工業力学 宿題 解説・解答例 担当: 茨城大学 工学部 知能システム工学科 井上 康介 2015 年度版 6 剛体の運動 T 1. [Newton-Euler 法] Fig.6.1 に示すように,水平な地面に 置かれた直径 1 [m],質量 200 [kg] の円柱に巻き付けた ワイヤを鉛直上方向に 20 [kgf] の力で引き上げたところ, mg R F’ 円柱は地面との滑りを生じることなく転がり始めた.こ のときの加速度を求めよ. Fig. 6.2 円柱が滑らずに転がることによる拘束条件は 20 [kgf] a = rω̇ (6.3) である. 式 (6.3) を式 (6.2) に代入し,両辺を r で割って, Fig. 6.1 T − F = 考え方 これに式 (6.1) を代入し, 教 科 書 6.6 節「 剛 体 の 平 面 運 動 の 方 程 式 」を 参 照 . Newton-Euler 法を素朴に適用する. T − ma = まずは円柱が受ける力,すなわちワイヤ張力,重力,垂 直抗力および摩擦力をもれなく列挙する.次に運動方程 式,角運動方程式,滑らない条件式の 3 つの拘束条件を 定式化する. 1 ma 2 よって a= 摩擦力の方向が右向きか左向きかについては,円柱表面 が右向きに滑ろうとするのを妨げる方向なので,左方向 と分かる.ただし右向きに定義したとしても値がマイナ スになるだけなので問題はない. 2 2 T = · 20g 0.653 [m/s2 ] 3m 3 · 200 2. [回転体のつりあい] Fig.6.3 に示すように,両端を軸受 けで固定された軸があるとする.軸の右側に 2 つの質量 1 [kg] のおもりが図に示す位置で取り付けられており,左 側には質量 2 [kg] のおもりを取り付けるとする.この軸 解答例 が静的および動的なつりあいとなるとき,左側のおもり の取り付け位置,r および h を求めよ.ただし図中の寸 法の単位は [cm] とする. 10 円柱質量を m (= 200) [kg],半径を r (= 0.5) [m],ワイ ヤ張力を T (T = 20g) [N],円柱の中心軸まわりの慣性 モーメントを I = mr 2 /2 [kg m2 ] とする.円柱中心の加 速度を水平左向きの a [m/s2 ],円柱の角加速度を反時計 回りに ω̇ [rad/s2 ] とする. r 20 40 Fig.6.2 に示すとおり,円柱が受ける力は,円柱右側面に おいて鉛直上向きに作用するワイヤ張力 T ,円柱中心に おいて鉛直下方向に作用する重力 mg ,接地点において 鉛直上向きに作用する垂直抗力 R,接地点において水平 左向きに作用する摩擦力 F である. h 40 10 円柱の運動方程式は F = ma, (6.1) Fig. 6.3 角運動方程式は (T − F )r = I ω̇ = 1 1 mrω̇ = ma 2 2 mr2 ω̇, 2 (6.2) 1 考え方 教科書 6.7 節「回転体のつりあい」を参照.軸がある角速 度 ω で回転しているときに各おもりに発生する遠心力を 考慮し,その力のつりあいをとるのが静的つりあい,力 のモーメントのつりあいをとるのが動的つりあいに対応 する. 解答例 軸が回転する角速度を ω とすると,右側の上下のおもり による遠心力はそれぞれ F1 = 1 · 0.2 · ω 2 = 0.2 ω 2 [N], F2 = 1 · 0.4 · ω 2 = 0.4 ω 2 [N] である.また左側のおもり による遠心力は F3 = 2 · r · ω 2 = 2rω 2 [N] である. 静的釣り合いをとるにはこれらの力が釣り合う必要があ るので, 0.2ω 2 + 0.4ω 2 − 2rω 2 = 0 よって,r = 0.3 [m]. また,動的つりあいをとるにはこれらの力による力の モーメントがつりあっている必要があり,下側の軸の根 本のまわりのモーメントにおけるつりあい式は −0.2 ω 2 · 0.5 − 0.4 ω 2 · 0.1 + 2 · 0.3 · ω 2 · h = 0 よって h = 0.14/0.6 0.233 [m]. 2
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