確率変数の期待値と分散 (1 月 11 日)1 期待値 (Expectation) 2 確率変数 X の情報は分布関数 F (x ) と密度関数 f (x ) に集約されている。確率分布 の特徴を表す代表値は、平均、分散、標準偏差である。 1.確率変数の平均(または期待値) 1-1 離散形(または離散型)確率変数 X の期待値(Expectation)は、 m E[ X ] = ∑ x f ( x) もしくは E[ X ] = ∑ x i p ( x i ) i =1 x と定義される。離散形の場合、 P ( X = xi ) = f ( xi ) ≥ 0 ですから、 f ( x ) は確率分布 (probability distribution)を表す。 [例] 1から6までの目がある正立方体6面のサイコロ一つを投げて、出る目の 数を確率変数 X として、その確率分布表を書きなさい。次に、その期待値(平 均)を求めなさい x 1 2 3 4 5 6 f ( x) 1 6 1 6 1 6 1 6 1 6 1 6 x ⋅ f ( x) 1 6 2 6 3 6 4 6 5 6 6 6 E[ X ] = ∑ x f ( x) = x 1 2 3 4 5 6 21 + + + + + = = 3.5 6 6 6 6 6 6 6 1 この章は以下の参考文献をまとめました。東京大学教養学部統計学教室『統計学入門』 (東 京大学出版会 2002 年):第5章 確率変数、pp. 94-108. 2 期待値(expected value)と呼ぶことがあります。 1 1-2 連続形(または連続型)確率変数 X の期待値(Expectation)は、 ∞ E[ X ] = ∫ xf ( x)dx −∞ と定義される。3 連続形確率変数の関数 f ( x ) は、確率(離散形)そのものでは なく、確率密度関数(probability density function)という。後者は確率変数の確 率分布の高さを表すので、確率(離散形)だと勘違いしないこと。 ある確率変数の分布:確率密度関数 f ( x ) b ∫ f ( x)dx a f ( X = a) x=a x=b x 連続形の f ( x ) dx は、離散形の p ( xi ) に対応し、確率を示している。離散形の xi に は下付き添え字 i がありますが、連続形には x になっていて下付き添え字 i があ りません。理由は、連続形の確率はある xi で評価するのではなく、定義域で評 b 価するために下付き添え字の i つけない。例えば、定義域 ∫ xdx は、(a ≤ x ≤ b) の a 範囲を示している。 [例] 一様分布(uniform distribution)の密度関数の期待値を求めなさい。 1 , 5 f ( x) = 0 , 0 ≤ x ≤ 5. f ( x) = x < 0, x > 5. ∞ 3 E[ X ] = ∫ xdF X ( x) と定義される場合がある。 −∞ 2 一様分布の密度関数 f ( x) 1 5 0 5 ∞ E[ X ] = ⎛1⎞ E[ X ] = ∫ x ⋅ ⎜ ⎟dx ⎝5⎠ 0 5 ∫ xf ( x)dx −∞ 1 1 x2 ⎛1⎞ E[ X ] = ∫ x ⋅ ⎜ ⎟dx = ∫ xdx = × 50 5 2 ⎝5⎠ 0 5 5 f ( x) = 5 0 1 52 5 = × = = 2 .5 5 2 2 1 の一様分布の累積分布関数 F ( x ) 5 F ( x) 1 F ( x) = 0 F ( x) = 0 , x<0 1 x, 5 F ( x) = 1 , 0≤ x≤5 F ( x) = [注意] 5 x>5 dF ( x) = f ( x) . dx 3 x 1 x 5 1-3 (1) (2) (3) 期待値の演算 E E (c ) = c , c: 定数 E ( X + c) = E ( X ) + c E (cX ) = cE ( X ) (4) E ( X + Y ) = E ( X ) + E (Y ) , X と Y は確率変数である。 2.