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UHDコンプリート・ガイドブック–
次世代の映像に関するリファレンス・ツール
UHD – 未来がここに!
「ウルトラHD」または「UHD」は、映像収録、処理、およびディスプレイ技術の
進化において次なる大きなステップを意味します。HDの論理的な後継であり、
現在の映像技術に比べて、解像度が1080pの4倍という著しい向上を提供して
くれます。
解像度の向上は重要な利点ですが、UHDは他にも以下のような映像とオーディオ
の重要な特性が強化されています。
• より高いフレームレート (よりスムーズなモーション)
• より高いダイナミックレンジ (一層の明るさと目覚ましいコントラストが
得られる)
• より優れた色深度 (現行HD規格よりも、はるかに広範囲のカラーレンジ)
• 飛躍的に改善されたオーディオ(はるかに豊かな映像視聴体験をもたらす)
ただし、それらの利点にはコストが伴います。非圧縮時には、UHD配信は通常の
HDの4倍もの帯域幅を要し、それは著しく大きなストレージおよび送信コストが
必要なことを意味します。これに、UHDに対応するシステムのアップグレード費
用を追加すると、即座にUHDが価値ある提案だとは言えなくなります。
さらに、UHD規格がまだはっきりと定義されていないため、UHDの到来はエコシ
ステムに複雑さと断片化をもたらしています。コンセンサスの欠如は、テレビ
やビデオのバリューチェーン全体で、相互運用性と消費者の認識の点から不透
明感を生み出しています。
これらの課題にもかかわらず、UHDの広範な普及自体は疑う余地がありません。
ハードウェアは、使い古したHDセットの然るべき代替品としてしっかりと位置付
けされており、UHDテレビの小売に占める床面積およびOEMメーカーでのマーケ
ティング予算のシェアは増加しています。テレビやビデオ関連のビジネスに携わ
る人々はこの現実を受け入れつつあり、UHDは戦略的プランニングの重要な要素と
なっています。コンテンツのクリエイタや配給業者の場合は特に、劇的に改善さ
れた視聴体験を提供することのメリットとUHDシステムを構築しサポートするコス
トのバランスを取る方法を模索しています。
本eBookは、UHDの未来とHDからUHDへとテレビのエコシステムが移り変わることで
制作サイド、ネットワークオペレータ事業者、およびサービスプロバイダが直面
する課題と事業機会の現実的な評価を提供するものであり、以下についてご覧い
ただくことができます。
• UHD映像とオーディオ·ソリューションの詳細な考察。UHDが主流になるために
解決されなければならない重要な技術的課題の検討等。
• UHDが成熟するための市場のコンテクスト分析、供給側と需要側での推進要因
および阻害要因の考察。
• 業界関係者のための戦略的提言。
さらに、本eBookが、皆様のデスクトップ上のUHDに関するすべてを扱うリファレ
ンスガイドとなり、UHDのコンセプトと用語について明確にさせたいときに利用す
るリソースとしてお役に立つことを願っています。
作成:
2
目次
4
UHDビデオ
4
UHDエコシステム
5
UHDの実装
6
向上した解像度:
UHD vs. 4K
7
向上した
フレームレート
7
カラリメトリ &
ダイナミックレンジ
18
UHDビデオが
直面する課題
45
最後に
21 UHDオーディオ
28
UHDの普及に影響を与
える市場動向
21
UHDオーディオの
コンセプト
29 市場推進要因
22
UHDオーディオの
関連性
市場阻害要因
24
UHDオーディオが
直面する課題
26
インフラストラクチャ
要件
27
オーディオ再生 &
サウンド・リプロダクション
46
注釈
33
39
UHDの導入 – ここ
からどこへ?
39
OTTプロバイダ
& ベンダー
40
有料テレビ放送
オペレータ
41 放送業者
47
42
コンテンツ制作者
& 所有者
43
UHDのビジネス
モデル
用語集
作成:
3
Ultra-HDビデオ
UHDエコシステム:概略
資料 1 – UHDエコシステム
Ultra-HDは、今現在も開発が続いている映像エコシステムです。いったん
環境が整えば、最終的に取得からディスプレイまでUHDをカバーします。
放送
ライブ送信では、コンテンツがキャプチャされ、以降の配信のために処理
されるか、最終配信のために直接サービスプロバイダまたは放送局に送ら
れます。ビデオ・オン・デマンド (VOD) では、コンテンツはPVR STB
(プッシュ型VOD) に送られることも、ブロードキャスト・チャンネル
(NVOD) としてデータカルーセル型伝送されることも可能です。
ライブ
トランスコーダ
放送ネット
ワーク
リニア
プレイアウト
プッシュ型
VOD
TS
プレイアウト
配信元
サーバー
VOD
アセット
ファイル
トランスコーダ
QoS対応IP
ネットワーク
HTTP ストリーミング
ほとんどのコネクティッドTVはHTTPストリームに対応しており、ライブコ
ンテンツは、UHDデコード機能を備えたユニキャストIPデータとしてテレ
ビに送信されることになります。ノンリニアコンテンツは、QoS (クオリ
ティ・オブ・サービス) 対応のIPネットワーク上 (ケーブルまたは通信事
業者) での配信用にはシングルビットレートでトランスコードされ、オー
プンインターネット経由 (オーバーザトップまたはOTT) での配信にはマ
ルチビットレートでトランスコードされます。コンテンツ配信ネットワー
ク (CDN) は、これらをパッケージ化されたVODアセットとして伝送し、家
庭の受信機に届けます。
ライブ
ソース
ケーブル &
IPTV
プッシュ型
サーバー
OTT
受信側では、テレビによってUHDにデコードする (すべての新しいUHDセッ
トの場合)、またはHDMIを介してテレビに接続されたオペレータのセット
トップボックスによってデコードする、という2つのオプションがありま
す (後者は特にテレビのサービスプロバイダ向けの長期オプションです)。
VOD
サーバー
OTT
4
資料 2 – UHDの実装フェーズ
UHDの実装
これまで、UHDに関する話題は主にその高い空間分解能 (より多くの
画素数) に焦点が当てられてきました。幸いなことにはこの状況は
変化しており、UHDが高いフレームレート (速い画素) やダイナミッ
クレンジ (さらにカラフルな画素) 、臨場感迫るオーディオ等、視
聴者の満足感に劇的な影響を与える数多くのメリットを提供するこ
とが、現在広く認められています。
最新のUHD仕様には、HDR (ハイ・ダイナミック・レンジ)、カラリメ
トリ、そしてアドバンスト・オーディオに関する条項が追加されま
し た 。 資 料 2 に 示 す よ う に 、 DVB に よ る UHD 仕 様 は 、 フ ェ ー ズ 2 、
フェーズ3での各要素に対して改善を規定しています。HDRの実装は
まだ完了していませんが、業界では最終的にDVB (デジタルビデオ
ブロードキャスティング) のUHD規格に組み込まれるHDR仕様への収
束が進んでいます。
次は、UHDが提供する具体的な機能強化に目を向けますが、まず飛躍
的に強化された解像度について触れることにします。
5
向上した解像度 – UHD vs 4K
資料 3 – テレビの解像度:過去、現在、将来
UHDは4Kフォーマットに近似しており、その水平および垂直解像度にはあえ
て1920 X 1080 (HDの解像度) の整数倍が選定されています。しかしUHDと4K
は多くの点で異なり、その最も顕著な違いは撮影のスタイルと画像スキャン
の動作です。それらの違いにもかかわらず、テレビメーカー、放送事業者、
ソーシャルメディアの有識者の間では現在、「4K」と「UHD」が同じ意味で
使用されています。
テレビでは主に、シーンが時間分解能を優先するために空間分解能を犠牲に
する2つのフィールドに分割される、つまりインターレース形式であるのに
対し、映画 (フィルム) では、完全なシーンがスキャンされるプログレッシ
ブ形式であることにご留意ください。また、テレビのインターレースでは、
動きの速いコンテンツにより良く対応するために時間分解能を維持しつつ空
間コンテンツを低減 (粗く) するのに対し、デジタルシネマは一般的に、毎
秒24フレーム (fps) のプログレッシブ形式で表示されます。
4KとUHDの双方での朗報は、現在のラインナップされている家庭用および
パーソナルディスプレイ製品で、特にビデオ・オン・デマンド (VOD) とし
て提供される場合は、デジタルシネマコンテンツの要件にも十分対応できる
ということです。
1920
1080
簡単に言えば、4Kはプロ用の制作と映画のための標準規格で、UHDは消費者
向けのディスプレイや放送での標準規格です。「4K」という用語は、4Kフィ
ルムの制作とデジタル投影の仕様を規格化する映画スタジオらのコンソーシ
アムであるデジタル・シネマ・イニシアティブ (DCI) によるものです。一
方UHDは、米国映画テレビ技術者協会 (SMPTE) によって文書化された標準規
格で、UHDテレビ (UHDTV) について記述した文書のセット (SMPTE ST 2036)
から構成されています。
とは言うものの、映画と同じ鮮やかな色の描写や高域のダイナミックレンジを提供す
ることは、今日の画面では困難な課題です。そのため当初UHDを実装したのは 、
Netflix、Amazon、SonyのブロードバンドUHD VODサービスであり、もともと4Kとして
撮影された価値の高い映画のコンテンツと利用可能な技術を独自に組み合わせたサー
ビスであったことは驚くべきことではありません。
各企業はそのソリューションを「UHD 4K」と呼んでいますが、実際それは「4K」では
なく「UHD」です。これは、主にマーケティング的な理由で、この2つの用語が不適切
に使用されていることを示すケースのひとつです。1
6
増加したフレームレート
拡張カラメトリとダイナミックレンジ
他にUHDで強化された重要な点は、フレームレートの著しい増加です。一般的
にシネマチックなコンテンツよりも、スポーツ中継などの動きの激しいコン
テンツでその違いが明らかです。最新のHDMIを介した現行のインターフェイ
シングでは、(最高で) 50~60 fpsでプログレッシブコンテンツを配信するこ
とができます。ただし、これは一般的にHD放送の用途では実装されていませ
ん (HDではインターレースドメインのまま)。また、スクリーン形式のより大
型化への動きによって、スポーツの権利所有者や放送局等の間で、現行のHD
フレームレートに合わせることだけで十分なのかどうかという議論が高まっ
ています。ヨーロッパのサッカーの試合で行われた撮影トライアルでは、
100/120 fpsのアッパーフレームレートを採用したことに注目を浴びました。
その結果、帯域幅の消費量がおおよそ30%増え、送信コストが著しく高まる
ことが報告されました。
消費者やコンテンツのクリエイタの両方が、色やダイナミックレンジを向上させ
ることに対し積極的な反応を示していることからも、これらの機能をサポートす
るソリューションの需要が高まると予測されます。それに伴い、コンテンツプロ
バイダ、有料テレビ放送オペレータ、およびディスプレイのメーカーは現在、
Dolby® Vision ( ド ル ビ ー ビ ジ ョ ン ) を 使 用 し て HDR を 提 供 し て い ま す 。
Dolby Visionを使用したUHDのスクリーンは、フェーズ2でのUHD仕様をサポート
するサービスの実装予定に十分に先立ったかたちで市場に導入される予定です。
ただし、UHDの実装ロードマップは、まだ世界的な同意に至っていないことに留
意する必要があります。このロードマップを実現するために、異なる方法が出て
くることは確かでしょう。
CES 2015以前には、主に (大幅な) 追加のデータレートに対応する消費者用
インターフェイスが広く展開されていないため、HDMIで対応されるフレーム
レートを超えたものは懐疑的に見られていましたが、CES 2015ではこの欠点
の解決法として有力な2つの技術が取り上げられています。
• 3:1圧縮により高いフレームレートのサポートに必要な追加の帯域幅に対
処した、ディスプレイ・スクリーン・コンプレッション (DSC)これは主に、
ディスプレイポート (一般的なグラフィック・ディスプレイ・インター
フェイス) で使用されますが、その他の密接に関連しているインターフェ
イスでも同様の用途で使用されます。
• ダイナミック圧縮を利用してペイロードを利用可能な帯域幅と合わせるこ
とでUSB 3.0とWi-Fiで4K配信を可能にした、ディスプレイ・リンク。
7
資料 4 – 単一画像での nit 幅の例
カラメトリとHDRのこれまでの流れ
自然界で見られる色と輝度は、放送、ブルーレイ、あるは映画システム
で現在対応できるよりも広範囲に及びます。資料4に示すように、輝度
の範囲は背景で145 nit、花びらの黄色の部分では14,700 nitと幅があ
ります。(nit (ニト)は輝度を測定するために使用される単位で、平
方メートル当たりのカンデラ価です。)
テレビやブルーレイの現行の標準規格では、最大輝度は100 nit、最小
輝度は0.117 nitに制限されており、表示できる色域が制限されていま
す。これらを含む今のHDテレビ規格の限界は、ブラウン管 (CRT)、20世
紀前半に生まれた技術の遺産です。
4KとUHD画面上の色の描写に関連した制限を理解するためには、各表示
媒体の能力を理解する必要があります。
8
資料 5
– CIE 1931 XYZ
上に示した資料は、CIE 1931によって定義された全可視色スペクトルを示すもの
で、表示色を管理するために欠かせない人間の目で見えるカラースペースの参照
マッピングです。CIE 1931で定義されている可視スペクトル全てを表示できるス
クリーンは存在せず、特定の色域しか表示することができません。
カラースペースを比較して見た場合、HDカラースペース (1990年代初期に初めて
承認されたRec. 709の一部で、HDフォーマットが対応する標準規格) はフィルム
のものよりも一段と小さくなります。
資料 6
– Rec. 709
これらの限界のために、International Telecommunications Union(ITU/国際
電気通信連合)は最近のUHDの進歩に基づいて、新しい表示基準を適用しました
(Rec. 2020は2012年に初めて登場)。Rec. 2020は、希土類蛍光体を通して見え
る白色光でではなく、画素の色を生成するレーザーを使用しており、UHDと4Kア
プリケーションの両方で非常に広い色域を提供します。
Rec. 2020では、[0.3127、0.3290] にあるD65を、Rec. 709で使用したのと同じ
仕様のカラースペースの白色点として識別します。2つの規格の違いは簡単に言
えば、利用可能な色域とビットデプスのサポートです (Rec. 2020は 10ビット
デプスと12ビットデプスに対応するのに対しRec. 709は、8ビットデプスに制限
されています)。
9
資料 7 – UHD Rec. 2020のカラースペース
UHDテレビ色域は、HDテレビやSDテレビのものよりも著しく大きいことに留意す
ることが重要です。例えば、UHDテレビ色域体積 (XYZ空間における) はHDテレ
