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•  適応障害
「大学生にとって身近な心の病」
茨城大学保健管理センター 布施 泰子
•  神経症
•  摂食障害
適応障害とは
•  適応障害
重大な生活上の変化,もしくは心的負荷の
大きい出来事の結果に順応しようとするけ
れど順応できなかった時に起こる障害
言い換えると、環境になんらかの変化が
あった時、その変化についていけず、対処
しきれなくなっておこる障害
!
•  神経症
•  摂食障害
適応障害の症状
不安、抑うつ気分、焦燥感、などの精神症
状
不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、
頭痛、吐き気、などの身体的症状
症例1
大学生になってから、一人暮らしをしている。仕送りをも
らっていたが、遊びにいく分は自分でかせぎたいと考え、
定期的なアルバイトをして、それをサークル活動や友達付
き合いにかかる費用にあてていた。
学年が進み、就職活動や卒論のことで忙しくなった。
そんなとき、父親が病気で倒れた。
親はお金のことで何か言ってくるわけではないが、妹がい
るので、なるべく家に負担をかけたくないと考え、アルバ
イトを増やした。
4年生の夏休みが終わってから、やることがたくさんある
のに、朝きちんと起きられなくなった。夜ねつけなくて、
睡眠時間が後ろにずれてしまう。食欲がなく、朝昼と抜い
てしまうこともある。卒論が終わっていないから学校に行
かなければいけないと思っても、外に出られない。就職活
動もすすめられない。
卒業研究担当の教員から呼び出しを受け、事情を説明した
ところ、保健管理センターを紹介された。
治療
•  適応障害
•  精神療法によりストレス耐性を改善させ
る
•  環境調整
•  必要に応じて薬物療法
•  神経症
•  摂食障害
神経症がおこるメカニズム
問題のすりかえ、置き換え
何か心配事や問題があるとき、それが手におえる範
囲であれば、直接悩み、直接対処する。
しかし、自分ではどうすることもできない複雑な
問題が絡んでいたら、どう対処する?
自分の生まれ育ち、文化、社会的価値観など、変え
られないものと深く密着していたら?
そして、自分でも何が問題なのかわからないまま
だったら?(これが多い。)
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なぜ自分の心なのにこんなことがおこる?
自分の心は自分が思っているより多様な構造
自分の心なのだから、自分は全部わかってるとは限らない
疾病利得
!!!疾病利得とは
症状があることによって、得をすること。
家族や友人、恋人に心配してもらえる。
どうしても避けたい状況を回避できる。
症例5
21歳女性。大学1年生の時から一人暮らしをしている。
2年生のある時、大学の授業中、ふと、今朝自分が玄関の
鍵を閉めてきたかどうかが気になった。以来、ガスの元
栓と玄関の鍵のことが気になって、毎日授業に身が入ら
なくなった。今朝きちんと確認した、そんなに心配する
のはばからしい、と頭ではわかっていても、早く帰って
確かめたいために、友達付き合いも減った。朝の確認の
時間が長くなり、遅刻が頻回になった。空きコマに自宅
に戻って確認することも多くなった。だんだん確認に疲
れてしまい、3年生になると、大学に行かずに自宅に引き
こもるようになった。友人が自宅を訪問し、事情をきき、
保健管理センターに相談した。強迫性障害が考えられる
ので、受診するよう勧められた。治療によってある程度
症状は改善し、一年遅れて卒業することができた。
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•  適応障害
•  神経症
•  摂食障害
症例7
16歳女性。几帳面で完全主義の傾向あり。バ
レエを習っていて、太らないようにいつも気を
つけていた。食事の摂取量を極端に減らすよう
になり、あぶらものを食べなくなった。45kg
あった体重が30kgに減ったが、それでも自分
はもっとやせないとならないと主張。バレエの
練習を熱心に続けた。一方家族には料理を作っ
て食べさせようとした。月経は停止し、髪が抜
け易くなった。小児科にて入院治療が行われる
ことになった。
摂食障害と社会、文化
圧倒的に女性に多い。思春期から青年期に
発症することが多い。習慣性も大きい。依
存症に近い側面を持つ。一方で、社会的な
側面を持つ。女性がある程度やせているこ
とが美しさの要素であるというコンセンサ
スのある文化圏でしか発症しない。食物が
潤沢に得られる社会でしか発症しない。過
剰に食べること、過少にしか食べないこと
は選択肢である。
摂食障害の分類
•  神経性無食欲症(Anorexia Nervosa)
制限型
むちゃ食い/排出型
•  神経性大食症(Bulimia Nervosa)
!
排出型
非排出型
神経性無食欲症
神経性無食欲症の人の体
•  期待される体重の85%以下が持続する。
体重が不足していても、体重が増加する
こと、肥満への強い恐怖がある。
•  体重、体型の感じ方の障害。自己評価に
対する体重体型の過剰な影響。
•  低体重の重大さの否認。
•  無月経
(排出型とは、自己誘発性の嘔吐。下剤や 利尿剤の乱用をしたことがあるタイプ)
•  毛髪が抜け落ちる。
•  皮膚は張りを失う。
•  頬骨が浮き出て、骨に皮をはりつけたような
容貌となる。
•  特に排出型の場合、歯が傷む。
•  細い手足と体幹。
•  産毛、ひげ
•  無月経
•  低血圧
•  生命の危険
病因
BMI(body mass index)
•  生物学的要因
•  心理的要因
•  社会的要因
•  18.5以上、25未満
•  体重/身長2
• 
例えば身長160cmの人であれば、18.5x160x160 から逆
算して、期待される標準体重の下限は47.3kg
• 
高すぎても低すぎても健康に対して悪影響があると言われてい
る。しかし実際のところ、日本や他のアジア諸国の多く、北米、
ヨーロッパでスタイルがよいとされている暗黙の基準では、
BMIは18.5以下となっている。
あなたは大丈夫?
神経性大食症
•  神経性無食欲症の診断基準を満たすほど
ではないが、やせ傾向になっていないか。
•  知らず知らずのうちに健康を損なってい
ないか。
•  神経性無食欲症よりはやや年齢層が高い。
•  非排出型では肥満が問題となる。
•  排出型では、体型はやせ、標準、肥満とさま
ざま。
•  やせ型の問題は、神経性無食欲症に準ずる。
•  やせの著しいタイプ以外は、社会適応がよい
ことが多い。(パーソナリティー障害の合併
などの場合はこの限りではない。)
•  排出型の場合、逆流性食道炎の問題。
•  経済的な問題が発生。
症例7
症例8
16歳女性。几帳面で完全主義の傾向あり。バ
レエを習っていて、太らないようにいつも気を
つけていた。食事の摂取量を極端に減らすよう
になり、あぶらものを食べなくなった。45kg
あった体重が30kgに減ったが、それでも自分
はもっとやせないとならないと主張。バレエの
練習を熱心に続けた。一方家族には料理を作っ
て食べさせようとした。月経は停止し、髪が抜
け易くなった。小児科にて入院治療が行われる
ことになった。
23歳女性。大学院生。ストレスがたまった時に、気
晴らし食いをするようになった。これが習慣となり、
帰りに毎日のようにコンビニでスナック菓子や食パ
ンを買い込み、一気に食べるようになった。やめよ
うと思うがやめられなくなった。一ヶ月もすると体
重が増えて、それがひどく気になり、指を使って嘔
吐するようになった。体重はもとに戻った。食費が
かかるし、食べ物を粗末にしているという罪責感も
あるし、このままではまずいという気もちはある。
今日こそ過食はやめようと思うのだが、うまくコン
トロールできず、過食したあとは抑うつ的になった。