O3-5 PDからHD移行に伴い情緒不安定になった1例について JA尾道総合病院 臨床工学科1)、JA尾道総合病院 腎臓内科2) ○前田哲典1)、高垣友則1)、高橋みなみ1)、山中啓美1)、江﨑 隆 2)、勝谷昌平2) 症例は 7 0 歳代女性。PD 歴 7 年。11 月上旬に腹膜炎で 行った。最初は「変わらない。痛いのは痛い」と発言して 入院した。治療に難渋し一時的に PD を中止、HD 移行 いたが、回数を重ねていくうちに穿刺が容易にとなり、 も考えたが、 本人の希望があり、 治療後より PD 再開した。 エコー無しで行えるようになった。痛みに対するストレ しかし、3 ヶ月後再び腹膜炎をおこし当院に入院。PD スも軽減していき、穿刺前の説得は必要なくなった。精 歴が長く、腹膜炎を繰り返すことからカテーテルを抜去 神面のフォローとして、不安な気持ちを受け止め、孫の し HD 切り替えになった。 話や時代劇の話など、患者の楽しい会話に重点を置き、 HD 移行後、トイレに引きこもる、透析室で泣く等の情 透析室に行くと楽しい印象を持ってもらえるよう試みた。 緒不安定がみられた。AVF も発育遅延があり穿刺困難 結果、透析室のスタッフは皆話を聞いてくれて優しいと があった。HD は“痛くて、辛い治療”という印象を持た 発言するようになり、表情も和らぎ、笑顔が見えるように れてしまった。その為、 「透析も嫌、刺すのも嫌」 「もう なった。 ここには二度と来たくない」と口にするようになり、穿刺 以上の症例について、多少の文献的考察を含め報告する。 前に長い時で 3 0 分説得に要する事もあった。 まず穿刺痛の軽減を目指し、ペンレス貼付した。また、 再穿刺が必要ない確実な穿刺のためにエコー下穿刺を O4-1 娘から母への移植希望から様々な心理的葛藤を経て 別の道を選択した症例 社会医療法人友愛会 豊見城中央病院1)、医療法人友愛会 南部病院2) ○佐久本敦子1)、田畑優美1)、新里あきの1)、平良千夏1)、池田晴美1) 喜久村 祐1)、西平守邦1)、野田真美子2)、張 同輝2) 腎移植希望の患者に対し臨床心理士 (以下CP) が 【目的】 行った面接過程を報告する。 【症例】6 0 歳女性。他院にて 2 3 歳未婚の娘がドナーで を抱えつつも自分が主人公との自覚が生まれ、娘の将来 への希望を語り、娘も自身の健康を第一に考え始めた時 点で面接終了。母親は献腎移植に登録し血液透析を選 あることが倫理的問題となり移植できなかった経緯があ 択している。 り当院受診となった。初診では母娘共に防衛的であっ 移植の背景には、するか否かの選択を超え、個人の自律 たが、心理面接を行う中で生体間移植以外の道を選ぶに や人生の幸福に関わる信念が影響してくると考えられ 至った。 る。人生の価値観は様々である。患者、家族にとって本 【考察】レシピエントが口を閉ざしドナーが主張するとい 当の幸福とは?という命題を患者と医療者が共に考える う言動の背景には、家族の中での娘の役割意識と責任感 機会を頂いた。移植までの道のりを両者が共に歩むこと が重くのしかかっていたことがわかった。娘の“自分が で、他でもない、この患者にとっての幸福を選択できる 頑張らざるを得ない気持ち”をCPと共有できてからは ような支援を今後も続けていきたい。 防衛が取れ、胸の内を素直に表出するようになる。移植 の関係者が同じ土俵に立ち、考えていきたいと働きかけ 信頼関係構築に務めた。母親は、葛藤から逃れたい心境 51 O4-2 療法選択より心理的サポートを継続している一症例を通して ~自立を支える 社会医療法人友愛会 豊見城中央病院1)、社会医療法人友愛会 南部病院2) ○田畑優美1)、佐久本敦子1)、新里あきの1)、青木洋子1)、平良千夏1)、池田晴美1) 永山聖光1)、張同輝 2) 当院では、多職種が関わる腎不全サポート外来 (以 【背景】 で導入後も入退院が繰り返される。医療者は常々そのこ 下、そらまめ外来) を開設している。そらまめ外来は、患 とを不可解に思いながらも、関わりを継続。そうした中 者様のライフスタイルに合わせた療法選択を可能にする にも最近では、 「今年は入院しないことが目標」という言 ための外来である。臨床心理士が介入する殆どの症例は、 葉が A 氏から聞かれる様になる。春木氏は、CAPD と 療法選択が決定した時点で介入は一旦終了となる。 いう治療法は、自立心を要求される治療法であるだけに、 【目的】今回、療法選択決定後もそらまめ外来で面接を継 続している一症例について検討する。 