リート投資の4本の柱: 資産配分に含める意義

Viewpoint 2015年2月
リート投資の4本の柱:
資産配分に含める意義
トム・ボージャリアン、エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼ポートフォリオ・マネージャー
編集者:パーク・ミラー・ジョンソン
魅力的なインカムを提供すると同時に、適度なリスク特性を示し、株式と完全相関ではない
優れたリターンをもたらす不動産投資信託(リート)は、ポートフォリオを分散させる有効な
手段として機能してきました。これらの長く続く特性は、上場不動産証券に備わる固有の性質
が直接の要因であり、戦略的資産配分に含めるべきとの見方を強く裏付けるものです。
投資家は何年にもわたり不動産証券に対して強い関心を示して
おり、2014年も例外ではありませんでした。モーニングスターに
よれば、米国リートのオープンエンド型投資信託に昨年流入した
資金(ネット)は過去20年以上のなかで最大でした。コーヘン&
スティアーズが運用する上場リート投資信託および機関投資家の
個別運用口座にも、多額の資金が流入しました。
リートへ の 長 期投 資を推 奨する根 拠は、過去においてリートが
示してきた4つの特性にあります。コーヘン&スティアーズでは、
これらを「リート投資の4本の柱」と呼んでいます。
1. 高いリターン
2. 魅力的な配当成長
3. 他の資産クラスとの低い相関性(1)
これらは市場サイクル全般にわたり当てはまる特性ですが、最近
の 金融 危 機 時は例 外で、リートを含む 多くの 資 産クラスが 長く
続くパターンから乖離しました。金融危機の影響が緩和されてくる
なかで、リートは従来のパターンに沿った動きを示すようになって
きました。重要なことは、過去2年間にわたり普通株式市場との
相関が著しく低下してきたことであり、リートはポートフォリオを
分散させる有効な手段としての役割を強めています。
一時的に機能しないことがあるとしても、リート投資の4本の柱
は不 動 産とリート の 構 造に備 わ る 根 本 的 かつ 構 造 的 な 特 性に
根ざしているため、市場サイクル全般にわたり持続してきたと考えて
います。次ページ以降、4本の柱をそれぞれより詳細に考察し、
リートを分散ポートフォリオに含めた場合にいかに投資家に役立つ
かを検証します。
4. 適度な価格変動率(ボラティリティ)(2)
図1:強力な4本の柱
1. トータル・リターン
過去の年率平均トータル・リターン(米ドル建て)
米国
リート
株式
債券
グローバル
リート
株式
債券
2. インカム
3. 相関性
4. ボラティリティ
1年
3年
5年
10年
15年
20年
近代リート期
(1993年以降)
配当利回り
対リート
(3ヶ月間)
標準偏差
(3ヶ月間)
33.3%
14.2%
6.6%
16.4%
17.5%
3.1%
19.7%
15.6%
4.6%
10.0%
7.6%
4.9%
13.1%
4.4%
5.9%
12.0%
9.5%
6.2%
11.8%
9.3%
6.0%
3.3%
2.0%
3.0%
–
0.52
-0.07
12.1%
14.4%
2.9%
21.9%
7.6%
-0.6%
14.9%
13.5%
0.1%
14.5%
11.3%
2.5%
7.9%
6.7%
3.7%
10.8%
3.9%
5.3%
10.0%
7.5%
5.5%
10.8%
8.0%
5.6%
3.1%
2.5%
2.8%
–
0.51
-0.02
8.5%
11.5%
4.9%
2015年1月31日現在。 出所:ブルームバーグ、コーヘン&スティアーズ
当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
米国リートはFTSE NAREITエクイティ・リート指数、米国株式はS&P500種指数、米国債券はバークレイズ米国債券総合指数、グローバル・リートはFTSE EPRA/NAREIT先進国不
動産指数、グローバル株式はMSCIワールド指数、グローバル債券はバークレイズ・グローバル債券総合指数をそれぞれ使用しています。指数定義および追加の開示事項については裏表紙を
ご覧ください。
(1) 相関性とは、指数リターンなど2種類のデータ・シリーズが相互に連動して動く度合を示す統計指標です。(2) ボラティリティとは、金融商品の価格が変動する度合を標準偏差で示したものです。
当資料は投資一任運用会社およびそのアドバイザーへの情報提供を目的として、コーヘン&スティアーズ・キャピタル・マネージメント・インクが作成したものです。
リート投資の4本の柱:資産配分に含める意義
第1の柱: 第2の柱: 高いリターンを生み出す可能性
魅力的な配当成長の可能性
米国リートは大半の市場サイクルにわたり一貫して魅力的なリターン