ビの2倍です。UHDテレビのカラースペースをサポートするワークフローおよび
機器では、今日のHDテレビのワークフローや機器とある程度の色の相互運用性
を持ち、それらと同等の色精度を達成することができます。しかし、プロダク
ションとポストプロダクションにおけるUHDテレビの拡張されたカラースペース
へのアップグレードのプロセスは一挙には行われず、まずレガシーHDテレビや
SDテレビとのカラースペース変換が必要です。
UHDテレビとHDテレビ/SDテレビの色域との間でネイティブカラーの変換が行わ
れる場合、変換アルゴリズムによって、UHDテレビ色域と色体積が使われている
コンテンツは、HDテレビまたはSDテレビのバージョンを作成するために適度に
低減されると推定されます。(原則として、各ディスプレイ機器は、入力信号の
コンテンツの色域を測定し、コンテンツを機器に合わせて処理できます。)コン
テンツの色域は、シーンに合わせたアーティスティックな選択によって変化し
得るため、それにより不安定な色変換がもたらされることもあります。この問
題は、UHDテレビのコンテンツと合わせて画像の色域のメタデータの記述を送信
することによって解決できます。
カラメトリの点で見るとすべてが比較的単純で、Rec. 2020へのマッピング能力
を持つスクリーンを開発すればよいように見受けられます。しかし、このア
プローチの問題は、Rec. 2020どころか、Rec. 709の空間さえも満たすことがで
きるスクリーン技術がほとんど存在しないということです 。CES2015では、
Rec. 2020のカラースペースの85%のカバレッジを達成したスクリーンがいくつ
も登場しました。それまでは、大部分のHDおよびUHD画面は、Rec. 709のHDカ
ラースペースに基づいていました。奇妙に思えるかもしれませんが、すべての
ディスプレイ技術の背後にはカラーマッピングが何らかの形で関連しています。
8ビット (色要素ごと) のRec. 709では、およそ256の色合いをレンダリングす
ることができ (端でのマージンを除く)、最大で1,680万色 (赤256 x 緑256 x
青256) を提供することが可能です。先に述べたように、Rec. 2020では、10ま
たは12のビットデプスが規定されており、10ビットカラーのRec. 2020では11億
色を、12ビットでは687億色を提供することができます。つまりRec. 2020では、
Rec. 709よりもはるかに大きな色域を表示することができ、次のページの画像
に示すように、より現実的で鮮やかな色をレンダリングします。
10
資料 8 – Rec. 709とRec. 2020の対照比較
し か し 、 Rec. 2020 に は 独 自 の 課 題 が 伴 い ま す 。 例 え ば 、
Rec. 2020ではより広い色域の使用が可能ですが、ダイナミック
レンジや輝度が増加した画素でのニーズは考慮されていません。
これはUHD標準規格の更新が考慮される際に、取り組まなければ
ならないものです。
ここで注意していただきたい点は、テレビ表示は赤、緑、または
青の加法混色のシステムが採られており、最も明るい画素は白で
あるということです。最大輝度を (放送やブルーレイのように)
100 nitに制限すると、より明るい色はより白っぽくなり、加速
的に彩度が下がるという問題が生じます。例えば、輝度の制限さ
れたディスプレイ上で見える最も明るい青は、7 nitほどです。
つまりHDR無しのUHDテレビで青い空を見たとき、青は本来の青の
ように明るくなることはありません。
前述の色域は標準の明るさで使用可能な色を表示すものですが、
これはダイナミックレンジが増大するにつれて達成できる色の彩
度を反映するものではありません。これを実際に見るためには、
輝度の幅の端まで輝度のレベルを増加して、カラースペースも調
べる必要があります (色の体積として)。次の図では、
Dolby Visionのようなシステムで有効化されている色域とダイナ
ミックレンジ双方の拡大に伴う色体積の増加を示します。
11
資料 8 – 色体積、色域、およびダイナミックレンジの関係
CRT (ブラウン管) とHDから課
せられた限界以外の部分を考
えると、コンテンツプロバイ
ダは現在、ディメンションや
細部をより一層引き出したり
信じられないほど生き生きと
した色を見せる、より幅広い
明暗度やさらに鮮やかな色彩
を提供してくれます。これで、
UHDの高解像度がもたらす精度
と補完し合う、強い光や色を
使った表現が可能になります。
それにより視聴者はストー
リーにより惹きつけられ、コ
ンテンツへのエンゲージメン
トの程度が増加するといった、
より魅力的なエンターテイン
メントを体験できます。1
ダイナミックレンジの拡張には多大な可能性が秘められていますが、では一体どれだけ拡張することが必要なのでしょうか。それらのレベルを判断するために、
Dolbyの画像研究チームが通常の視聴者の黒のレベル、拡散白色のレベル、そしてハイライトのレベルの好みをテストする実験を行っていますが、それによると理想
的な範囲を選択するよう尋ねられた場合、視聴者の90%が0~10,000 nitの範囲の再生システムを良しとしていました。
前述したようにRec.2020は高色域を提供できますが、画素の拡大したダイナミックレンジや輝度の必要性は考慮されていません。これはUHD標準規格の更新が考慮さ
れる際に、取り組まれなければなりません。Dolby等の企業では、色域とダイナミックレンジの両方を同時に拡張する最善の方法を検討しています。今日のモニター
で最大輝度を4,000 nitまで (さらに将来的には10,000 nitまで) 増やすことで、コンテンツクリエイタは、より自然で明るく彩度の高い空が表現できる範囲を利用
できるようになります。
12
資料 9 – 人間の視覚、テレビ、HDRディスプレイの比較
HDRと広色域の実装
映画やゲーム向けの最大輝度は100 nitです。しかし、現代のテレビは多く
の場合、300~500 nitに設定されており、テレビ機器メーカーは出力の輝度
を引き上げているため、しばしば画像の歪みが生じます。各メーカーが輝度
を異なる方法で引き上げているため、映画、テレビ番組、またはゲームで視
聴者側の体験は異なります (なおかつそれはしばしば予測不可能です)。
現在あるディスプレイでは、Rec. 709を超えたものを実装することは不要で
あるということは重要です。視聴者がRec. 2020 UHDを楽しむためには、カ
メラからディスプレイに至るまでテレビシステム全体で、拡張されたダイナ
ミックレンジとカラースペースの仕様に対応する必要があります。そのよう
なサポートがなければ、すべてのテレビ番組が、異なるテレビディスプレイ
上では違って見えます。
テレビのディスプレイは、コンテンツクリエイタが意図したとおりに見るこ
とができるようにコンテンツを配信するべきですが、テレビ自体が、ブルー
レイプレーヤやオペレータのセットトップボックスによって供給された画像
を操作することにより、さまざまに画像の色域を拡張または拡大します。こ
れにより表示映像は過飽和色の状態になる場合があり、これをディスプレイ
で克服するのは非常に困難を伴うと言ってよいでしょう。HDR配信のゴール
は、視聴者をそのシーンに引き寄せるために、鮮やかな色、明るいハイライ
ト、あるいは詳細な影を正確に表現するために必要なツールを、ディレクタ
とカラリスト (またはゲームプログラマや照明/効果デザイナ) に提供する
ことに集中するべきです。
13
HDRのコンテンツ作成
資料 10 – オフライン映画コンテンツのための映像コンテンツのバリューチェーン
オペレータはHDRソリューションを採用することが不可欠ながら、
現在の放送やブルーレイ規格ではこれはほとんど不可能でした。
しかし、それは最近までのことで、配信チェーン全体での進歩に
より、将来の展望が以前よりもはるかに明るく (また間違いなく
よりカラフルに) なります。
資料 12は、クリエイタからエンドユーザーに至るまで、オフラ
イン用映画コンテンツのための映像コンテンツのバリューチェー
ンを示したもので、最適なHDRコンテンツの制作、配信、および
再生のサポートのために揃う必要があるつながりを表しています。
このコンテンツのフローは現在オフラインに限定されていますが、
これらの同じツールが、ライブ放送の制作でもやがて利用できる
ようになります。これについては、Grass Valleyから初のHDR対
応3チップ放送用カメラが発表されたことで特に可能性が高まっ
ています。
映画が制作される際には、ディレクタ、カラリスト、その他のメンバーでマスター (映画の完全版で、このコピーを生成して配信する) を作成するプロセスが存在しま
す。スタジオはさらに、特定の視聴コンテクストの要求に合わせた、複数のマスターを作成します。例えば、映画館では家庭のテレビよりも幅広い色を再生できるので、
スタジオは広色域を使用しつつ輝度をやや抑えたマスターを作成します。反対に、映画館ではテレビと同じ輝度を再現することはできません。そこでスタジオでは、テ
レビ用に色域を抑えつつ輝度を高めた、別のマスターを生成します。
残念ながら、色域およびダイナミックレンジが元のマスターに存在しない場合には、後処理でそれらを回復することはできません。現在のテレビでは、高い輝度でも映
画館とほぼ同様の多くの色を再現することが可能になっており、これらの性能を活用して生成される新しいタイプのマスターは、つまりこれまでで最も印象的なUHDコン
テンツといえます。
14
さらに、さまざまなスクリーンで表示され
るコンテンツ向けには、カラーマッピング
がメタデータとして伝送されなければなり
ません。映画館の場合は、スクリーン
フォーマットのバリエーションは比較的限
られています。テレビの場合にはそうでは
なく、それぞれのフォーマットで特定のカ
ラースペースを必要とします。今日のテレ
ビ視聴はマルチスクリーン現象となってお
り、カラースペースやメタデータに関連す
る昔ながらの問題は、特に現在のテレビ機
器生産に関連した厳しい製造予算内におい
ては、対応がますます困難になってきてい
ます。コンテンツクリエイタの場合は、こ
れがどの程度新しい撮影技法または機器を
必要とするかが問題になります。この点で
はありがたいことにHDRのための新たな撮影
技法は必要でなく、実のところそれ無しで
ディレクタは今日のカメラの特徴である技
術革新の数々を最大限に活用できます。
HDRコンテンツを制作し配信する能力は、多くの要因、特にカメラ技術の遅れと不十分な放送リファレンスモニターによって制限されてきましたが、これらの問題は現在
取り組みがなされており、HDR放送コンテンツはまもなく配信可能になります。放送リファレンスモニターの弱点を補うためDolbyでは、DCI-P3の色域で4000 nitのピーク
輝度を備えたPulsarモニターと、コンテンツクリエイタのニーズを満たすために、一般的にオフライン用の制作に使用されているスイートで使えるHDRプラグインのセッ
トを開発しました。これらのツールを使用すれば、クリエイタはコンテンツをカラーグレイディングし、最も再現性の高いマスタリングが行えます。Dolby Visionを備え
た各テレビはメーカーとDolbyの技術者によって慎重にキャリブレーションされており、クリエイタの意図に最も忠実で最高の表示ができることが保証されています。
CES 2015では、テレビメーカー数社が、まもなく商業用生産を立ち上げるプロトタイプのHDRテレビを取り上げました。今後2年間で、市場を取り巻く厳しいコストの制約
と消費電力規制をクリアできる技術をベースにして、1500 nitもの輝度性能を持つ消費者用ディスプレイにHDRを実装するテレビを製造する多数のメーカーが見られるこ
とでしょう。
15
HDRのコンテンツ制作と配信に関する考慮事項
理想的には、HDRのワークフローは、映画および放送の既存のカラーグレイディ
ングのワークフローと非常によく似たものになるでしょう。目標は、カメラで
捉えたものをできるだけ多く保持することで、カラーグレイディングおよびマ
スタリングプロセスにかかわって行われる制作上のトレードオフを制限するこ
とです。最大4,000 nitの輝度を表示可能なHDRリファレンスモニターでの作業
では、HDR放送マスターのグレイディングプロセスで芸術的意図を明確に反映さ
せることができ、最も魅力的な画像が作成されるようにクリエイティブチーム
がディスプレイのダイナミックレンジを最大限に活用することが可能です。
異なるディスプレイのために別のマスターを作成することにより、コンテンツ
クリエイタの課題は、視聴者にコンテンツを配信、提供するための最善の方法
は何かということに焦点が移ります。この課題への対処にあたっては、Dolby等
の取り組みに基づいて一連のHDR配信標準規格が選定されています。以下はその
具体的内容の概説です。
• UHDへの移行を従来のHDテレビとHDネットワークのインフラに対応させるため
に、業界はSDRとHDRコンテンツのための 単一のプロダクションワークフロー
を必要とする。
• ソリューションは、映画のコンテンツのみならずライブの放送コンテンツに
も対応させる必要があるため、既存のファイルベースおよびリアルタイムの
インフラとの互換性を持たせなければならない。
• 制作者の意図と合致させ、最高品質の画像が常に 一般家庭の視聴者に届くよ
うにしなければならず、またプロ用か一般消費者向けの用途かにかかわず、
ディスプレイ技術の進化に伴い画像の品質改善がなされること が考慮されな
ければならない。
• 伝送システムは、今日のBT.709またはBT.2020システムとの後方互換性を持つ
必要があり、特定の空間分解能、色域、またはフレームレートとは無関係で
あるべきである。
• 新しいHDRテレビは、送信HDR画像をテレビディスプレイのネイティブの色体
積 (ディスプレイの黒レベル、白ピークレベル、色温度、および原色によっ
て定義) にマッピングすることができる 、つまり、表示能力の範囲内でオリ
ジナル制作者の意図にできるだけ忠実でなければならない。
• HDR の コ ン テ ン ツ を 安 定 し て 配 信 で き る よ う に す る た め に は 、
Blu-ray Disc™ Association、UltraViolet™/DECE (デジタル・エンターテイ
メント・コンテント・エコシステム)、SCSA (セキュア・コンテンツ・スト
レージ・アソシエーション) 等の主要な規格団体によってサポートされる 必
要がある。
• HDR伝送システムは、ビットレートの面で効率的な伝送を提供し、業界標準の
コーデックを使用して既存のHEVCとAVCコーデックを最大限に活用するように
設計されるべきである。
• ソリューションでは、機器の輝度、色域、他の特性に基づいて、ターゲット
とするディスプレイ機器それぞれのために調整が可能であるべきである。
• UHDテレビの機能は、量子ドットといった新技術がさらに広範な原色やさらに
明るいディスプレイを可能にするとともに長期的に進化していく。システム
では、ディスプレイの特性とマッチさせるために どのような形式のディスプ
レイにおいても受信HDR画像に最適に順応させて 、テレビ固有の表示特性と
HDRのソリューションをメタデータとして組み合わせる必要がある。
16
後方互換性 – 究極の難問
HDRをサポートしていないUHDテレビが現在販売され、それを使用する家庭
