2014 年度 早稲田大学 教育学部 (化学) 解答解説

2014 年度 早稲田大学 教育学部 (化学) 解答解説
Ⅰ
解答
問1 ヘスの法則
問2 HClaq + NaOHaq = NaClaq + H2O(液) + 57kJ
問3 278kJ/mol
問4 2.22×103kJ/mol
問5 4.30×102kJmol
問6 熱化学方程式:C(黒鉛) + 2H2(気) = CH4(気) + 75.0kJ
結合エネルギー:414kJ/mol
問7 生成熱=-Q1+2Q2-2Q3
解説
ヘスの法則を利用した典型的な反応熱を求める問題であり,4題も計算問題があるので,素早く正確に計算で
きたかが大切。問7だけ,問6に書かれている内容から,解離するときの反応熱 Q1 と Q2 が正負の符号を含む反
応熱であることがわかったかがポイント。
問3 エタノール(液)の生成熱を x(kJ/mol)とすると,エタノール(液)の燃焼熱について,反応熱=(生成物の生
成熱の総和)-(反応物の生成熱の総和)を使って,
1368=394×2+286×3-x
∴ x=278(kJ/mol)
問4 反応熱=(生成物の生成熱の総和)-(反応物の生成熱の総和)より,
プロパンの燃焼熱=394×3+286×4-106=2.22×103(kJ/mol)
問5 H-Cl 結合の結合エネルギーを y(kJ/mol)とすると,塩化水素(気)の生成熱について,反応熱=(生成物の
結合エネルギーの総和)-(反応物の結合エネルギーの総和)を使って,
92.3=y-(432×
1
1
+243× )
2
2
∴ y=429.8(kJ/mol)
問6 メタンの生成熱を表す熱化学方程式は,
C(黒鉛) + 2H2(気) = CH4(気) + 75.0kJ
C-H 結合の結合エネルギーを z(kJ/mol)とすると,上式について,反応熱=(生成物の結合エネルギーの総
和)-(反応物の結合エネルギーの総和)を使って,
75.0=z×4-(715+432×2)
∴ z=413.5(kJ/mol)
問7 問6の「黒鉛が炭素原子に解離するときの反応熱を-715kJ/mol として」という文章から,解離するとき
の反応熱は正負の符号を含んだ反応熱である。1mol のエチレン分子が炭素原子と水素原子に解離するとき
の反応の反応熱を Q1,1mol の黒鉛が炭素原子に解離するときの反応熱を Q2,これらを熱化学方程式に表わ
すと次のようになる。
C2H4(気) = 2C(気) + 4H(気) + Q1kJ …①
C(黒鉛) = C(気) + Q2kJ
…②
H-H の結合エネルギーQ3 は,正負の符号を含んでいないので,熱化学方程式は次のようになる。
H2(気) = 2H(気) - Q3kJ …③
これより,エチレンの生成熱は,-①+②×2+③×2 より,-Q1+2Q2-2Q3(kJ/mol)となる。
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Ⅱ
解答
問1 ア:S8
カ:黒
イ:加硫
キ:黄
ウ:エボナイト
エ,オ:硫酸アンモニウム,硫酸カリウム(順不同)
ク白
問2 4FeS2 + 11O2 → 2Fe2O3 + 8SO2
問3 FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S
問4 0.16%
問5 硫黄:0
二酸化硫黄:+4
硫酸:+6
問6 硫黄を加熱して融解させてから,水中に流し込み急冷する。
解説
硫黄の単体や化合物の反応や性質に関する総合問題。問1のエボナイトと肥料として使われている硫酸塩の空
所補充および問6のゴム状硫黄の製法以外は,基本から標準的な問題なのでほとんどできてほしい。
問1 エ,オ:肥料の三要素である窒素,リン,カリウムを知っていれば,アンモニウムイオンとカリウムイオ
ンの硫酸塩だとわかる。
問4 石炭に含まれていた硫黄がすべて硫酸カルシウム(式量 136)になるので,硫酸カルシウムの物質量が石炭
