平成 26 年 8 月 27 日 北九州市上下水道局 海外事業課 ベトナム社会主義共和国ハイフォン市の主力浄水場に U-BCF を整備する調査を開始 ∼ ODA(政府開発援助)と連携し、北九州市の開発技術を海外に展開∼ ■ 北九州市は、水道水質の安全性の向上に有効であり、加えて、運転費用が低廉であり開発 途上国にも導入可能である上向流式生物接触ろ過(U-BCF)(特許第 3831055 号、北九州 市所有)を、姉妹都市であるハイフォン市を拠点にベトナム国全土へ普及させる取り組み を行っている。 ■ ベトナムからの要請を受け、独立行政法人 国際協力機構(JICA)は、ハイフォン市の主 力浄水場であるアンズオン浄水場(設計日量 100,000m3)が抱える課題に対応すべく、協 力準備調査(アンズオン浄水場改善計画準備調査)を行うこととなった。 ■ この協力準備調査の実施にあたり、JICA は、民間コンサルタントを公示し、企画競争(プ ロポーザル方式)にて評価・選考を行った結果、北九州市海外水ビジネス推進協議会の会 員企業を含む共同企業体を選定し、業務実施契約を締結した。 ■ あわせて、本市は、民間コンサルタントとは別に、JICA のアドバイザーとして、発注者 (JICA)側のスタンスでこの調査業務に参画する。本市が国内特許を有する U-BCF が、 ハイフォン市の主力浄水場に整備されることになれば、両市の姉妹都市関係を象徴する施 設になると期待している。 1 協力準備調査 技術協力、 有償資金協力及び無償資金協力の案件形成のために行う初期の準備段階の調査プ ロセス。調査の内容は次のとおり。 (1) 特定の開発目標達成を支援するための協力目標とそれを達成するための適切な協力シ ナリオの形成 (2) 個別案件の形成、基本事業計画の策定と協力内容の提案、当該案件の妥当性・有効性・ 効率性等の確認 2 協力準備調査を行うコンサルタント(北九州市海外水ビジネス推進協議会・会員企業) (1) 受注者 ベトナム国ハイフォン市アンズオン浄水場改善計画準備調査共同企業体 (代 表) 株式会社エヌジェーエス・コンサルタンツ (構成員) 一般財団法人 北九州上下水道協会 (2) 契 約 額 4,527 万円(消費税込み価格) (3) 履行期間 平成 26 年 7 月 7 日∼平成 27 年 3 月 16 日 (4) 業務内容 全体計画、U-BCF 設計、運営・維持管理計画、事業費算定、環境社会配慮 調査等 担当 矢山、久保田 電話 582−3111 3 アドバイザリー契約 (1) 受注者 北九州市上下水道局 (2) 契 約 額 約 646 万円(消費税込み価格) (3) 履行期間 平成 26 年 7 月 10 日∼平成 27 年 2 月 20 日 (4) 業務内容 U-BCF 設計、施工、運転・維持管理にかかる技術検討事項へのアドバイス (履行期間の内約 60 日間、局職員1名が従事) (5) その他 別途 U-BCF 特許権に係る実施許諾契約を JICA と締結。 ベトナム国における U-BCF の普及に向けた取り組み 4 年 月 平成 22∼24 年度 平成 25 年 5 月 取組内容 備 考 草の根技術協力事業(ハイフォン市) U-BCF 技 術 (有機物に対する浄水処理向上プログラム) の紹介 ベトナムにおける U-BCF の普及に向けた相互協力協 ビ ジ ネ ス 協 定(北九州市&ハイフォン市) 定 ビンバオ浄水場に U-BCF(設計日量 5,000m3/日)整 平成 25 年 12 月 備工事が完成。この整備工事には、ハイフォン市の独 自予算(4,360 万円)が投入され、その内、2,500 万 円を日本企業が受注。 平成 26 年 1 月∼ 平成 27 年 1 月 ベトナム国 で初めての U-BCF 導入 ホーチミン市からの要請を受け、タン・ヒエップ浄水 厚 生 労 働 省 場で U-BCF の実証実験を実施中。 予算を活用 アンズオン浄水場改善計画準備調査の業務実施契約 協 議 会 と し 平成 26 年 7 月 7 日 を JICA と締結。北九州市海外水ビジネス推進協議会 て の ビ ジ ネ の会員企業で構成する JV が概略設計業務を受注。 ス案件 アンズオン浄水場改善計画準備調査(アドバイザリー 市 と し て の 平成 26 年 7 月 10 日 契約)の業務実施契約を JICA と締結。