チモシー主体草地の窒素施肥法が収量とマメ科率に及ぼす影響

北海道草地研究会報
2
1 :211-213(1987)
チモシー主体草地の窒素施肥法が収量と
マメ科率に及ぼす影響
吉沢
晃・下小路英男*. 中 村 克 己 ・ 大 槌 勝 彦 ・
筒井佐喜雄(天北農試バ北見農試)
緒
宅三園
田
チモシー主体の採草地では,混播マメ科牧草としてアカクローパが多く用いられる。しかし,アカクロ
ーパは造成後短年で、減少することが多い。混播マメ科牧草の維持は,草地の生産性向上や栄養改善にとっ
て重要である。本報では,早春と l番刈り後の窒素施肥配分が,収量とマメ科率 l
乙及ぼす影響を検討レた。
材料および方法
試験は,天北農試圃場で行われた。
試験区の配置は,混播マメ科草種を主区,窒素施肥法を細区とす
8年 5月で,チモシ一品種「センポク j (播
る分割区法とし, 3反復で実施した。試験区の造成は,昭和 5
種量 1kg/10a)に混播マメ科草種として,アカクローパ(品種「ハミドリ j ,RC区と略記)とラジノ
クローパ(品種「カリフォルニアラジノ j ,LC区)を用い,それぞれの混播草地とした。マメ科の播種
量は RC区
, LC区それぞれ 5
0
0,3
0
09
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0aで,比較としてチモシー単播区 (TY区)を設けた。窒
g/1
0aを,早春と l番刈り後 l
乙配分することとし,
素施肥配分は,道北地方の窒素施肥標準量の年間 6k
3-3k
g/1
0a (N 3区), 4-2(N4区), 6-0(N6区)の 3処理とし,対照として無窒素の O
-0(N0区)を設けた。施肥処理は造成 2年目から 4年固まで行った。
造成年の基肥は 3-2
0-5
(N-P2 05-K 2 0k
g/1
0a),刈取りは 8月 3
1日の l回
, 2年目以降は窒素処理のほか,全区共通に
5-5(P2 05 - K2 0 k
g/1
0a) を早春と l番刈り後に施用した。刈取りは, 6月下旬と 8月下旬の
2回刈りで、行った。
結 果
1
. 収量と窒素施肥配分の関係
早春と 1番刈り後の窒素施肥量
がチモシー,マメ科それぞれの乾
物収量に及ぼす影響を,図 1(1
番草),図 2(2番草)に示した。
l番草では各年次 RC区
, LC区
とも早春窒素施肥量の増加に伴い
チモシー収量が増加し,マメ科収
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量が減少した。 2番草では, RC
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一
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厚
,十ラジノ a
チモシ一単播区
o
区は 1番刈り後の窒素施肥量に応
じて,各年次とも N3区のチモシ
1
1
図 1 1番草の乾物収量と窒素施肥量の関係
-211-
34
6
J
. Hokkaido Grassl
. S
c
i
. 2
1・2
1
1- 2
1
3(1987)
収量が最も多く,逆にマメ科収量
が少なかった。 L C区のチモジー
収量は年次で傾向が異なり, 2年
次が RC区と同様で N3区が多く
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1
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図 2 2番草の乾物収量と窒素施肥量の関係
3に示した。 RC区は 2年次で増
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チモシ一+
アカクロパ区
nunu
3
. 4年次では早春窒素施肥
量が少ないほど高かった。しかし, N 0区の増収効
収効果が認められず,
春窒素施肥量が少ないほど,高い増収効果が認めら
1
5
0
1
0
0
れた。 R C区. L C区とも 4年次が最も高い値を示
した。
5
0
2
. マメ科率と窒素施肥配分の関係
3"
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¥
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主
o
3 4.6
早春窒素施肥量
2番 草 マ メ 科 率
3
. アカクローパの株数の推移
2年次から 4年次までのアカクローパの株数の推
1番 草 マ メ 科 率
あった。
1
0
0とする
グ
、 ヘニ
2年次
.
.
.
