直接変換型及び間接変換型 FPD における画質特性の比較 における画質

直接変換型及び間接変換型 FPD における画質特性の比較
要旨
直接変換型 Flat Panel Detector(FPD)(島津メディカルシステム)及び間接変換型 FPD(フィリップ
スメディカルシステム)における画質特性(特性曲線,Modulation Transfer Function:MTF,
Wiener Spectrum:WS,Signal to Noise Ratio:SNR)を線質を変化させて測定し,比較した.
IEC 61267 に定められている RQA5の線質を用い,特性曲線はタイムスケール法により測定した.
MTF はタングステン製エッジを撮影し,その画像データから測定した.WS は 2.58×10-7C/kg 及
び 5.16×10-7C/kg の線量で一様曝射した画像データより測定した.MTF と WS は RQA3 及び
RQA5 のそれぞれの線量について測定した.SNR は MTF(u)2/WS(u)から求めた.特性曲線につい
ては,良好な直線性が確認できた.MTF については,直接変換型の方が良い結果が得られた.W
Sについては,間接変換型の方が良いことが確認された.また,間接変換型で RQA3,RQA5 の結
果に違いが見られた.SNR については,RQA3 は高周波で直接変換型が優れ,RQA5 は低周波で
間接変換型が良く,高周波で直接変換型が良くなった.
Ⅰ.はじめに
近年,放射線診断において,ディジタル化が急速に広がる中で,Flat Panel Detector(以下,FPD)が
普及してきている.その流れを受け,FPD の画質評価が盛んに行われている.FPD にはアモルファスセレ
ン半導体を用い,X線エネルギーを直接電荷量に変換する直接変換方式と,蛍光体を用い,X線エネルギ
ーを光に変換し,フォトダイオードで電荷量に変換する間接変換方式が存在する.
そこで,今回は直接変換型 FPD と間接変換型 FPD における画質特性を特性曲線,Modulation Transfer
Function(以下,MTF),Wiener Spectrum(以下,WS),Signal to Noise Ratio(以下,SNR)により
線質を変化させて測定し,比較した.
Ⅱ.使用機器
・ 直接変換型 FPD:SHIMADZU 社製
・ 間接変換型 FPD:PHILIPS 社製
BR-120F
DMC GmbH
・ 電離箱線量計:RADCAL model9015
・ 解析ソフト:Image J,Microsoft Excel
Ⅲ.方法
a) 線質の決定
IEC(International Electrotechnical Commission)61267 で規定された Table.1 に示す2つの線質を用
いて行った.RQA3 は低管電圧用,RQA5 は高管電圧用として選択した.
Table.1
RADIATION
QUALITY
RADIATION
Approximate
HALF-VALUE ADDITIONAL
QUALITY
X-RAY TUBE
LAYER(HVL)
FILTRATION
No.
VOLTAGE
[mmAl]
[mmAl]
[kV]
RQA3
50
4.0
10.0
RQA5
70
7.1
21.0
b) ディジタル特性曲線の測定
測定配置を fig.1 に示す.RQA5 の線質を用いて,タイムスケール法によりディジタル特性曲線を測定し
た.焦点-検出器表面間距離(以下,SID)125cm のとき,照射時間は 100,200,400,800,1600msec,
SID200cm のとき,照射時間は 10,20,40,80,160,320,630,1000 msec,と設定した.Image J を
用いて画像を開き,縦軸に得られたディジタル値を,横軸に相対露光量をプロットしてディジタル特性曲
線を求めた.