北九州市上下 ビ ジ ネ ス 案 水道局がアドバイザリー契約を受注。 5 件 今後の予定 今後、この計画準備調査の結果を基に、アンズオン U-BCF 整備事業に係る無償資金協力の 実施につき日本政府が検討する予定。市としては、次のようなスケジュールで事業が進むと見 込んでいる。 6 ● 詳細設計(無償資金協力を活用し、ベトナム側から発注)------ 平成 27 年 ● 整備工事( ) --------- 平成 28 年 ● アンズオン浄水場にて U-BCF の運用開始 -------- 平成 29 年 〃 - 市としての期待 水道水源の汚染に苦慮しているベトナム国の水道事業体に U-BCF を普及させる取り組みを 行っている本市にとって、ハイフォン市のアンズオン浄水場に本格的な U-BCF が整備される ことになれば、ベトナム国の多くの水道関係者に U-BCF を直接目で見てもらうことのできる ショーケース的な役割も担う施設として期待する。 定 例 会 見 資 料 目 次 資料 番号 資料名 1 U-BCFの原理 2 ベトナム・ハイフォン市との姉妹都市協定の締結について 3 ハイフォン市の給水区域と受持浄水場 4 ハイフォン市におけるJICA草の根技術協力事業の概要 5 ハイフォン市水道公社との協定締結について 6 ビンバオ浄水場にU-BCFが完成 7 ベトナム・ホーチミン市でのU-BCF実証実験の実施について (資料−1) 上向流式生物接触ろ過(U-BCF) 本市上下水道局は、高度浄水処理方式として、粒状活性炭をろ材とする上向流式 生物接触ろ過設備を導入している。この設備は、微生物による自然浄化作用を利用 して、汚濁物質を効率よく除去し、安全でより良質な水を作るものである。 北九州市上下水道局 特許第 3831055 号 U-BCF の原理 自然の川底の小石などに付着した微生物が、汚濁物質(アン モニア態窒素、マンガン、鉄及び有機物など)を取り込み分解 する作用を、人口の装置 内でより効果的に再現さ せる処理方法。 粒状活性炭は表面が凸 凹(多孔質)で小石など よりはるかに微生物が生 息しやすい形状である。 これをろ過槽内に充填 し、下から上に通水(上 向流)すると、活性炭が 流動し、生物接触効率が 向上する。 一般的な高度処理(オゾン活性炭)と比べて 建設コスト:約1/2 ランニングコスト:約1/20 (資料−2) ベトナム・ハイフォン市との姉妹都市協定の締結について ∼2014 年(H26 年)4 月 18 日∼ ■北九州市とベトナム・ハイフォン市は、2009 年(平成 21 年)に友好・協力協定を締結以来、様々 な分野の交流・協力事業を行ってきたが、両市の友好交流の更なる深化を目指して姉妹都市 協定を締結した。 ■北九州市の姉妹都市協定締結は、1988 年(昭和 63 年)に韓国・仁川広域市と締結して以来、26 年ぶり、姉妹都市としては第 5 番目の提携都市である。 1 姉妹都市協定締結の経緯 本市とハイフォン市は、2009 年(平成 21 年)に友好・協力協定を締結以来、水道分野での 「高度浄水処理技術」の現地導入や、ハイフォン市最大のイベント「ホン河祭り」への若松五平 太ばやし愛好会「響」の参加など、様々な分野での交流・協力事業を行った。 友好・協力協定が本年 4 月に 5 年間の期限を迎えたため、これらの交流成果を踏まえハイフ ォン市と協議を行った結果、ハイフォン市と姉妹都市協定を締結した。 2 姉妹都市協定締結式 (1)日 時 ・ 場 所 平成26年4月18日(金) 北九州市役所 (2)協 定 書 名 北九州市とハイフォン市人民委員会による姉妹都市友好協力関係に関する協定 (3)締 結 者 北九州市長 北橋 健治 ハイフォン市長(人民委員会委員長) ズォン・アイン・ディエン (4)立 会 人 在福岡ベトナム社会主義共和国総領事館 総領事 ブイ・クオック・タイン 左)タイン総領事、中)ディエンハイフォン市長 右)北橋北九州市長 ハイフォン市の給水区域と受持浄水場 番号 ミンドゥック バットカット 浄水場名 能力 (m3/日) 給水人口 (人) 給水 割合 1 アンズオン 100,000 952,265 69.7% 2 カウグエット 40,000 210,925 15.5% 3 ドーソン 7,000 87,145 6.4% 4 ビンバオ 5,000 47,185 3.5% 5 カットバ 3,000 19,165 1.4% 6 バットカット 17,000 32,915 2.4% 7 ミンドゥック 1,500 14,850 1.1% 173,500 1,364,450 100.0% 合 計 アンズオン カットバ カウグエット ドーソン ビンバオ 行政人口:1,925,217人(2013年時点) 1 (資料−4) ハイフォン市におけるJICA草の根技術協力事業の概要 1.