に含まれていた硫黄原子の物質量になるということから,硫黄の含有量は,
6.8 × 10 3
1
×32×
×100=0.16(%)
136
1000 × 10 3
Ⅲ
解答
問1 ア:ペプチド
イ:正
ウ:負
エ:1
オ:0.5
カ:0.25
問2 アミノ酸ひとつあたりの電荷の最大数が小さいほど疎水性部分が大きくなり,水に溶けにくくなるから。
問3 アスパラギン酸:正
アルギニン:負
グルタミン酸:正
リシン:負
問4 側鎖
解説
アミノ酸とペプチドの電離に関する問題。問1のアミノ酸ひとつあたりの電荷の最大数が何を問われているの
かわかりづらい。問3のアミノ酸の電気泳動はやや難しいが,頻出の問題なので解けてほしい。ただし,アルギ
ニンはあまり出題されたことがないので,塩基性アミノ酸だとわからなかったと思われる。
問1
エ:グリシンやアラニンなどの中性アミノ酸は,溶液中では 1 価の陽イオン,双性イオンおよび 1 価の陰イオ
ンの平衡状態にある。したがって,電荷の最大数は 1 になるので,アミノ酸ひとつあたりの電荷の最大数も
1 である。
オ:2 分子のグリシンが重合したジペプチドでも,1 分子中にアミノ基とカルボキシ基は 1 個ずつしかないの
で,電荷の最大数は 1 となり,アミノ酸ひとつあたりでは,1÷2=0.50 となる。
カ:4 分子が重合したテトラペプチドでも電荷の最大数は 1 であり,アミノ酸ひとつあたりでは 1÷4=0.25
となる。
ただし,電荷の最大数を電荷の個数ととらえると,アミノ酸とペプチドのどちらも電荷の最大数は 2 となり,
エの答えは 2,オの答えは 2÷2=1,カの答えは 2÷4=0.50 となる。
問3 どんなアミノ酸でも溶液の pH が等電点より小さいと陽イオンの状態が多くなり負の電極(陰極)に移動
し,溶液の pH が等電点より大きいと陰イオンの状態が多くなり正の電極(陽極)に移動する。アスパラギ
ン酸とグルタミン酸は酸性アミノ酸であり,等電点が酸性側にあるので,溶液の pH が 7.0 のときは陰イオ
ンの状態が多くなり正の電極に移動する。アルギニンとリシンは塩基性アミノ酸であり,等電点が塩基性側
にあるので,溶液の pH が 7.0 のときは陽イオンの状態が多くなり負の電極に移動する。
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Ⅳ
解答
問1 ア:ヒドロキシ
イ:プロペン(プロピレン)
ウ:アセトン
エ:カルボン酸
オ:赤紫色(紫色)
問2 2,3,1
問3 4,3,1,2
問4 二酸化炭素を加え,高温,高圧下で反応させる。
問5
OH
+
C OH
O
問6 設問Ⅰ 変性
CH3
O
O C CH3
O
C
+
O
CH3 C
O
CH3
O
C OH
C OH
O
設問Ⅱ 2
解説
問1~5はフェノールとサリチル酸の製法と性質に関する問題で,問3のフェノールと o-クレゾールの融点
比較以外は基本から標準的な問題である。問6はタンパク質と DNA の遠心分離実験に関する問題で,目新
しい問題である。密度のデータと DNA がどちらに溶けやすいかがポイントになる。
問3 カルボキシ基をもつサリチル酸が最も融点が高い。フェノール,o-クレゾール,1-ナフトールはすべて
ヒドロキシ基を 1 個もつので分子量が大きいほど融点が高いので,1-ナフトール>o-クレゾール>フェノ
ールになるはずであるが,実際にはフェノールと o-クレゾールは分子の対称性から,フェノール>o-クレ
ゾールとなる。
問6
設問Ⅱ 有機溶媒であるフェノールとトリクロロメタンは互いに混ざり合い有機層となり,水層と分離して二層
になる。フェノールとトリクロロメタンは水より密度が大きいので,有機層が下層に,水層が上層になる。
DNA は,中性水溶液中ではリン酸部分が電離するため,水に溶けやすい。したがって,大部分の DNA は上
層である水層に含まれる。
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