をもたらしており、金融危機の影響に対して抵抗力を示してきま
した。その結果として、近代リート初期の1993年以降、リートの
年 率 平均リターンは11.8%と、株 式の9.3%と債 券 の6.0%を
上 回っています(図2)。この22年間にわたり10,000米ドルの
資 金をリートに投資していた場合、株式市場に投資していた場合
を46,000米ドル上回る規模に拡大したことになります(1)。グロー
バ ル・リートも同 様に、長 期的にグローバ ル株 式とグローバ ル
債券を大きく上回る実績をあげています(図1)。
リートはキャッシュフローを生み出すビジネス・モデルであり、
課税対象収入のほぼ全額(米国では90%以上)を株主に分配する
義務があります。その結果、リートの配当利回りはリスク特性が
類似している他の株式より高い傾向があります。例えば、2015年
1月31日時点でF TSE NAREITエクイティ・リート指 数の配当
利回りが3.3%だったのに対し、S&P500種指数の配当利回り
は 2.0%でした。リートのキャッシュフローが増加すると、多くの
場合、リート法制によって義務づけられている最低水準を上回る
配当性向を維持するために配当を引き上げなければなりません。
それが高い配当成長をもたらしてきました(図3)。
リートが過去にアウトパフォームした要因は、リートの安定した
ビジネス・モデルと不動産のインフレ・ヘッジ特性にあります。この
特 性は長 期の 投 資 資 金を引き付ける傾向があります。リートは
賃 貸 契約に伴う経常的なインカムを生み出す物件を保有、開発
および取得します。物件保有者は通常、更新時に賃料を引き上げる
価格支配力を有しており、
一部の国では公式なインフレ率に連動して
賃料が引き上げられています。保有不動産もファンダメンタルズの
向上やテナントのグレードアップ、現地インフラの改善を受けて、
価値が高まることがあります。こうしたダイナミクスが株主に魅力
的なリターンをもたらす枠組みを提供すると考えます。
図2:近代リート期のトータル・リターン
1992年12月31日を100として指数化
米国リート
米国株式
米国債券
年率平均
リターン
1,200
11.8%
1,000
800
9.3%
600
図3:米国リートのキャッシュフロー成長および配当成長
1992年12月31日を100として指数化
キャッシュフロー(a)
配当(b)
2015年
予想成長率
500
400
1993~2007年
年間成長率
300
9.0%
8.3%
6.4%
200
400
6.0%
200
1993
金融危機以降、米国リートの配当性向はキャッシュフローの平均
60~70%となっており、そのためリートには物件の取得や増築、
改築に投資する高い柔軟性があります(リートは減価償却によって
課税所得が減少するため、最低分配義務を果たしながら留保資金を
増やすことができます)
。この低い配当性向の結果として、キャッシュ
フローがさらに増 加した場合、それに伴い同程 度の増配につな
がると考えられます。コーヘン&スティアーズでは、米国不動産市場
のファンダメンタルズの回復が続くとの見通しに基づき、向こう
数年間にわたり大幅かつ安定した配当成長を予想しています。
1996
1999
2002
2005
2008
2011
2014
100
5.9%
1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015E
2015年1月31日現在。 出所:ブルームバーグ、コーヘン&スティアーズ
2014年12月31日現在。 出所:コーヘン&スティアーズ、FTSE NAREIT
当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
米国リートはFTSE NAREITエクイティ・リート指数、米国株式はS&P500種指数、米国
債券はバークレイズ米国債券総合指数をそれぞれ使用しています。指数定義および追加の開示
事項については裏表紙をご覧ください。
(a) 2014 年までは実績。2015年 のキャッシュフローの増加は、各社の 純 利益、不 動産
損 益 および資 産の予想減価償却費に関する過去のデータを用いた統計モデルに基づき、
コーヘン&スティアーズが推定。次いでモデルによる予想キャッシュフロー増加率を平均して
2015年のリート全体のキャッシュフローを予測。(b) 2007年までは実績。2008~2014
年はコーヘン&スティアーズが算出。2015年の配当成長は、過去の配当性向と利益成長率
を用いた統計モデルに基づき、コーヘン&スティアーズが推定。次いで、モデルによる予想配当
成長率を平均して2015年のリート全体の配当成長率を予測。指数定義および追加の開示事
項については裏表紙をご覧ください。
