第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 5 月 31 日 (土)16 : 40∼17 : 30 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 内部障害!代謝 3】 1278 2 型糖尿病患者における筋肉量と筋力の関連性 肥満の有無による検討 飛田 前川 1) 良1),林 聡3),堀江 秀樹2),森野勝太郎3),岩井 稔2) 滋賀医科大学医学部附属病院 滋賀医科大学医学部附属病院 3) 宏治1),木下 妙子1),川口 民朗2),前川 リハビリテーション部,2)滋賀医科大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 昭次1), 循環器内科, key words 2型糖尿病・肥満・筋機能低下 【はじめに,目的】 筋量と筋力には,健常者において正の相関関係が認められているが,2 型糖尿病(以下,DM)患者ではその関係が崩れ,筋の 質的低下が示唆されている。それには糖尿病多発神経障害の合併や重症度,IL" 6 や TNFα など炎症性サイトカインの増加など が影響しているとされている。これまでに DM 患者における身体機能に関する研究は多いが,肥満の合併とその身体機能との関 係には不明な点が多い。 本研究の目的は,肥満の有無で DM 患者の身体的特徴の違いを明らかにし,退院後の効果的な運動指導に役立てることである。 【方法】 対象患者は,2012 年 10 月から 2013 年 9 月までに,当院の糖尿病内分泌内科に教育入院した DM 患者 66 名(年齢:55.5±13.4 歳,男性:女性=44 : 22,体格指数(Body Mass Index;以下,BMI) :26.3±5.6,入院時 HbA1c(NGSP) :9.88±1.86)を対象 とした。尚,対象に重篤な認知症や整形疾患,片麻痺を有している者はおらず,院内 ADL は自立していた。対象を BMI : 25.0 をカットオフ値として,非肥満群(NOG,24 例,年齢:62.7±6.8 歳,男性:女性=17 : 7,BMI : 21.22±2.37,入院時 HbA1c (NGSP) :9.68±1.99) と肥満群 (OG,42 例,年齢:51.4±14.6 歳,男性:女性=27 : 15,BMI : 29.21±4.70,入院時 HbA1c (NGSP) : 10.00±1.80) ) の 2 群に分類した。身体機能として,握力および膝伸展筋力を測定した。握力は,TOEI LIGHT 社製 握力計 ST T" 1780 を使用し,2 回測定した内の最大値を採用した。膝伸展筋力は,OG 技研社製 Isoforce GT" 310 を使用し,膝屈曲 60 度で の最大等尺性筋力を 3 回測定した内の最大値を採用した。体組成分析(OWA medical 社製 X" scan)は,生体電気インピーダン m2)を測定し ス法を用いて,除脂肪量指数(Free Fat Mass Index ; FFMI,kg! m2)と脂肪量指数(Fat Mass Index ; FMI,kg! た。 各指標は平均値±標準偏差で示し,2 群間での各指標の比較には,カイ二乗検定または対応のない t 検定を用いた。身体属性に 差がある場合は,その変数を調整因子として共分散分析を行った。分析には SPSS Statistics 20 を用い,統計学的有意差判定基準 は 5% 未満とした。 【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は,本学倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:第 25−78 号)。また,本研究では世界医師会におけるヘルシンキ 宣言に則り,事前に対象患者に対し十分に説明を行った上で同意を得た。 【結果】 体重と BMI は,NOG において OG に比べ有意に少なかった(NOG : 57.0±9.5,OG : 81.5±16.6,p<0.01 ; NOG : 21.22±2.37,OG : 29.21±4.70,p<0.01) 。膝伸展筋力は,NOG で有意に高かった(1.95±0.64 vs. 1.62±0.53,p=0.030)。FFMI,FMI ともに NOG で有意に少なかった(16.63±1.47 vs. 19.87±2.43,4.14±1.52 vs. 9.22±3.30,p<0.01)。尚,握力に有意差は認めなかった(32.6± 9.5 vs. 35.1±11.4,p=0.411)。 【考察】 一般に肥満患者においては自重の負荷により,筋肉量,筋力ともに非肥満患者に比べて大きい事が知られている。一方 Park らは,DM 患者において筋肉量に対する筋力の比率(筋量筋力比)が健常者と比べて低いことを明らかにした。本研究において も,FFMI は NOG で有意に少なかったが,筋力(膝伸展筋力)は有意に高値を示したことから,肥満のある DM 患者では,肥 満を伴わない DM 患者よりさらに筋の機能低下が進んでいると考えられる。 【理学療法学研究としての意義】 肥満のある 2 型糖尿病患者では,インスリン感受性改善に伴う耐糖能や脂質代謝,血圧の改善のために体重減少が重要である が,本研究により運動指導の際には,ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動だけでなく,重錘やセラバンドなどを用い た筋力増強を目的としたレジスタンストレーニングに重きを置く必要があると考える。
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