資料1-1① まちづくり会社の特別認定制度について 1.まちづくり会社の現状と中心商店街区域再生のための存在意義 中心商店街区域の再生には、再生に向けた合意形成と、機動的、かつ着実な事業の遂行 力が求められる。 このため、先進地域では、機動的な経営判断と継続的な事業活動のできる株式会社形態 の組織としての「まちづくり会社」が民間主導で設立され、実質的に機能する経営体制の 下、必要な人材を確保し、不動産所有者等と交渉し、空き店舗の土地を借り集め、資金調 達して施設を整備し、周辺店舗等を誘致しテナントマネジメント等を行っている。 *まちづくり会社とは、広く、中心市街地の活性化に関連する事業目的を持つ会社形態の組織を 指している。よって、i)中心市街地活性化法第 15 条第1項第1号ロの「良好な市街地を形成す るためのまちづくりの推進を図る事業活動を行うことを目的として設立された会社であって、 政令で定める要件に該当するもの」 、ⅱ)同法第 7 条第 7 項第 7 号の「商工会、商工会議所又は 中小企業者が出資している会社であって、政令で定める要件に該当するもの(特定会社) 」、ⅲ) 旧中心市街地活性化法の「認定構想推進事業者」 (TMO)(同じ会社が以上の複数の会社となりう る。) などが、その事業内容次第で、まちづくり会社に含まれうる。(以上で、 「政令で定める 要件」はⅰ)及びⅲ)では、市町村の出資が総資本の3%以上の株式会社であることとされ、ⅱ) では、大企業の有する議決権の割合が二分の一未満であること等とされている。) *平成 18 年8月末現在で旧中心市街地活性化法に基づく旧TMO構想の認定を受けたTMOは 413 あり、うち株式会社形態のもの(特定会社TMO)は、124 社(民間調査機関調べ) 。また、 改正後の中心市街地活性化法第 15 条第 1 号に基づく中心市街地活性化協議会の都市機能の増進 を担う者とされているものであって、特定会社TMO以外のものは、平成 20 年3月現在で 66 社。 このように、まちづくり会社が、地域から不動産の利用権を集め、資金を調達して、中 心商店街区域の再生事業を展開するためには、合理的な経営判断の下、業務を着実に遂行 し、地域に貢献する会社であるという十分な信頼性を確保することが必要である。 2.まちづくり会社の事業目的・機能 1)事業目的 ・商業・サービス業集積区域の資産価値の向上 ・当該区域の商業・サービス業の成長 ・地域コミュニティ活動の活性化 等 1 2)機能 このとき、まちづくり会社が備えるべき機能としては、以下のようなものが挙げられる。 こうした機能を果たすことで、中心商店街区域のエリアマネジメント・タウンマネジメント の実施主体として活動する。 ⅰ)プランニング機能 区域の再生についての意見の集約・ビジョンの策定、商圏分析・マーケットリサーチに基 づく施設規模・店舗・業種の構成、配置計画を策定するとともに、再生方針や事業着手の順 位の検討・意見集約を行う機能。 ・事業活動を行う区域を定める。 ・適切な商圏分析・マーケットリサーチに基づき、まちづくりの事業計画を定める。 ・株主(不動産所有者、住民、商業・サービス業者等)の意見を集約して、まちづくり の方向性についての合意形成及び協力体制の構築を行う。 ・街並みイメージの統一・維持のため、地区協定の締結、地区計画の提案、デザインコ ードの策定等を実施する。 ⅱ)デベロップメント機能 事業に着手する区域について、不動産の利用権の集約化や再生方針に基づく具体的な事業 計画を策定し、事業化を進める機能。 ・ 空き店舗等の不動産所有者等と信託契約、定期借地契約等を締結して、土地・建物の 利用権を集める。 ・ 敷地の付属物、建物等を改装、改築する。 (コンストラクションマネジメント) ・ この場合、建物は自ら改築し、自己所有とする。ファイナンスの必要に応じて、建物 を信託し、受託者から一元的な管理委託を受ける。 ・ 区域内の大型空き店舗、空き地等の再生を行う。 ・ 上記に必要な資金を出資及び融資により確保し、償還する。 ⅲ)マネジメント機能 事業化のための資金調達や資産管理、施設についてのテナントマネジメント、事業区域を 中心とした街のマーケティングを行う機能。 ・ 不動産を運用し、資産価値を向上する(アセットマネジメント)。 ・ 不動産を管理・運営する(プロパティマネジメント)。 ・ 建物を維持・管理する(ビル・マネジメント)。 ・ 適切な賃貸借人(テナント)を誘致し、建物を貸し付け、適宜、テナントの入れ替え を行う(リーシングマネジメント) 。 ・ 各種事業を行い入居テナントの営業を支援する(テナントマネジメント) 。 ・ 家賃を回収し、必要な税務・会計処理を行い、地代、信託配当を計算し、賃貸人、受 益者に支払う。 ・ 広場、公園、公開空地等を管理し、これを活用したイベント等の事業を行う。 ・ 商店街振興組合、大型店等と来街者の増加、販売促進のため広告・宣伝、来街者への 2 サービスイベント等の共同事業を行う。 ・ 景観、街並みイメージの維持とデザインコード等の遵守を確保する活動等を行う。 3.組織体制のあり方 1)地域関係者の出資と経営体制の強化(ガバナンスの確立) こうした機能を果たして、事業を円滑に実施するためには、商業者はもとより、地元自治 体、商工会議所、商店街振興組合、百貨店、大型ショッピングセンター、不動産所有者、住 民、サービス事業者、公共交通機関事業者等と連携を図りつつ、支援や協力を仰ぎながら事 業を実現していく必要がある。このため、合意形成能力、共同事業の遂行能力の高い組織を 構築することが必要である。 具体的には、株主総会がエリアマネジメント・タウンマネジメントのための意見集約・合 意形成の機能を果たすため、株主に以下のような地域関係者を含む。 ・ 事業区域の主要な不動産所有者等 ・ 事業区域に係る商店街振興組合等の主要構成員メンバー ・ 百貨店等の主要大型店経営責任者 株主以外の関係者を巻き込むため、株主総会以外の会議体を設けることもある。 また、取締役会は、常勤の実質的に経営に携わる人材及び経営チェック能力のある社外取 締役から構成される必要がある。 2)事業遂行力の確保 再生手法を実現するために、例えば、以下のような業務は、専門人材を確保又は専門会社 へ委託して、外部の専門性を活用する必要がある。 ・ 商圏分析、マーケットリサーチ ・ 不動産・金融関係の法務・税務 ・ 契約実務 ・ 信託実務 ・ 都市デザイン設計、プランニング設計 ・ テナントリーシング ・ テナントマネジメント ・ ファイナンスのアレンジ 等 3 まちづくり会社の事業推進体制・機能の強化 まちづくり会社が事業遂行体制を整備し、事業計画を策定し、国の認定・支援を受け、中心商店街区域の再生事業を実施。 中心市街地活性化協議会 中心市街地活性化基本計画 地方自治体 商工会議所 商店街振興組合 支 援 区域内の百貨店・ ショッピングセンター 地権者 区域内の商業・ サービス業者 公共交通機関 国 住民 ・中活法の特定民間中心市街地活性化計画の認定 (まちづくり会社の事業推進体制及び各種事業計画 の認定と公的支援) ・人材育成支援 認定、支援 建物権利者 ノウハウ提供 専門家派遣 出資 全国支援組織 (専門家のネットワーク) 中心市街地 認定まちづくり会社 区域のエリア&タウンマネジメント 株主総会 不動産の所有と利用の分離 取締役会 人員体制の確保 ガバナンスの確立 人材確保 デベロッ プメント機能 不動産利用権集約化事業 空き店舗改築・改修 プランニング機能 事業遂行 ・地域の商圏分析と需要把握 商業住居等複合施設整備事業 大型空き店舗・空き地再生活用事業 ・店舗・業種構成・配置計画 ア セッ トマネジメント・プロパティマネジメント機能 ・再生区域の設定(選択と集中) 区域イメージ統一事業 ・区域の意見集約・ビジョン作成 テナントマネジメント事業 ・各種事業計画策定 街のマーケティング事業 4 再 生 事 業 再生区域 空 空 シャッター通り 空 大型 空き店舗 空 資金調達 *中心市街地に複数の認定まちづくり 会社とその再生区域が設定可能 4.