(1) 1992年12月31日に10,000米ドル投資した資産を2015年1月31日まで保有し、配当
を再投資した場合、FTSE NAREITエクイティ・リート指数で捉えた米国リートの最終価額は
116,406米ドル、S&P500種指数で捉えた米国株式の最終価額は70,834米ドルとなり
ます。当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
追加の開示事項については裏表紙をご覧ください。
2
第3の柱: 第4の柱: 低い相関性
適度なボラティリティ
リートから期待される分散効果は、市況に対して他の資産クラス
とは異なる反応を示す傾向に由来します。リートは多くの場合に、
債券に対してマイナスの相関、株式市場に対して低・中水準の相関
を示しています。コーヘン&スティアーズの調査によれば、リート
の長期的なリターンは主にキャッシュフローやキャッシュフロー
の 増 加 、リスク・プレミアムなど保 有 物 件 の 特 性を要 因として
いま す。リートのリターンは短期的に株式と同程度となる可能性
があるものの、最終的には保有不動産市場のファンダメンタルズ
を反映すると考えられます。
リートは上場している有価証券であるため、投資家は日々のボラ
ティリティが公 開市場で取引されているリターン追 求 型 資 産と
同水準にあると予想しているものと考えられます。しかし、リート
は 金融 危 機 以 降に大きく上 昇すると同時に、ボラティリティが
通常よりも高まっていました。明るい話題として、ボラティリティ
は2007年以前の水準まで低下傾向にあります。その原因は信用
状 況の改善と多くのリートの健 全な財務状 況にあると考えてい
ます。さらに、金融危機後の市場の正常化によって、投資家は相対的
に安定している商業用不動産に注目することが可能となりました。
金融危機の際に、リートを含むほとんどのタイプの株式のリターン
が連動しました。各国・地域の非伝統的な金融・財政政策の影響
から、この傾向はしばらく続きました。しかし、市況が徐々に正常
化するなかで、投資家は個別の企業や産業の成長に影響を及ぼす
要因を重視するようになりました。金融・財政政 策は、特に欧 州
と日本でリターンに大きな影 響を及ぼし続けています。現 在の
違 いは、政 策 決 定や景 気動向からどの企業が恩 恵を受け、どの
企 業が苦戦するかを投資家が認識していると見受けられる点に
あります。
その他、ボラティリティの低下に寄与していると考えられる要因
として、この数年間、リートの経営陣は、バランスシートの強化と
レバレッジ(債 務)の 持 続 可能 な 水準 へ の削減において大きな
前 進を遂げ てきました。また、不 動産 会 社が自社の 得意 分野に
おける中核物件に一段と焦点を当て、非中核資産の売却やリストラ
を進めることによって、効率性を高めると同時に投 資 特 性の簡
略 化を図るという望ましい 傾 向が見られます。こうした 重 要な
ビジネス戦略の変更は、ボラティリティを不動産投資の基本特性
に沿った適度な水準に長く保つことに資すると考えています。
図4:リートと株式の相関
(3ヶ月間)
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
2002
図5:米国リートのボラティリティ
(3ヶ月間)
米国
120%
グローバル
100%
80%
2002~2007年:0.57
60%
2002~2007年:0.64
0.52
0.51
40%
12.1%
20%
2006
2010
2014
2002
2006
2010
2014
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2015年1月31日現在。 出所:コーヘン&スティアーズ、モーニングスター
2015年1月31日現在。 出所:コーヘン&スティアーズ、モーニングスター
当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。
米国リートと米国株式の相関は、FTSE NAREITエクイティ・リート指数とS&P500種指数
に基づきます。グローバ ル・リートとグローバ ル株 式の相関は、F TSE EPRA /NAREIT
先 進 国不動産指数とMSCIワールド指数に基づきます。指数定義および追加の開示事項に
ついては裏表紙をご覧ください。
ボラティリティはFTSE NAREITエクイティ・リート指数に基づく日次リターンの標準偏差
です。指数定義および追加の開示事項については裏表紙をご覧ください。
3
リートは短期売買ではなく長期投資の対象
リターンの乖離がアクティブ運用にもたらす投資機会
投資家はリートを戦略的資産配分に含めることが適切かどうかを
判断するうえで、分散するニーズと投 資目的を踏まえ、リートの