が増えている事実を鑑みれば、HDRを備えた完全UHDサービスが (今後数年
間で) 開始されると、互換性のないUHDテレビの非常に大規模なインス
トールベースがでてくると考えられます。多くの人々が疑問に思うのは、
この課題に対処するための最善の方法は何かということでしょう。
特に放送の場合には、この問題に取り組むためにいくつか異なる方法があ
ります。その第1は、ベース層が非HDR式のインストールベース (または
DVBで「フェーズ1の実装」と呼ばれている、標準ダイナミックレンジ
(SDR) のUHDテレビ) で動作する後方互換性のある、階層化ストリームを
作成することです。レガシーUHDテレビは、ベース層のみを必要としてSDR
を提供するのに対し、HDR機能を備えた新しいUHDセットでは、ベース層と
アドバンスト層をデコードし完全なUHDを提供します。Dolby Visionでは
この方式をサポートしており、現在VODの用途に展開されています。
他のアプローチとしては、フェーズ1 (SDR) およびフェーズ2 (HDR) 間の
移行を容易にするために、オペレータ側がセットトップボックス (STB)
を配備することを受け入れることです。このシナリオでは、フェーズ1の
レガシーSTBで、フェーズ2の信号 (単層) をデコードし、圧縮されていな
いSDRでフェーズ1のテレビへ出力、またはフェーズ2の直接信号 (圧縮ま
たは非圧縮) でフェーズ2のテレビに出力する必要があります。このシナ
リオでは、オペレータ (サービスプロバイダまたは放送局) はフェーズ2
の信号のみを放送します。これは使用されるすべてのSTBがフェーズ2 HDR
信号を解読でき、下流で接続された機器の能力に応じた出力を提供するこ
とが可能であることを意味します。
資料 11 – HDRの後方互換性の問題に対処するためのオプション
後方互換性
スキーム
ストリーム
セットトップ
ボックス (STB)
ストリーム
タイプ
デコーダ
ディスプレイ
ベース層
フェーズ1*
フェーズ1
フェーズ1
アドバンスト層
フェーズ2**
フェーズ2
フェーズ2
フェーズ2**
HDR->SDR有の
フェーズ2***
フェーズ1
フェーズ2
フェーズ2
単層
*SDRのみ ** HDR ***SMPTEメタデータが必要
いくつかのケースでは、デコーダおよびディスプレイがUHDテレビに統合される
ことにご留意ください。両方のシナリオはDVBとATSC(高度テレビジョン・システ
ムズ委員会) により検討中で、仕様がまもなく明らかにされる予定です。
OTT配信の場合、オペレータが両方のフォーマット (フェーズ1のSDRおよび
フェーズ2のHDR) にエンコーディングできるため、状況が制限されにくくなりま
す。ただし、トランスコーディング、ストレージ、CDN配信のコストが法外にな
る可能性があり、放送のメカニズム自体も非常に関係してきます。
17
UHD映像が直面する課題
UHDでの制作は、帯域幅、ストレージ、およびインターフェイス等を含む数々の面で厳しい要求があります。このセクションでは、これらの要素に関連するその他い
くつかの重要な技術的課題について説明します。
資料 13 – UHDのライブワークフロー
資料 12 – UHDの映画/オフライン型ワーフロー
UHDのワークフロー (ライブおよびVOD)
上に示すように、UHD VODの用途に適したファイルを取得するためには、HD
ワークフローの比較的単純な拡張で済むUHD映画のワークフローを使用します。
配信の観点からは、ライブUHDテレビを配信することは、UHD VODを提供するよ
りも間違いなく複雑であり、インジェストフィード、ライブ制作、プレイアウ
ト、そして今日のマルチスクリーン・エコシステムでよく見られるディスプレ
イ機器の複雑な性質がその主な要因として挙げられます。
これは、業界がHDにアップグレードしてライブHDテレビのリアルタイム帯域
幅の要件への調整を行ったのはごく最近になってからのことで、ここまでの
4K展開の大半はグリーンフィールド (先行技術に縛られなくてもよい部分)
のVODである理由をよく説明しています。ライブUHDへの移行は非常に困難な
命題です。
18
UHD配信アーキテクチャ
前述したように、OTTのVODへの取り組みは、消費者市場へ
UHDが正式に導入されたことを示唆するものです。2015年
の 間 に 、 い く つ か の オ ペ レ ー タ や 放 送 局 が Netflix 、
Amazon、Sonyと共同で、自社ブランドを使ったUHD VOD業
務に参入する予定です。課題となるのは、厄介な比較を避
けるために、アップスケールされたHDが十分なクオリティ
を提供するということです。(後述するように、現在のと
ころ既存のブロードバンドの規定により、リニアのライブ
UHDテレビを受信することができるユーザーはほとんどい
ません。)アーリーアダプタ (早期に購入する利用者層)
がHDからUHDにアップグレードする根本な理由は、真のUHD
コンテンツを楽しむ能力を得ることであるかもしれません
が、重要な点はUHD視聴体験が既存のHDサービスよりも十
分に優れているかどうかということになります。これは多
くの場合、背後にあるアップコンバージョン技術の品質に
よって決定されます。圧縮ビットレートの比較により、
1080pのHD信号が、特に倍のビットレートを必要とする同
等のUHD信号と比較した場合、どのくらいまで近づけるか
を提示します。
これはUHDの利点を非難しているのではなく、むしろライ
ブUHDストリーミングや放送サービスを大衆向けに開始す
る場合に、接続性能を向上する必要性があること強調する
ものです。
資料
資料1414––圧縮率の比較
圧縮率の比較
上述のように4Kの映画では、真の4Kの質を提供するために約10 Mbpsを必要とします。これには圧
縮されたビットレート全体を低く抑えるのに役立つ、24 fpsの低いフレームレートが大変有効です。
UHDの用途で同様の質を達成するには、ドラマでは15 Mbpsが必要で、100/120 fpsを推奨するプレ
ミアムスポーツ用には少なくとも20 Mbpsを必要とします。これらは、チャンネル配信のための支
出を管理する側にとっては恐ろしいニュースかもしれませんが、サテライト、ケーブル、地上波、
ブロードバンド配信のすべてにおいて、放送局は間違いなく、戦略的必要性としてUHDへの移行を
捉えています。
19
資料 15 – UHD配信の基準に必要とされるビットレート
仕様
追加ビットレート
(ベースレート比)
基準
2160p 60 Main 10 60 fps
--
HDR
Dolby Vision
基準ビットレートの 10%~25%
3D オーディオ + インタ
ラクティブ
Dolby Atmos®
448 kbps~640 kbps
HFR
100/120 fps
5 Mbps
合計
--
25 Mbps
リファレンス
放送業界は従来、帯域幅に関しては、ベースバンドまたは低圧縮・編集可能な
コンテンツの送信には、制作施設で使用される装置間での基本となるインター
フェイスとして同期デジタル・インターフェイス (SDI) に大きく依存してきま
した。しかし近年の映像業界では、主要なバックボーンのインターコネクトと
してIPを採用したり、一般的な「ビッグデータ」のソリューションに加えて、
標準ルータ/スイッチャ・インフラストラクチャを使用するなどして、ますます
エンタープライズネットワークとの同調を進めています。確かにSDIは初期の
UHD制作環境において重要な役割を果たすでしょうが、ベースバンドの制作信号
を処理する能力を有するイーサネットの40 Gや100 Gのバリエーションとなると
問題が生じます。現在まで、これらのインターフェイスは登場に時間がかかる
上 に 非 常に 高 額 です 。 編 集を 目 的 とし た 低 圧縮 方 式 と Long GOP (Group of
Pictures) 圧縮により、特に6 Gと12 Gのタイプにおいて、SDIが活躍すること
は想像に難くありません。
4Kのワークフローでも、制作とプレイアウトのストレージには「4K」制作が意
味するところの莫大な量により生じる課題が残されています。例えば、
4K/60 fps 10ビットデプスのRAWデータは、1時間当たり11 TBのストレージを必
要とします。ProResも、1080iと比較した場合、そのデータ量は依然として莫大
です (1080iが1時間当たり150 GBであるのに対して、ProRes 4K 4444/60 fps
10ビットデプスでは1時間当たり2 TBが必要です)。
制作のためのネットワーク・ストレージのコンセプトはまだ確立されておらず、
ほとんどの4Kワークフローはローカルストレージを集めたものを基盤にした個
別対応がなされていることは驚くに値しません。
興味深いことに、2016年のリオデジャネイロオリンピックは4Kで制作されるこ
とはなく、HD以外にはバーチャルリアリティを使う場合と8Kのみが制作フォー
マットとして選択されています。商業用の観点からは、4Kでオリンピックを配
信しないという決定は残念ですが、ライブUHD制作が直面している広範な技術的
ハードルを考えれば無理もありません。
資料 17 – GOP圧縮/制作のインターフェイス接続
シングル (6G/12G)
またはQuad SDI
IP (40/100G)
圧縮TS、
Mezzanine、ベース
バンドUHD/4K
ベースバンドまたは
低圧縮UHD/4K
SDI
IP
Long GOP
I フレーム (編集可)
SDIからIPへの移行を橋渡しして
上手くバランスをとる
20
UHDオーディオ
次は、テレビ視聴者の体験を決定する上で非常に重要な構成要素である、UHD関連の
オーディオ分野での技術革新を検討します。
UHDテレビでのオーディオ・コンセプト
• イマーシブ・オーディオ – 方位角、仰角および距離の面から音源定位の高空間分
解能を可能にし、より高い包囲感を提供するオーディオシステム。これらの機能
は、可聴エリアでサポートされる。このようなシステムは、直接スピーカー
フィードを表すとは言えないが、その代わりに、全体的なサウンドフィールドを
表すことができる。
• チャンネルベース・オーディオ – 特定の2Dまたは3Dの物理的な配置でスピーカー
に直接レンダリングされることが意図されているオーディオ信号のセット (例え
ば、22.2ch、7.1+4ch、5.1ch、ステレオ等)。
• オブジェクトベース・オーディオ – パラメトリック・メタデータを含むオーディ
オ信号で、利用可能なスピーカーの数および位置とは無関係に、指定された空間
位置でレンダリングされることが意図されている音源を組み合わせて表す。オー
ディオのオブジェクトはまた、ダイアログ・エンハンスメント、代替言語、ある
いはその他のパーソナル化の目的で、任意のまたは調整可能なオーディオ要素の
ために使用することができる。オブジェクト・メタデータはまた、音量、調整制
約、均一化といった、オーディオ信号の他のパラメータを制御することができる。
• オーディオレンダリング – 複数のタイプのオーディオ再生システムを介して、DSPモデリングを利用して既定のオーディオ形式を再生するプロセス。再生システムに
は、数あるなかでも波面合成 (WFS) といった技術やバイノーラルサウンド等を利用することができる。自宅でのイマーシブ・オーディオのリプロダクションは、ヘッ
ドフォン等のさまざまな再生システムへオーディオ体験を提供できるようにしてあるため、オーディオレンダリングに大きく依存する可能性がある。
21
UHDオーディオの妥当性
UHDは視覚的な体験の向上が広く知られていますが、サウ
ンドクオリティもUHD視聴体験を決定する構成要素です。
UHDテレビへのアップグレードは、関連するオーディオ体
験を向上させる、そしてHD品質のサウンドを超えたUHD映
像と同じ価値のあるサウンド体験を提供するという、ユ
ニークな機会を与えてくれます。UHDテレビは、強化され
たオーディオ品質と包囲感だけでなく、新たなレベルの
パーソナル化とインタラクティビティを可能にします。
このために、UHDのフェーズ2の実装では、5.1サラウンド
を超えたオブジェクトベースのオーディオといったオー
ディオ機能が要件となります。DVBの初期仕様では詳細が
あまり決められていなかったものの、その後複数のイマー
シブ・オーディオフォーマット (Dolby AC-4 [ETSIおよび
DVBによって標準化]、MPEG-H [MPEGによって標準化 ]、
DTS-X等) が、拡張されたチャンネルベースとオブジェク
トベースのオーディオフォーマットに対応するように開発
されました。
システムのメーカー等が、今後数年間でUHDテレビに実装
される規格である、テレビ放送のオーディオのための標準
規格の確立に向けてATSC、DVB、ITU等の業界団体と協力し
ています。ATSCは、例えば、現在、3.0規格のオーディオ
フォーマットを検討しており、2015年後半には提案書が完
成する予定です。
22
次々と登場するディスプレイ機器、シフトする視聴者の人口統計、新しい映像嗜
好、ますます幅を広げる様々なタイプの映像コンテンツへの多大なアクセスと
いった、背景的要因の組み合わせにより、新しい映像関連のオーディオシステム
には、イマーシブであること、パーソナル化できること、そして広くアクセス可
能であること要求されます。
• Dolby Atmosのような新しいオーディオフォーマットは、事実上どのような場
でも、公共の使用 (映画館等) か個人的な使用 (自宅でまたは外出中) かを問
わず、リアルなオーディオ体験を提供します。品質の新しい基準を作り出し、
広範なコンフィギュレーションをサポートするように適合されています。
• ダイアログの制御、切り替え音声や副音声の使用、補助用オーディオサービス
のミキシング、さまざまな特殊効果の選択を行って自分の好みにサウンドを
パーソナル化する機能等、将来ビデオ視聴者は自らのテレビオーディオ体験に
対して一層大きなコントロールを持つことを要求するでしょう。
• これらのシステムは、ユーザーの機器の特定の機能とそのユニークなサウンド
環境に基づいて、コンテンツの音量の正常化とダイナミックレンジの矯正の両
方をサポートする必要があります。
• システムでは、複数の言語の切り替え、ダイアログ機能強化、ラウドネス管理、
画面文字サービスを可能にする規制要件を満たす必要があります。
Dolby AC-4のような新しいオーディオフォーマットが提供する、飛躍的に向上し
た効率や優れた機能が、新たな機会の促進剤となります。これらのフォーマット
が規格化され、放送局や有料テレビ放送オペレータによって導入されれば、それ
らのフォーマットや提供される技術革新に対応できるUHDテレビのインフラストラ
クチャが必要となるでしょう。
仮定の使用ケース:
複数のオーディオフィードを持つ
マルチカメラUHD
UHDテレビのベースラインサイズが55インチ以上へと
移行するに従い、オペレータやコンテンツ制作者はよ
りクリエイティブな配信を行う機会が得られます。例
えば、より大きな画面では、スポーツコンテンツのモ
ザイク映像が使えるほか、インタラクティビティを高
めることが可能です。F1レースにおいて複数のレース
カーの同時表示、車内から見た眺め、その他に統計を
表示するなどして、視聴体験を向上させることができ
るのはその好例です。ユーザーは、見たい映像を選択
できるだけでなく、そのプログラミングに付随してい
