講演会のご案内 講師:佐藤雅彦 先生 (京都府立大学大学院生命環境科学研究科) 植物細胞の形態形成におけるイノシトール3リン酸5キナーゼ, FAB1/PIKfyve の役割 日時 : 2016 年 1 月 27 日(水曜日) 会場 : R1 棟 2 階第 3 会議室 午後 1 時半から午後 3 時まで 佐藤雅彦先生の講演会を開催いたします。多数、ご来聴下さいますようご案内いたします。 【講師の先生より】 イノシトールリン脂質は,細胞内シグナリングに関わる重要な分子であり,イノシトール環の 3,4,5 位の 炭素に異なった組み合わせで,リン酸が結合することで,複数の分子種を生成する。FAB1 は,ホスファ チジルイノシトール 3 リン酸 (PI3P)からホスファチジルイノシトール(3,5)二リン酸 (PI(3,5)P2)を生成する キナーゼである。我々は,シロイヌナズナ FAB1 の機能解析を進めた結果,FAB1 は,「後期エンドソーム の成熟に関与すること」,「成熟した後期エンドソームは,表層微小管に接着することで,表層微小管の配 向を決定し,オーキシン排出体 PIN などの極性輸送を制御すること」を明らかにした。驚いたことに, FAB1 は,成熟した細胞では,細胞膜に局在が移行する。では,なぜ,植物の FAB1 は成熟した細胞の細 胞膜に存在するのだろう?この謎を解くために,申請者は,PI(3,5)P2 を蛍光標識するタンパク質を発現 する植物体を新たに開発し, PI(3,5)P2 が根毛の基部や,孔辺細胞の気孔側の細胞膜,表皮細胞の凹 面,つまり“固い部分”に選択的に局在することを明らかにした。一方,PI(4,5)P2 は,細胞膜上の PI(3,5)P2 が存在しない領域,例えば,根毛の先端など細胞の伸長が盛んな領域に存在する。これら事 実から PI(3,5)P2 と PI(4,5)P2 が排他的に細胞膜上の局所構造を形成し,一方,PI(4,5)P2 の存在領域 では,アクチン制御下で,柔軟な細胞壁構造を形成し,PI(3,5)P2 の存在領域では,微小管の制御下で, 側面の固い細胞壁構造を形成することで,あらゆる細胞の形態が創りだされるという仮説を着想するに 至った。以上のことより,PI(4,5)P2 と PI(3,5)P2 の細胞膜上における領域制御機構は,あらゆる植物細 胞の形態形成を制御する基本原理になりえると考えている。 1. Hirano T, Munnik T, Sato MH. “Phosphatidylinositol 3-phosphate 5-kinase, FAB1/PIKfyve mediates endosome maturation to establish endosome-cortical microtubule interaction in Arabidopsis.” Plant Physiol. (2015) 169, 1961-1974. 2. Hirano T., Sato MH. “Overexpression of FAB1A-GFP recruits SNX2b on the endosome membrane in snx1-1 mutant in Arabidopsis.” Plant Signal Behav., (2015) “Epub ahead of print” 3. Hirano T., Matsuzawa T., Takegawa K., Sato MH. “Loss-fo-function and gain-of-function mutations in FAB1A/B impair endomembrane homeostasis, conferring pleiotorpic developmental abnormalities in Arabidopsis.” Plant Physiol., (2011) 155, 797-807. 連絡先:東京工業大学 資源化学研究所 附属資源循環研究施設 久堀 徹 (内線 5234)
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