確率変数の分散と標準偏差 2-1 離散形確率変数 X の分散(Variance)は、 m V [ X ] = Var[ X ] = ∑ ( xi − µ ) 2 p ( xi ) ; または i =1 m V [ X ] = Var[ X ] = ∑ ( xi − E[ X ]) 2 p ( xi ) i =1 と定義される。4 [例] サイコロの目の場合: E ( X ) = µ = x f ( x) 21 6 ( x − E ( X )2 f ( x ) 2 1 1/6 2 2 ⎛ 21 ⎞ 1 ⎛ 15 ⎞ 1 (15) = 3 ⎜1 − ⎟ ⋅ = ⎜ − ⎟ 6⎠ 6 ⎝ 6⎠ 6 6 ⎝ 2 2 1/6 2 21 ⎞ 1 ⎛ 9 ⎞ 1 9 2 ⎛ = ⎜2 − ⎟ ⋅ = ⎜− ⎟ 6 ⎠ 6 ⎝ 6 ⎠ 6 63 ⎝ 2 3 2 1/6 21 ⎞ 1 ⎛ 3 ⎞ 1 3 2 ⎛ = ⎜3 − ⎟ ⋅ = ⎜ − ⎟ 6 ⎠ 6 ⎝ 6 ⎠ 6 63 ⎝ 1/6 21 ⎞ 1 ⎛ 3 ⎞ 1 3 2 ⎛ = ⎜4 − ⎟ ⋅ = ⎜ ⎟ 6 ⎠ 6 ⎝ 6 ⎠ 6 63 ⎝ 1/6 21 ⎞ 1 ⎛ 9 ⎞ 1 9 2 ⎛ = ⎜5 − ⎟ ⋅ = ⎜ ⎟ 6 ⎠ 6 ⎝ 6 ⎠ 6 63 ⎝ 2 4 2 5 4 2 2 確率関数 X の平均値を µ とすると、 E[ X ] = µ である。 4 2 6 2 2 ⎛ 21 ⎞ 1 ⎛ 15 ⎞ 1 (15) = 3 ⎜1 − ⎟ ⋅ = ⎜ − ⎟ 6⎠ 6 ⎝ 6⎠ 6 6 ⎝ 1/6 分散: m V [ X ] = Var[ X ] = ∑ ( xi − E[ X ]) 2 p( xi ) = i =1 標準偏差: SD( X ) = Var[ X ] = (15) 2 9 2 3 2 3 2 9 2 (15) 2 630 105 + 3+ 3+ 3+ 3 + 3 = 3 = 2 63 6 6 6 6 6 6 6 105 105 = 2 6 6 [Note] 分散 V [X ] は、 E [X − µ ] とも書く。この式を展開すると、 2 [ ] [ ] [ ] [ ] E [X − µ ] = E X 2 − 2 Xµ + µ 2 = E X 2 − 2 µE [X ] + µ 2 = E X 2 − 2 µ 2 + µ 2 = E X 2 − µ 2 2 となる。分散の計算をする場合にこの式を覚えておくよい。この式の表は次の ようになる。 [ ] f ( x) 1 1/6 12 6 2 1/6 22 6 3 1/6 32 6 4 1/6 42 6 5 1/6 52 6 6 1/6 62 6 E X 2 = ∑ x 2 f ( x) = E [X ] = µ = x 2 f ( x) x 12 + 2 2 + 3 2 + 4 2 + 5 2 + 6 2 91 = 6 6 21 441 , µ2 = 2 6 6 5 [ ] V [X ] = E X 2 − µ 2 = 91 441 91 × 6 − 441 546 − 441 105 − 2 = = = 2 6 6 62 62 6 ゆえに、分散の計算が非常に簡単になる。 2-2 連続形確率変数 X の分散(variance)は、 ∞ V[X ] = ∞ 2 ∫ ( x − µ ) f ( x)dx ; V [ X ] = ∫ ( x − E[ X ]) −∞ 2 f ( x)dx −∞ と定義される。また、この連続形確率変数 X の分散を別な形で表すことができ る。 ∞ V[X ] = 2 ∫ ( x − E[ X ]) f ( x)dx = −∞ ∞ = ∫ (x 2 = ∞ −∞ −∞ 2 f ( x)dx − 2 µµ + µ 2 = −∞ ∫ (x 2 f ( x)dx − 2 µxf ( x)dx + µ 2 f ( x)dx) ∞ ∫x 2 ∞ ∫ f ( x)dx −∞ f ( x)dx − µ 2 −∞ ∞ ∞ −∞ −∞ sin ce ∫ xf ( x)dx = µ , and [例] − 2 E[ X ]x + E[ X ] 2 ) f ( x)dx −∞ 2 2 ∫ x f ( x)dx − 2µ ∫ xf ( x)dx + µ ∫x 2 −∞ ∞ ∞ = ∫ (x ∞ − 2 µx + µ 2 ) f ( x)dx = −∞ ∞ ∫ f ( x)dx = 1 次の一様分布(uniform distribution)の密度関数の分散を求めなさい。 