るどのオーディオストリームを使うか選択できます。
23
UHDオーディオが直面する課題
UHDテレビのオーディオ体験でうたわれていることが実現される前に、多くの課題が対処されなければなりません。
• エンド to エンドのサポート – 優れたテレビオーディオを届けるためには、自宅でのオーディオ再生を含め、コンテンツ作成および配信エコシステム全体で変
化が必要とされます。放送局や有料テレビ放送オペレータは、コンテンツクリエイタが意図したように作成されたオーディオが実際に自宅に配信されるようにす
るために、規格化団体や機器ベンダーと協力しなければなりません。
• ラウドネスとダイアログのインテリジェンス – UHD映像の展開は、現在HD映像で見られる問題を悪化させる可能性を秘めています。例えば、今日のテレビではそ
れらが対応できるスピーカーで高品質のオーディオを提供するために苦戦していますが、これは、大型のUHDテレビでは自宅における視聴距離がさらに長くなるた
め、悪化する一方です。
• コンテンツ制作と可用性 – UHDテレビのオーディオが提供する新機能に対応したコンテンツの欠如により、UHD映像でのこれらの新機能の採用は遅れる可能性が
あります。この課題については幸いなことに取り組みが進んでおり、コンテンツクリエイタや家電メーカーで、Dolby Atmosのような臨場感あふれるオーディオソ
リューションの採用、対応がなされています。現在までのところ、250以上の映画がDolby Atmosでリリースされ、AmazonのインスタントビデオやNetflix等でこれ
らの映画が配信されています。2 拡大するコンテンツ供給経路ややエコシステムのサポートにより、この課題はUHDテレビが展開されるのに合わせて取り組みが進
むでしょう。
• オーディオ帯域幅要件 – オーディオ効率の増加により新たに出現するオーディオフォーマットは、強化された機能を提供できる新たなチャンスを提供してくれま
す。しかし、必要なオブジェクトの数とタイプに応じて、帯域幅の要件が現在の能力を超える場合があることも考えられます。
• 機器の対応 – テレビ機器メーカー、オーディオ−ビデオ・レシーバのメーカー、そしてスピーカーのメーカーの間での調整は、UHDテレビのフェーズ2とフェーズ3
に関連する新しいオーディオフォーマットのレンダリングと再生をサポートする上で非常に重要です。3
24
ダイアログとオーディオの明瞭度
UHDへの移行に伴い、業界はラウドネスとダイアログの明瞭度に関するいくつも
の問題に対応しなければなりません。明瞭度はISOで定義されているように、
「スピーチを理解する上での有効性の尺度」であり、音源とリスナーの間の距離、
そして音を提供するスピーカーの品質と指向性に大きく影響されます。今日のフ
ラットパネルディスプレイ (HDテレビとUHDテレビの両方) では、視聴者に向け
た高品質のサウンドを提供することはより困難な課題になっています。
UHDの高解像度を最大限に活用するために設計されたより大きな画面を求める動
きに押されて、ディスプレイと視聴する者との間での距離がさらに長くなるため、
UHDテレビへの移行はこの問題を悪化させる一方でしょう。視聴距離が長くなる
につれて、オーディオの明瞭度は低下します。話す声が音源から移動するとき、
音響エネルギーは徐々に広がる大きな面積上に放射され、音声レベルは平均で、
音源からの距離が2倍になるごとに約6デシベル減衰します。図に示したように、
この音量の減衰は、ユーザーが音量を大きくするためにリモコンを使わざるを得
ないような、明瞭度の著しい損失を生じさせることがあります。
この問題は、ダイアログエンハンスメント技術およびオブジェクトベースのオー
ディオボリュームコントロールを含めることによって対処することができます。
ダイアログエンハンスメント技術は、ステレオ音楽やビデオのオーディオコンテ
ンツにおいて、他の部分と比べてセリフやボーカルの可聴性と明瞭度を向上させ
るものです。この機能では、ダイアログを検出して別のスピーチチャンネルへと
抽出し、ダイナミック・イコライゼーションを適用した後、理論的にスピーチ
チャンネルをオーディオストリームにミキシングします。これは深夜にテレビを
観ているときや騒々しい環境で聴いているときなど、オーディオのレベルが低い
場合に特に有用です。ダイアログのみのリスニング音量をパーソナル化する機能
とダイアログエンハンスメント技術を組み合わせることで、増大するこの問題に
対して有効なソリューションが提供されます。
オブジェクトベースのオーディオを使えば、オペレータがダイアログを独
立したオーディオオブジェクトとして送信でき、番組内の他の音とは別に
エンドユーザーがダイアログの音量レベルを制御できるようにします。こ
れでユーザーは番組全体のオーディオを増加せずにダイアログの音圧レベ
ルを高めることが可能になり、番組全体の音量を上げることで生じるラウ
ドネスの問題を避けることができます。
25
次世代オーディオのためのインフラストラクチャ要件
映像の場合と同様に、UHDオーディオ全般での (特にイマー
シブ・オーディオにおいて) 拡張要件を処理するために、
既存のHDテレビのインフラストラクチャで様々な変更が必
要になります。以下がその例です:
• オーディオミキシング施設やサウンドデザインルームで
は、より高品質のオーディオを使用するためにアップグ
レードが必要とされる場合がある。イマーシブ・オー
ディオの作成では、適切なミキシングおよびモニタリン
グ機器をシステムに装備されることが規定されている。
• 非圧縮オーディオの転送と帯域幅の要件は、本番環境で
のオーディオの移動を考えて定義される必要がある。
• 高品質のイマーシブ・オーディオの帯域幅の要件と現実
的な配信ペイロードが定義される必要がある。UHDによっ
てサポートされる新しいオーディオフォーマットの効率
は、HDで使用されているものよりもはるかに大きくなけ
ればならない。
• 制作や放送の施設、自宅を含むオーディオインフラ全体
で新しいインターフェイスが必要とされる可能性もある。
これはUHDテレビに要求される、より高いビットレートの
映像とともにイマーシブ・オーディオを処理するために
必要である。
• 自宅でのオーディオ再生では、イマーシブ・オーディオ
の利用にあたって新たなソリューションが必要とされる
場合もある。
26
オーディオ再生とサウンド・リプロダクションに関する考慮事項
Academy Award® 受賞の作家であり映画監督のジョージ・ルーカスはかつて、サウンドは映画を観る経験の50%に値すると述べました。最近のインタビューで、映画
「トランス」の監督であるダニー・ボイルは、それをさらに進めて「実のところ・・・映画の70~80%がサウンドです。音は見ることができないので、気付かないんで
すよ。」と語っています。
コンテンツ制作者の意図に沿ったビデオ体験を楽しむためには、サウンドシステムや部屋の音響は、ディスプレイと同様に重要です。例えば、優れたホームシアターシ
ステムでは視聴者の前に、サウンドステージが設置されたようなホログラフィックスペースを作成することができます。Dolby Atmosで利用できるような臨場感あふれる
サウンドによって、ホームシアターシステムは、視聴者が完全に音に包まれて一体化できる全く新しい体験を作り出すことができます。
自宅でイマーシブ・オーディオを実現する上で鍵となるのは、使用されるスピーカーのタイプです。スピーカーの配置に関しては、各オーディオ形式で独自の推奨事項
が設定されています。例えば、次の図はDolbyスピーカーで推奨されているレイアウトを示したものです。上向きに音が進むように設置されたスピーカーまたは天井に取
り付けられたスピーカーを使って、このような構成をサポートすることができます。
すべての消費者が、イマーシブ・オーディオのスピーカーの配置を行うわけではありません。実際には、自宅でのオーディオビジュアル体験の特徴として高まるのは、
サウンドバーのような単純なシステムの使用です。これはUHDテレビが急速に浸透している中国で特に当てはまります。実際には、中国の大手テレビ小売業者の一つで
ある小米科技 (Xiaomi、シャオミ) が、多くのUHDテレビをサウンドバーとバンドルで販売しています。小米科技では、テレビの視聴体験における高品質オーディオの
重要性を理解し、Dolby StereoとDTSオーディオテクノロジを取り込んでいます。4 これはおそらく、強化されたオーディオ品質の必要性に加え、ますます日用品化さ
れるハードウェアを差別化する要求が徐々に明らかになるにつれ、テレビメーカーの間でトレンドとなるでしょう。
27
UHDの普及に影響を与える市場動向
今日の視聴者は、様々な機器上で様々なソースから得られた映像を視聴します。
その結果、かなりの量のコンテンツは最大サイズと最小サイズ (スマートフォン)
の画面の両方を使って、自宅内外で視聴されます。これは、コンテンツに対して
より多くのコントロールが可能になった – 時間、場所、機器、そして観たいコン
テンツ -- 視聴者には当然の結果です (それがこれだけ大量のビデオ映像が存在
する理由でしょう)。これが前提にされなければ、エンドユーザーに最高の映像体
験を提供するという課題に取り組む上で、ビデオのエコシステムを考察する意味
はありません。
コスト面も重要で、特にギガバイト毎に課金するコンテンツ配信ネットワーク
(CDN) の場合にはそれが当てはまります。 5 また、アダプティブ・ビットレー
ト・ストリーミングの幅広い利用により、CDNは途切れなくストリームを配信する
ために映像品質を操作することができます。しかし、大部分の視聴者は、絶対的
な品質よりも、より良い利便性と大量のアクセスの方が優先しており 6 、この傾
向は特に18~24歳の後期新世紀世代で顕著です。
広域3G/4Gネットワークを介してスマートフォンからビデオにアクセスしている
ユーザーのほとんどは、そのモードを選択した理由として利便性とユーザーの状
況に関連した特定の理由を挙げています。彼らはモバイルブロードバンド接続
(ワイヤレス) で小さな画面に表示される映像品質は、家庭用ブロードバンド接続
(有線) で自宅のリビングにある最先端のテレビに表示される画質とは比べものに
ならないことをよく承知しています。
要するに、UHDはフリーサイズのソリューションではなく、(制作者と消費者はど
ちらも高品質な映像に惹かれる傾向にあるとは言え) 「正しい」レベルのビデオ
品質というものは存在しません。
資料 16 – 映像の解像度、帯域幅、および画面サイズ
映像解
像度
ストリーミング時
の標準的な
帯域幅
映像 60 分の
ファイルサイズ
標準的な画面サイズとユースケース
360p
512 Kbps
250 MB
10 インチ以内: 3G/4G のモバイルネットワークに
接続されているスマートフォンおよびタブレット
端末。
480p
800 Kbps
400 MB
25 インチ以内: Wi-Fi に接続されているスマート
フォン、タブレット端末、および PC。
1 GB
50 インチ以内: Wi-Fi でダウンロードされる高画
質 PC お よ び タ ブ レ ッ ト 端 末 の 映 像
(ADSL 回線からスマートテレビへの OTT ストリーミ
ング等)。
2.4 GB
50 インチ以上のスクリーンでの従来のテレビ視聴
距離。有線ブロードバンドのネットワークを使っ
た HD テレビへの高質ストリーミング。
3.8 GB
50 インチ以上のスクリーンで、より短い視聴距離
の 可能 性あ り。 10 Mbps 以下 のス ピー ドの有線
ブロードバンドで最高品質のストリーミングが
可能。
7.2 GB
65 インチ以上のスクリーンで、より短い視聴距
離。UHD でキャプチャされホームシアター環境でレ
ンダリングされたプレミアム品質のコンテンツ。
720p
1080p
2K
(1440p)
4K UHD
(2160p)
2 Mbps
5 Mbps
8 Mbps
15 Mbps
柔軟性と適応性が最も影響力を持ちます。上記の表は、今日最も人気があり使
用される可能性が最も高い、映像解像度、機器の種類、設定をまとめたサマ
リーです。7
ここまでは、UHDのエコシステムを定義する映像とオーディオの技術に焦点を当
ててきましたが、次はUHD技術が進化し、実装される市場の状況に目を向けるこ
とにします。このセクションでは、UHDを前進させる主な推進力だけではなく、
立ちはだかる主な阻害要因についても考察します。
28
UHD推進要因
テレビメーカー
テレビメーカーはUHDの場へ仲間入りした初期のメンバーです。売上高の減少、
マージンの低下、3Dでの失敗、そして言うまでもありませんが2007年から2009
年の大不況、それらがテレビのOEMメーカーの環境を非常に困難にしました。次
の「ヒット」を見つけたいというメーカーに本来備わる欲求により、UHD/4Kは
それこそ万能薬を提供し 8、OEMメーカーは猛烈な勢いでテレビセットを登場さ
せました。
2015年3月の時点で、米国の主要家電の小売店にUHDテレビを販売しているOEM
メーカーには、サムスン、LG、Sony、東芝、パナソニック、Seiki、シャープ、
TCL、長虹 (Changhong、チョウコウ)、Vizio等が含まれ 9 、その多くはVODの
ユースケースに非常に重要なスマートテレビ機能を統合させています。残念な
がら、一挙に登場したUHDテレビによって本末転倒の状況が生じてしまい、多く
のUHDテレビが販売されていてもそれで見ることができるUHDコンテンツの面で
ほとんど進展が見られませんでした (市場での阻害要因については次のセク
ションで取り上げます)。
この問題に対処するために、テレビのOEMメーカーは、HDR10 、広い色域、没入
型オーディオといった、広い色域、イマーシブ・オーディオといった、UHDを次
のレベルへと高める解像度以外のUHDの側面に焦点を当てています。CES 2015で
は、サムスン、Sony、LG、TCL等のベンダーが、その利点が広くうたわれている
HDRを備えたUHDテレビを大きく取り上げました。
現時点でHDRは注目度の高い技術分野であることは疑いなく、最低でも5つの標準
規格が競い合っています。BBC、Dolby、Philips、Sony、Technicolorの各社が
HDRと広色域の標準化を目指して、DVBと協力しSMPTEおよびEBUとともにHDR方式
を提案しています。HDRはVODに向けたオフライン・エンコーディングのための強
力 な ツ ー ル と 見 ら れ て お り 、 Dolby は CES 2015 で 大 々 的 に 紹 介 さ れ た
Dolby Visionの画面で市場を大きく牽引しています。うまくいけば、この技術は
初期の4K VOD採用者の製品に追加され、ライブUHDの用途でHDRエンコーディング
技術を利用した視聴が拡大します。現状では、オフラインの用途のためのHDR技
術は、ライブUHDよりもUHD VOD向けではるかに進んでいます。ライブUHDための
HDRははるかに困難であり、ビットデプスと後方互換性に関する多くの問題が、
UHDにおけるVODとライブでのニーズが共通のHDR規格を確実に満たすためには非
常に重要です。
HDRを実現する主要な技術のひとつはDolby Vision®で、これはコンテンツの作成
から、配信、再生まで一貫して使える、エンド to エンドのソリューションです。
Dolby Visionはテレビメーカー、OTTサービスプロバイダ、インフラのサプライ