背景 ハイフォン市と本市との間の交流協定を契機として、ハイフォン市水道公社と北九州市上下 水道局は、JICA「草の根技術協力事業」を活用した技術協力を行うなど、ハイフォン市 の抱える技術的課題の解決に向けた取り組みを行っている。 2.事業概要 2−1 事業名:「有機物に対する浄水処理向上プログラム」 ①期 間:平成22年度∼24年度(3年間) ②協力内容:【短期対策】有機物分析体制確立 【長期対策】水質全般分析体制確立、高度処理の実証実験 【研修員受入・専門家派遣】 22年度:原水水質対策専門家派遣(3名) 研修員受入(4名) 23年度:高度処理(U−BCF)実証プラント設置指導(2名) 研修員受入(4名) 24年度:研修員受入(4名) 高度処理施設基本設計指導(4名) ※平成 23 年度、24 年度にクレア研修員を各 1 名受入 【実施結果:U-BCF の有効性】 下記の重要な 3 項目で良い結果が得られ、導入効果を確認できた。 (1) アンモニア態窒素 削減率:70∼100% (2)溶存マンガン 削減率:60∼70% (3)有機物(E260) 削減率:30∼40% 2−2 事業名:「配水管理向上プログラム」 ①期 間:平成25年度∼27年度(3年間) ②協力内容:【短期対策】無収水量削減対策・配水ブロック技術の習得 【長期対策】配水ブロック基本設計完成 【研修員受入・専門家派遣】 25年度:研修員受入(5名) 配水ブロック専門家派遣(3名) 26年度:研修員受入(4名)←現在実施中 無収水量削減専門家派遣(3名) 27年度:研修員受入(4名) 配水ブロック設計専門家派遣(3名) (資料−5) ベトナム・ハイフォン市水道公社との協定締結について ∼ ベトナムにおけるU−BCFの普及に向けて ∼ 平成 25 年 5 月 30 日、北九州市上下水道局は、ハイフォン市水道公社と KOBELCO Eco-Solutions Vietnam (以下、「コベルコ」と言う)のハイフォン市ビンバオ浄水場への U-BCF 整備工事請負契約に合 わせ、ハイフォン市水道公社と下記のとおり、U-BCF 普及に向けた協定を締結した。 記 1 ハイフォン市水道公社との協定締結式について (1) 協定名 ベトナム国における U-BCF 普及に向けた相互協力協定 (2) 日時 2013年5月30日(木) 12:00(現地時間10:00) (3) 場所 ハイフォン市・ビンバオ浄水場 (4) 協定締結者 北九州市上下水道局 海外事業・下水道担当理事 田中 文彦 ハイフォン市水道公社 総裁 ブ・ホン・ズン 2 着工式について 協定締結式に引き続き、着工式を開催した。 (1) 日時 2013年5月30日(木) 12:45(現地時間10:45) (2) 場所 ハイフォン市・ビンバオ浄水場 (上記協定締結式と同会場) その他:北九州市の技術アドバイザー業務について ハイフォン市水道公社は、U-BCF の整備工事をコベルコに発注する工事請負契約を締結した。この整備工 事において、北九州市は、工事施工計画に係る技術的な精査など、技術アドバイザー業務をコベルコから受 託し、この整備事業を側面から支援した。 着工式の様子 (資料−6) ベトナム国で初の高度浄水処理(U−BCF)が完成 ハイフォン水道公社・ビンバオ浄水場 ■ 北九州市上下水道局が国内特許を有する上向流式生物接触ろ過設備(Upward Biological Contact Filtration、略称: 「U-BCF」)が、ベトナム・ハイフォン市のビンバオ浄水場に完 成した。 ■ 公共水道にU−BCFが導入されるのは、ベトナム国では初めて。 ■ ハイフォン市水道公社は 12 月 20 日に竣工式を開催した。