f ( x) = 1 , 5 0 ≤ x ≤ 5. ところで、 E [X ] = µ = 5 をすでに得ている。 2 2 1 x3 ⎛1⎞ ⎛5⎞ V [X ] = ∫ x f ( x)dx − µ = ∫ x ⎜ ⎟dx − ⎜ ⎟ = × 5 3 ⎝5⎠ ⎝2⎠ 0 0 5 5 2 2 = 5 ×4 −5 ×3 5 5 = = 5× 3× 4 5× 3× 4 3× 4 3 3 3 ゆえに、分散: V [X ] = 5 − 2 2 52 3× 4 6 0 5 2 1 53 5 2 53 × 4 − 5 2 × 5 × 3 = × − = 4 5 3 4 5× 3× 4 3. いろいろな分布の例 (1) 一様分布 (uniform distribution) f ( x) = 1 , b−a f ( x) = 0 , x < a , x > b a ≤ x ≤ b. 上の例では、 a ≤ x ≤ b 0≤ x≤5 (2) 指数分布 (exponential distribution) f ( x ) = λ e − λx , x ≥ 0. f ( x) = 0 , x < 0 . 災害や故障がまったく偶然的な要因によって支配されているときには、待ち 時間は指数分布に従う。また、電球など偶発的に切れるまでの寿命 X の連続形 確率変数を表す。 f ( x) λ f ( x ) = λ e − λx , 0 x (3) 正規分布 (normal distribution) f ( x) = x ≥ 0. ⎧ (x − µ)2 ⎫ exp⎨− ⎬ 2σ 2 ⎭ 2π σ ⎩ 1 7 ∞ ∞ ⎧ (x − µ)2 ⎫ 定数 は、 ∫ exp⎨− ⎬dx = 2π σ からきており、 ∫ f ( x)dx = 1 とするた 2σ 2 ⎭ 2π σ ⎩ −∞ −∞ 1 めの規格化定数である。 π = 3.14 、 σ は、確率変数 X の標準偏差である。 確率変数 X が平均 µ 、分散 σ 2 の正規分布をもつときに、 X ~ N ( µ , σ 2 ) と表す。 Random variable X is normally distributed with mean= µ and variance= σ 2 . 正 規 分 布 を 標 準 化 し た 場 合 に 、 こ れ を 標 準 正 規 分 布 (standard normal distribution)という。 標準化の公式は、 Z = X −µ σ である。 4. その他に、ポアソン分布、ガンマ分布、ベータ分布、ワイブル分布、対数正 規分布などさまざまな分布があるので、各自必要に応じて学んでおくこと。5 5 東京大学教養学部統計学教室『統計学入門』(東京大学出版会 変数、pp. 125-131, などを参照してください。 8 2002 年):第5章 確率 5. モーメントとモーメント母関数 モーメント(積率)は確率変数 X の分布について情報を提供し、 r 次のモーメ ントには二通りある。 5-1 X (原点のまわり)の r 次のモーメント: µr = E( X r ) ここでの µ r は r 次のモーメントの平均を表している。ゆえに、 r = 1 の場合は、 通常私達がいっている平均を表す。 µ1 = E ( X 1 ) ⇒ µ = E ( X ) . 5-2 X の平均値のまわりの r 次のモーメント: µ r' = E ( X − µ ) r . r = 2 の場合は、分散 V ( X ) を表す。 5-3 X の平均値のまわりの 3 次のモーメントが正であれば、 X の確率分布は右 に長くすそを引く正の分布をもつ。つまり、右に歪んだ分布をさす。負であれ ば、左に歪んだ分布となる。歪度(skewness) f (x ) µ 3' = E ( X − µ ) 3 > 0 :右に歪んだ分布 x f (x ) µ 3' = E ( X − µ ) 3 < 0 :左に歪んだ分布 x [Note] µ 3' = E ( X − µ ) 3 = E ( X 3 ) − 3µE ( X 2 ) + 2 µ 3 . 