ヤからすでにサポートを確保しています。11 Dolby Visionの映画やテレビ番組が
制作されれば (先頃のワーナー・ブラザーズによる発表では、これは2015年内に
なる予定 12)、配信することを望んでいるNetflix、Amazon、Vuduのようなスト
リ ー ミ ン グ サ ー ビ ス と 共 に 、 Dolby Vision 対 応 の テ レ ビ を 生 産 す る こ と を
Philips、海信 (Hisense)、東芝、TCLが、これまでに確約しています。
29
11
ストリーミング技術の進歩
数年前にはまだ、インターネット上でUHDビデオをストリーミングするとい
うアイデアは不可能だと考えられていました。ブロードバンドユーザーは自
らのパソコン上の小さなウィンドウで短い形式のビデオを視聴するのが主で、
その視聴体験に比べればオリジナルのSD画質のDVDでさえ素晴らしく見える
ほどでした。そのような初期の頃から多くが変わり、2つの特定の要因があ
いまって、UHD映像のストリーミングを伝送し消費することが技術的に実現
可能になりました。
もちろん、米国のすべてのブロードバンドユーザーが、それほどのスピードを
利用できるわけではありません。FCC (米国連邦通信委員会) のブロードバンド
速度に関する第8版レポートで述べられているように、およそ1,900万人のアメ
リカ人 (農村部に住んでいる人の75%以上) は、 最低限 のブロードバンド
(4 Mbpsのダウンストリームサービス) へのアクセスも持っておらず、近い将来
UHDコンテンツのストリーミングが可能になることはないでしょう。18 しかし
米国の人口密集地域の大半のブロードバンド世帯は単一UHDストリームをサポー
トするために必要なアクセス速度か、それを超える速度を備えています。19
最初の要因は、MPEG等により、利用可能な帯域幅を最適化して大きいファイ
ルをより迅速かつ効率的に伝送することなどを可能にした次世代ビデオコー
デックであるHEVC (別称H.265) の開発がなされ、ビデオストリーミング技
術が劇的に向上したことです。HEVCは、今日の最先端のコーデックAVCに比
べて25から30%まで実際に使われるコーデック効率を向上 (すなわち、帯域
幅の節約) を提供しています。13 HEVCの採用は、UHDのストリームを配信す
るのに15 Mbpsを必要とするかそれとも12 Mbpsでよいかの違いを意味すると
言えるかもしれません。これまでUHDコンテンツへのアクセスが確かではな
かったブロードバンド世帯の多くがこれでアクセス可能になります。
さらにMPEGは、使用されている機器の機能と帯域幅のコンディションに映像
解像度を動的に合わせる、新しいアダプティブストリーミング形式の
MPEG-DASHを標準化しました。14 これらの技術革新がテレビや周辺機器に加
えられることで、UHD (ほぼUHDまたは2K) のストリーミングが、より多くの
視聴者に届けられます。15
第二の要因は、米国の消費者向けブロードバンド速度が過去10年間で劇的に
改善されたことで、平均有線接続速度は現在10 Mbpsを超えています。16 ま
た、ブロードバンドの速度に関しては、トップ10の州すべてが、UHDスト
リームを提供するために必要とされるよりも断然速い、40 Mbpsを超える
ピーク接続速度を見せています。
30
11
コンテンツのクリエイタ/所有者
UHDは、いくつかの理由でコンテンツクリエイタと所有者にとって重要です。
まず、制作にかかわる人々は、本質的に映像体験の質を向上する技術に惹か
れるものだということです。20 その結果 (すべてではありませんが) 多くの
新しい映画がUHDで撮影され、映画館もUHDを上映できるようにアップグレー
ドしています。21
第二に、コンテンツ所有者の間では、以前に別のフォーマットで観た古い映
画やテレビ番組の新しいバージョンを消費者に見せる (さらには買わせる)
ために、新しいフォーマットを使用することは優れたやり方だということが
以前から知られているということです。22 (例えば「スター・ウォーズ」は、
微小なフォーマット関連の変更により何回も再リリースされ、それ自体が
長々とウィキペディアで説明されているほどです。23) UHDは、新しくより高
品質のフォーマットでクラシック映画をリリースし直し、スタジオのコンテ
ンツライブラリの価値を拡大する機会を提供します。24
その他に、UHDストリーミングは、これまでの品質上の懸念からこれらの
サービスを避けてきたユーザーにもリーチして潜在的な市場を拡大させ、よ
り広範な視聴者に対してオンデマンドコンテンツの価値を向上させます。
31
OTT VOD
UHDはまた、OTTビデオプロバイダにもいくつかビジネスの展望を提示します。UHD
視聴の大部分は有線ブロードバンドに接続されたテレビで行われることが想定さ
れるため、プロバイダおよび消費者に非常に魅力的なユースケースを提示するこ
とになるでしょう。NetflixのようなOTT配信サービス会社が、UHDのVODを初期に
採用したビデオサービスプロバイダであるのには3つの理由があります。
• 第一としては、UHD VODは非常にコスト効率の高いサービス (低い配信コストと
高視聴価値の魅力的な組み合わせ) であることが挙げられます。UHDの利点は理
論的には事実上個々の視聴者に及び、Netflixのような企業は、実際に配信され
たUHDコンテンツのためだけにCDNの費用を支払います。現代のアダプティブス
トリーミング技術では、UHDストリームを受信することができる視聴者はそれを
取得し、受信できない人はこれまでと同じく720pまたは1080pのHDで受け取って
観ることになります。別の言い方をすれば、わずかの消費者がUHDでオンデマン
ド番組を視聴した場合でも、プログラムを提供するためにプロバイダが費やす
追加コストは最小限で済みます。そこもちろんコンテンツをUHDにエンコードす
るためのコストはかかりますが、非リアルタイムコンテンツの小規模ライブラ
リにおいては、そのコストは比較的小さいものです。また、UHDによるキャプ
チャはオリジナルコンテンツ制作のためのベストプラクティスであり、UHD符号
プロファイルが含まれるようにワークフローを拡張することは、今後も使用で
きるVODライブラリのために理にかなった堅実なやり方だといってよいでしょう。
• 第二の理由は、UHDビデオへの対応は、映像品質に関して「ハロー効果」を提供
する可能性があるということです。OTT事業者は、従来の有料テレビ放送プロバ
イダよりも高品質の映像を提供することができるようになります。これは今ま
でにはなかったことで、これにより消費者の品質への認識が改められ、OTTサー
ビスの価値提案を強化する上で貴重なツールとしての役割を果たします。
• 第三の理由は、加入サービスとしてのビデオ・オン・デマンド(SVOD) を提供す
る最大規模のOTTプロバイダ (NetflixとAmazon) はすでにUHDに対応しており25、
GoogleとMicrosoftでも大きく遅れをとることは許されないということです。
UHDを受け入れるこのような推進力により、他のOTTプロバイダも早々に追随す
ることでしょう。
MVPDのVOD
マルチサービス・ビデオ・プロバイダ (MVPD) は、OTTサービスによってもたら
される非常に高い可能性の脅威を理解しています。Netflixや他のオンライン
SVODプロバイダとは異なり、MVPDの場合は自社のネットワークとサービスを介
して、エンド to エンドのコントロールを享受しており、彼らはこの利点を活
用することに目を向けています (あるいは今後そうするでしょう)。
リニアUHD放送の展開は、経済的および技術的な面で重要な障壁に直面しますが、
MVPDは加入者の一部について、リニアUHDよりもはるかに低いコストでUHDのVOD
をサポートすることができます。TDGリサーチ社では、2015年にUHD VODをサ
ポートする初のハイエンドMVPDセットトップボックスを発売する見込みで、こ
れは間違いなくUHDのエコシステム全体にとってポジティブな推進力となるで
しょう。
32
UHDの阻害要因
資料 17 – UHD/4Kテレビの熟知度と使用
どのような新しい技術でも、行き渡るために時間とリソースを必要とする
ものです。それはUHDの場合も違いありません。映像品質の顕著な向上を
提供するにもかかわらず、UHDへの取り込みは重要な課題に直面していま
す。このセクションはそれについて考察することが目的です。
32
4K/UHDテレビを所有
2.1%
消費者意識の欠如
UHD/4Kは「最先端」技術のままで、大方の消費者にきちんと理解されてい
ません。2015年第一四半期において、消費者の70%近くがUHD/4Kのことを
認知していない、あるいはよく知らない状態です。26
さらによくないことに、消費者のさらなる混乱を招くように、市場では
「4K」と「UHD」の用語を同義語であるかのように使用し続けています。
これに加えて、業界主要プレーヤーの間でUHD規格 (最低限の共通事項で
ある映像解像度とアスペクト比以外) と短期でのUHDの普及見込に関する
コンセンサスが欠けていることが問題のようです。ここで不可欠なのは、
コンテンツ作成から消費に至るまでエコシステム全体でサポートされ、そ
して買い手に明確に伝えることができる、有意義なUHDプロファイルにつ
いて業界が合意することです。
よく知っているが所
有していない
28.0%
聞いたことがない
33.1%
聞いたことはあるが、
よく知らない
36.3%
出典:TDG Research (2015年2月)
33
資料 18 – 新しいUHD/4Kテレビの購入における価格感度
ハイエンドUHDテレビ小売価格
(成人のブロードバンドユーザー、n=3,428。各回答者でランダムに価格を1つ割り当て。)
テレビのOEMメーカーは、UHDを主流化することに熱心ではあるものの、
UHD/4Kをハイエンド価格が正当化されるハイエンドの機能として位置付
けています。しかし、自動車やファッション商品等の他の消費者製品と
は異なり、全員が同じコンテンツ (ビデオ番組) を消費するため、UHD
テレビでは高級製品としての価値がはっきりとしていません。
成人のブロードバンドユーザーの%
60%
50%
40%
また、UHDテレビの大量市場なしには、コンテンツクリエイタのための
ビジネスモデルが存在せず、消費者が高価な新しいテレビで見るための
UHDコンテンツがありません。確かにUHDのセット価格は下落しています
が、Amazonから購入可能な現行のUHDテレビ52モデルのうち、24のモデ
ルは2,000米ドル以上で販売されています。27 TDGリサーチ社の調査によ
れば、そのような価格設定は過剰であり、実際のところ米国の成人の
ブロードバンドユーザーの2%未満しか1,999米ドルの価格でUHDテレビ
を購入する予定ではないことが一貫して報告されています。28
30%
20%
10%
0%
$999
$1,499
$1,999
$2,499
Definitely
will not purchase
絶対購入しない
Moderately
unlikely
多分可能性はない
30.9%
34.4%
45.4%
53.4%
11.5%
14.1%
20.7%
13.7%
Slightly
unlikely
あまり可能性はない
Neither
likely nor unlikely
どちらとも言えない
9.6%
10.4%
8.0%
8.4%
12.6%
15.2%
9.1%
10.8%
Slightly
likely
少しだけ可能性がある
Moderately
likely
やや可能性はある
16.1%
13.6%
10.2%
7.1%
13.7%
8.9%
5.0%
3.9%
Definitely
likely
絶対購入する
5.4%
3.5%
1.7%
2.8%
今後5~7年の間に、UHDテレビは家庭で主流となる動きを見せるでしょ
うが、それは価格が今日よりも著しく低くなった場合に限ります。これ
はUHDエコシステム全体の進化のための決定的な要件ですが、テレビOEM
メーカーが (彼らの側にとっては) 早々に、ハイエンド製品であると考
えている機器の小売価格を下げることが要求されます。(これは、初期
のブルーレイOEMメーカーがそのテクノロジを市場に推し進めた際に直
面した状況を彷彿とさせます。OEMメーカーは「最先端のテクノロジ」
に伴う高いマージンを求める一方、主流製品としての位置付けに伴うよ
り高い売上台数を望んでいます。)
出典:TDG Research (2015年2月)
34
11
UHDを処理できる制作インフラへのアップグレードのコストの高さ
前述のように、4K/UHDのプロダクションは、帯域幅、ストレージ、インター
フェイスを含む様々な面で要求が厳しくなります。4Kワークフローでは、4Kの
プロダクションが意味するところの莫大な量を処理するためのインフラストラ
クチャへのアップグレードが必要になります 。例えば、未編集の4K/60fps
10 ビットデプスのデータは、1時間あたり11 TBのストレージを必要とし、
ワークフロー内のすべての機器間のインターフェイスでアップグレードが必要
になる可能性があります。UHDを地上波放送、サテライト、ケーブル、または
インターネット経由でストリーミングして提供するには、帯域幅の増加要件の
ために多大なインフラストラクチャのコストを必要としますが、最近のデジタ
ルテレビへの遷移によって発生した放送局のコストを考えれば、UHDのビジネ
スモデルが十分に証明されるまで、自社のネットワークをアップグレードする
ことに対する明確な躊躇が考えられます。
UHDコンテンツの欠如
ハードウェアの課題に加えて、コンテンツのキャプチャ、作成、編集、保存、
管理、エンコーディング、ストリーミングといった正式なコンテンツ支援シス
テムの欠如によって、UHDの潜在的な利用はさらに制限されます。ビデオ広告
の解像度でさえ考慮する必要があります。例えば、消費者はUHDプログラムの
中で、低解像度の広告を受け入れるでしょうか、それとも広告も同様にUHDで
撮影することを要求するでしょうか。各サポートシステムのコンポーネントの
発展状況は、業界全体の標準規格、技術、ワークフローといった即座には状況
が変わらない事項に基づく、製品のインストールベースに左右されます。また、
コンテンツをUHDで撮影するためのビジネスケースが存在する必要もあります。
例えば、映画をUHDで撮影しても、現在のツールがUHDに対応していないので、
まだ2K (あるいはそれよりも低い1080p) でビジュアルエフェクトが追加され
ていることはよく知られています。29 また、UHDへの映画の再マスタリングは、
その専門家が見直しと微調整をフレームごとに行うため、非常に手間のかかる
プロセスです。30 (Sonyが「アラビアのロレンス」のUHD再マスタリングを行っ
た際にはその完成に3年を要しました。31)
さらに、UHDコンテンツが存在する場合、従来のテレビ配信経路は全く利用す
ることはできません。例えば、米国のレガシーな有料テレビ放送プロバイダが、
UHDリニア放送を配信できるようになるには数年はかかると予測されます。
(世界最大の会計事務所)は最近、UHD放送のチャンネルを構築するコストは
1,000~1,500万米ドルで、新しいHDチャンネルを構築するのにかかるとされる