北九州市の関係者も参加。 ■ この整備事業は、同公社の独自予算によって実行され、KOBELCO Eco-solutions Vietnam(北 九州市海外水ビジネス推進協議会会員企業である(株)神鋼環境ソリューションのベトナム 現地法人)が受注した。 ■ 本市上下水道局は、工事施工に係る技術的な精査など、技術アドバイザーとしての業務をコ ベルコから受託し、この整備事業を側面から支援した。 ◇ 背景 2009 年 4 月、北九州市とハイフォン市は「友好・協力関係に関 する協定書」を締結。これに基づき、本市上下水道局は、JICA 草 の根技術協力事業を活用して浄水処理技術を移転。 この期間中、U-BCF の実証プラントを現地に設置し、1 年間の実 証実験を実施した結果、ハイフォン市においても十分な有効性が 確認されたことから、U-BCF の導入を決定した。 ◇ ビンバオ U-BCF について U-BCF の導入によって、原水中の有機物を3∼4割分解すると ともに、多量に塩素を消費するアンモニア態窒素や溶存マンガン を6∼9割除去することで、塩素の注入量を削減することが可能 となった。今回導入した U-BCF は、ビンバオ浄水場の処理能力で ある 5,000m3/日のうち、全量を処理する。 ◇ 竣工式参加者 海外水ビジネス推進協議会 会長 北九州市上下水道局の職員他 ビンバオ浄水場 U-BCF (資料−7) U-BCF 実証実験の実施について(ベトナム・ホーチミン市) ■ U-BCF の実証実験がベトナム国で実施されるのは、ハイフォン市に続いて2例目。 ■ 実証実験の実施にあたっては、将来の水ビジネスへの発展を見据え、北九州市海外水ビジネス推進 協議会の会員企業(市内1社、市外1社)も参加した。 1 経緯 ベトナム最大の人口を抱えるホーチミン市は、生活雑排水に よる河川の汚染が深刻化している状況にあり、中でも、高いア ンモニア態窒素が水道水源に確認されているタン・ヒエップ浄 水場(日量処理能力 300,000m3)では、住民の健康にも直結す る重大な水質問題となっている。このような状況の中、ホーチ ミン市での水道事業を行っている「サイゴン水道公社」は、ハ イフォン市水道公社が整備を進めている「上向流式生物接触ろ 過池」(U-BCF、日本国内特許第 3831055 号北九州市所有)に 強い関心を示した。 ・ 平成 25 年 5 月 27 日、サイゴン水道公社は、ハイフォン市 水道公社を介し、北九州市上下水道局に U-BCF に関する技 術協力を文書で要請。 ・ 平成 25 年 6 月 26 日、北九州市上下水道局は、職員2名を ホーチミン市に派遣し、タン・ヒエップ浄水場の水源水質 を確認。U-BCF が効果的に働く可能性があると判断。 2 実証実験装置 実証実験の実施体制 今回の実証実験は、基本的にサイゴン水道公社の責任と費用負担において実施している。ただし、 U-BCF は、北九州市が国内特許を有する技術であることから、北九州市上下水道局、北九州市海外水ビ ジネス推進協議会の会員企業(市内1社、市外1社)及びハイフォン市水道公社から U-BCF に精通し た技術者をホーチミン市に派遣し、この実証実験を側面から支援中である。なお、この技術者派遣(ハ イフォン市水道公社からの派遣も含む。 )に係る費用には、厚生労働省の予算(水道分野海外水ビジネス 官民連携型案件発掘形成事業)が充当された。 実証実験に参加組織(企業) 役割 サイゴン水道公社 実験装置の設置、実証実験の実施 北九州市上下水道局 U-BCF に係る技術アドバイス、実験結果の総合評価 ハイフォン市水道公社 実証実験の水質試験に係る技術アドバイス 北九州市海外水ビジネス推進協議会 会員企業 (株)神鋼環境ソリューション 北九州市海外水ビジネス推進協議会 会員企業 (株)ユニエレックス 3 実験装置の設置・運用に係る機械技術アドバイス 実験装置の設置に係る電気計装技術アドバイス ハイフォン市水道公社の役割 ハイフォン水道公社は、この相互協力協定に基づき、今回のホーチミン市における実証実験を支援す ることに加えて、実証実験後、U-BCF の本格導入に向けた調整役としての役割も担う。
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