NaI(Tl)検出器で測定された 宇宙線強度に対する気圧・気温効果

放地研特別寄稿シリーズ
SCS-0042
潮岬・紀伊大島の第三紀火成岩類の地表ガンマ線
平岡由次1・池田
正2・柴山元彦1・湊
進3
1:自然環境研究オフィス
2:大阪府立柏原東高等学校
3:放射線地学研究所
放射線地学研究所、名古屋
2008
はじめに
西南日本の太平洋側海域はフィリピン海プレートの沈み込み帯からなっている。今回、測定を行っ
た潮岬・紀伊大島はフィリッピン海プレートの沈み込みに関係して生じた火成岩が分布している。こ
の地域は前回、測定をした足摺岬(池田ほか, 2007)と同様な外帯の数少ない火成複合岩体の一つで
ある。外帯の火成複合岩体は、いずれも新生代の火成活動で形成されたもので、内帯に噴出した中生
代の大量の花こう岩を含む複合岩体とは異なっている。このような新しい火成複合岩体の放射線量的
特徴を調べるために、足摺岬に引き続き今回の測定を行った。
Ⅰ.潮岬・大島の地形と地質
1. 地
形
潮岬は本州最南端の岬である。高度が 60∼80mの海食台地と海岸は海食崖である。紀伊大島は単に
大島とも呼ばれ、島の中央部に大森山(171m)がある。民謡の串本節にでてくる島で東西8km、
南北 2.5kmあり、和歌山県最大の島で 1999 年に大橋が完成し、本州とつながった。
図1
2.地
潮岬・紀伊大島の地形
質
三宅によって潮岬火成複合岩類が研究され(Miyake,1985)
、その火成活動史がまとめられた。それ
によると、潮岬には玄武岩質溶岩、粗粒玄武岩、文象花こう岩、石英斑岩、斑レイ岩があり、粗粒玄
武岩に捕獲岩として斑レイ岩が分布し、北西部には石英斑岩が貫入している。
紀伊大島では流紋岩質火砕岩が中央部から東部に分布し、それを貫いて流紋岩が最東部、西部に分
布する。
図2
潮岬・紀伊大島の地質図(Miyake,1985, 三宅,1981 による)
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Ⅱ.地表ガンマ線の測定
潮岬と紀伊大島と2班に分かれて測定を行った。使用した測定器は1”φ×1” NaI, 1” φ×2”NaI
で計数を線量率に換算した。
図3
1.
測定地点
潮 岬
測定点は 31 点である。測定結果のうち、最大値領域は文象花こう岩で 74.6∼68.8nGy/h、最高値
を示したのは石英斑岩中の組成が花こう岩に近い岩石の部分であった。最小値は斑レイ岩で
27.9nGy/h あった。
2.紀伊大島
測定点は 26 点である。測定結果のうち、最大値を示したのは地質が流紋岩質火砕岩の 74.9nGy/h
であり、最小値も同質岩石で 49.5nGy/h であった。
図4
γ線量率の強度分布図
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Ⅲ.まとめ
測定した両地域の地質別の平均線量率はほぼ日本の岩石における平均値(湊, 2006)と同じような値
を示している。ただ、両地域に共通して存在している岩石は流紋岩質火砕岩であるが、潮岬では 49.1
nGy/h、紀伊大島は 59.7 nGy/h と線量率に差が認められる。これは噴出時の状況よるものと考えられ
る(中屋,1999)
。
測定点が 1 ヶ所であったが、熊野層群の値は 61.5 nGy/h であった。
表 1 岩石別のγ線量率
地 質(測定数)
平均線量率(nGy/h)
場所
花こう岩(1)
74.7
潮岬
文象花こう岩(7)
69.5
潮岬
流紋岩(9)
62.2
紀伊大島
流紋岩質火砕岩 (17)
58.4
両地域
熊野層群(1)
61.5
紀伊大島
石英斑岩(3)
43.0
潮岬
玄武岩質溶岩(7)
42.3
潮岬
粗粒玄武岩(5)
35.7
潮岬
〔参考文献〕
池田正・柴山元彦・平岡由次・湊 進(2007)足摺岬の新第三紀深成岩類の地表γ線. 放地研特
別寄稿シリーズ SCS-0029,(http://www3.starcat.ne.jp/ reslnote/ にて別刷り請求可)
中屋志津男(1999)紀伊半島の地質−6
中新世の火成岩類.
URBAN
KUBOTA
No.38,
30-31
湊 進(2006)日本における地表γ線の線量率分布. 地学雑誌, 115, 87-95
Miyake,Y.(1985)MORB-like tholeiites formed within the Miocene forearc basin, Southwest
Japan. Lithos, 18. 23-34
三宅康幸 (1981) 和歌山県潮岬火成複合岩体の地質と岩石. 地質学雑誌, 87, 383−403
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