200万米ドルの7倍にまで及ぶと推定しています。 32 オンデマンドのUHDスト
リームミングはライブのUHDリニア放送よりもコストがかかりませんが、オン
デマンドのHDストリーミングよりも費用がかかります。HEVCのエンコーディン
グ効率改善にもかかわらず、UHDストリームを配信する場合は、現在の (主に
720p) ストリーム配信に比べて3~6倍のコストがコンテンツプロバイダに要求
される可能性があります。33 また後述するように、ビデオ (DVDやブルーレイ
ディスク) 用の現世代の物理メディアはUHDをサポートしていません。
歴史的に長いテレビの買い替えサイクル
米国のテレビ市場では、圧倒的に6~8年間の買い替え周期が取られています。
アーリーアダプタ (早期に購入する利用者層) を除いて、これは迅速なUHDテ
レビ普及を妨げる行動面での根本的な障害要因です。
より迅速なPC、タブレット、スマートフォンの購入サイクルを模倣すること
(早計な旧式化 を誘導すること) にやっきになっているテレビ機器業界の努力
にもかかわらず、テレビの買い替えサイクルは、この10年間あまり変化はあり
ません。また、低価格のインターネットのセットトップボックスやスティック
を利用する消費者の多さから見て取れるように、消費者はテレビ視聴体験を
アップグレードするためにテレビをアップグレードする必要がないことを学ん
でいます。また、このような機器がサポートするOTT UHDプログラミングの可
用性も、実際テレビの買い替えサイクルを長くする要因となっている可能性が
あります。
35
ブロードバンドテレビ機器でのUHD対応の欠如
リビングルームのテレビで見るブロードバンド・ストリーミングの大半は現在、
HDMIインターフェイスを使用してテレビに接続する、補助的なインターネット
対 応 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 介 し て 配 信 さ れ て い ま す 。 Netflix 、 HBO Go 、
Amazonインスタントビデオ、Hulu PlusのようなOTTサービスは、主にゲーム機
(Xbox 360/OneやPlayStation 3/4等)、インターネット接続のセットトップボッ
ク ス (Apple TV や Roku 等 ) 、 イ ン タ ー ネ ッ ト ス ト リ ー ミ ン グ ス テ ィ ッ ク
(Google Chromecast等)、ブロードバンド対応のブルーレイプレーヤー(サムス
ンや他の家電メーカーから発売) を介してテレビで視聴されています。
直接接続されたスマートテレビからのストリーミング映像の視聴は、OTTでのテ
レビ視聴全体の10%未満しか占めておらず、相変わらずマイナーなままです。
このことは、「ネットからテレビへのプラットフォーム」、テレビ、そしてそ
の2つの間のHDMIインターフェイスのそれぞれがUHD対応である必要があり、い
ずれかで欠落している場合は「UHDの体験」が得られないという、UHDの配信に
おける重要な課題を表しています。
過去においては、ゲーム機や物理ディスクは新しい映像フォーマットに対応し
て、市場をリードしてきました 。残念ながら 、2013年に現世代のゲーム機
(Xbox OneとPlayStation 4) が出荷されたときには、UHD標準規格は流動的だっ
たためUHD機能は備わっていません。同様に不満が募るのは、業界で非常に遅れ
をとっているUHDブルーレイの単一規格への合意です。35 その結果、今日市場に
はUHD対応のテレビ用周辺機器がなく、主流として急速に普及するために必要な
価格帯のコネクティッドTV用周辺機器がUHD機能を備えるのに十分なほど部品価
格が下がるまでには数年かかります。それにもかかわらず今後10年間で4K対応
のストリーミング機器は、最終的には米国のブロードバンド世帯の大部分で利
用されるようになると見込まれます。36
36
UHDテレビに関しては、今後数年間では価格低下がゆっくりと進みUHDテレビが
ハイエンドからより広範な大衆市場へと移る時期であり、その売上高は抑えら
れたものになるでしょう。加えて、すべてのUHDテレビで高画質のコンテンツ
が見えるようなUHDの標準規格およびプロファイルについて業界が幅広い合意
に達成するまで、消費者は慎重な態度を取ると思われます。比較的長い潜伏期
間の後、UHDテレビの採用は2018年以降に加速化し始め、普及率は2019年まで
に11%、2021年までに19%、2025年までには40%に達する見込みです。これは
飽和している買い替え市場で競合する新しい (かつ比較的高価な) 消費者製品
としては、強固な成長を構成しています。
さらに、UHDテレビの採用は、従来型有料テレビ放送のセットトップボックス
のアップグレードによって拍車がかかるでしょう。時間はかかりますが、予測
期間末までに有線用では20%、サテライトSTB用では18%に達すると予想され
ています。これにより、UHDテレビとUHDテレビ対応のオペレータ提供のSTBの
比率は、ほぼ一対一になります。
UHDのブルーレイプレーヤーはそれ自体が重要なニッチな製品で、今後10年間で
20%のブロードバンド世帯で利用されるようになることが予想されています。
これは1080pのブルーレイプレーヤーの45%の普及率よりもかなり低く、今後は
ビデオエコシステムにおいて一段と限定的な役割しか果たさないことになるカ
テゴリー (物理メディア) ですが、それでも相当な規模の市場です。さらに重
要なのは、UHDコンテンツに関連する標準規格の設定の手助けをしUHDテレビ購
入者のためにコンテンツ面でのギャップを埋めるという点で、4Kブルーレイは
今後数年間有益な役割を果たすだろうということです。
最後のポイントとしては、パソコンはオンライン映像エコシステム全体におい
て重要性が低下していますが、重要なニッチ市場としてUHDの有効化のために潜
在的に興味深いセグメントとして残るであろうということが挙げられます。
資料 19 – 4K対応機器の米国世帯への浸透
2014-2025
100
4K対応機器のある米国ブロードバンド世帯の%
注意すべき最初のポイントは、スマートフォンとタブレット端末の4K対応は、
主にビデオの再生に関する配慮ではなく、映像キャプチャのために促進される
ということです。以下に説明するように、携帯電話やタブレット端末のための
UHDプロファイルは可能ですが、これらの機器に特有のオーディオと画面の要
件を考慮する必要が出てきます。4K映像のテレビでの視聴に対応する機器に関
しては、iSTB (Apple TV、Roku、Amazon Fire TV等のインターネット接続セッ
トトップボックス) が市場をリードすると見込まれており、2025年までに米国
のブロードバンド世帯の60%以上において4K映像の利用を可能にする機器が見
られると想定されます。もちろん、これらすべての機器が4K解像度に対応する
テレビに接続されるわけではなく、機能が使用されないままとなることもある
でしょう。しかし、UHDエコシステムを可能にするという点で、より大きな可
能性を提供してくれる機器のカテゴリーは他に存在しません。UHDコンテンツ
のプロファイルに関する考察に、これらの機器はもちろん、そこから生じた映
像をiSTBからディスプレイへと配信するために必要なハードウェアインター
フェイスを含めることは今後非常に重要です。
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2014
2015
2016
2017
2018
2019
Smartphones
スマートフォン
Wireline
STBs (Cable or Telco)
有線STB (ケーブルまたは電話通信)
スマートテレビ
Smart
TVs
iSTB
iSTBs
PCs
パソコン
2020
2021
2022
2023
2024
2025
Tablets
タブレット端末
Satellite
STBs
サテライトSTB
Game
Consoles
ゲーム機
4Kブルーレイプレーヤー
4K
Blu-ray Players
37
モバイルビデオとUHD
TDGリサーチ社の調査によると、ビデオの消費は、リビングルームのテレビで皆が一緒に
視聴することから、個別化した小さな画面上での消費へと拡大しています。マルチネット
ワーク、マルチスクリーンディスプレイで特徴付けられる莫大な数の映像の視聴を考える
と、ビデオエコシステムは一度にアップグレードすることはできず、前回の映像のアップ
グレードサイクルで存在しなかったクライアントサービスの多様化や複雑化に取り組んで
いる各種サブシステムが浮かび上がることになるでしょう。たとえば、今日の小型画面で
の多くはすでにHD解像度でRetinaディスプレイ (このディスプレイでは通常の観察距離で
表示されるピクセルを目で知覚することはできません) を備えており、UHDへのアップグ
レードからの明確な利点はありません。また、小型画面ではより高い解像度を堪能するに
は小さすぎ、UHD画像のファイルサイズと帯域幅の要件は多くの場合コストがかかりすぎ
要求が厳しすぎます。そこで注目を集めるのが、HDRや強化されたオーディオといったUHD
の他の特徴です。私たちはOTTサービスプロバイダの中にはUHDテレビだけでなく、タブ
レット端末等のモバイル機器やパソコンにも当てはまるUHDのパッケージを配信する者も
出てくると見ています。これを念頭に置いて、いくつかの機器メーカーはすでに、3Dオー
ディオといった拡張されたUHD機能に対応する機器を提供し始めています。例えば、
LenovoではLenovo® A7000がDolby®サウンドを組み込んだ世界初のスマートフォンになる
ことを発表し、AmazonはすでにKindle Fire 8.9 HDXでDolby Atmosのサウンドに対応する
ことを発表しています。
INSERT IMAGE
したがって、コンテンツプロバイダは、UHDテレビの所有者にUHD映像を配信すると同時に
(UHDが例外でルールに含まれない) パソコン、タブレット端末、スマートフォンを含むテ
レビ以外の機器の所有者にも低い解像度で同じコンテンツを提供するための準備を進める
必要があります。
38
UHD展開での課題
UHDの将来に向けた重要な課題の中には、異なる業界の関係者のためにビジネ
スケースを明瞭にさせるということがあります。UHDコンテンツが、非常に異
なる能力、ビジネスモデル、レガシー・プラットフォーム、およびコンテン
ツタイプを持つ様々なサービスプロバイダから配信されることを考慮すると、
それぞれが直面する課題の本質も異なります。次に、主要なビデオサービス
プロバイダが直面する問題を取り上げます。
UHDコンテンツの幅広い展開が困難な中、単にUHD映像プロファイルを追加す
ることは、戦略には成り得ません。代わりに、ビデオプロバイダは展開予定
を明確にし、それに沿って進まなければなりません。このセクションでは、
ビジネスロードマップへのUHDの取り込みを始める最善の方法を、異なる種類
のプロバイダごとに考察します。
OTTプロバイダおよびベンダー
先に述べたように、OTTプロバイダは他に先がけてUHDコンテンツを受け入れ、
すでに普及しているブロードバンドと成長するUHDテレビの利用を活用します。
これらの仮想事業企業は、アダプティブ・ストリーミング・テクノロジを使
用して (QoSを提供しつつ) コンテンツ配信のコストを削減することができま
す。これらのビデオプロバイダは今日、自社制作およびライセンス契約をし
たスタジオのUHDコンテンツを使ってUHDの変化を促し、市場全体の方向付け
をしています。
それと同時に、UHDビデオはOTTサービスに難題を投げかけています。まず、
これらのサービスで消費されるビデオは、(パソコン、タブレット端末、ス
マートフォンの順で) 小型画面上で視聴され (あるいは今後視聴され) るた
め、1080pからUHD解像度へのシフトで最もメリットがないということが挙げ
られます。第二は、スマートテレビで見るほとんどのビデオは、スマートテ
レビのネイティブの実装ではなく、サードパーティのストリーミング機器を
経由して視聴されるということです。以下がこれらの課題に取り組む方法と
して挙げられます。
• 映像撮影を4K解像度でキャプチャし始めること。4Kカメラは、Sony、パナ
ソニック、BlackMagicのような大手ベンダーから市場に出回っています。
余分な解像度が必要なくても (ROIの許す限り) それを備えられている方
が、必要とするのに持たない場合よりも推奨されます。
• UHDに対応する第一歩として、ネイティブのスマートテレビ用アプリに焦
点を当てること。これらの機器へのセキュアなMPEG-DASHストリーミング
をサポートできるパートナーと協力することが、移行の支援に役立つで
しょう。UHDに関連した消費者向けのハードウェアエコシステムが成熟す
るにつれ、これらのアプリは、サードパーティのストリーミングボックス
へと場を移すかもしれません。
• Harmonic® 等のリーディングベンダーからすでに提供されているUHD対応
エンコーディングツールを使用して、将来消費者が望むプロファイルに対
応できるコンテンツを作成すること。
39
従来のテレビプロバイダ & ベンダー
ダイレクト to ホーム (DTH)
UHDは、従来の有料テレビ放送プロバイダへ困惑をもたらします。加入者は、彼
らのテレビプロバイダが利用可能なUHDコンテンツを提供していると期待してUHD
テレビを購入し、後でそうでないことを知ります。消費者はUHDの欠如は、(OEM
メーカーあるいはテレビセットを販売した小売業者のせいではなく) 間違いなく
有料テレビ放送プロバイダのせいであると思うため、事業者はこの点で非常に深
刻なリスクを負います。現在サービスを提供する有料テレビプロバイダが非難を
受ける一方、OTTプロバイダは忙しくUHDのさらなる展開を進めています。この傾
向が対応されないまま進めば、消費者の有料テレビ放送サービス離れが進み、
OTTサービスへと流れることになりかねません。
UHDコンテンツの配信に関しては
ダイレクト to ホーム・オペレー
タが置かれている環境が最も融通が利きます。これまでにDTHプロバイダは、
データカルーセル型モード (プッシュ型VOD) でVODファイルを送信する、VOB
ファイル (リニア型のプレイアウト) に基づいた自社独自のUHDチャンネルを作
成する、あるいはリニア型ライブイベントを放送するかどうかを選択していま
す。このような配給は主にサテライトを介して行われますが、なかにはIPベース
の配信を検討している事業者もあります。論理は単純で、小規模視聴者のために
優れたQoSを持つユニキャスト配信が最良の選択です。コンテンツが不足してい
る場合は、VOD配信は放送よりも好ましい方法です (対象のコンテンツがライブ
ではないと仮定して)。ダイレクト to ホームのオペレータはこれまで、常に新
しい映像フォーマット (HDや3D等) を早期に導入するメンバーであり、以前は存
在しなかったIP配信オプションを使って、他に先駆けてUHDフォーマットに参入
すると考えることは妥当と言えるでしょう。
これらの課題への簡単な答えはありませんが、以下の常識的なステップを実行す
ることで、有料テレビ放送プロバイダは状況を適切な方向へと向かわせることが
できるでしょう。
• VOD向けのUHDサポートを先に追加すること。これは、スピーディな市場への導
