3. 接平面,高階偏微分,合成関数の偏微分

第 3 回数学演習 2
5.3 接平面
5.3.1 偏微分の幾何学的意味(p.159)
fx (x, y), fy (x, y) は,それぞれ,z = f (x, y) の y を固定して x の 1 変数関数として微分したも
の,x を固定して y の 1 変数関数として微分したものだった。これを視覚的にとらえる。分かり易く
するため,x を固定を x = a,y を固定を y = b とすると図のようになる。
このとき,fx (a, b),fy (a, b) は次のような意味をもつ。
(fx (a, b),fy (a, b) の幾何学的意味)
• fx (a, b) は平面 y = b で切った切断面(xz 平面に平行)上の曲線 z = f (x, b) の x = a にお
ける接線傾き
• fy (a, b) は平面 x = a で切った切断面(yz 平面に平行)上の曲線 z = f (a, y) の y = b にお
ける接線傾き
5.3.2 接平面
曲面 z = f (x, y) の点 P0 (a, b, f (a, b)) における接平面は下の図のように点 P0 で曲面に接する平面
である。
⃗ と平面上の 1 点 P0 で決まった。
この接平面の方程式を考察する。平面の方程式は,法線ベクトル n
⃗ を求める事を考える。
そこで n
曲面上の一般の点を P(x, y, f (x, y)) とする。切断面 y = b 上の曲線 z = f (x, b) の接ベクトル ⃗ℓ と
⃗ を求める。
切断面 x = a 上の曲線 z = f (a, y) の接ベクトル m
1
• 切断面 y = b 上の曲線 z = f (x, b) の接ベクトル ⃗ℓ
切断面 y = b 上で P0 (a, b, f (a, b)),P(x, b, f (x, b)) であるから,

−−→ 
P0 P = 


x−a



f (x, b) − f (a, b)
∴ ⃗ℓ = limx→a
0

−−→

P0 P
=
x−a 
1
0




fx (a, b)
同様に
⃗
• 切断面 x = a 上の曲線 z = f (a, y) の接ベクトル m
切断面 x = a 上で P0 (a, b, f (a, b)),P(a, y, f (a, y)) であるから,

