SPIDERFLASH-t AFIBによる 心房細動アブレーション後再発評価

Volume
23
SPIDERFLASH-t AFIB による
心房細動アブレーション後再発評価
濵 義之 先生
君津中央病院 循環器科
SPIDERFLASH-t AFIB による
心房細動アブレーション後再発評価
濵 義之 先生
君津中央病院 循環器科
01 背 景
細動も検出することができる(Figure 2)
。現在、我々は
心房細動アブレーション後の再発評価を SPIDERFLASH-t
AFIB による1週間のモニタリング検査を行っており、その
不整脈の検出率はモニタリング時間の長さに依存する。24
有用性を検討した。また、長時間のモニタリングはすなわち
時間のホルター心電図検査ではモニタリング時間が短いた
長時間電極を付けなければならず、皮膚かぶれも問題とな
め検出率は低くなってしまう。Internal loop recorder
る。よって皮膚かぶれに関しても比較的よく用いられている
は 24 時間 365 日モニタリングすることができるが、手
電極であるブルーセンサーと、かぶれの少ない電極であるビ
術が必要なため侵襲的な検査となってしまう。それに対し
トロードDに関して皮膚かぶれの頻度を検討した。
External loop recorder で あ る SPIDERFLASH-t AFIB
は最大で 40 日間のモニタリングが可能であり、手術も必要
ないため不整脈検出に有用なツールと考えられる。また一時
02 方 法
的に取り外すことで検査期間中に入浴も可能である。そし
て SPIDERFLASH-t AFIB の最大の特徴は、他の External
心房細動アブレーション後の再発評価
loop recorder と違い不整脈の自動検出機能を有している
症例ベース
ということである(Figure 1)
。そのため、無症候性の心房
当院において 2012 年 1 月 ~2013 年 8 月までに 286 症例
Figure 1
Figure 2
1 New Hear topics, Vol. 23
Volume
23
に対し初回心房細動アブレーションを行った。そのうち植
リングすることにより+7.1%の再発を捉えることができた。
込み型デバイスでモニタリングしている 15 症例、通院を
その内、発作性心房細動症例においてはホルター心電図で
中断してしまった 6 症例を除いた 265 症例(年齢 67±10
検査していたとすると 6.9% (9/131) の再発率であったが
歳、発作性心房細動 131 症例、持続性及び長期持続性心房
SPIDERFLASH-t AFIB にて 1 週間のモニタリング検査を
細動 134 例)を SPIDERFLASH-t AFIB にて1週間のモニ
行うことにより 13.0% (17/131) の再発率となり+ 6.1%
タリング検査を行った。カテーテルアブレーション実施後
の再発を捉えることができた。
は 3 ヶ月後、6ヶ月後、1年後、1 年半後及び症状出現時に
持続性および長期持続性心房細動に関しては、ホルター心
SPIDERFLASH-t AFIB にて1週間のモニタリング検査を
電図で検査していたとすると 17.2% (23/134) の再発率で
行った。30 秒以上持続する心房性不整脈を再発と定義した。
あったが SPIDERFLASH-t AFIB にて 1 週間のモニタリン
検査数ベース
グ検査を行うことにより 25.4% (34/134) の再発率となり
当院において心房細動アブレーション後の再発評価として
+ 8.2%の再発を捉えることができた(Figure 3)
。
SPIDERFLASH-t AFIB にて 1 週間のモニタリング検査を
検査数ベース
のべ 626 回行っており、捉えられたイベントと不整脈との
全検査中 6.5% (41/626) で心房性不整脈の再発を認めた。
関連性を検討した。
仮に 1 日目に 24 時間ホルター心電図で検査していたとする
皮膚かぶれ
と 1.9% (12/626) の再発しか捉えることができなかった。
皮膚かぶれに関しては、検査後にブルーセンサーで 33 症例、
SPIDERFLASH-t AFIB にて 1 週間のモニタリング検査を
ビトロードDで 145 症例にアンケート調査を行った
行うことで 24 時間ホルター心電図検査に比べ 3.4 倍の再発
をとらえることができた。症候性の再発は 2.4%(15/626)
03 結 果
であったのに対し無症候性の再発は 4.1% (26/626) であっ
た。1週間の検査中に動悸等の症状があったのは 25.7%
(161/626) であった。そのうち、実際に心房細動もしくは
症例ベース
心房頻拍であったのは 9.3% (15/161) だけであり、49%
平均 353±162 日の観察期間中に 19.2% (51/265) が再発
(79/161) は洞調律時に症状を感じていた(Figure 4)
。し
した。仮に 1 日目に 24 時間ホルター心電図で検査していた
たがって心房細動アブレーション後の再発評価においては、
とすると 12.1% (32/265) の再発率であった。1 週間モニタ
症状はほとんどあてにならず、モニタリング時間を長くする
Figure 3
Figure 4
SPIDERFLASH-t AFIB による心房細動アブレーション後再発評価 2
Volume
23
04 結 論
ことが重要であることが示唆された。
皮膚かぶれ
1 週間の検査により皮膚に強い掻痒感を感じたのはブルーセ
ンサー(B)51.5%、ビトロード D(D)29%、皮膚紅斑
SPIDERFLASH-t AFIB による 1 週間のモニタリング検査
が生じたのは B 93.9%、D 69%、水泡を形成したのは B
は、24 時間ホルター心電図検査に比べ、より多くの再発を
36.4%、D 18.6%、皮膚かぶれに関しての苦情が B 24%、
捉えることができた。
D 6%であった。B に比べ D においてすべての項目におい
不整脈関連の学術論文において、アブレーション後の評価は
て皮膚かぶれが少なかった(Figure 5)
1 週間以上のモニタリングを行っているものが多くなって
Figure 5
きており、またモニタリング期間が短いと論文が accept さ
れづらくなってきている現状もある。日本で 1 週間以上の
モニタリングができるのは SPIDERFLASH-t AFIB のみで
あった(2011 年時点)
。ただし長時間電極を貼る必要があ
るため、当初は皮膚かぶれに悩まされたが、ビトロード D
を用いてからはかぶれも随分と減少した。また心房細動アブ
レーション後の評価において症状はほとんどあてにならず、
さらに 24 時間ホルター心電図では再発を捉えられていない
ことが多い為、
長時間モニタリングの重要性を痛感している。
SPIDERFLASH-t AFIB による 1 週間のモニタリング検査
を行うことで再発検出率は増えるが、それにより自分たちの
手技も見直すことができ、結果的に患者さんによりよい医療
を提供することができると考えている。
濵 義之 先生
君津中央病院 循環器科
●経歴/
2003 年
2003 年
2011 年
2011 年
山梨医科大学医学部医学科 卒業
千葉大学医学部付属病院 内科研修
千葉大学大学院 卒業
君津中央病院 循環器科 医長
2013-12-15-01