本人の責任の重さや孤独・孤立感・家族負担の重さなど 計り知れないものがあることも治療者として十分に承知 【症例】A 氏50代女性。網膜色素変性や子宮体癌術後 しておきたいことと述べている。管理等うまくいかない 等の既往があり PD 導入は困難とされていたが、そらま 背景にその方の抱える苦悩を見出しともに寄り添うこと め外来チームの介入もあり PD 導入が実現。しかし、A が、患者様の孤立感と自立心を支えることに繋がると考 氏は PD 導入を喜び、大切にしたいと言う一方で、PD えられる。 管理が自己流になりがちである。 【考察】A 氏にとって、人生の再出発を掛けた期待いっぱ いの PD 導入実現であったが、管理が自己流になりがち O4-3 医療者・患者双方のとらえ方の違いによるトラブルから和解し、 現在に至るまでのストーリー~ある患者との関わりを通して~ 尾鷲総合病院 ○山本香織、東 園子、中芝敬子、橋本千代子 今回、以前より威圧的な態度、暴言を吐く患者のグラフ にサインしてもらい、受け入れをする事となったが、表在 ト感染をきっかけに一方的に医療ミスだと転院先から抗 化Aに対する穿刺困難、患者の無言の圧力などから看護 議の FAX を送ってきた患者との関わりの中で、意思疎 師の精神的ストレスは MAX の状態である。 通の難しさ、双方のお互いの理解と歩み寄りの重要性を このような症例にどのように対処、指導介入していくべ 痛感した。 きかを検討していただきたいので報告する。 患者は70代の男性。2001年HD 導入。導入時よ りシャントトラブル多く、再三閉塞を繰り返している。 2013年6月グラフト感染し、グラフト置換。しかし、 旧グラフト再感染を起こし関東方面に転院する。転院先 より抗議の FAX が送られるも、地元での HD を希望す る中、当院では専門的治療の継続困難を理由に転院を拒 否しようとする動きになった。 しかし、看護部・事務長を交え話し合いを重ねる中で双 方の意思疎通の相違が浮き彫りになった。結果、誓約書 52 治療環境変化により精神面、抑うつ症候群等が 改善した一症例 O4-4 医療法人松田グループ 美しが丘クリニック ○樋口由希、前田浩一、加藤雅彦、松田敬子 【はじめに】維持透析6年目の患者が施設内透析環境変 胸部所見、検査所見などに大きな問題がないため、精神 化によって精神面と思われる不安定症状を呈し、拒絶を 面での変化を促すため大透析室に代え治療環境の変更 含む規定の治療継続困難となったが、スタッフを含め治 を行った。 療環境を変更することにより症状の改善がみられ、現在 【結果】患者は依存心や不安が強い他、より多くのスタッ 精神面も安定した治療が行えている症例を経験したので フとのコミュニケーション、他の患者と共有する治療環 ここに報告する。 境に満足感を感じ、少人数で行う治療環境に疎外感、閉 【症例】S 氏 70歳 女性、糖尿病性腎症、1型糖尿病、 塞感を抱いていたものと考えられた。 透析歴6年、透析時間3時間 3 0 分、 胸部所見、検査所見 環境を考慮したことで、精神面で安定し愁訴軽減につな など特筆すべき問題なし。 がった。 愁訴・状態:穿刺部痛 (経時的増大) 、胸痛、不隠、体動、 愁訴が多く透析困難な患者や、直接治療環境に対 【考察】 抑うつ症候群。 する不満を言わない患者でも、検査、投薬、透析条件、看 ベッド配置の都合にて小透析室に変更2ヶ月頃より穿刺 護技術のみならず、治療環境やスタッフとの相性などが 部痛、胸痛の増強、悪心、不隠が増大し、 ベッド起上や 精神面で影響することを十分に検討する必要があると考 ベッドから降りるなど、治療が困難となった。 えられた。 透析患者および家族との定期的な面談の試み O4-5 医療法人社団東山会 喜多見東山クリニック内科1)、医療法人社団東山会 喜多見東山クリニック看護部2) ○高橋恵子1)、根本加代子2) 【はじめに】当院は患者の年齢が全国平均より高い。患者 得られた情報はデータベース化し、 全スタッフで共有した。 の中には認知症があり、訴えをうまく伝えられないケー 【結果】7 8 名中 1 年間で 3 3 家族( 4 2 . 3 %) と面談した。家 スや、透析時の診察ではプライバシーが保たれず、時間 族のいる患者はきちんと食事管理されていた。送迎バス に制限もあることから、本心を話していないケースなど で通院している患者の中には、当院への来院には不自由 があると思われる。