高熱伝導性コンポジット用の h-BN 剥離シートフィラーを開発

高熱伝導性コンポジット用の h-BN 剥離シートフィラーを開発
高熱伝導性コンポジット用の h-BN 処理技術
(産総研)
冨永雄一・佐藤公泰・島本太介・今井祐介・○堀田裕司
[2PA27]
(Tel: 052-736-7383、[email protected])
電気絶縁性、高熱伝導率、低硬度を併せもつ六方晶窒化ホウ素(h-BN)を用いた高熱伝導性
コンポジット材料の熱伝導率を向上させるための h-BN の機械的処理技術及びその技術に
よるアスペクト比の高い h-BN 剥離フィラーを開発した。
近年、急速に進展する情報・家電・輸送機器産業などでは、電子機器の小型化・集積化
に伴う放熱対策として、樹脂の熱伝導性向上が求められている。特に電気自動車(EV)や
ハイブリッド自動車(HEV)の普及とその進化に伴い、電子系部材やモータの高出力に伴う熱
対策としての絶縁系の放熱樹脂材料が重要となっている。しかしながら、樹脂の熱伝導率
はセラミックス材料と比較して極めて低いため、アルミナや窒化ホウ素などの高熱伝導フ
ィラーを大量に混合することによって熱伝導パスを形成させ高熱伝導化を図るのが一般的
である。セラミックスフィラーの中でも、板状の一次粒子が積層した h-BN は、高熱伝導率
を有するだけでなく低比重、低硬度、且つ剥離することでパーコレションを形成するため
低フィラー充填率で熱伝導率の向上が期待できるなど、高熱伝導用コンポジット材料のフ
ィラーとして注目されている材料の一つである。しかし、①熱伝導率に異方性がある(図
1)、②形状異方性が強いために成形時に配向しコンポジットの熱伝導率は等方的ではない
(図1)、③素材コストが高い、④非膨潤性のために効率的な剥離は困難などの課題があり、
h-BN フィラーを活用するための技術開発が重要な研究課題となっている。
成形工程でフィラーは配向し、
コンポジットの熱伝導率は異方
性を生じる。
h-BN の熱伝導率は異方性
図1
(左)六方晶窒化ホウ素(h-BN)の模式図、
(右)成形後のコンポジット
中の h-BN フィラーの状態図
そこで、我々は、板状構造を有する h-BN フィラーに液中で高せん断力を加えることで、
高アスペクト比を有する h-BN の剥離フィラーの効率的な製造技術を検討した。従来、板状
構造の h-BN フィラーの剥離法としては、液中での超音波照射が報告されているが、超音波
のキャビテーションによる衝撃波は、h-BN の端面
だけでなく、(0001)面方向にも加わるため、h-BN
が長手方向に破砕してしまい、アスペクト比が低
下してしまう。さらに、超音波法は、剥離処理に
長時間要するため、生産性が非常に悪いことが問
題であった。一方、高せん断力を加える高速せん
断法では、高圧ポンプによってスラリーを押出し、
衝突部でせん断流を発生させる(図2)。形状異方
図2 高速せん断法の剥離挙動モデル
性の高い h-BN は流体の流れに沿って配向するた
め、h-BN の端面に向かって非常に強いせん断力が
加わり、h-BN が剥離すると考えた(図2)。事実、
超音波法では h-BN の粒径が原料の 70%以下に低
下したのに対し、高速せん断法では粒径の低下は
ほとんど観察されず(図3)、アスペクト比が平均
して 200 %向上することを見出した。その結果、
h-BN 剥離フィラーを含有したコンポジットでは、
従来の h-BN フィラーを用いたコンポジットの約
2 倍の熱伝導率を示し、低フィラー充填量で高熱
伝導率を実現できることを見出した。
また、我々は、可とう性を有する h-BN 凝集球
体(h-BN 複合樹脂ビーズ)を機械処理によって調
製する技術の開発にも成功し、充填した開発ビー
ズを加熱加圧成形することで等方的な熱伝導率を
有する高熱伝導性コンポジットを作製することが
できることを見出した。
軽量性を有するプラスチックは、省エネルギー
並びに地球環境保全の観点からも重要な低環境負
荷型の材料である。セラミックスフィラーのハンド
リングに関する研究がプラスチックの性能向上に
寄与できれば幸いである。
<適用分野>
図3 原料と高速せん断法で剥離した
h-BN フィラーの粒度分布と厚
さ分布及び電子顕微鏡写真
電気・電子機器や EV・HEV 等の輸送機器に於ける電子系部材やモータの高
出力に対応したサーマルマネージメント部材としての応用展開が期待できる。