入、劇的に低いコスト、UHDコンテンツを探して観ようとしているRPU (ユー
ザーあたりの収益) のより高い世帯へのマーケティング面での重要なメリット
といった、多くの利点を含んでいます。
• TV Everywhere (TVE) アプリをiSTBとスマートテレビで認証すること。これら
の機器をブロックするということは、まさに視聴者を競合に引き渡し、UHDの
エコシステムで競合に足がかりを構築する機会を与えているようなものです。
この場合TVEアプリは、UHDストリーミングプロファイルへの対応といった、
OTTサービスへの市場競争力を持っている必要があります。
• オペレータの新しいSTBに (ユニキャスト・ストリーミングのサポートを含む)
できるだけ早くのUHD再生機能を追加すること。
• 消費者の期待にサービス能力を同調させられるように、自社のUHDのロード
マップおよび能力を大手パートナー側やUHDプロファイルと合致させること。
異なる配信ネットワークは、有料テレビ放送プロバイダにとって著しく異なった
課題と機会をもたらします。次は、主要な有料テレビ放送ネットワークのカテゴ
リそれぞれを考察します。
ケーブル
ケーブル事業者は現在QAMで放送
チャンネルを配信していますが、
DOCSIS技術の発展にともない (3.0
から3.1へと移行中) IP上でUHDを
配信するのに十分な帯域が確保されました。セッション数が比較的少数である場
合はユニキャスト・ストリーミングで十分で、さらに完全なマルチキャスト方式
はUHD市場が本格化するまで延期することができます。ケーブル事業者は現在
DOCSIS上でVODを提供していますが、従来この点でダイレクト to ホーム・プロ
バイダに遅れをとってきました。とは言え、DOCSISの3.Xの利用はケーブル事業
者のより迅速な対応を可能にしてこの遅れを最小化することができ、ケーブル事
業者が低速なDSL接続に制限されている通信事業者により大きな圧力をかけるこ
とで一段と進むでしょう。
40
放送業者
放送事業者は、UHDに関して難しい選択をせま
られています。レガシーOTA (over the air、
無線電波で受信する方式) 放送のインフラをア
ップグレードすることは、数々の重大な課題を
引き起こします。
これにはまず、放送局は規制当局を説得して、
UHDの無線配信に必要なより多くの周波数帯域を
許可してもらう必要があります。帯域幅は限られていて高いコストがかかりま
す。特にモバイルデータネットワークにサービスを提供できる 帯域ではそう
です。放送局が、帯域幅のためのオープン入札合戦に全国規模の大規模携帯電
話事業者と競うことができるか (また競うべきか) は明らかではありません。
第二に、放送コンテンツのかなりの量は依然としてライブで供給されることが
挙げられ、UHD放送は新たなプロダクション能力を加えるために大規模な投資
を必要とするでしょう。従来型の放送局が平坦な (あるいは低下する) 視聴率
をたどる中、そのような投資のビジネスケースを正当化することは極めて困難
な恐れがあります。最後に挙げられる重要な点は、テレビは信号を受信してデ
コードすることができなければならないということです。それは関心のある消
費者がUHDテレビと新しいUHD OTAアンテナの両方を購入する必要があることを
意味します。現在、この市場は重要な市場として考えられていません。
第三に (そして潜在的に最も興味深い)、放送事業者は自らが消費者に直販す
るOTTサービスの内でUHDコンテンツを立ち上げる必要があるということが挙げ
られます。直接つながるということは、直接的な関係で生じるすべての機会と
課題を通じて、放送局が視聴者に対して責任を持つということを意味します。
例えば、独自のOTTサービスを実行している放送局は、広範な種類のプラット
フォームのためのアプリを構築したりサポートしたりするためのすべてのコス
ト、そしてコンテンツを配信するためのCDNのコストを負担します。UHDの場合、
増分費用は当初小規模かもしれませんが (これは所定のアプリ上での同時UHD
の視聴者数が少ないため) 、番組がヒットするとその費用が急速に拡大する可
能性があります。HDサービスであるBBCのiPlayerに関連する大規模なCDN支出
によって示されるように、そのようなコストについてはすでに明白です。予見
可能な将来においては、CDNのコストと容量は人気あるコンテンツのライブUHD
ストリームを提供する実質的な能力を制限します。
放送局にとってより魅力的な短期的な方法は、コンテンツプロバイダとしての
役割を担い、有料テレビ放送やOTTプロバイダのためにUHDコンテンツの制作と
ライセンシングを行うことです。前述したように、これらのプロバイダは予見
可能な将来では、VODベースのUHDコンテンツに焦点を合わせると思われ、放送
局はリニアベースのUHDチャンネルを構築する懸念なしに、UHD形式でのプロダ
クションとライセンシングのために個々の番組を選択することができます。こ
れは明らかに最も抵抗の少ない経路ですが、放送局のブランドにリスクをもた
らし、ホールセールモデル (アグリゲータへのライセンシング) からの小売モ
デル (直接消費者へと販売するアプリ) にシフトしている可能性も考えられる
自社の一般的なストリーミング戦略と矛盾する場合もあるかもしれません。
41
IPTV事業者とベンダー
コンテンツのクリエイタ/所有者
ほとんどの電気通信事業者の場合は、DSLベースのビデオ配信に限定されている
ことから、ネットワーク速度が重要な課題として残されます。DSL接続の大半は、
ダウンストリームではUHD配信で最小限必要な25 Mbps以下しかサポートしてい
ません。UHD VODのユニキャスト配信では、特にライブでないコンテンツであれ
ば、これで問題ありません。コンテンツはダウンロードして、事業者のSTBの
ローカルハードドライブに保存することも可能です。しかし、UHDの広範な展開
には、FTTx に多額の投資を必要とする場合もあります。ファイバーベースの
ネットワークを持つ事業者ははるかに強力な立場あり、積極的な動きを取り、
HDのVODサービスを提供してより自社に有利に活用できるでしょう。いずれの場
合も、電気通信事業会社は、ブロードバンド接続を介してサードパーティのUHD
コンテンツ (Netflixなど) を視聴しようとする顧客に対処する必要があります。
UHDは、コンテンツ所有者にジレンマをもたらします。彼らの従来からの配給者
や主要な収入源 (有料テレビ放送事業者) は、まだUHDコンテンツを提供してい
ません。一方、OTTプロバイダ (AmazonやNetflix等) はUHDをサポートし始めて
います。コンテンツ所有者は、受け身の姿勢でUHDの業界全体の展開を待ってい
るわけにはいきません。代わりに、彼らは次のような具体的な措置を取って、
UHDエコシステムの構築において積極的な役割を果たす必要があります。
• ソリューションの将来性を高めるため、可能な限りUHDでのコンテンツ制作を
サポートするとともに、戦略的代替案を作成すること。これは、UHDに対応す
る映像キャプチャと編集ツールへの本格的な投資を必要としますが、今日行
うコンテンツへの投資からUHDコンテンツでのビジネスの将来性を高める唯一
の方法です。
• UHD技術をサポートするために、既存のエンコーディングおよびストリーミン
グのインフラストラクチャをアップグレードすること。
• スマートフォンやタブレット端末用だけでなく、iSTBやスマートテレビ等を
接コネクティッドTVプラットフォーム向けのアプリケーションを構築するこ
と。UHDコンテンツをストリーミングできる機器に対応したコンテンツ無しに
は、既存のプロバイダは、OTTプロバイダによって作られたコンテンツにUHD
市場全体を譲り渡すことになります。
• 早期のUHD VODテストやサービス展開に参加する機会を見つけ、貴重な経験を
提供したりエンド to エンドのワークフローを検証すること。業界をリード
するベンダーと提携して、すぐにUHDに取り組み始めること。コネクティッド
TVで視聴者数の多い人気番組を1~2つ選択して、UHDプロファイルの提供を行
いましょう。
42
資料 20 – UHDのビジネスモデル:要件 & 課題
UHDのビジネスモデル
右の表は、異なるマーケットがUHDのビジネスモデルをどのように描い
ているかまとめたものです。UHDの黎明期にあり、さまざまなUHDビジ
ネスモデルに影響を与える要因は、リアルタイムで進化していること
にご留意ください。以下はその例です:
• UHD標準規格はまだ決定されておらず、いくつか (ITU-R、HDR、
DVB等) が制覇を目指して競合している。
• ライブUHD番組をプロデュースするコストは非常に高いが、新しい
ソリューションの登場でライブのプロダクションが合理化されコス
トが低減される。
• UHD圧縮技術はまだ初期段階ですが、その効率は今後数年に向上す
る見込み。
• HDR に 使 用 さ れ る 半 導 体 や デ ィ ス プ レ イ 技 術 も 、 継 続 的 に 向 上
している。
• 現在数の少ないUHDコンテンツライブラリは、標準化されたフォー
マットを使用してより多くのUHDコンテンツが作成されているよう
になることで、段階的に時間をかけて向上する。
OTT
DTH
ケーブル
コンテンツ
配信
オペレータによる
制作またはサード
パーティとのライ
センス契約
先行投資なしで、既
存の CDN をギガバイ
トベースで使用
UHD テレビのセッ
CDN とコンテンツのライセンス料
トとネットからテ
金のバランス vs 追加収益とブラ
レビへと接続する
ンドイメージの向上
付属機器
サードパーティか
らのライセンス
契約
DTH インフラをアッ
プグレードするか、
ISP をレンタル。
CDN はサービスの質
の低下を伴うオプ
ションである
オペレータの STB
もしくは
UHD テレビセット
DTH の能力/ISP レンタル/CDN、コ
ンテンツのライセンス契約、およ
び STB のコストのバランス vs 追
加収益、ブランドイメージの向上
オペレータの STB
もしくは
UHD テレビ
DOCSIS 投資、STB、およびコンテ
ンツ ライセンス契約コストのバ
ランス vs 追加収益、より良いデ
ータープランの販売、ブランドイ
メージの向上
ファイバへの投資、配信構造のコ
スト、コンテンツのライセンス契
約、および STB のバランス vs 追
加収益、FTTx へのアップセル、
ブランドイメージの向上
サードパーティか
らのライセンス
契約
アップデートされた
DOCSIS 3.X インフ
ラストラクチャ
機器
ビジネスモデル
サードパーティか
らのライセンス
アップデートされた
DOCSIS 3.X インフ
ラストラクチャ
オペレータの STB
もしくは
UHD テレビ
放送
ネットワークによ
る制作
DTT (地上デジタル
放送) ネットワーク
(新しい周波数、新
たな変調、新しいコ
ーデック等)をアッ
プグレード、オプ
ションとしての OTT
DTT ネットワークと制作コストの
DTT および OTT 向
バランス vs オペレータからの追
け UHD セット、オ
加収益、プレミアム OTT サービス
ペレータの STB
販売、ブランドイメージの向上
目次
スタジオおよびネ
ットワークにより
制作
オプションとしての
OTT
OTT 向け UHD セッ 放映権取得と制作のコストのバラ
ト、オペレータの ンス vs オペレータと OTT 配信か
STB
らの収益
電話通信業者
43
このセクションで提示されている評価を見てみると、主に
ネットワーク・インフラストラクチャの構築に伴う費用不足
が原因で、OTT VODにおいて現在最も説得力のあるビジネス
ケースが提供されています。一方、途切れのないビデオ配信
のためにアダプティブストリーミング構造が必要とされるた
め、QoS保証はされていません。さらに、ライブストリーミ
ングのコンテンツを大規模な視聴者が利用したときには (ス
ポーツイベントのような場合)、UHD OTTの経済的コストは法
外になります。
その逆に、サービスを利用する顧客数が少ないときには、従
来の放送を通じてUHDを配信する、つまり人気ライブイベン
トの配信にユニキャスト・ストリーミングを用いるという現
在主流となっているやり方では経済性な問題が生じます。ユ
ニキャスト・ストリーミングの主な利点は、QoSをDOCSISと
ファイバーネットワーク上で保証できることです。もちろん、
コンテンツ制作はすべてのUHDビジネスモデルにとって決定
的な側面で、UHDコンテンツ制作コストが高すぎる場合には、
消費者がUHDテレビを購入してコンテンツにアクセスするこ
とを敬遠し、手詰まりになります。このため、UHDコンテン
ツのコストは、時間の経過とともに低下しなければなりませ
ん (またそうなるでしょう)。
また、技術革新が明確になりUHDが軌道に乗り始めると、多
様なUHDビジネスモデルが登場することが予測されます。UHD
は現在、優先事項が混沌としている段階であり、それで収益
性を得ることが難しいかもしれませんが、いったんUHDテレ
ビが普及し始めると残りのバリューチェーンも同じ流れをと
り、そのうちに、UHDコンテンツへのアクセスを持たないこ
とが消費者 (料金を支払うサービス利用者) から敬遠される
ようになるでしょう。
44
最後に
UHDへの道は課題が山積みかもしれませんが、その普及は不可避であるというこ
とは疑う余地がなく、この潮流は引き返すことはできません。ビデオのバ
リューチェーンにある企業は、UHDとどう折り合いをつけるかによって繁栄ある
いは衰退していきます。
考察してきたように、UHDでは解像度がHDの4倍に増加するだけでなく、以下が
可能になります。
• より高いフレームレート (つまりスムーズなモーション)
• より高いダイナミックレンジ (つまり一層の明るさと印象的なコントラスト)
• より優れた色深度 (つまり現在HD規格でサポートされているものと比較して
はるかに大きな範囲の色)
• 飛躍的に改善されたオーディオ (前例を見ないレベルのパーソナラル化で強
化された、映像に関連する音の深さと空間)
UHDを主流に取り込むための道筋は、他のすべての新しい技術の場合と同様に機
会と課題の両方によって決定されます。市場の推進要因の優れた活用、市場の
阻害要因への取り組み、UHDの動向に沿った計画化には、エコシステム全体での
連携と協力が必要とされます。最も重要なのは、UHDのエコシステムのために尽
力し、かつ前進するために必要なビジネスと技術のコンセンサスを構築するこ
とのできる、強力なパートナーが業界関係者に必要となるということです。
技術は成熟しつつあります。標準規格も、まとまってきています。そして消費
者動向の軌道も、明らかにされました。今度は、御社がUHDへの移行をどのよう
にすれば最大限に活用できるかを判断する番です。
45
20Tom
Eames, “James Cameron: Avatar Sequel to be Shot in 4K, Partially High Frame Rate,”
http://www.digitalspy.com/movies/news/a552071/james-cameron-avatar-sequels-to-be-shot-4K-partially-highframe-rate.html (accessed March 25, 2015).
