火と対峙し、鉄と向き合う若き刀工 髙橋恒厳さん

Takahashi Tsuneyoshi
火と対峙し、鉄と向き合う若き刀工
髙橋恒厳さん
めらめらと立ちのぼる炎で鉄を積み沸かし、真っ赤に燃えたその固まりを一心
不乱に叩く。刀を作る作業は、仕上がりの繊細な輝きと裏腹に、とても力強い。
つねよし
まさや
前橋市で唯一の刀工、髙橋恒厳(本名・祐哉)さんは同市富士見町石井に鍛刀
場を構えて5年目。昨年の夏、
「新作名刀展」
(日本美術刀剣保存協会)で、県内
の刀工として実に 23 年ぶりに特賞を受賞した。作品は、刀身に浮かび上がる刃
〈プロフィール〉
たかはし・つねよし
本名・髙橋祐哉。1977 年 12 月、前橋市南町生
まれ。高校卒業後、1998 年、山形市の刀匠・上
林恒平氏に弟子入り。2003 年、文化庁より作刀
許可を得る。2010 年、独立し前橋市富士見町石
井に鍛刀場を開く。2012 年・2013 年・2014 年、
「新作名刀展」
(日本美術刀剣保存協会)で努力賞。
2015 年、同展で県内の刀工として 23 年ぶりに
特賞を受賞。前橋市在住。
文(はもん)がとても美しい、南北朝時代の作風を写した太刀だ。
幼い頃からものづくりが好きだった髙橋さんは、高校時代に古書で人間国宝の
宮入昭平氏(故人)の作品を見て刀剣の美しさに惚れ込んだ。卒業後は全国各地
の刀匠を訪ね、飛び込みで見学をさせてもらった。
「自分にはこの道しかないと
思い、必死でした」
。そして山形市の上林恒平氏に弟子入りする。最初の頃は弟
子は髙橋さん一人だけで、雑用もすべてこなした。
「大変だった
がかえってそれが良かったと思う。親方のすべてを吸収しよう
と作業に集中できた」と振り返る。約 12 年間修業し、2010 年
に独立。手槌(てづち)など、使う道具もすべて手作りである。
得意とする作風は「山城伝(やましろでん)
」と「相州伝(そ
うしゅうでん)
」
。
「山城伝」は平安時代のもので気品が感じられ
る。
「相州伝」は鎌倉・南北朝時代のもので華やかさがあり、特
賞を受賞した作品もこの作風だ。相州も、元は山城の鍛冶屋が
発展させたもので、互いに相反する特徴を持つようだが作り方
は似ているという。
一振りの刀を仕上げるには半年、長い時は1年半ほど要する。
材料の玉鋼(たまはがね)を熱して打ち伸ばし、水で冷やして
小さく割り、同じような堅さのものを芯鉄(しんがね)
、刃鉄(は
がね)
、皮鉄(かわがね)用として分け、鍛錬を重ねていく。制
作過程でもっとも大事にしているのは、作業前に仕上がりをし
っかりイメージすることだという。
「究極の理想は、誰が見ても心から美しいと思える刀を作るこ
と。日本文化の発展のためにも愛好者だけでなく刀を知らない
人にも感動を広めたい」と髙橋さん。
「刀づくりは一生かけても、
これでいいという満足には到達できない。これからも一つひと
つの技術を磨き、光明が開けるよう努力を続けていきたい」と
話している。
特賞・日本美術刀剣保存協会会長賞を受賞した作品
平成 27 年「新作名刀展作品集」
(公益財団法人日本美術刀剣保存協会)より
28
1
4
Vol.1
9
10
3
10
4
11 9
28
10 28
1
1
3
3
2
28
1
1
1
20
1
1
16
16
m o v e m e n t
10 4
10
■「奉納新春刀剣展」の
お知らせ
10
11
髙橋さんが所属する全日本刀匠会
関東支部が、新年 月 日から 日
まで、靖国神社遊就館において「奉
納新春刀剣展」を開催します。
関東地区の刀匠約 名が真心こめ
て打ち上げた最新作の刀剣が展示さ
れ、日本の伝統文化の粋を心ゆくま
で感じられる荘厳な催しとなってい
ます。髙橋さんが制作した刀剣も展
示されます。
◉期間
平成 年 月 日(金)~ 日(土) ◉場所
靖国神社・遊就館 階
企画展示室 (東京都千代田区)
◉拝観料 無料
◉主催
靖国神社・全日本刀匠会関東支部 ○刀剣研磨等実技公開
日時 平成 年 月 日(土)
午前 時~午後 時
○作刀関連実技公開・刀剣解説
・
日時 平成 年 月 日(日)
・ 日(土)
・
日(月)
・ 日(月)
日(日)
各日午前 時~午後 時
※ 日は刀剣解説のみ
※髙橋さんの担当は、 日・ 日・
日の予定
○刀身彫刻実技公開
・
日時 平成 年 月 日(土)
日(日)
両日午前 時~午後 時
◎髙橋さんの作品について
現在、髙橋さんは展示会に出品す
る作品のほか、守り刀等の制作も行
っております。興味のある方は、ご
相談ください。
前橋市富士見町石井
17
11