第13回 時間栄養学

第13回 時間栄養学
視交叉上核
時計遺伝子
概日リズム
日周リズム
健康日本21中間評価実績値
目標項目(指標の目安)
悪
化
適正体重を維持している人
の増加
(肥満者等の割合)
対
象
ベースライン値
中間実績値
*40~74歳代男性のMS
>50%
*40~74歳代女性のMS
20%
目標値
20~60歳代男性の肥満者
24.3%
29.0%
15%以下
20~60歳代女性の肥満者
25.2%
24.6%
20%以下
男性
女性
8202歩
7282歩
7575歩
6821歩
9200歩
8300歩
成 人
292g/日
267/日
350g以上
悪
化
日常生活での歩数
悪
化
野菜の摂取量の増加
(1日当たりの平均摂取量)
悪
化
カルシウムに富む食品の摂
取量の増加(成人)
(1日当たりの平均摂取量)
牛乳・乳製品
107g/日
101g/日**
130g以上
豆 類
76g/日
65g/日**
100g以上
緑黄色野菜
98g/日
89g/日**
120g以上
朝食を欠食する人の減少(欠
食する人の割合)
中学、高校生
6.0%
6.2%
0%
男性(20歳代)
32.9%
34.3%
15%以上
男性(30歳代)
20.5%
25.9%
15%以下
悪
化
厚生労働省 平成18年10月17日 *平成18年5月8日、MS=メタボリックシンドローム+予備群
朝食欠食率の年次推移は悪化
性・年齢階級別、20歳以上
男
(%)
30
(%)
女
30
20歳代
20
20
20歳代
30歳代
10
10
30歳代
0
0
1975 1985 1990 1998 2002
1975 1985 1990 1998 2002
年 度
年 度
国民栄養の現状(2005)を改変
朝食の欠食率の年次推移
平成16年国民健康・栄養調査
一
時
減
上
昇
男女年齢別朝食欠食率(一人所帯に多い)
平成16年国民健康・栄養調査 (欠食は菓子や錠剤のみを含む)
朝食を毎日食べる人は45.0%で半数以下
2004年4月に社会人となる人、19歳から29歳まで
全 体
45.0
30.0
男 性
44.0
30.0
女 性
46.0
親と同居
それ以外
0
20
40
100(%)
毎日
週3~4回
12.0
16.0
25.8
36.9
10.0
14.0
30.0
56.5
26.3
15.0
18.4
60
週1~2回
8.0
12.9
4.8
18.4
80
食べない
Kellog's Update(2000)を改変
日米中の高校生就寝時間
45
40
日本
35
頻度(%)
30
25
米国
20
15
中国
10
5
2005年3月 男女差少ない
就寝時間
答
無
回
ぎ
過
2時
2時
1-
1時
0-
時
23
-0
3時
22
-2
21
ー2
2時
21
時
前
0
日本人の睡眠時間の推移 (総務庁)
世
界
一
短
い
*
化
粧
入
浴
*国際比較は総務庁「統計2006年7月
号」
年齢階級別・健康習慣点数別死亡率
9.5
年
間
の
死
亡
率
守られる
健康習慣点数*
調査時の年齢(男性)
・標準体重の維持
・適度な運動
・非禁煙
・適量の飲酒
・朝食の習慣
・間食の制限
・十分な睡眠
学校以外の勉強時間(塾等を含む) 男女差は少ない
50
日本の高校生の約半数は帰宅後に勉強しない
45
40
日
本
30
米
国
25
20
15
中
国
10
5
答
無
回
4時
間
以
上
間
時
3.5
3時
間
間
時
2.5
間
2時
間
時
1.5
間
1時
間
時
0.5
間
0
0時
頻度(%)
35
勉強時間
日本青少年研究所,「高校生の学習意識と日常生活」, Available from
<http://www1.odn.ne.jp/youth-study/reserch/2005/shukei.pdf>,
(accessed 2007-12-11)
日本の青少年が睡眠不足を感じている割合
(日本学校保健会:平成4年度児童・生徒の健康状態サーベイランス事業報告)
(%)
60
男子
女子
50
40
30
20
10
0
全 体
小3・4年生
小5・6年生
中学生
高校生
グルコースの投与と交通事故
朝食は脳を活性化して事故を防ぐ
6
Keul, J. et al. Akt. Ernaehr. 7:7-14 (1982)
(
事
故
率
相
対
値
)
*
5
4
*運転シミュレータを用いて算出した運転過誤指数
対照
(Fahrfehlerfaktor)が本来の正確な表現。
3
2
グルコース投与
1
0
35
70
110 (km)
朝食を摂らないと交通事故を起こしやすい。
グルコースを与えれば集中力が保たれる。
朝食摂取と成績(全寮制の自治医大生を対象)の相関
(位)
100
朝食摂取者
朝食欠食者
80
平
均
順
位
60
離島・辺地出身
者の偏差値は国
立大学よりも低
いが、規律正し
い教育後の人格、
知識、技能は抜
群となる。
40
20
0
1978年
1979年
香川靖雄ほか, 「朝食欠食と寮内学生の栄養摂取量、血清脂質、学業成績」, 『栄養学
雑誌』, 38(6), 1980.11 p.283-94
朝食をとるかどうかと各教科の正答率
中
学 校
平 均 正 答 率 (%)
朝食をとるか
国
必ずとる
語
81.5
社
会
73.3
80.5
数
学