また MSW や栄養士がいないため、 がないため、介護保険の申請をしておらず、新たに申請 介護保険制度利用の提案や栄養相談も看護師や医師が 方法の説明が必要なケースがあった。面談を通して家族 行う必要がある。 との面識ができ、自宅で患者の体調が不良になった際に、 定期的に患者及び家族と面談し、家族の協力を得 【目的】 ながら患者の問題点を解決し治療に反映させる。 患者及び家族と以下の内容について看護師と医師 【方法】 で面談を行った。( 1 ) 患者背景( 2 ) 生活、食事、自己管理 家族から気軽に連絡してもらえるようになったため、早 期治療、入院率の低下に繋がった。 いずれは事前指示書の取得を考えているが、患者 【課題】 及び家族との信頼関係を築くのに何年かかるか。 の状況( 3 ) 現在の治療内容、患者の病状の説明( 4 ) 介護保 険制度利用( 5 ) 患者及び家族からの質問、要望( 6 ) 緊急時 の受診方法 53 O4-6 「お誕生日色紙」の取り組みから、 思いやりに満ちた透析室を目指して 医療法人社団 大誠会 松岡内科クリニック1)、医療法人社団 大誠会2) ○石原あい子1)、永井茂美1)、渡部めぐみ1)、左合 哲1)、種田美和2)、松岡哲平2) 核家族化の進行や独居者が増加する中、当院 【はじめに】 た」 「気にかけてくれてありがとう」 という でも 「食事が別々で淋しい」 「一人だと何の楽しみもない」 言葉が聞かれた。スタッフからは、 「想像していた以上 という患者の声を度々聞くことがあった。何か支援でき に喜んでもらえて嬉しかった」 ないのか考えていたところ、第 2 3 回サイコネフロロジー 「自分も笑顔になった」 などの言葉が聞けた。 研究会野原記念受賞講演を聞き感銘を受け、それを参考 「お誕生日色紙」を作成することで患者を思いや 【考察】 にした「お誕生日色紙」を作成し患者に手渡す取り組みを る気持ちを持つことができたのではないか はじめた。その結果、患者や家族から「ありがとう」の言 と考える。色紙を渡す行為は、 患者とのコミュニケーショ 葉とともに透析室に笑顔が増え、スタッフの気持ちに変 ンを図るきっかけになったと思われる。 化がみられたので報告する。 「お誕生日色紙」は患者に対する思いやりを育む 【結語】 対象:外来維持透析患者 1 0 3 名 【対象・方法】 ツールのひとつである。 方法:1.担当者 2 名選出 コミュニケーションによる信頼関係の構築と共に相互理 2.誕生日に間に合うように色紙を作成 解を得るきっかけとなった。 3.透析終了後に患者に手渡し、記念撮影 患者に笑顔が見られ、 「はじめてもらって嬉しかっ 【結果】 O5-1 当院透析患者のQOL調査 -第3版- 医療法人 松江腎クリニック1)、島根大学医学部看護学科2) ○木下幸子1)、宮本まゆみ2)、草刈万寿夫1) 【はじめに】当院は,開院当初から「苦痛のない生活,苦 「腎疾患による負担」が大きいと感じている傾向 【考察】 痛のない透析,合併症の予防」を治療目標に,オンライ ではあったが, 「日常生活への影響」や「勤労状況」等にお ン HDF で高血流,高効率透析を行ってきた.当院での いて高値であったことから,仕事を頑張り,趣味を楽し 透析治療が,患者の QOL にどのように影響しているの むなど毎日を充実して送っていることが推察でき,QOL かを把握するため KDQOL-SF TM Version 1 . 3(日本語版) を用いて QOL 調査を実施したのでここに報告する. 【方法】当院透析患者(認知症患者を除く)11 6 名に対し, アンケート調査を実施した. 【倫理的配慮】対象者には研究目的・研究方法を説明し, 同意を得た. 【結果】腎疾患特異的尺度:ほとんどの項目で代表値より 「日常役割機能(身体) , (精神) 」において高齢者の結果 が低値であり,加齢による身体,精神への影響は妨げら れるものではないことも明らかとなった. 【結語】 今回のアンケート結果から,当院透析患者の QOL が高いことが明らかとなった. 十分な透析量を確保することは,透析生活における様々 高値であった. な制限や苦痛の緩和につながり,QOL の向上に期待が 包括的尺度:年齢別で結果の差がみられたものの,全体 できると思われる. 的には全ての項目で代表値より高値であった. 54 向上につながっていると考えられる. しかし, 「身体機能」 ,
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