほか、娯
楽、遊技、遊興若しくは異性交際
2
条例第27条第1項第4号に規定す
る規則で定める営業は、専ら異性の
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4
条例第27条第1項第4号及び神奈川
県青少年保護育成条例施行規則第11
神奈川県青少年保護育成条例
神奈川県青少年保護育成条例施行規則
神奈川県青少年保護育成条例に基づく
指定基準
又はこれらに類するものに関する
客の性的感情を刺激する人の姿態を
営業で規則で定めるもの
見せる営業(風俗営業等の規制及び
(1) 着衣内の下着、水着その他こ
業務の適正化等に関する法律(昭和
れらに類するものを客が見るこ
23年法律第122号)第2条第6項第3
とができるような人の姿態を客
号 及 び第 6号 に規 定す る営業 を 除
に見せているもの
く。)とする。
条第2項にかかる営業の指定基準
(2) 胸部、大腿部、でん部等の全
部又は一部が露出した衣類等を
着装した人の姿態を客に見せて
いるもの((1)に掲げるものを除
く。)
(3) (1)及び(2)に掲げるもののほ
か、衣類等を着装した人の姿態
で、客の性的感情を刺激するも
のを客に見せているもの
2
前項の指定 は、告示によつて行
う。
3
知事は、第1項の指定をしたとき
は 、当 該施 設を 経営 する 者( 以下
「指定個室営業者」という。)にそ
の旨を速やかに通知しなければなら
ない。
4
指定個室営業者は、第1項の指定
を受けた施設に青少年を客として立
ち入らせ、又は当該施設において青
少年を客に接する業務に従事させて
はならない。
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指定個室営業者は、規則で定める
3
条例第27条第5項の規定による表
ところにより、第1項の指定を受け
示は、次の各号に掲げる者の区分に
た施設に、青少年の立入りを禁止す
応じ、当該各号に定めるところによ
る旨を表示しなければならない。
り行うものとする。
(1) 施設の全部について指定を受け
た者
当該施設の入り口に第7号
様式により表示すること。
(2) 施設の一部について指定を受け
た者
当該指定を受けた場所の入
り口に第8号様により表示するこ
と。
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第1項の規定による指定の理由が
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条例第27条第6項に規定する申
消滅したときは、知事は、当該指定
請は、指定解除申請書(第9号様
個室営業者の申請によつて、指定の
式)により行わなければならな
全部又は一部を解除し、その旨を告
い。
示しなければならない。
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