平成 25 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会
講演番号: 12
RBF ネットワークを用いた遺伝子制御ネットワーク推定法
INFERENCE METHOD OF GENE REGULATORY NETWORKS USING RADIAL BASIS FUNCTION NETWORK
黒川弘章 1
Hiroaki Kurokawa
木崎直幸 1
Naoyuki Kizaki
1
東京工科大学大学院 バイオ・情報メディア研究科 コンピュータサイエンス専攻
Graduate School of Bionics, Computer and Media Sciences, Tokyo University of Technology
はじめに
近年,遺伝子の発現量の時系列データから様々な遺伝
子間の制御関係を表した遺伝子制御ネットワークを推
定する研究が盛んに行われている.推定法のひとつに,
ニューラルネットワーク (NN) による推定法 [1] がある.
しかしながら,NN は関数近似において多くの学習時間
を必要とする問題点がある.そこで,本研究では NN よ
りも学習時間の短い RBF ネットワーク (RBFN) を関数
近似に用いることで推定時間を短縮できる手法を提案す
る.NN を用いた従来法と遺伝子制御ネットワークの推
定精度および推定時間を比較し提案法の有効性を示す.
1
RBF による遺伝子制御ネットワーク推定法
N 個の遺伝子の制御関係を連立微分方程式モデルで表
すと式 (1) のようになる.
2
dXi
= Gi (X1 , ..., XN ), (i = 1, ..., N ).
dt
表1
遺伝子数
近似法
敏感度 特異度 推定時間
6
RBFN
0.9300 0.3365 0.154s
6
NN
0.8975 0.5251 25.0m
6
NN+MI[2] 0.7517 0.5368
30
RBFN
0.7610 0.4444 6.74s
30
NN
0.9060 0.4326 12.2h
30
NN+MI[2] 0.9659 0.9902
(1)
Xi は遺伝子 i の発現量であり,関数 Gi は, 遺伝子 i の
発現量の変化を表す未知の関数である.この関数 Gi を
RBFN を用いて近似し,得られた関数から制御関係を抽
出し N 個の遺伝子からなる遺伝子制御ネットワークを
推定する.
提案法と NN による従来法の推定結果を表 1 に示す.
RBFN は中間層ニューロン数で結果が異なるため,ニュー
ロン数を 2 から 101 まで変化させた 100 パターンの平均
を示した.また,NN は結合荷重の初期値をランダムに
変えた 100 回の試行の平均である.また,NN に最大入
り次数 (MI) と呼ばれる経験によって定められる条件を
適用した結果 [2] を引用する.ここで推定時間は計測さ
れていないが NN による従来法と同等である.
結果より,提案法は推定時間において大幅な改善が見
られるが,推定精度については従来法に及ばないことが
分かる.そこで,推定精度の向上のため,多数決による
遺伝子制御ネットワーク推定法 [2] を提案法に適用する.
実験内容と結果
本研究では,人工的に作成した 10 遺伝子と 30 遺伝子
のネットワークと大腸菌内の 6 遺伝子のネットワークを
対象に推定を行った.RBFN は中間層ニューロン数を 2
から 101 まで変化させた 100 回の試行を行い,また NN
は結合荷重の初期値をランダムに 100 回の試行を行い,
それぞれの結果を用いて多数決法を適用した.最大入り
次数を適用した方法による結果 [2] と合わせて,結果を
表 2 に示す.
3
-12-
遺伝子制御ネットワークの推定結果
表2
多数決法を適用した場合の推定結果
遺伝子数
近似法
敏感度 特異度 推定時間
6
RBFN
0.9167 0.6667 15.4s
6
NN
0.9167 0.6333 41.7h
6
NN+MI[2] 0.8333 0.5667
10
RBFN
0.8095 0.9385 1.13m
10
NN
0.8095 0.9777
153h
30
RBFN
0.8382 0.8689 11.2m
30
NN
0.8088 0.9434 1220h
30
NN+MI[2] 1.000 0.9919
表 2 より多数決法を用いることで提案法の推定精度を
改善できていることが分かる.結果的に NN を用いた従
来法と同程度の推定精度を達成しており,推定時間は短
縮していることから,RBFN を用いた遺伝子制御ネット
ワーク推定法の有効性が示された.
おわりに
本研究では,RBFN を用いた遺伝子制御ネットワーク
推定法を提案した.従来法と比較して大幅な推定時間の
改善が認められた.また,多数決法を適用することによ
り従来法と同等の推定精度が得られることを示し,提案
方法の有効性を示した.
4
参考文献
[1] 木村周平,園田克樹,山根総一朗,松村幸輝,畠山眞理
子,”遺伝子ネットワークのニューラルネットワークモデ
ル同定法の提案”,情報処理学会研究報告,2007-BIO-8,
pp.79-84,2007.
[2] 平井康輝,黒川弘章,”ニューラルネットワークを用い
た遺伝子制御ネットワーク推定法の改善”,信学技報,
NLP2009-131,PP27-32,2009.
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