9 5-4 X の平均値のまわりの 4 次のモーメントは、確率分布 X の中心の周囲の尖 がりの程度を表す。尖度(kurtosis)の定義を次のように表すことができる。 Kurtosis : µ 4' E ( X − µ ) 4 = σ4 σ4 [Note] µ 4' = E ( X − µ ) 4 = E ( X 4 ) − 4µE ( X 3 ) + 6 µ 2 E ( X 2 ) − 3µ 4 . 正規分布の Kurtosis : µ 4' E ( X − µ ) 4 = = 3 であるから、 σ4 σ4 Kurtosis − 3 > 0 ならば、正規分布より尖っている。 Kurtosis − 3 < 0 ならば、正規分布より丸く鈍い形をしている。 5-5 モーメント母関数(moment generating function)の定義 X を確率変数とし、t を実数とするとき、e tx の期待値を X の積率母関数(moment generating function)といい、 M X (t ) で表す。6 M X (t ) = E (e tx ) すなわち X が離散形であれば、 f (x ) を確率関数として、 M X (t ) = ∑ e tx f ( x) 離散形: x ただし、 ∑ は x の可能な値全部についての合計を表す。また、 X が連続形で x − ∞ < x < ∞ とすれば、 f (x ) を密度関数として、 ∞ 連続形: M X (t ) = ∫e tx f ( x)dx −∞ 6 積率母関数について、岩田暁一『経済分析のための統計的方法』(東洋経済新報社 年)、pp. 105-134、を参考にしている。 10 1989 である。 モーメント母関数を使うと、期待値、分散、歪度、尖度など、重要なモーメン トが比較的簡単な微分の計算で求められる。 M X (t ) = 1 + tE ( X ) + t 2 µ µ E( X 2 ) 3 E( X 3 ) +t + ... = 1 + tµ1 + t 2 2 + t 3 3 + ... 2! 3! 2! 3! M X ' (0) = µ1 , M X " (0) = µ 2 , M X " ' (0) = µ 3 , … [例] 二項分布(binomial distribution)の期待値と分散をモーメント母関数から 計算する。 試行の結果を2通り(成功と失敗)に分けることができ、それぞれの確率を P と(1-P)で表すことができ、繰り返される試行の結果は互いに独立である場合に、 これをベルヌーイ試行(Bernoulli trials)という。その確率変数の分布を二項分布 という。 n は試行回数である。 二項分布: f ( x ) = n C x p x (1 − p ) n − x 平均: µ = np 分散: σ 2 = np(1 − p ) ということは知られている。 M X (t ) = ∑ e tx f ( x) = ∑ e tx n C x p x (1 − p ) n − x == ∑ n C x ( pe t ) (1 − p) n − x x x x x となる。ここで n (a + b) n = ∑ n C x a x b n − x x =0 であることに注意すれば、 ( ) n 二項定理から上の式が M X (t ) = pe t + q と定義さ れる。7 7 この証明を中級以上の統計学か数学の教科書から探してください。関率母関数の説明には、 岩田暁一著『経済分析のための統計的方法』(東洋経済新報社 1989 年)、第 5 章 確率変 数の関数と分布、92−121 ページが参考になります。 11 二項分布の積率関数を t について偏微分を行う。 M X ' (t ) = n( pe t + q ) n −1 ( pe ) t M X " (t ) = (n − 1)n( pe t + q ) ( pe ) + n( pe + q ) ( pe ) + q ) p(e ) + ( pe + q ) e } n −1−1 { = np (n − 1)( pe t t 2 n−2 n −1 t 2t t n −1 t t 確率変数 X (原点のまわり)の積率母関数の1回目の微分の結果について、こ こで t = 0 とおくと、 M X ' ( 0) = n ( p ⋅ 1 + q ) n −1 ( p ⋅ 1) = np を得ることができ、この結果が確率変数 X の平均となる。 