〈事例解説〉CAE活用によるプレス金型製作の納期短縮とコスト削減

事例解説2
CAE 活用によるプレス金型製作の
納期短縮とコスト削減
ムツミ工業㈱
福田智弘*
当社は金型、塑性加工機および周辺装置のメー
カーとして 1949 年に創立し、自動車関連はもと
CAE 導入前の問題
より家電や航空機といったさまざまな産業で試
作・製造工法の開発から工程設計、金型・専用機
プレス成形品をつくるための金型を考案しよう
械の設計・製作、流動テスト、出荷、現地立上げ
とする場合、その対象物をどのような加工条件・
支援と一連の生産支援をしている。
『良い製品を
ツール形状で加工していくかという、
「取っ掛かり
安く、早く』をモットーに、
「つくるためのモノ」
の作業」が重要となる。それが、工程設計である。
を提供するだけではなく、
「つくるコトの支援」を
工程設計の良し悪しは対象となるプレス成形品
しているメーカーである。
を担当する設計者の知識や経験といったスキルに
大きく依存し、その差が製品の品質の差として表
CAE 導入の背景
れてしまう。また、プレス加工を行ううえでも、
ある程度のスキルを持ち合わせていない者には、
当社では、80 年代初頭より多数の NC 加工機、
塑性加工上ありえない形状や物理的に不可能な加
CAD/CAM システムの導入が本格的に始まり、
工か否かが事前に判断できない。つまり、成形加
2001 年 に Space−E/modeler、03 年 に は CAITA
工をするうえで、どこに・どんな問題があるかが
V 5 の導入と 3 次元による金型設計に着手し、高
不明確であり具体的にならない。そういった問題
性能・高精度の加工機も導入してきたことで、複
から、工程設計の無理や無駄は実際に金型を製作
雑な形状の部品を成形する金型を製作できる環境
し、プレスで加工してみないと判明しないという
が整いつつあった。しかしながら、プレス成形品
ことになる。
の形状は、より複雑化し、顧客からの高難易度か
未熟な設計をもとに金型を製作し、試加工(ト
つ高精度の品質や納期短縮の要求が進むことが予
ライ)を行う。そこで問題があれば、その場で現
想できた。当社は、金型製作のうえで肝となる工
場作業者が経験や勘を頼りに型部品を削るなどを
程設計に要点を置くことにし、競合他社に先駆け
してトライを続ける。そうやって部品をいくつも
て 05 年に CAE・解析ソフトの JSTAMP/NV(㈱
つくり・削りと試行錯誤を繰り返し、現場で製品
JSOL)を導入した。
の品質をつくり込んできた。このようなことが、
金型の製作期間や製造コストが過大となる主な原
因であった。たとえば、職人と言われる熟練作業
者がいて、1 度のトライで製品のつくり込みがで
*
(ふくた ともひろ):小牧工場 技術課
〒462−0866 名古屋市北区瑠璃光町 5−1
TEL : 052−913−2111
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課長
きても、それはその人の技能・技術に支えられた
ものであって、継続的に行うことは不可能である。
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