コリメータ絞り
125,200cm(特性曲線用)
付加フィルタ
200cm(MTF,WS 用)
線量計
タングステン
30cm
検出器表面
Fig.1 測定配置
c) MTF の測定
測定配置を fig.1 に示す.エッジ法により測定した。撮影条件は SID200cm、照射野 20×20cm、線量 5.16
×10-7C/kg 及び 1.03×10-6C/kg とした。タングステン製エッジを 2~3 度傾けて撮影し、Image J を用い
て得られたエッジ像から合成 ESF(Edge Spread Function)を作成し、これを微分して合成 LSF(Line
Spread Function)を求め、フーリエ変換して MTF を算出した。合成 LSF の裾野分野は外挿を行って求
めた。
d) WS の測定
測定配置を fig.1 に示す.二次元フーリエ変換により測定した。撮影条件は SID200cm、照射野 20×20cm、
線量 2.58×10-7C/kg 及び 5.16×10-7C/kg とした。一様曝射し、Image J を用いて画像を開きトレンド補正
をし、二次元フーリエ変換によりパワースペクトルを算出し、規格化により WS を算出した。
e) SNR の測定
SNR は MTF(u)2/WS(u)から求めた。
Ⅳ.結果
・ ディジタル特性曲線
Fig.2 にディジタル特性曲線を示す。両方式ともに、相対露光量とディジタル値との間に良好な直線性が
(bit)、間接変換型は
見られた。直接変換型は
(bit)で一定となった。
9000
14000
8000
12000
7000
10000
デ ィジ タ ル 値
デ ィジ タ ル 値
6000
5000
4000
8000
6000
3000
4000
2000
2000
1000
0
0
0
200
400
600
800
1000
1200
0
500
1000
相対露光量
1500
2000
2500
相対露光量
(a) 直接変換型
(b) 間接変換型
Fig.2 ディジタル特性曲線
・ MTF
Fig.3 に線質による比較を示す。両方式ともに線質により違いが見られなかった。
Fig.4 に直接型と間接型の比較を示す。RQA3,RQA5 ともに直接型の方が良かった。高周波で間接型が悪
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
MTF
MTF
いのが分かる。
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
(a)
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
0
直接変換型(線量 5.16×10-7C/kg)
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
(b) 直接変換型(線量 1.03×10-6C/kg)
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
MTF
MTF
0.6
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
(c) 間接変換型(線量 5.16×10-7C/kg)
Fig.3
0
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
(d) 間接変換型(線量 1.03×10-6C/kg)
MTF(線質による比較)
5
1.2
1
1
0.8
0.8
MTF
MTF
1.2
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
1
(a)
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
0
RQA3 での比較 (線量 5.16×10-7C/kg)
(b)
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
MTF
MTF
0.6
0.6
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
RQA3 での比較(線量 1.03×10-6C/kg)
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
1
0
0
(c)
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
RQA5 での比較 (線量 5.16×10-7C/kg)
Fig.4
0
(d)
1
2
3
空間周波数[cycles/mm]
4
5
RQA5 での比較(線量 1.03×10-6C/kg)
MTF(直接型と間接型の比較)
・ WS
Fig.5 に線質による比較を示す。直接型は線質により違いが見られなかったが、間接型は RQA5 の方が
良かった。
Fig.6 に直接型と間接型の比較を示す。RQA3,RQA5 ともに間接型の方が良かった。
Fig.7 に線量による比較を示す。両方式ともに線量の増加により同程度に向上した。
1.E-05
10-5
1.E-05
10-5
WS[mm2]
1.E-04
10-4
WS[mm2]
1.E-04
10-4
1.E-06
10-6
1.E-06
10-6
1.E-07
10-7
1.E-07
10-7
0
(a)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
直接変換型(線量 2.58×10-7C/kg)
4
0
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
(b) 直接変換型(線量 5.16×10-7C/kg)
4
1.E-05
10-5
1.E-05
10-5
WS[mm2]
1.E-04
10-4
WS[mm2]
1.E-04
10-4
1.E-06
10-6
1.E-06
10-6
1.E-07
10-7
1.E-07
10-7
0
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
0
(c) 間接変換型(線量 2.58×10-7C/kg)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
(d) 間接変換型(線量 5.16×10-7C/kg)
Fig.5 WS (線質による比較)
1.E-04
10-4
-4
1.E-04
1.E-05
10-5
1.E-05
10-5
WS[mm2]
WS[mm2]
10
1.E-06
10-6
1.E-06
10-6
1.E-07
10-7
1.E-07
10-7
0
(a)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
RQA3 での比較 (線量 2.58×10-7C/kg)
0
(b)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
RQA3 での比較 (線量 5.16×10-7C/kg)
1.E-04
10-4
-4
1.E-04
1.E-05
10-5
1.E-05
10-5
WS[mm2]
WS[mm2]
10
1.E-06
10-6
1.E-06
10-6
1.E-07
10-7
1.E-07
10-7
0
(c)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
0
4
RQA5 での比較 (線量 2.58×10-7C/kg)
(d)
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
RQA5 での比較 (線量 5.16×10-7C/kg)
Fig.6 WS (直接型と間接型の比較)
1.E-04
1.E-05
1.E-05
WS[mm2]
W S[mm2]
1.E-04
1.E-06
1.E-06
1.E-07
1.E-07
0
1
(a)
2
空間周波数[cycles/mm]
直接変換型(RQA3)
3
4
0
1
2
空間周波数[cycles/mm]
(b) 直接変換型(RQA5)
3
4
1.E-04
1.E-05
1.E-05
W S[m m 2]
WS[mm2]
1.E-04
1.E-06
1.E-06
1.E-07
1.E-07
0
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
(c) 間接変換型(RQA3)
0
1
2
空間周波数[cycles/mm]
3
4
(d) 間接変換型(RQA5)
Fig.7 WS (線量による比較)
・ SNR
Fig.8 に線質による比較を示す。直接型は線質により違いが見られなかったが、間接型は RQA5 の方が
良かった。
Fig.9 に直接型と間接型の比較を示す。RQA3 は高周波で直接型の方が顕著に良く、RQA5 は低周波で間
接型優位、高周波で直接型優位となった。