67.7
71.9
理
科
69.6
66.1
英
75.4
68.3
73.9
たいていとる 76.8
66.4
60.0
63.1
68.1
とらないことが多
い
62.2
54.8
59.0
63.1
73.5
72.8
とらない
71.9
61.7
60.9
54.1
53.0
58.8
58.5
語
62.3
61.1
東京都教育委員会,「『学習に関する意識調査』結果の分析」, Available from
<http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060608s/c_bunseki.pdf>, (accessed
2007-12-11)
朝食をとるかどうかと各教科の正答率
小 学 校
朝食をとるか
国
必ずとる
80.5
語
社
会
82.9
79.6
算
数
77.6
82.0
理
77.4
76.5
76.5
たいていとる
74.5
77.0
70.5
71.9
とらないことが多
い
71.3
73.5
66.4
68.7
とらない
69.0
70.6
72.5
69.9
65.6
63.5
科
68.3
67.0
東京都教育委員会,「『学習に関する意識調査』結果の分析」, Available from
<http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060608s/c_bunseki.pdf>, (accessed
2007-12-11)
朝食摂取と各学科の児童・生徒の学業成績の
関係
国立教育科学研究所調査(文部科学省、平成
16年)。
朝食欠食児は
全学科目で約
20%の低学力
体育においても朝食欠食は有害
朝食摂取状況別20メートルシャトルランの折り返し数
平成17年 文部科学省体力運動能力調査結果
(注):「食べる」とは、朝食を「毎日食べる」群で、「食べない」とは
朝食を「時々食べない」者と「毎日食べない」者の群。
女子(男子でも類似結果)
(6歳~17歳)
10時以降に就寝する子どもの割合(単位%)
1歳 6月
2歳
3歳
4歳
5歳
1980年
25
29
22
13
10
1990年
38
41
36
23
17
2000年
55
59
52
39
40
(日本小児保健協会「幼児健康度調査報告書」より)
子供の脳はいかにして人間の脳となるか
① 生後4か月までの時期(昼夜の区別ができるようにな
る)に活性を増す神経系は、主として前脳辺縁系を発達さ
せ、母子関係・環境順応・記憶機能・大脳左右機能分化
に必要 健全な母子関係が人格に必要
② 4か月から幼児期初期(昼寝が2回から1回になる)に
活性を増す神経系は、認知機能統合に関与する連合野
の発達に必要
親の概日リズムの乱れで性格異常
③ 幼児期中後期(昼寝を少なくして昼夜二相性の睡眠に
なる)に活性を増す神経系は、非運動系大脳基定核を介
し、社会性・動機づけの発達に必要 → 反社会行動
瀬川昌也, 「子どもの脳はいかにして人間の脳となるか」, 『遺伝』, 58(3), 2004.5 p.58-65
子どもの心の健康と食生活
食生活平均点
34.2
33.8
B
29.9
29.1
C
0
10
20
A
10.3
B 0.0 3.2
B
11.2
0.8
1.2
%
50 点
40
17.0
0
10
相談できる先生がいる
A
10.2
C
11.3
D
11.3
11.9
E 0.0
0
26.8
A 0.0
15.8
20
30
50 %
6.5
0
20
40
38.1
47.6
80.3
80.5
E
30
%
0
20
40
60
80
100
%
8.4
11.2
B
17.8
D
60
16.1
13.8
A
10.1
88.5
66.0
ぼんやりする
16.3
C
17.0
20
40
73.2
37.6
E
40.4
7.4
B
3.5
10
38.1
27.8
めまいがする
24.1
B
24.2
D
12.4
E
30
25.8
C
5.0
D
22.6
24.1
E
A 0.0 3.4
C
26.6
26.9
D
すぐカッとする
いじめている
38.0
36.0
A
男
女
80
C
19.8
22.2
D
21.6
18.8
75.0
E
100 %
66.0
0
20
40
60
80
%
心の健康得点が高いほど(健康であるほど)
朝食を食べている
朝 20.0
食
を
食
べ
な
か 10.0
っ
た
者
の
割
合
(
% 0.0
)
高い
やや高い
やや低い
低い
15.8
14.2
12.5
12.0
11.8
9.9
8.2
5.2
4.9 5.1
10.6
9.6
7.1 7.1
4.5
2.4
中2男子
中2女子
高2男子
高2女子
文部科学省 心の健康状態と生活習慣の関連実態調査
(2003年)
食事パターンによる食事誘発性熱産生の比較
60
50
(kcal)
ごはん食+ごはん食
ご飯は熱が出て肥りにくい
p<0.1
欠食+ごはん食2食
高脂肪食+高脂肪食
40
欠食+高脂肪食2食
30
p<0.001
20
10
0
午前
午後
合計
森谷敏夫ほか, 「平成17年度 ごはん食基礎データ蓄積事業研究報告書」, Available from
<http://morichan.jinkan.kyoto-u.ac.jp/general/rice2.pdf>, (accessed 2007-12-11)
