于 璐 氏から学位申請のため提出された論文の審査要旨 題 目 Aberrant cerebellar development of transgenic mice expressing dominantnegative thyroid hormone receptor in cerebellar Purkinje cells. (プルキンエ細胞に変異甲状腺ホルモン受容体を発現するトランスジェニックマウスの 小脳発達に対する影響) 発表予定論文 Aberrant cerebellar development of transgenic mice expressing dominant-negative thyroid hormone receptor in cerebellar Purkinje cells. Endocrinology(投稿中) Lu Yu, Toshiharu Iwasaki, Ming Xu, Ronny Lesmana, Yu Xiong, Noriaki Shimokawa, William W. Chin, Noriyuki Koibuchi 論文の要旨及び判定理由 甲状腺ホルモン(TH)は核内の甲状腺ホルモン受容体(TR)を介し,組織の分化,成長に作 用する。成長期のTH欠乏により小脳を始め,中枢神経系に様々な不可逆的な異常が起こる ことが知られている。しかし発達期中枢神経系におけるTHの作用機序は明らかではない, この作用を調べるために作出された変異TRβ1のknock inマウスを用いた研究では,小脳 異常の表現型が出るものの,一般成長も遅延し,小脳表現型の異常が変異TRの全身におけ る発現による身体代謝低下の影響である可能性を除外できなかった。そこで,本研究では, 小脳発達におけるTH及びTRの特異的作用を解析するため,プルキンエ細胞特異的にTR作用 を抑制する動物モデルを作出した。プルキンエ細胞特異的に発現する,L7/pcp2遺伝子の プロモーター領域を用いて,ヒトの変異TRβ(G345R)(Mf-1)を発現するトランスジェニッ ク(Tg)マウスを樹立した。Mf-1はTH結合能が低下しているため転写が活性化しない。プル キンエ細胞特異的なこの変異TRの発現により,正常のTR作用は競合的に阻害される事が予 想された。CV-1細胞を用いてreporter gene assay を行ったところ,Mf-1は,TRβ1に対 しドミナントネガティブ作用を示した。Tgマウスの体重及び小脳重量は,出産後から有意 差は認めなかった。小脳機能をRotarod法を用いて解析したところ,ホモマウス(Ho)は生 後15日(P15)及びP30において有意な低下を示した。カルビンディンの免疫組織化学では, P7及びP15においてHoでプルキンエ細胞の大きさが小さく,樹状突起の進展が乏しかった。 また,顆粒細胞の外顆粒層から内顆粒層への移動の遅れが認められた。小脳初代培養では, Hoは野生型(Wt)と比べ,プルキンエ細胞樹状突起のT4依存性の進展が約60%に抑制された。 さらに,半定量的RT-PCRより,同日齢のWtと比較してHoの小脳でのTH標的遺伝子mRNAの発 現は,IP3R, RORα, BDNF及びNT-3で有意に抑制されている時期があった。 以上から,THによる小脳の発達において,プルキンエ細胞に限定したTH作用の抑制のみ で小脳全体の発達が遅延することが分かった,本研究は小脳におけるTH作用の解明に大き く貢献でき、博士(医学)の学位に値するものと判定した。 2014年2月21日 審査委員 主査 副査 副査 群馬大学教授(医学系研究科) 機能形態学分野担任 依藤 宏 教授 印 群馬大学教授(医学系研究科) 病態制御内科学分野担任 山田 正信 教授 印 群馬大学教授(生体調節研究所) 分子細胞生物学分野担任 石崎 泰樹 教授 印 最終試験の結果の要旨 成人と発達期の甲状腺ホルモンの作用の違いについて,および小脳における甲状腺ホル モン受容体の細胞による分布の違いについて 試問し満足すべき解答を得た。 2014年2月21日 試験委員 群馬大学教授(医学系研究科) 応用生理学分野担任 鯉淵 典之 印 群馬大学教授(医学系研究科) 機能形態学分野担任 依藤 宏 印 試験科目 主専攻分野 応用生理学 A 副専攻分野 機能形態学 A
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