人工光学材料:メタマテリアル 岡山大学大学院自然科学研究科(工・電気通信) 石川 篤・鶴田 健二 メタマテリアルによる新奇な光学特性 物質中での光の振る舞いは、屈折率で決まり ます.メタマテリアルを用いると、特異な屈折 金属ナノ構造 率と材料分散を有する光学材料を作り出すこ とができ、従来にない光機能が実現できます. 原子や分子 n = 1.3 正の屈折 光 負の屈折 光 自然界の物質 n = -1.3 速い光・遅い光 負の屈折率 透明マント 人工ブラックホール メタマテリアル 光の波長よりも小さな微細構造体では、材料そ のものよりも、構造由来の特性が全体の光応答 を決めるという性質が現れます.私たちは、微細 構造体をうまくデザインすることで、新奇な光学 特性を示す人工光学材料“メタマテリアル”を作 り出す研究をしています. 真空よりも低い屈折率を示す三次元メタマテリアル 私たちは、トップダウン的な手法とボトムアップ的 な手法を融合させることで、三次元金属ナノ構造 でできたメタマテリアルを高精度かつ大量に作製 することに成功しました. 25 µm 2.5 µm 三次元金属ナノ構造の電子顕微鏡像 メタマテリアルの光学特性を評価した結果、中 赤外領域の光に対して、0.35という真空の屈折 率よりも低い屈折率を示すことを実証しました. 光を完全に吸収してしまうメタ表面 金属は、その高い反射率のために光をほとんど 吸収しません.私たちは、金表面にナノ構造を作 り込むことで、光反射を抑制し、入射光を完全に 吸収してしまう光吸収メタ表面を実現しました. □26mm 光吸収メタ表面 表面構造の電子顕微鏡像 MgF2 Au Au 1次モード (1540cm-1) 光吸収の実験結果 光吸収メタ表面は、その表面近傍に光を長 時間捕捉することができ、これを応用するこ とで超高感度な光センサが実現できます. 私たちは、従来の手法では検出が困難であ った、極微量(アトモルレベル)の有機分子 を高感度に検出できる、メタ表面増強赤外 分光法を開発しました. 電磁界分布の計算結果 炭素原子一層でできた光制御メタマテリアル 光学特性が電圧制御可能な炭素原子の2次元シ ートであるグラフェンを用いた、チューナブルメタ マテリアルを作製し、グラフェン構造やキャリア密 度に応じた特異な光応答の実証に成功しました. ゲート 電界 (a.u.) -1 +1 Vg = -‐V1 □10mm Vg = 0 ソース ドレイン ゲート グラフェンメタマテリアル グラフェン構造の顕微鏡像 Vg = +V1 実験 グラフェン 計算 SiO2 P++-Si THz応答の実験結果 電磁界分布の計算結果 グラフェンメタマテリアルへの印加電圧を制 御することで、THz波の伝搬方向を広角 (±53º)、高効率(≧60%)、高速(≦0.6ps) にスキャンできることを実証しました.
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