当院における臨床実習指導の取り組み

ポスターⅡ- 3
当院における臨床実習指導の取り組み
渡邊千佳 1、安原教子 1、奈良享平 1、大池加純 1、工藤未来 1
1 医療法人芙蓉会村上病院 リハビリテーション科
キーワード;臨床実習指導・小人数チーム・実習形態
【はじめに】
近年、臨床実習指導者の低年齢化等の問題が挙げられ
ており、臨床実習の質について問われる機会が増えてき
ている。臨床・教育経験の少ない理学療法士は、実習形
態など臨床実習に関する知識にもばらつきがあり、多く
は自分が学生時代に経験した指導方法で実習生の指導に
あたっている。
また、臨床実習形態に関しても、従来から実践されて
きた「患者担当制」での問題点やクリニカル・クラーク
シップ(以下CCS)の導入も考えられている。
患者担当制は、一人の患者に対する評価から治療に至
る過程を連続して経験できるという利点がある。
しかし、
レポート中心のフィードバックであることや担当症例数
不足、リスクマネジメントの観点から考えると実習形態
は見直すべきとされている。
それに対し、CCSは、一人の患者を担当するのでは
なく、指導者の業務のあらゆる側面を臨床現場で体験し
ていく学習システムであり、指導者の助手という観点か
ら安全性も確保されている。また、他疾患の診療体験も
可能で、リアルタイムでのフィードバックが可能という
利点がある。しかし、臨床実習の指導としては手薄にな
るのではないかという意見もある。
このような臨床実習の課題や傾向を踏まえて、当院の
臨床実習を振り返ってみると、臨床実習の指導方法に明
確なものはなく個々の理学療法士に委ねられている状況
であり、当院の臨床実習の課題も多く挙がっていた。そ
の対策として今回、平成 24 年から平成 26 年にわたり臨
床実習において取り組んできたことを報告し、今後の課
題を明確にすることを目的とする。
【当院の臨床実習状況】
当院の理学療法士は平成 26 年 1 月時点で、計 21 名在
籍しており、その内ケースバイザー(以下CV)として
の指導可能者は 8 名である。また、平成 25 年度に受け入
れた実習生は 17 名で、1 年に 2 回以上は臨床実習指導を
行っている状況である。
【問題点】
当院臨床実習指導で挙げられた問題点として、
(1)直
接指導にあたるCVは 2~6 年目の経験の浅い理学療法
士であり、臨床実習指導に対する知識不足から指導格差
を生じていること、
(2)当院は 365 日リハ体制であるた
め、指導者の不規則な休みが実習の進行を遅らせてしま
う場合があること、
(3)時間調整が難しく、CVの業務
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が非常に繁雑で負担が増大していることであった。
【取り組み】
CVとして指導にあたるメンバーで少人数のチームを
結成し、そのチーム内で実習形態や指導方法などの情報
を共有し合い、指導方法を統一した。実習形態に関して
は、患者担当制+一部CCSを導入した。一人の患者を
通して評価から治療に至る過程を経験しながら、担当症
例以外は診療参加型の時間内診療(見学・模倣・実施)
とし、双方の利点を生かせるような実習形態とした。
個々の実習生に合わせた実習を円滑に進めるための対
策として、スケジュール表を作成し実習生とCVが随時
確認・修正していけるようにした。また、早い段階で実
習生の個性や知識水準を知るために、実習 1 週目にCV
と評価スケールの確認を行うこととした。
時間を有効活用しCVの負担を軽減するための対策と
して、実習生 1 名につき担当CV2 名体制とした。また、
時間外業務を軽減するため、CVの担当患者数へも配慮
した。
【考察】
少人数のチームを結成することで、指導方法統一がさ
れ、指導者間の指導格差を軽減することができ、情報共
有しやすい環境ができた。また、実習生と担当CVが共
にスケジュールの作成や評価スケールの確認を行うこと
で、捉えにくい実習生の個性を早い段階で確認し、個人
に合わせた実習を円滑に進めやすくなった。さらに、C
Vの 2 名担当制やCVの患者数を配慮することで、365
日リハ体制による不規則な休みにも対応しやすく、業務
の繁雑さにも改善がみられ負担軽減につながったと考え
られる。
加えて、課題も明確となった。現在、当院ではセラピ
ストが各病棟に専属配置となり、それぞれの動きにばら
つきがあるため、CV同士やチーム内での情報交換を行
いにくくなっている。また、実習生も増加しており、同
時期に実習生が重なるとチーム内だけで今の体制を機能
させていくことは難しくなってくると考えられる。
【おわりに】
今後は、チーム内だけでなく、セラピスト全員で臨床
実習指導に関する知識や指導方法を共有していける方法
について計画し対応していくことが必要である。