朝食を増して夕食を減らすと血糖が正常化する。
日本人の夜型生活が糖尿病増加の1因
足立香代子, 「インスリン非依存性糖尿病患者における簡便な栄養指導方法と指導継続期
間の検討」, 『栄養学雑誌』, 56(3), 1998.6 p.156-170
朝食、昼食後の血糖値の変化
160.0
朝食後の血糖値
mg/100mL
140.0
朝食を摂食した人の
昼食後の血糖値
朝食を欠食した人の
昼食後の血糖値
120.0
100.0
80.0
60.0
0
50
100
分
150
200
朝食を摂食しないで昼食を摂ると、
血糖が急に上がって、肥満や糖尿
病の原因となる
秦艶萍ほか, 「朝食欠食が昼食後の血糖値変動に及ぼす影響」, 『女子栄養大学紀要』, 34,
2003.12 p.33-9
朝食を摂ってもその質が問題: 主菜・副菜・汁の揃った朝食は9%
米飯の方がパンよりインスリン上昇が少なく、中性脂肪も増加が少ない
朝食の糖質量はパン、米と
も79g。10人の被験者にクロ
スオーバーで確認
朝食後30分
エルゴメーターで50%VO2
Ishii, K. et al. “A rice diet is associated with less fat synthesis/accumulation than a
bread diet before exercise therapy” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 51(5), 2005, 349-54
室傍核
松果体
光による
脳の覚醒
松果体から出
るメラトニンで睡
眠が起こる
眼球
網膜
日周リズムは視
交叉上核が光と
食事で決める
視交叉上核
脊髄(胸髄)
上頸部交換神経節
中間外側核
香川靖雄. 新朝食のすすめ.
女子栄養大学出版部, 2007, 127p.
主要時計遺伝子による概日リズムの発振機構
作用阻害
Clock
1日周期
Bmal1
PerとCryは1日周期で
増減(振動)する振り子
PerとCry
の濃度の
増減
Clock
Per
E-ボックスで発現促進
Cry
朝の光、朝食による時
計の針の位置の修正
Bmal1
Eボックス
Clock
数百種の代謝
酵素遺伝子のE
ボックス活性化
1日周期
で代謝を
制御する
Bmal1
Eボックス
乱れによる肥満、
生活習慣病
「時計遺伝子」特集, 『週刊医学のあゆみ』, 216(3), 2006.1 p.199-242
香川靖雄. やさしい栄養学.女子栄養大学出版部, 2006, 174p.
末梢時計の概日リズム形成機構
中枢時計
光
自律神経系
内分泌系
朝食
末梢時計
制限給餌の末梢時計への影響
-2
自由摂食
中枢時計
末梢時計
0
-1
絶食
1 ・・・
制限給餌 (5:00-9:00)
14 (日)
睡眠を支配する
松果体
視交叉上核の
時計遺伝子が
作る概日リズム
松果腺のメラトニン分泌
夕方に起こる
睡眠
米国は国民の活力向上のため、学校朝食を全州で始めた
学童の健康増進、学業成績の向上、非行減少を毎年詳細に確認している。
学校朝食シンポジウムにおけるTim Johnson上院議員の講演
国際競争に打ち勝つために我々は教育された生産的な労働力を持たねば
ならない。そのためには学童の教育が必要である・・・。国力増進のための食
事。
学校朝食は米国の学童の育成と教育の最良の方法の一つである
Remarks to the Symposium on Breakfast and Learning in Children
Senator Tim Johnson
Meals for Achievement
April 22, 1999
However, for the United States to compete effectively in the world, we must have an educated
and
productive workforce. In order to have an educated and productive workforce, We must prepare
our
children to learn. In order to prepare our children to learn, they must be well nourished, and that
begins
with a good breakfast.
School
breakfast is one of our nation’s best tools for the advancement of our
schoolchildren.
http://www.fns.usda.gov/cnd/Breakfast/Symposium/Johnson.htm
朝食習慣を身につけるには:エンパワーメント
指導者は朝食欠食者の考えを尊重、なぜ?自立支援。
自己管理に必要な知識、技能をあたえる。早寝、朝の
光。
不登校などの重症者は発達小児科等で専門治療。
可能な目標を設定、結果に欠食者が責任を持つ。
一歩達成できたら誉めて自己効力感を高める。
朝食摂取の障害があれば原因を発見して回避法を。
持続には日常活動への習慣化が重要です。
特に子供の朝食には家族の協力が不可欠です。