まちづくり会社の事業計画の認定基準の方向 例えば、現行の中心市街地活性化法第 40 条第1項の特定民間中心市街地活性化事業計画 の主務大臣認定制度*を活用して、まちづくり会社の事業計画を主務大臣が特別に認定する (認定まちづくり会社制度)ときの認定基準としては、例えば以下のようなことが考えら れる。 *特定民間中心市街地活性化事業とは、中心市街地活性化法第7条第 10 項で、 「中小小売商業高度 化事業、特定商業施設等整備事業及び特定事業であって民間事業者が行うもの」とされている。 本事業は、認定中心市街地において民間事業者が行う、商業施設、商業基盤施設等を整備する事 業等であり、これを行おうとする者は、同法第 40 条第 1 項に基づき、中心市街地活性化基本計画 に記載された同事業の計画であって、中心市街地活性化協議会の協議を経たものについて、その 主務大臣の認定を申請することができる。認定された同事業計画に対しては、同法上、中小企業 基盤整備機構が行う債務保証等の支援策が設けられている。 (1)経営体制・事業遂行力に関する基準 ・事業目的を達成するために実質的に機能する経営体制等であること(株主構成、常勤取 締役の人数と専門性などを考慮) ・必要となる専門人材、専門機関等を確保していること(雇用、委託等) ・まちづくりの方針を表明していること ・一体性があり事業実施可能な範囲に限定した区域を設定していること (2)事業内容に関する基準 ・商圏分析等の十分な客観データに基づく収益性の確保された事業計画であること ・空き地、空き店舗等、低・未利用の複数の又は広い土地若しくは建物を賃借等して、一 括で利用して、建物の改修や、商業施設、集合住宅、広場、駐車場等の整備をすること で、不動産の利用効率を高める事業であること。 ・周辺の街並みと調和して、回遊性を高める施設を整備するものであること。 ・整備した商業施設等を商業者、サービス業者等に賃貸する等によりテナントミックスを 実施し、一括で管理して、テナントマネジメントを行う事業であること。 一方で、合意形成能力や、共同事業実施能力を高めるため、認定まちづくり会社を中心 市街地活性化協議会の構成員とする、認定中心市街地活性化計画にその事業を記載して位 置づけを明確化するなどの対応が考えられる。ただし、これらの対応は、一つの中心市街 地活性化地域に複数のまちづくり会社とその再生区域が存在することを妨げるものではな い。 *中心市街地活性化法第40条第4項では、特定民間中心市街地活性化事業計画の認定の基準とし て、一 特定民間中心市街地活性化事業の目標及び内容、実施時期が、中心市街地活性化基本方 5 針のうち、中小小売商業高度化事業、特定商業施設等整備事業その他の中心市街地における商業 の活性化のための事業及び措置に関する基本的な事項等の内容に照らして適切なものであること。 二 当該事業が確実に実施される見込みがあること。 四 当該事業者が中小小売商業高度化 事業を実施する場合にあっては、当該中小小売商業高度化事業の適切な実施を図るために必要な 要件として政令で定めるもの(出資者の2/3が中小企業者等)に該当すること、及び当該事業 者が、現に事業の用に供されていない土地又は店舗用の建物の相当数の所有者等の協力を得て行 う取組であって、当該中小小売商業高度化事業の効果的な実施に資するものを行うと見込まれる こと。 などが規定されている。 6
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