E ( X ) = M X ' (0) = np また、2 回目の微分の結果に t = 0 とおくと、原点の周りの2次モーメントが得 られる。 { M X " (0) = np ( n − 1)( p ⋅ 1 + q ) n−2 p ⋅1 + ( p ⋅1 + q ) n −1 } ⋅ 1 = np{( n − 1) p + 1} = n( n − 1) p 2 + np そして、分散はこの2次モーメントの結果から、平均の二乗を引くことによっ て得られる。 { } { } V ( X ) = M X " (0) − µ 2 = n( n − 1) p 2 + np − (np ) = n 2 p 2 − np 2 + np − (np ) = np (1 − p ) = npq 2 12 2 [練習] f ( x) = λe − λx の平均と分散をモーメント母関数を使って求め 指数分布 なさい。 ∞ M X (t ) = ∫ e tx λe −λx dx 0 (ヒント: e tx と e − λx の積は、 e (t − λ ) x となるが、これを e − ( λ −t ) x と計算ができる。 (答え) 平均: µ = 1 λ 分散: V ( X ) = 1 λ2 次に、正規分布 N ( µ , σ 2 ) の積率母関数をもとめて、平均と分散を計算します。8 ⎧ (x − µ)2 ⎫ exp⎨− ⎬ 2σ 2 ⎭ 2π σ ⎩ 1 正規分布 N ( µ , σ 2 ) の密度関数: f ( x) = ∞ 積率母関数の式: M X (t ) = ∫e tx f ( x)dx −∞ 正規分布の密度関数を積率母関数の式に代入すると、 ∞ M X (t ) = ∫ e −∞ tx 1 2π σ e ⎧⎪ ( x − µ ) 2 ⎫⎪ ⎨− ⎬ ⎪⎩ 2σ 2 ⎪⎭ dx = 1 2π σ ∞ ∫ −∞ 1 2π σ e ⎧⎪ ( x − µ ) 2 2σ 2tx ⎫⎪ + ⎨− ⎬ ⎪⎩ 2σ 2 2σ 2 ⎪⎭ dx = 1 2π σ ∞ ∫ −∞ 1 2π σ − e となる。ところで { }の中は 岩田暁一著『経済分析のための統計的方法』 (東洋経済新報社 1989 年)、pp. 106-197, からです。 8 13 1 2σ 2 {( x − µ ) 2 − 2σ 2tx } dx ( x − µ ) 2 − 2σ 2 tx = x 2 − 2 µx + µ 2 − 2σ 2 tx = x 2 − 2( µ + σ 2 t ) x + µ 2 { } = {x − 2( µ + σ t ) x + ( µ + σ t ) }− 2µσ = {x − ( µ + σ t )} − 2µσ t − σ t = x 2 − 2( µ + σ 2 t ) x + ( µ + σ 2 t ) 2 − ( µ + σ 2 t ) 2 + µ 2 2 2 2 2 2 2 2 2 t − σ 4t 2 4 2 であるから、これを正規分布の積率母関数に入れ替えると、 M X (t ) = = = =e 1 2π σ 1 2π σ ∞ 1 2π σ ∞ ∫e − ∫e 2 ∞ ∫e } dx − 1 2σ {x−( µ +σ t )} 2 2 1 2 e [2 µσ t +σ t ] 2 2σ 2 4 2 dx −∞ ∞ ∫ −∞ ∞ この式の、 dx { − 2 {x −( µ +σ 2t ) } 1 e 2σ dx 2π σ 1 ∫ −∞ =e 2 2 1 ⎡ x −( µ +σ 2t ) − 2 µσ 2t −σ 4t 2 ⎤ 2⎢ ⎥⎦ 2σ ⎣ ] t2 2σ {( x−µ ) −2σ tx } 2 2 −∞ [ σ2 1 −∞ 1 ∞ 2 µσ 2t +σ 4t 2 2σ 2 µt + − ∫ −∞ 2 − 2 {x −( µ +σ 2t ) } 1 e 2σ dx 2π σ 1 2 − 2 {x − ( µ +σ 2 t ) } 1 e 2σ dx 部分は、平均 ( µ + σ 2 t ) の正規分布密度関数の 2π σ 1 2 ∞ 積分にほかならないから、 ∫ −∞ 1 2π σ − e 1 {x −( µ +σ t )} 2 2σ 2 積率母関数は、次のようになる。 