長 期特性を考慮するべきです。リート投資の4本の柱は、長期的
な成長の可能性がある魅力的なインカムをもたらしつつ、リスク
調整後リターンの向上が見込まれるという点で、説得力があると
考えています。期待される分散効果を十分に活用するためには、
足元の市場環境やその動向についての見方に基づき配分を変更
するよりも、適切な資 産 構成を 決めて定 期的にリバランスする
ことによって、遥かに大きな利益が得られると考えています。
上場投資信託などパッシブ運用戦略の利用が増えているものの、
アクティブ運 用によるリート投資信託は、過去20年間の多くの
期間においてベンチマークをアウトパフォームしてきました (1) 。
その一因は、リートの様々な不動産タイプのなかでリターンのばら
つきが生じ、アクティブ運用を通じた付加価値の創出機会を提供
していることです。例えば、プレハブ住宅に特化した米国リート
は2014年に平均で46%上昇した一方、独立系小売店舗に特化
した米国リートのリターンはわずか9%でした(2)。アクティブ運用
マネージャーは、アウトパフォームする可能性が高いと考える様々
な不動産セクターや地域、個別銘柄を重視して、ポートフォリオの
配分を動的に変更することができます。またアクティブ運用では、
インデックス・ファンドが 普 通 株 式 市 場 へ の 配 分 の 一 部として
通常保有しなければならないリスクの高い銘柄の保有を削減する
こともできます。このアプローチはアクティブ運 用マネージャー
の能力次 第で、投 資家に優れた成果を長 期的にもたらすことが
できます。
資産の10~15%をリートに配分することによって、
株式と債券に集中したポートフォリオに有益な
分散効果をもたらすことが可能です
(1) 2014年12月31日現在。出所:モーニングスター。モーニングスターの不動産分 類に
属する米国投資信託のなかで、1994年から2014年までの各年に報酬・費用控除後で各
ベンチマークを上回った投資信託の割合を平均したもので、平均して57%の投資信託がアウト
パフォームしています。(2) セクター別リターンは、コーヘン&スティアーズがFTSE NAREIT
エクイティ・リート指数に基づき算出したものです。
コーヘン&スティアーズ
不 動 産
リ ア ル ア セ ット 投 資 の 原 点
指数定義
投資家は当資料に記載された指数に直接投資することはできません。指数の実績は手数料や諸経費等を控除したものではありません。
バークレイズ・グローバル債券総合指数は、グローバル投資適格格付け債券市場の広範な指標です。バークレイズ米国債券総合指数は、満期が1年以上の米国の国債、社債およびモーゲージ
担保証券で構成されています。FTSE EPRA/NAREIT先進国不動産指数は、上場リートおよび浮動株が1億米ドル超で収入の半分以上が不動産関連事業から生じている先進国市場の
上場不動産会社で構成される時価総額加重のトータルリターン・インデックスです。FTSE NAREITエクイティ・リート指数は、主に不動産の持分に投資する全上場リートの時価総額加重
インデックスです。当指数は全上場リート全体のパフォーマンスを反映するように設計されています。MSCIワールド指数は、先進国の株式市場のパフォーマンスを計測するように設計された
浮動株調整後の時価総額加重インデックスです。S&P500種指数は、米国株式市場の一般的なパフォーマンス指標として頻繁に利用される大手上場500銘柄のインデックスです。
重要な開示事項:当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。当資料はコーヘン&スティアーズが運用、または運用助言する特定の商品の運用成果を
保証するものではなく、また将来の投資収益や運用成果を保証するものではありません。将来における同様の動向の実現性、その動向の開始時期等を示唆、あるいは保証するものではあり
ません。当資料中の記載内容、市場動向、見解等は資料作成時のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料は特定時点における市場環境を評価するものであり、
投資助言として依拠するべきではありません。また、当資料は投資成果の予測または提示を目的とするものではなく、特定の証券を推奨または募集するものではありません。当資料は信頼
できると考えられる情報源を基に作成されておりますが、情報の正確性を表明、及び保証するものではありません。また、当資料のみを基準に投資の適合性をご判断することを目的
とした資料ではありません。当資料中の過去のデータは、将来のいかなる成果を保証するものではありません。当資料に記載されたいかなる市場予測も実現する保証はありません。
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