( ) 年(平成 年) 月 日 広島県医師会速報(第 号) 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 市郡地区医師会救急・災害医療担当理事連絡協議会 大規模災害時における医療と消防の連携 と き 平成 年 月 日㈪ 午後 時 分 ところ ホテルグランヴィア広島 「飛鳥」 広島県医師会常任理事 野間 純 山田 博康 平成 年 月 日㈪、ホテルグランヴィア広島において、市郡地区医師会救急・災害医療担 当理事連絡協議会を開催した。本会では、救急・災害医療体制整備の一環として、各市郡地区 医師会担当理事間の情報共有や、平素からの「顔の見える関係づくり」を図るため、定期的に 救急・担当理事連絡協議会を開催している。今回は、総務省消防庁防災部長として国の防災関 係トップを務められた室田哲男氏が本年 月に広島市副市長に着任されたことを踏まえ、室田副 市長をお招きし、 「大規模災害時における医療と消防の連携」と題した講演をいただいた。 以下、概要を簡単に報告する。 特別講演 大規模災害時における医療と消防の連携 広島市副市長 室田 哲男 災害には想定外が常に発生する。想定外の事 態の中で、関係者がいかに連携を密にし、防ぎ うる死を回避するかという部分が災害医療にお ける初動のポイントである。 災害発生後、医療と消防の連携を考える際には 災害派遣医療チーム(DMAT)の存在は欠くこ とができない。DMATは病院支援や現場活動、 域内搬送、広域医療搬送などさまざまな活動を行 うが、その中でもDMATの活動に関わる通信や 移動手段、医薬品などの確保・調整といったロジ スティックス機能は、被災地への輸送手段が限ら れた環境の中で最大限効果的な支援を行うために 極めて重要である。局地災害と広域災害における 医療支援の違いを考えると、局地災害では医療機 関の被災が軽微で平時の医療インフラが機能する 可能性が高いため、DMATは現場活動に専念す ることになるが、広域災害の場合は、多くの医療 機関が被災し、平時の医療インフラが損傷してし まうため、DMATはまず医療体制の再構築を担 うこととなる。 災害発生時は、国・都道府県・市町村それぞ れで災害対策本部が設置され、また、現場では 警察や消防・自衛隊・DMATなどが集まる現地 合同指揮所も設置される。各本部・指揮所レベ ルの連携・情報共有と、本部間の連携・情報共 有をいかに行っていくかが対応の鍵となる。医 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 広島県医師会速報(第 療関係者が災害現場で連携・活動を行う場合は、 まずは現場指揮所の指揮者と接触することを目 指していただきたい。医療系本部があればそち らに、なければ関係情報が最も集まりやすい消 防系本部に向かうことが望ましい。また、多職 種が活動することになるため、意思疎通の際は 専門用語や略語を避けて誰もが分かる用語を使 うこと、状況が見えない場合は冷静に確認する ことを心がけていただきたい。最も重要なのは 自分の身は自分で守ることで、そのためには、 ともに活動する消防隊員の指示に従い、事故防 止に努めていただくことが大切である。 東日本大震災では死者 , 名、行方不明者 , 名、負傷者 , 名の被害があったが、死 因をみると溺死が 割以上であり、医療ニーズも 超急性期より慢性期の医療ニーズが長期にわたっ て続いた。これは、建物倒壊による圧死や火災に よる焼死が死因の多数を占めた阪神・淡路大震災 とは大きく異なっており、これまでDMATが対 象として想定していたものと違いがあった。ま た、DMAT活動そのものについても、通信途絶 による政府との連携不足、DMAT事務局員の不 足による初動の遅れ、都道府県調整本部における 統括DMAT不足による疲労・非効率化、都道府 県を越えた調整の対応困難、携行資機材および装 備の不足などさまざまな課題がみられ、現在、解 決に向けて体制整備を行っている。 平成 年 月に発生した広島土砂災害では、消 防庁防災部長として午前 時時点で近隣県にヘリ 待機要請を行うなどの対応にあたった。DMAT 関係の対応を振り返ると、DMAT活動調整本部 が消防署に設置されていた点について、県災害対 策本部の位置が物理的に離れており、連携が取り にくかったのではないかと思われたこと、また、 自衛隊や警察なども対応に加わり合同指揮所がで きてからは、指揮所にリエゾン(連絡調整員)を 出すことで、より傷病者情報を的確に収集できた と思われる点が今後の課題と思われた。 今後発生が予想される南海トラフ大震災では、 阪神・淡路大震災と東日本大震災両方の特徴を 持った被害が発生する可能性がある。甚大な被 害に対しては、発災直後から、被災府県内の警 察・消防は最大限の動員にするとともに、被害 が甚大な地域に対して、全国から最大勢力の警 察災害派遣隊、緊急消防援助隊および自衛隊の 災害派遣部隊を可能な限り早く的確に投入する ため、初動期における派遣方針と具体的な手順 などを整備している。また、建物倒壊などによ る多数の負傷者と医療機関の被災に伴う多数の 号) 年(平成 年) 月 日( ) 要転院患者の発生により医療ニーズが急激に増 大し、被災地内の医療資源のみでは対応できな い状況が予想されるため、全国からDMATを迅 速に参集させ、被災地内において安定化処置な どの最低限必要な対応が可能となる体制の確保 を図るとともに、被災地内で対応が困難な重症 患者を域外へ搬送し、治療する体制を早期に構 築できるよう計画している。 首都直下地震も今後高確率で発生することが 予想されているが、こちらは住宅密集地の存在 や木造建築物の多さなどから火災による被害が 非常に大きくなると予想されており、また、深 刻な道路交通麻痺、応急対応に係る資源の不足 なども懸念されている。一般的な災害医療の考 え方では、医療圏内で発生した傷病者をすべて 災害拠点病院に集中搬送後、トリアージに応じ て広域医療搬送を行うことになるが、上記のこ とを踏まえると、局所的に発生した多数傷病者 が災害拠点病院に搬送されずに滞ってしまい、 防ぎ得た死が多発する可能性がある。これに対 しては、多数傷病者発生エリアの近傍に応急救 護所を設置し、周囲で発生する傷病者を対象に 応急救護所からの分散搬送を基本とした傷病者 搬送を行う事、医療圏や病院までの距離に拘ら ずに傷病者・患者を被災地外拠点などに搬送す るといった、首都直下型地震に特化した考え方 で対応する必要があると思われる。 関係機関の円滑な連携・日頃からの顔の見え る関係構築のためには、訓練が最も大切である。 国・地域ブロック・都道府県・市町村さまざま な単位で訓練が行われるが、医療関係者や医師 会におかれては、ぜひ訓練に参加し、各機関と の関係構築に取り組んでいただきたい。 担当理事コメント 公務で大変お忙しい中講師をお引き受けいた だいた室田副市長にこの場をお借りして御礼申 し上げる。 災害発生後、われわれ医療関係者は地域の医 療支援に携わる場面が生じてくる。災害医療で は消防を中心として行政や多職種との連携のも とに対応することが不可欠であり、スムーズな 連携のためには、平時からの計画づくりや訓練 参加が大変重要である。各地区医師会、あるい は各地域で災害対応の手順を定めておられると 思うが、現状に即する形への見直しや、手順の 確認、訓練によるシミュレーションなど、引き 続き災害への備えをお願いしたい。
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