注釈
Nakashima, “After Earth among First Movies to be Shot, Shown in 4K,” http://www.ctvnews.ca (accessed
on March 25, 2015).
21Ryan
Greenstein, “Format Wars All Over Again,” Northwestern University Faculty
Blog,, http://www.kellogg.northwestern.edu/faculty/greenstein/images/htm/columns/formatwars.pdf (accessed
April 1, 2015).
22Shane
each of these companies refers to their solutions as ‘UHD 4K,’ they are UHD, not 4K. This is just one
instance of how the two terms are used improperly, most often for marketing purposes.
1Though
Crockett “Dolby Atmos Goes Mobile in the Amazon Fire HDX 8.9 Tablet,” http://blog.dolby.com/2014/09/dolbyatmos-goes-mobile/ (accessed March 17, 2015).
2Brett
Eargle & Chris Foreman, “An Examination of Bandwidth, Dynamic Range, and Normal Operating Levels,”
http://www.prosoundweb.com/article/print/an_examination_of_bandwidth_dynamic_range_and_
normal_operating_levels (accessed on March 20, 2015).
3John
4“Mi
TV”, http://www.mi.com/en/mitv/ (accessed March 19, 2015).
Rayburn, “The Dirty Little Secret About 4K Streaming: Content Owners Can’t Afford the Bandwidth Costs,”
http://blog.streamingmedia.com/2014/01/dirty-little-secret-4K-streaming-content-owners-cant-afford-bandwidthcosts.html (accessed July 18, 2014).
5Dan
6TDG,
unpublished research.
7This
chart is synthesized from multiple public sources including Apple, Google, and Xvid, as well as discussions
with encoding professionals at Divx, Inc.
Young Lee, “LG Posts Weakest Quarterly Profit in Two Years after New-Year Lull,”
http://uk.reuters.com/article/2014/04/23/uk-lg-display-results-q-idUKBREA3M0A020140423. (accessed March 24,
2015).
8Se
9TDG
survey of Amazon, Best Buy, Walmart, and Fry’s websites.
Roettgers, “UHD is TV’s Next Big Thing. So Why is the Industry Divided?” https://gigaom.com/2015/
01/13/uhd-is-tvs-next-big-thing-so-why-is-the-industry-divided (access on March 24, 2014).
10Janko
Clough, “CES 2015: 4K, HDR, Quantum Dot and Dolby Vision Explained,”
http://www.whathifi.com/news/ces-2015-4k-hdr-quantum-dot-and-dolby-vision-explained#AEkz8UxfIsx1eahC.99
(accessed on March 24, 2015).
11Andrew
Press Release, “Warner Bros. Home Entertainment and Dolby Announce Collaboration to Bring Hollywood
Blockbuster Content in Dolby Vision to Home Distribution Partners,”
http://investor.dolby.com/releasedetail.cfm?releaseid=889514 (accessed on March 24, 2015).
12Dolby
13“Coding
Efficiency,” http://en.wikipedia.org/wiki/High_Efficiency_Video_Coding#Coding _efficiency (accessed
March 18, 2015).
14“Overview
of MPEG-DASH Standard,” http://dashif.org/mpeg-dash/ (accessed July 18, 2014).
15Ibid.
16State
of the Internet Report (Akamai, 2014) http://www.akamai.com/stateoftheinternet/ (accessed March 25, 2014).
17Ibid.
23“Lists
of Changes in Star Wars Re-releases,” http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_changes_in_Star
_Wars_re-releases (accessed March 24, 2015).
Spangler, “Sony Gears Up for 4K Ultra HD Internet Movie Service,” http://variety.com/2013/digital /news
/sony-gears-up-for-4K-ultra-hd-internet-movie-service-1200489195/ (accessed March 24, 2015).
24Todd
25Ibid.
26Michael
Greeson, Benchmarking the Connected Consumer (TDG, 2014). Note: given the fact that UHD
non-4K sets are still being marketed as UHD televisions, survey questions include both ‘UHD’ and ‘4K’ to
test awareness and use of UHD TVs.
27Ibid.
press release, “Lack of Awareness and Price Sensitivities Plague Short-term 4K TV Demand,”
http://tdgresearch.com/tdg-lack-of-awareness-and-price-sensitivities-plague-short-term-4K-demand/
(accessed March 24, 2015).
28TDG
Truong, “4K is Already Playing at a Theater Near You, but You Probably Didn’t Even Notice,”
http://www.digitaltrends.com/photography/4K-is-already-playing-at-a-theater-near-you-but-you-probably-didnteven-notice/ (accessed March 24, 2015).
29Alice
Rivington, “Six Marvels of the 4K Revolution at Sony Pictures Studios,”
http://www.techradar.com/us/news/television/tv/six-marvels-of-the-4K-revolution-at-sony-pictures-studios-in-la1146838 (accessed March 24, 2015).
30James
31Ibid.
32“4K
Kicks Off,” http://www2.deloitte.com/global/en/pages/technology-media-and-telecommunications
/articles/tmt-media-predictions-2013-4k-kicks-off-deloiite-tmt-predictions.html (accessed March 24, 2015).
Rayburn, “The Video CDN Business is Flawed, YouTube Subsidizes Video Delivery Bandwidth on the
Net,” http://blog.streamingmedia.com/2013/03/the-cdn-business-is-flawed-youtube-subsidizes-video-deliverybandwidth-on-the-net.html (accessed March 24, 2015).
33Dan
34“Shorter
Television Replacement Cycles Mean Good News For Corning,”
http://www.corning.com/news_center/
features/TV_replacement_cycle.aspx (accessed March 24, 2015).
Ray, “4K Streaming is Leaving Blu-ray in the Dirt,” http://www.techradar.com/us/news/ television/hdtv/4kstreaming-is-leaving-blu-ray-in-the-dirt-1247111 (accessed March 24, 2015)..
35Steve
36Joel
Espelien, Forecasting the 4K Video Ecosystem, 2015-2025 (TDG, 2014) http://tdgresearch.com/report/
forecasting-the-4k-video-ecosystem-2014-2015/ (accessed on March 24, 2015).
18Eighth
37Joel
19
38“The
Broadband Progress Report (FCC, 2012), http://www.fcc.gov/reports/eighth-broadband-progress-report
(accessed March 24, 2014).
Ibid.
Espelien, TV Gets Personal: Trends in Mobile Video Viewing, 2015-2025 (TDG, 2015)
http://tdgresearch.com/report/tv-gets-personal-trends-in-mobile-video-viewing/ (access March 24, 2015).
World’s First Smartphone to Feature Dolby Atmos,”
http://www.dolby.com/us/en/categories/smartphone.html (access March 24, 2015).
46
用語集
オーディオレンダリング – 複数のタイプのオーディオ再生システムを介して既定のオー
ディオ形式を再生するために、DSPモデリングを利用したプロセス。再生システムには、
数あるなかでも波面合成 (WFS) といった技術やバイノーラルサウンド等を利用すること
ができる。自宅でのイマーシブ・オーディオのリプロダクションは、ヘッドフォン等のさ
まざまな再生システムへオーディオ体験を提供できるようにしてあるため、オーディオレ
ンダリングに大きく依存する可能性がある。
チャンネルベース・オーディオ – 特定の2Dまたは3Dの物理的な配置でスピーカーに直接
レンダリングされることが意図されているオーディオ信号のセット (例えば、22.2ch、
7.1+4ch、5.1ch、ステレオ等)。
カラースペース – 色を特定の方法で組織化したもの。物理的な機器のプロファイルと合わ
せて、アナログとデジタルの両方で、再現可能な色を表すことができる。カラーモデル
(sRGB、Rec. 709等) は、色を表す抽象的な数学的モデルである。ひとつのカラーモデルと
参照となるカラースペースとの関係において、特定のマッピング機能を追加することで、そ
の参照カラースペース内に色域として知られる限定された「占有領域」が設定される。所定
のカラーモデルでは、これによって表せるカラースペースが定義される。カラースペースを
定義する場合、通常使用される参照基準は、CIELABまたはCIEXYZのカラースペースで、これ
らは特に平均的な人が見ることができるすべての色を包含するように設計されている。
CIE 193 – 人間の視覚で知覚された色と、可視電磁スペクトル内の物理的に純粋な色の
関連性。一般的には、カラースペースとして、RGBまたはXYZのいずれかで表記される。
色体積 – 機器でアクセス可能な色域は、明るさに依存する。したがって、完全な色域は3D
空間で表現されなければならない。3次元カラースペースでは、異なる輝度レベルを示す色
域を定義する。
カラリメトリ – 色に関する人間の知覚を記述するために使用される、科学技術分野
での用語。
ダイナミックレンジ – 画像のもっとも明るい部分と暗い部分との比。具体的には、この用
語は明度の比に関連し、電子媒体に人間の視覚をマッピングするために不可欠な要素である。
色域 – 所定のカラースペース内、またはテレビ画面等の特定の出力装置のカラースペー
ス内で、特定の状況において正確に表現できる色の範囲全体。色域がより大規模または幅
広いほど、より濃い飽和色が利用できる。
GOP (Group of Pictures) – 映像の圧縮が行われた後の画像の配列を指す。GOPでは、圧縮
後の配列と作成されたフレームのタイプ (イントラまたは中間) を示す。
カラーグレイディング – 制作者、監督、カラリストがそのストーリーに適切であると感
じるイメージと一致するように、映画画像、ビデオ画像、または静止画像の色を変更した
り強調したりする処理。劇場用映画、映像配信、あるいは印刷物のモダンカラー補正は、
一般的に色調補正パッケージソフトウェアでデジタル処理によって行われる。
HDCP (High-bandwidth Digital Content Protection) – 高帯域幅デジタルコンテンツ保護
のことで、セットトップボックス (STB)、パーソナルビデオレコーダ (PVR)、ゲーム機、画
面の間で実装されるコンシューマ用デジタルメディアの接続を保護するためにIntelにより
開発された一般的なコピー保護メカニズム。
47
HDR – ハイ・ダイナミック・レンジ画像 (HDRIまたはHDR) は、標準的なデジタル画像よ
り大きな範囲の輝度を再現するために画像化で使用される技術の集まり。その目的は、視
覚的なシステムを通じて、肉眼で見たものに類似した範囲の輝度でよりリアルに提示する
ことである。HDRは、明暗の差が大きくかつ広範な色域を使ったコンテンツの作成と画像
の配信を可能にする。例えば、今日典型的なテレビは約100 nitのピーク輝度を有するが、
HDRテレビのピーク輝度は、約1,000 nitである。
イマーシブ・オーディオ – 方位角、仰角および距離の面から音源定位の高空間分解能を
可能にし、より高い音包感を提供するオーディオシステム。これらの機能は、可聴エリア
でサポートされる。このようなシステムは、直接スピーカーフィードを表すとは言えない
が、その代わりに、全体的なサウンドフィールドを表すことができる。
インターレース形式 – 2つのフィールドに画像を分割してシーン内の動きを追跡する能
力を保持しつつ、信号の帯域幅を低減する方法。フィールド1つは偶数番号のラインで構
成され、もう一方のフィールドは奇数番号のラインで構成されている。フィールドは順次
スキャンされ、表示される。このような技術を採用することで、時間的フレームレートが
偶数フィールドの後に奇数フィールドを1つ更新することによって維持された、祖調整な
がらアナログ信号帯域幅の低減が達成できる。
Nit (ニット) – 光強度の尺度で、平方メートル当たり1カンデラに相当。オフィスビル
内では、周囲の明るさが数百nitになる。晴れた空 (太陽を見ていない場合) は、約
10,000 nit。
オブジェクトベース・オーディオ – パラメトリック・メタデータを含むオーディオ信号
で、利用可能なスピーカーの数および位置とは無関係に、指定された空間位置でレンダリ
ングされることが意図されている音源を組み合わせて表す。オーディオのオブジェクトは
また、ダイアログエンハンスメント、代替言語、あるいはその他のパーソナル化の目的で、
任意のまたは調整可能なオーディオ要素のために使用することができる。オブジェクト・
メタデータはまた、音量、調整制約、均一化といった、オーディオ信号の他のパラメータ
を制御することができる。
プログレッシブ形式 – 垂直走査が画面上部の最初の行から開始され、画面下部の最後の
ラインまで順に行われる画像フォーマット。
ProRes – 最大で5Kまでの解像度を扱う、Appleから出されたプロダクション向け圧縮
コーデック。
Rec. 709 – 公式にはITU-R BT.709として知られるRec. 709は、走査 (インターレースと
プログレッシブ)、アスペクト比、クロミナンス (色差) のサンプリングに関する技術的
なパラメータを定義。HD 1080 x 1920形式を定義するもの。
Rec. 2020 – 公式にはITU-R BT.2020、 3840 x 2160 (4K) または7680 x 4320 (8K) と
して知られるRec. 2020は、16:9およびスクエアピクセルのアスペクト比を有するプログ
レッシブスキャンフォーマットである。HD解像度を超えた2つ (4Kと8K) を定義する。
WCG (Wide Color Gamut) – 「広色域」の頭字語で、非拡張HDよりも広い範囲の色を表す
映像フォーマットの説明に使われる。
48
Dolby®社について
Harmonic®社について
The Diffusion Group™について
Dolby Laboratories (NYSE:DLB) は、映画館、
家庭、職場で、エンターテイメントやモバイル
機器のコミュニケーションに変革を起こすオー
ディオ、映像、音声技術を創出し続け、50年近
くにわたり、さらに鮮やかでクリア、そしてパ
ワフルな視覚と音の体験をDolby®でお届けして
きました。
Harmonic は 、 新 た に 出 現 す る テ レ ビ お よ び 映 像
サービスのために映像配信インフラを提供する世
界的リーダーです。市場をリードする技術革新、
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ル・コスト・オブ・オーナーシップ) を提供して、
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客様が素晴らしい映像体験を制作、配信、そして
そこから収益化されることを可能にします。
TDGリサーチ社は、テクノロジとメディアに関する
消費者の行動に影響を及ぼす数々のシフトについて、
実用的な情報を提供しています。TDGリサーチ社の
市場調査およびアドバイザリサービスにより、技術
ベンダー、メディア企業、およびサービスプロバイ
ダの方々は、場所や時間を問わず、消費者がどのよ
うにブロードバンドメディアにアクセスし、ナビ
ゲート、共有、消費しているのかを理解していただ
けます。
詳細はwww.dolby.comをご覧ください。
詳細はwww.harmonicinc.comをご覧ください。
詳細はwww.tdgresearch.comをご覧ください。
UHDに関するHarmonicとの情報交換にご参加ください。
Harmonicのブログページ
UHDエンコーディング & 配信
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