被災者生活再建支援システム

生活再建
防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション
り災証明書
被災者台帳
被災者生活再建支援システム — 自治体の公正
公平で迅速な生活再建支援業務を強力にサポート
2015年 1 月17日,歴史に残る被害をもたらした阪神・淡路大震
災から20年が経ちました.
この20年の間にも,
新潟県中越地震
(2004
年)や東日本大震災(2011年)等が起こり,また近年は,地震だ
けでなく,台風やゲリラ豪雨による被害も深刻化しています.こ
うした中,NTT東日本では,被災後,住民がいち早く元の生活に
戻れるよう,自治体のり災証明書発行,被災者台帳作成・管理業
務をサポートする「被災者生活再建支援システム」を提供し,
2014年度にはクラウドサービスとして提供を開始しました.
現状と背景
やまもと
いずみ
だいすけ
泉 大介
か と う
ゆうすけ
加藤 佑介
た な か
しんいち
おおいし
/田中 真一
さ と う
も も か
/佐藤 百華
やまもと
み
ひ ろ き
/大石 広樹
は
せ
たかのり
/長谷 卓典
み
/山本 美海
NTT東日本
つ効率的に実施することが可能とな
*災害対策基本法:国土並びに国民の生命,身体
及び財産を災害から保護するため,防災に関し,
基本理念を定め,国,地方公共団体及びその他
の公共機関を通じて必要な体制を確立し,責任
の所在を明確にするとともに,防災計画の作成,
災害予防,災害応急対策,災害復旧及び防災に
関する財政金融措置その他必要な災害対策の
基本を定めることにより,総合的かつ計画的な
防災行政の整備及び推進を図り,もつて社会の
秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを
目的とする法律.
ります.
災害大国と呼ばれる日本に住む私た
2013年 6 月には,災害対策基本法*
ちにとって災害への備えによる「災害
が一部改正され,自治体の迅速なり災
に強い街づくり」は重要なテーマとい
証明書交付が義務化,被災者台帳整備
えます.また,近年多発している想定
についても記載されました.
以上の災害に見舞われた際,いち早く
け ん た ろ う
山本 健太郎
発災後の,
「建物被害認定調査」
「調
住民の方々に元の生活水準に戻ってい
ただけるよう積極的に自治体から住民
に対する支援の取り組み「攻めの行
政」が重要なミッションとなってき
ています.
その一歩目として,被害に遭った建
被災者台帳の重要性
庁内業務中心で対応
介護保険
復興基金
減免
(復興支援室) (福祉)
義援金配分
(福祉)
保育料減免
(福祉)
国民健康
保健減免
(福祉)
固定資産
税減免
(税務)
建物被害
再調査
り災証明書
発給
物の調査を公正公平,迅速に行い,り
災証明書を発行する必要があります.
被災者台帳
り災証明書とは,火災 ・ 風水害 ・ 地震
などの災害で被災した住家等の被害の
程度を証明する書類です.り災証明書
は生活再建のパスポートというべきも
口座
情報
長期避難
人・世帯
原発事故
被災証明
被害
住宅解体
家屋
ので,住民の方は,り災証明書を通じ
て支援申請をすることで,税の減免や
義援金の受領など各種の支援を受ける
ことができます.
また,個々の被災者の被害状況や支
援状況,配慮事項等を一元的に集約す
るものとして被災者台帳があります
生活再建
仮設住宅
支援金
(復興支援室)(復興支援室)
公費解体
(環境)
生活再建相談窓口における申請ベース
被災者台帳は,発災後数年間全庁的に実施される各種生活再建支援業務の
中心となるデータベースです
(図 1 )
.被災者台帳を整備すること
で,支援漏れや手続の重複をなくし,
中長期にわたる被災者支援を総合的か
66
NTT技術ジャーナル 2015.3
応急修理
(建設)
図 1 被災者台帳の重要性
特
集
査結果の登録」
「り災証明書発行」
「被
大震災で新たに注目された「被災者の
会実装するため「被災者生活再建支援
災者台帳管理」といった自治体が行う
生活再建」という復興課題を効率的に
システム」として製品化し,2014年
一連の業務をサポートするシステム
解決する方法として開発されたことに
6 月には小規模自治体でも導入しや
が,
被災者生活再建支援システムです.
端を発します.その後,
小千谷市
(2004
すいクラウドサービスの販売を開始し
年新潟県中越地震)
,輪島市(2007年
ました.
開発の背景
能登半島地震)
,柏崎市(2007年新潟
商品の特徴
被災者生活再建支援システムは,京
県中越沖地震)
,岩手県(2011年東日
都大学防災研究所,新潟大学危機管理
本大震災)の現場での支援の中で研究
これまでの研究から,生活再建支
室を中心とした研究チームが,10年以
と改良を重ね,刻々と変化する「被災
援業務には 4 つのボトルネックが存
上にわたる,被災地での研究成果を基
自治体や被災者のニーズ」にこたえる
在していることが分かってきました
に製品化しました.
べく,進化を積み重ねてきました.
このシステムの開発は,阪神 ・ 淡路
(図 2 )
.
その後,2012年NTT東日本にて社
生活再建支援業務の4つのボトルネック
被災者
被災
り災
証明
支援の受給
生活再建
り災
証明
住民データ
建物被害
認定調査
ボトルネック 1
建物被害調査員を
確保できない
家屋データ
仮設住宅
調査結果
データ化
税等の減免
ボトルネック 2
調査票をデータ化
するのが大変
り災証明書発行
ボトルネック 3
り災証明書発行に
膨大な時間がかかる
被災者台帳
支援金など
ボトルネック 4
支援対象者の特定や
公正公平な支援が困難
システム導入で
ボトルネック解消!