.3"
{
)
・
d
3
0
¥rJ
以上であったが, 4年次は NO区だけであった。 L
C区は 3年次が 3
0%以上で,他の年次は低い値で
6
混播区チモシー収量の指数
維持したのは,各年次とも RC区の NO区だけであ
0%
2番草では R C区が 2, 3年次でいずれも 3
34
注)単播区チモシー収量を
l番草で 3
0%のマメ科率を
3
0%以下であった。
0
(kg/l0a)
マメ科混播による増収効果
畜栄養の面から,少なくても 3
0%のマメ科率が望
3年次がやや高く 1
0
'
"2
5%であったが,いずれも
守
主
:
二
図 3 1番草のチモシー乾物収量に対する
t
(
_示した。一般に,家
各年次のマメ科率を,図 4
った。 L C区は,少雨でチモシ-収量の少なかった
¥ラジノクロパ区
・
0 ・ 2年次
果は, N 3区より低かった。 L C区は各年次とも早
ましいとされている。
2年 次
→
・
-3
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Y区を 1
0
0とする指数で表し,図
人 、 . 卜 242 飢
段
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ヌ一(
マメ科混播による増収効果を, T
{
)
・
一
。
・・上
る 1番草のチモシー収量 l
乙対する
一時
次に,年間収量の大部分を占め
J h M 33uu
で差が少なかった。
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メ1
叩
附
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乾チ
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ノ
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L C区のマメ科収量は,施肥処理
人 九γ
,
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千
三
。
。
3, 4年次は N4区が多かった。
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三
X 100kg/10a
6
4
テモシー+ー
へ‘コアカクローパ昆
Q
内・・・ベコ
0
.
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:
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,平
二
一
・4
チモシー十
畠
アカクローパ区
3
0十&ふ前
¥
平
¥
主
ヨ
移を,図 5t
乙示した。施肥処理間では各年次とも,
株数に有意差が認められなかった。株数は年次の経
過とともに漸減し, 2年次の平均 3
7株 I
n
tから 4年
,
乙 4年次の早春から
n
tとなった。 とく l
次の 8株 I
l番刈り時の間で枯死が多かった。施肥処理問で株
-212-
図 4 マメ科率と窒素施肥量の関係
注)マメ科率は総乾物収量に占め
るマメ科収量の割合
北海道草地研究会報
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1 :211-213(
19
S
7
)
株1
m
"
数の差異に有意差が認められなかったもの
40
の
, 4年次の NO区の株数は,窒素施肥区
より多い傾向がみられた。乙の 4年次の窒
素施肥区の平均の株数と NO区の差を,窒
3
0
株
素施肥による枯死と考えれば,試験期間中
0%であった。
の枯死数のおよそ 3
2
0
数
-窒素施肥区(平均)
0 無窒素区
1
0
考 察
各番草に対する窒素施肥量は,主体のチ
。
3年次
2年次
4年次
モシー収量への影響が大きく,それとの相
互作用でマメ科収量が変動する。そのため
図 5 アカクローパ株数の推移
(泊図中 1は 1番刈り時, 2は 2番刈り時,
チモシーの生育がおう盛になるとマメ科は
早春は 4月下旬で,調査時期を示す。
抑制され,マメ科率も少なくなった。
マメ科率は,チモシー,マメ科両者の収量に影響されるため,
N0区のようにチモシ一収量が少なけれ
g
ば,ラジノクローパより収量の多かったアカクローパで、マメ科率 30%以上を維持できた。しかし,年間 6k
11Qaの窒素施肥量を,本試験のように早春と l番刈り後に配分しても,適正なマメ科率の維持はできな
かった。窒素施肥によってチモシーの生育がおう盛になり,マメ科が抑制され,マメ科の衰退枯死が起こ
ることも一因と思われる。
マメ科牧草の維持については,ラジノクローパは衰退しても残存個体による増殖で回復の可能性が考え
られるものの,アカクローパは株数が減少すると回復の見込みがなく,衰退を抑制するには株の維持が重
要である。当地域のアカクローパの枯死に窒素施肥が及ぼす影響は少なかった乙とから,今後,アカクロ
ーパで、は枯死要因の解明と,栽培法による回避の検討が必要と思われる。
乙対するマメ科牧草混播による増収効果は,マメ科収量が最も少なかった 4年次で
また,チモシー収量 l
も認められ,アカクローパ,ラジノクローパ両者とも収量向上に対する混播の意義は大きいと考えられる。
ζ の乙とから,マメ科混播による増収効果では,マメ科の収量や,割合以外の表示法も必要であろう。
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