目白大学大学院 所属 氏名 論文題目 心理学研究科 臨床心理学専攻 修士課程 小暮 詩織 修了論文概要 修了年度 平成 25 年度 指導教員 (主査) 原田 隆之 神経性大食症傾向と対人関係における問題との関連の検討 ―対人関係療法の知見から― 本 文 概 要 【問題意識】 対人関係療法による神経性大食症(Bulimia Nervosa: BN)の治療には,認知行動療法による BN 治療と 同等かそれ以上の効果が示されており,優れたエビデンスが認められている(Hay et al., 2009)。一方 で BN の予防においては,認知的なリスク要因である「痩身理想の内面化」に対する介入に一定の効果が 確かめられてきたが,対人関係の問題には着目されていない。本研究では対人関係療法による BN 治療の 知見に基づき,BN への予防的介入においても対人関係の問題に介入することが有効であるか検討した。 【方法】 (1)研究方法:質問紙調査 (2)調査対象者:女子大学生 200 名 (3)使用尺度:①BN 傾向:摂食障害症状評価尺度(SRSED)24 項目 5 件法 ②痩身理想の内面化:SATAQ-3JS 12 項目 5 件法 ③対人関係の問題:BN 対人関係尺度 51 項目 5 件法(本研究にて作成) ④対人ストレス:対人ストレスイベント尺度 23 項目 4 件法 ⑤その他:年齢,学年,身長,体重 (4)倫理事項:回答者の権利の保護と個人情報の秘匿について説明を行い,同意を得た上で実施した。 【結果】 第 1 研究 既存の下位尺度を組み合わせて,BN に特有の対人関係の問題を測定する新たな尺度を作成 し,因子分析を行った。45 項目 4 因子が確認され,Cronbach のα係数はそれぞれα=.927,α=.883,α =.820,α=.803 となった。対人ストレスイベント尺度とは正の相関(r=.45, p<.01)を示した。十分な信 頼性と妥当性が確認されたため,この尺度を「BN 対人関係尺度」として第 2 研究に用いた。 「対人関係の問題」高群の方が有意に「BN 傾向」が高くなった(t(106)=3.46, 第 2 研究 t 検定の結果, p<.001)。続いて,「痩身理想の内面化」と「対人関係の問題」を独立変数,「BN 傾向」を従属変数とし てロジスティック回帰分析を行ったところ, 「痩身理想の内面化」が高い値で BN 傾向を予測することが 確かめられた(OR=34.434, 95%CI=6.618-179.165, p<.000)。一方「対人関係の問題」については BN 傾 向の予測には役立たないという結果となった(OR=3.281, 95%CI=.632-17.045, p<.158)。更にクラスター 分析を行い,分散分析及び多重比較でグループの特徴を検討したところ, 「痩身理想の内面化」が同等に 高くても, 「対人関係の問題」が有意に高いグループでは「BN 傾向」も有意に高くなった。 【考察】 BN 傾向を示す群の様相は一様ではなく, 「痩身理想の内面化」だけが高い一群と, 「痩身理想の内面化」 と「対人関係の問題」の両方が高い一群とがいることが分かった。しかも,その両方が高い一群は BN 傾向がより高くなることから,BN のリスクがより高くなる一群として取り上げ,認知的リスク要因であ る「痩身理想の内面化」だけでなく「対人関係の問題」にも介入する必要があるだろうと考えられた。 【主要な引用文献】 Hay,P.P.J., Bacaltchuck,J., Stephano,S. & Kashyap,P. (2009). Psychological treatments for bulimia nervosa and binging. Cochrane Database of Systematic Reviews. John Wiley & Sons, Ltd.
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