−−→ 
P0 P = 



0

−−→


P0 P
=
1 


y−b
fy (a, b)
0


y−b

f (a, y) − f (a, b)
⃗ = limy→b
∴ m
したがって,


−fx (a, b)
⃗ = ⃗ℓ × m
⃗ = −fy (a, b)
n
1
⃗ で点 P0 を通る平面の方程式は
法線ベクトル n
−−→
⃗ · P0 P = 0
n
∴
− fx (a, b)(x − a) − fy (a, b)(y − b) + (z − f (a, b)) = 0
したがって
曲面 z = f (x, y) 上の点 P(a, b, c) (c = f (a, b)) における接平面の方程式
z = fx (a, b)(x − a) + fy (a, b)(y − b) + c
例 題 1 z = x2 + y 2 の (x, y) = (1, 2) における接平面をもとめよ。
(解)f (x, y) = x2 + y 2 と置くと,fx (x, y) = 2x,fy (x, y) = 2y より,fx (1, 2) = 2,fy (1, 2) = 4
である。したがって,f (1, 2) = 5 より接平面の方程式は
z − 5 = 2(x − 1) + 4(y − 2)
∴
z = 2x + 4y − 5
5.4 高階偏導関数 (p.166)
z = f (x, y) の偏導関数 fx (x, y),fy (x, y) を x と y について偏微分したものを考える。
• fx (x, y) を x で偏微分したものを fxx (x, y),
• fx (x, y) を y で偏微分したものを fxy (x, y),
∂2f
∂2z
(x,
y),
z
,
xx
∂x2
∂x2
∂2f
∂2z
(x, y), zxy ,
∂y∂x
∂y∂x
• fy (x, y) を x で偏微分したものを fyx (x, y),
∂2f
(x, y), zyx ,
∂x∂y
• fy (x, y) を y で偏微分したものを fyy (x, y),
∂2f
(x, y), zyy ,
∂y 2
2
∂2z
∂x∂y
∂2z
∂y 2
例 題 2 次の関数の2階偏導関数を求めよ。
(1) z = ex cos y
(2) z = log(x2 + y 2 + 1)
(解)(1) zx = ex cos y, zy = −ex sin y
∴ zxx = ex cos y, zxy = −ex sin y, zyx = −ex sin y,
(2) zx =
x2
2x
,
+ y2 + 1
zy =
x2
zyy = −ex cos y
2y
,
+ y2 + 1
∴
zxx =
2(x2 + y 2 + 1) − 2x · (2x)
2(−x2 + y 2 + 1)
4xy
=
, zxy = − 2
2
2
2
2
2
2
(x + y + 1)
(x + y + 1)
(x + y 2 + 1)2
zyx = −
4xy
2(x2 + y 2 + 1) − 2y · (2y)
2(x2 − y 2 + 1)
,
z
=
=
yy
(x2 + y 2 + 1)2
(x2 + y 2 + 1)2
(x2 + y 2 + 1)2
領域 D で定義された関数 z = f (x, y) が D 内で
∂2z
∂2z
+
=0
∂x2
∂y 2
を満たすとき,z = f (x, y) を D 上の調和関数という。上記の例題 2(1) は調和関数である。
記号 ∆ を
∆z =
∂2z
∂2z
+
∂x2
∂y 2
と定義して,ラプラス作用素またはラプラシアンと言い,工学の問題に頻繁に登場する。
一般に fxy ̸= fyx であるが,上記の例に示すように,多くの場合,fxy = fyx である。これに関し
て,次の定理がある。
定 理 1(教科書 p.168) f (x, y) について,2階偏導関数が存在して連続ならば
fxy = fyx
5.5 合成関数の偏微分
定 理 2(合成関数の微分公式) 滑らかな 2 変数関数 z = f (x, y) が,滑らかな 1 変数関数 x = ϕ(t),
y = ψ(t) の合成関数 z = g(t) = f (ϕ(t), ψ(t)) であるとき,の t に関する微分は
g ′ (t) = fx (ϕ(t), ψ(t))ϕ′ (t) + fy (ϕ(t), ψ(t))ψ ′ (t)
である。この式は簡潔に
dz
∂z dx ∂z dy
=
+
dt
∂x dt
∂y dt
例 題 3 a は定数とするとき,g(t) = f (a cos t, a sin t) の微分を求めよ。
3
(解) x = a cos t, y = a sin t より
g ′ (t) = fx (a cos t, a sin t)
dx
dy
= −a sin t,
= a cos t である。したがって
dt
dt
dx
dy
+ fy (a cos t, a sin t)
= −(a sin t)fx (a cos t, a sin t) + (a cos t)fy (a cos t, a sin t)
dt
dt
定 理 3(合成関数の偏微分公式) 滑らかな 2 変数関数 z = f (x, y) が,滑らか 2 変数関数 x =
ϕ(s, t),y = ψ(s, t) の合成関数 z = g(s, t) = f (ϕ(s, t), ψ(s, t)) であるとき,の s および t に関する
微分は
gs (s, t) = fx (ϕ(s, t), ψ(s, t))ϕs (s, t) + fy (ϕ(s, t), ψ(s, t))ψs (s, t)
gt (s, t) = fx (ϕ(s, t), ψ(s, t))ϕt (s, t) + fy (ϕ(s, t), ψ(s, t))ψt (s, t)
である。この式は簡潔に
∂z
∂z ∂x ∂z ∂y
=
+
,
∂s
∂x ∂s
∂y ∂s
∂z
∂z ∂x ∂z ∂y
=
+
∂t
∂x ∂t
∂y ∂t
例 題 4 滑らかな 2 変数関数 z = f (x, y) に対し,極座標変換 x = r cos θ,y = r sin θ を行うと
(1)
(2)
zr = zx cos θ + zy sin θ,zθ = (zx )(−r sin θ) + (zy )(r cos θ)
( z )2
θ
(zx )2 + (zy )2 = (zr )2 +
r
である。
(解)(1) xr = cos θ,yr = sin θ,xθ = −r sin θ ,yθ = r cos θ より
zr = zx xr + zy yr = zx cos θ + zx sin θ,
( z )2
θ
(2) (zr )2 +
r
zθ = zx xθ + zy yθ = (zx )(−r sin θ) + (zy )(r cos θ)
= (zx cos θ + zx sin θ)2 + (−zx sin θ + zy cos θ)2 = (zx )2 + (zy )2
• 双曲線関数について
以下のように,指数関数を用いて区間 (−∞, ∞) で定義された関数 sinh x,cosh x,tanh x をそれぞ
れ,ハイパボリックサイン x,ハイパボリックコサイン x,ハイパボリックタンジェント x と呼ぶ。
双曲線関数
sinh x =
ex − e−x
,
2
cosh x =
ex + e−x
,
2
tanh x =
ex − e−x
ex + e−x
このとき,容易に次の公式が成り立つことが確かめられる。
定理4
(1)
cosh2 x − sinh2 x = 1,
(2)
(sinh x)′ = cosh x,
tanh x =
sinh x
cosh x
(cosh x)′ = sinh x,
4
(tanh x)′ =
1
cosh2 x