M X (t ) = e µt + σ2 2 t2 . 14 2 dx = 1 となる。結局、正規分布の 次に、この式を t について微分すると、 M X ' (t ) = e µt + σ2 2 t2 ( ⋅ µ + σ 2t ) そして、 t = 0 とすると正規分布の平均を得ることができるので、 M X ' ( 0) = e µ 0+ σ2 2 ( 02 ) ⋅ µ +σ 20 = µ という答えをえることができる。つまり、正規分布の平均は、 正規分布の式: f ( x) = ⎧ (x − µ)2 ⎫ exp⎨− ⎬ 2σ 2 ⎭ 2π σ ⎩ 1 ∞ 平均の式: E ( X ) = ∫ xf ( x)dx −∞ ∞ E( X ) = ∫x⋅ −∞ ⎧ (x − µ)2 ⎫ exp⎨− ⎬dx = µ 2σ 2 ⎭ 2π σ ⎩ 1 となる。 同様に、積率母関数の2回目の微分をえると、 M X " (t ) = e µt + σ2 2 t2 ( ) ⋅ µ +σ t + e 2 2 µt + σ2 2 t2 ⋅σ 2 となる。 分散は平均の周りの2次のモーメントであり、それは積率母関数の2回目の微 分の結果を t = 0 で表して、その値から平均の二乗を引くと分散を得ることがで きる。 15 M X " ( 0) = e ところで e µ 0+ µ 0+ σ2 2 02 σ2 2 02 ( ) ⋅ µ +σ 0 + e 2 2 µ 0+ σ2 2 02 ⋅σ 2 = µ 2 + σ 2 = e0 = 1. V [ X ] = E[ X − µ ] 2 = E[ X ] 2 − µ 2 原点のまわりの2次モーメント: E[ X ] = M X " (0) 2 V [ X ] = E[ X − µ ] 2 = E[ X ] 2 − µ 2 = ( µ 2 + σ 2 ) − µ 2 = σ 2 となる。 以上のように、確率変数 X の確率分布もしくは確率密度関数である f (x ) の形 が明らかであれば、積率母関数から確率変数の平均と分散を得ることができる。 非常に有効な method といえる。 [質問1] 次の指数関数の歪度(skewness)と尖度(kurtosis)を求めなさい。 f ( x ) = λ e − λx , 0 ≤ x < ∞ ∞ ∞ ( M X (t ) = E[e ] = ∫ e f ( x)dx = ∫ e λe tx tx 0 tx − λx 0 ∞ )dx = λ ∫ e 0 −( λ −t ) x ⎡ λ ⎤ −( λ −t ) x dx = − ⎢ ⎥×e ⎣ (λ − t ) ⎦ ⎡ λ ⎤ ⎡ λ ⎤ λ = −⎢ × e − ( λ −t ) ∞ − e − ( λ −t ) 0 = − ⎢ × (0 − 1) = ⎥ ⎥ (λ − t ) ⎣ (λ − t ) ⎦ ⎣ (λ − t ) ⎦ ( ) The first moment about the origin is: dM X (0) dM X (t ) λ λ 1 E[ X ] = µ = = = = 2 2 dt dt λ (λ − t ) (λ − 0) The second moment about the origin is: d 2 M X (t ) 2λ (λ − t ) = dt 2 (λ − t ) 4 d 2 M X (0) 2λ (λ − t ) 2 = 2 = E[ X ] = (λ − t ) 4 λ dt 2 2 16 ∞ 0 2 1 ⎛1⎞ V [ X ] = σ = E[ X ] − (E[ X ]) = E[ X ] − µ = 2 − ⎜ ⎟ = 2 λ ⎝λ⎠ λ 2 2 2 2 2 The third moment about the origin is: d 3 M X (t ) (λ − t ) 4 × (−2λ ) + 4(λ − t ) 3 × 2λ (λ − t ) 6λ = = 3 8 dt (λ − t ) (λ − t ) 4 E[ X 3 ] = d 3 