4 つのボトルネックを解消する生活再建支援システム
建物調査員養成
トレーニング
調査票自動データ化
システム
生活再建支援
自治体
り災証明書取得
り災証明書発行
システム
被災者台帳
管理システム
被災者台帳
ポイント
未経験者も調査可能な簡易
調査手法と分かりやすい調査
員トレーニングプログラム
ポイント
ポイント
調査結果のデータ化にかかる り災証明申請者の住民,家
人件費と時間を大幅縮減
屋,被害情報を瞬時に特定
し,り災証明書を迅速に発行
ポイント
質の高い被災者台帳に
より公正公平で効率的
な生活再建支援を実現
図 2 生活再建支援業務の 4 つのボトルネック
NTT技術ジャーナル 2015.3
67
防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション
(1) 建物被害調査員を確保できない
建物被害認定調査は,膨大な調査
(4) 支援対象者の特定や公正公平
な支援が困難
自治体の規模やニーズに応じて,ク
ライアント ・ サーバ版,Bizひかりク
量に加えて,調査員である自治体職
生活再建支援は, 1 人の取り残しも
ラウド版,プライベートクラウド版の
員の実務経験が乏しいことから,調
なく確実に進めていくことが求められ
3 つの提供形態を選択することができ
査に多大な時間を要し判定結果にば
ます.そのためには,被災者の状況を
ます.2012年度の初導入以降,2014年
らつきをきたしやすく,それによっ
一元的に包括管理する「被災者台帳」
度末までに全国50自治体に導入される
て被災者が不公平感や不満を持つ要
と,それを効果的に活用するためのシ
見込みであり,災害対応業務や防災訓
因になります.
ステムが必要です.
練などに活用いただいています.
本システムでは,フローチャート化
本システムでは,り災証明書の内容
した建物被害調査票により,建物の全
に応じて,仮設住宅の提供状況や,支
壊や半壊等の被害状況を公正に判定で
援金の給付,税や公共料金の減免等,
き,専門知識のない自治体職員や,土
庁内横断的に被災者支援の状況をデー
り,自治体の規模に合わせたライン
地勘のない遠方からの支援職員でも建
タベース化し,管理することができま
アップがさらに充実しました.NTT
物被害認定を実施できます.
す.支援が行き届いていない被災者や
東日本として,被災者と被災地の実
(2) 調査票をデータ化するのが大変
り災証明書の申請状況を把握し,自治
態に合わせて自治体様へ最適なサー
膨大な量の調査票に記された状況
体から住民に対してアプローチを行う
ビスをご提案し,災害大国 ・ 日本に
ことが可能となります.
おける住民の災害支援に対する「攻
や,紙地図に示された調査点情報を,
短時間にデータ登録しなければなら
ず,多大な労力が必要です.
本システムでは,調査票に記された
導入実績
際の被災地での運用実績が挙げられま
デジタルデータ化することが可能とな
す.まだ,記憶に新しい伊豆大島の
り,その結果,災害時における情報処
2013年台風第26号,福知山市の2014
理を飛躍的に効率化できます.
年 8 月豪雨でも,被災者生活再建支援
がかかる
「誰が(世帯 ・ 人)
」
「何に」
「どんな
被害」を受けたかを明らかにしたもの
り災証明書発行 ・ 被災者台帳整備が
行われ,現在も継続的に活用いただ
いています.
伊豆大島の台風では,これまで経験
体では,世帯 ・ 人は住民基本台帳,家
のない大規模な豪雨災害に直面した離
屋は家屋課税台帳,被害は被害認定調
島の町が, 1 カ月半で被災者情報を確
査データベースに分散しており,これ
定してり災証明書を発行し,早期の支
らを統合するための共通IDがありま
援に取りかかることができました.
福知山市の豪雨では,タブレットな
そこで,本システムでは,GIS(地
ど最新のツールを試行しつつ,建物被
理情報システム)を用いて,位置情
害認定調査を実施し,調査の効率化を
報を共通IDにして,それぞれの連携
実現しました.その後,クラウド型の
を図り,り災証明申請受付 ・ 発行と
「Bizひかりクラウド被災者生活再建
その後に行われる業務の効率化を実
支援システム」の利用につながって
現しました.
います.
68
NTT技術ジャーナル 2015.3
めの行政」に貢献していきたいと考
えています.
システムを用いた建物被害認定調査 ・
が「り災証明書」です.一般的に自治
せんでした.
Bizひかりクラウド版の提供によ
本システムの特徴の 1 つとして,実
文字や位置情報を自動的に読み取り,
(3) り災証明書発行に膨大な時間
今後の展開
(後列左から)
加藤 佑介/ 長谷 卓典/
泉 大介/ 大石 広樹
(前列左から)
田中 真一/ 山本 健太郎/
佐藤 百華/ 山本 美海
NTT東日本では,災害に負けない街づく
りの実現に向け,自治体様の生活再建支援
業務を強力にサポートするため,皆様によ
り良いサービスのご提案と導入の支援をい
たします.
◆問い合わせ先
NTT東日本
ビジネス&オフィス営業推進本部
公共営業部
TEL 03-6803-7709
FAX 03-6719-3183
E-mail sol-saiken ml.bch.east.ntt.co.jp