M X (0) − 2λ5 + 4λ3 × 2λ 2 − 2λ5 + 8λ5 6 = = = 3 λ8 λ8 λ dt 3 µ 3' = E[ X − µ ]3 = E[ X 3 ] − 3µE[ X 2 ] + 2 µ 3 if µ 3' > 0 , the distribution is skewed to the right. if µ 3' < 0 , the distribution is skewed to the left. µ 3' = E[ X − µ ]3 = E[ X 3 ] − 3µE[ X 2 ] + 2 µ 3 = 6 λ 3 −3 1 λ × 2 λ 2 +2 1 λ 3 = 2 >0 λ3 The forth moment about the origin is: d 4 M X (t ) 6λ × 4(λ − t ) 3 24λ = = 4 8 dt (λ − t ) (λ − t ) 5 d 4 M X (0) 6λ × 4(λ − t ) 3 24 E[ X ] = = = 4 dt 4 (λ − t ) 8 λ 4 µ 4' = E[ X − µ ] 4 = E[ X 4 ] − 4 µE[ X 3 ] + 6 µ 2 E[ X 2 ] − 3µ 4 = == 24 λ 4 − 24 λ 4 + 12 λ 4 − 3 λ 4 = 9 λ4 The Kurtosis shows the shape of the mode of distribution. 17 24 λ 4 −4 1 λ × 6 λ 3 +6 1 λ 2 × 2 λ 2 − 3× 1 λ4 ⎛ 9 ⎞ ⎜ 4⎟ µ E[ X − µ ] λ Kurtosis: = = ⎝ ⎠2 = 9 . 4 σ σ ⎛ 1 ⎞ ⎜ 2⎟ ⎝λ ⎠ ' 4 4 4 If the value of Kurtosis>3, the top of distribution is sharper than a normal distribution. If the value of Kurtosis<3, the top of distribution is flatter than a normal distribution. The value is: 9>3, then the exponential distribution has a sharper top than a normal distribution. [質問2] 一様分布の密度関数が f ( x) = 1 , b−a a ≤ x ≤ b. f ( x) = 0 , x < a , x > b とする。この一様分布の平均と分散を確率母関数を使って導きなさい。 6 チェビシェフの不等式(Chebyshev’s inequality) いかなる確率変数 X に対して、 P ( X − µ ≥ kσ ) ≤ 1 k2 となる。ただし、 µ = E ( X ) 、 σ = V (X ) である。 [例] ある確率変数について E ( X ) = 1 、V ( X ) = 1 であることしか分かっていない。 3 これから、 0 ≤ X ≤ 2 について何がいえるか。 σ = P ( 0 ≤ X ≤ 2) = ? 18 1 3 3σ = 1 P ( X − µ ≥ kσ ) ≤ P ( X − µ ≤ kσ ) ≥ 1 − 1 k2 ( ) ⎛ 1 ⎞ P X − µ ≤ 3σ ≥ 1 − ⎜⎜ ⎟⎟ ⎝ 3⎠ 1 P ( X − µ ≤ kσ ) ≥ 1 − 2 k ⎛ ⎛ 1 ⎞ ⎛ 1 ⎞⎞ ⎟⎟ P⎜⎜ X − 1 ≤ 3 ⎜⎜ ⎟⎟ ⎟⎟ ≥ 1 − ⎜⎜ ⎝ 3⎠ ⎝ 3 ⎠⎠ ⎝ P ( X − 1 ≤ 1) = P (0 ≤ X ≤ 2) ≥ 2 P ( X − 1 ≤ 1) ≥ 2 ≈ 0.667 3 少なくとも 68%以上である。 これを標準正規分布表を使って解くと、 ⎞ ⎛ X −µ P⎜⎜ ≤ 3 ⎟⎟ ⎠ ⎝ σ 1 k2 ( ) P − 3 ≤ z ≤ 3 = 0.91763 となる。 19 2 3 2
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