R - 千葉大学

講義予定
(1) 2015年10月 6日(火) 信頼性と信頼性工学(イントロダクション)
(2) 2015年10月13日(火) 信頼性解析の基礎数理1(確率論の基礎)
(3) 2015年10月20日(火) 信頼性解析の基礎数理2(信頼性の基本量)
(4) 2015年10月27日(火) 信頼性解析の基礎数理3(故障率と確率分布)
(5) 2015年11月10日(火) 信頼性データの統計解析1(統計データ処理)
(6) 2015年11月17日(火) 信頼性データの統計解析2(最尤法と確率紙)
(7) 2015年11月24日(火) 中間試験
(8) 2015年12月 1日(火)システムの信頼性1(直列・並列システム)
(9) 2015年12月 8日(火) システムの信頼性2(一般システムと信頼性設計)
(10) 2015年12月15日(火) 故障モードの同定(FMEA, FTA, ETA)
(11) 2015年12月22日(火) 構造物の信頼性工学1(破壊確率と信頼性指標)
(12) 2016年 1月12日(火) 構造物の信頼性工学2(信頼性解析モデル)
(13) 2016年 1月19日(火) モンテカルロ・シミュレーション
(14) 2016年 1月26日(火) 期末試験
信頼性工学
第9回
2015.12. 8
千葉大学 工学部 都市環境システム学科
山崎 文雄
http://ares.tu.chiba-u.jp/
2
1
4.2 一般システムの信頼性
直列システムと並列システムの複合構造(2)
一般システムの信頼性解析
E1
直列システムと並列システムの複合構造は計算可能.
システムを直列システムと並列システムに分解
E2
E1
(a)
E6
E6
(b)
E5
E3
A
E5
E4
E2
E4
E3
直列システムと並列システムの複合構造(1)
E7
B
まず,3要素の並列システムと考え,そのあとA, Bを直列システ
ムと見なす.
B
RP , 3 
まず,3要素の直列システムと考え,そのあとA, Bを並列システム
と見なす.
RA  1  (1  R2 )(1  R3 )R4  ( R2  R3  R2 R3 ) R4
RS ,3 
 R1 1  (1  R2 )(1  R3 ) 1  (1  R4 )(1  R5 )(1  R6 )
A
3
RB  R5 R6 R7
4
ブリッジ型システム
ブリッジ型システム(2)
ブリッジシステムなど,直列,並列システムに直接は変換
できないものもある. 障害となる要素を条件付きで外す
E1
E3
E2
E4
E2
E4
E2
E4
RE 5 normal
Rsystem 
(4.8)
RE 5 normal  1  (1  R1 )(1  R2 )1  (1  R3 )(1  R4 )
(4.9)
RE 5 fail 
(4.10)
(c)
E3
E1
E4
E2
(b) E5が故障
ブリッジ型システムの分解結果
5
システム構造関数
1
ai  
0
normal
fail
(4.8), (4.9), (4,10)よりシステム信頼度が求まる.
どんなシステムもモデル化の障害となる要素を順次外していけば,
直列,並列システムまで分解できる.
6
 人の判断が入り,コンピュータ化しにくい.
指標変数aiを0または1の値をとる確率変数Aiで表すと
(4.12)
要素の信頼度は
システムの状態指標変数 aS
aS   (a)
Ri  PAi  1 
(4.19)
システムの信頼度は
(4.13)
システム構造関数はシステムの内部構造(繋がり方)によって決まる.
直列システム: aS   (a) 
RE 5 fail
システム信頼性の評価では,指標変数を確率変数とする.
要素状態ベクトル a  (a1 , a2 ,  , an )T
システム構造関数
(b) E5が故障
システム構造関数(2)
系統的なシステム信頼性解析のための表現
要素の状態表示指標変数ai
E3
E4
(a) E5が正常
図4.4
E1
(a) E5が正常
図4.3 システム構造の例
E1
E3
E3
E5
E2
E1
RS  PAS  1 
(4.20)
(4.14)
(1つのaiが0ならas=0)
並列システム: aS   (a) 
(全てのaiが0ならas=0)
(4.16)
7
8
パスセット(path set)
パスセットと最小パスセット
パスセット:全体集合(total set)T=(1, 2, , n) のうちIに属する
要素がすべて正常ならシステムが正常となる部分集合
 a  1
when i
ai  0
aS   (a)  1
iI
otherwise
あるパスセットの部分集合にパスセットとなるものが存在し
ないとき、そのパスセットを最小パスセット(minimum path
set)と呼ぶ.
全体集合T
パスセットI
最小パスセットの例
S1  E1 , E2 , E4 
S 2  E1 , E2 , E5 
S3  E1 , E2 , E6 
S 4  E1 , E3 , E4 
S5  E1 , E3 , E5 
S 6  E1 , E3 , E6 
最小パスセットでないパスセットの例
S 7  E1 , E2 , E4 , E5 
最小パスセット
E1
m個の最小パスセットが存在するシステムの構造関数は,
m
aSi   a j
jI i
図4.5
(4.21)
E1
E2
E4
E1
E2
E5
E1
E2
E6
E1
E3
E4
E1
E3
E5
E1
E3
E6
(i=1, 2, , m)
10
カットセット:全体集合T=(1, 2, , n) のうちIに属する要素が
すべて故障するならシステムが故障となる部分集合
aS   (a)  0
(4.22)
並・直列システムを直・並列
システムに変形したもの.
同一要素が複数のパスセットに
入っているので,信頼度の計算
では統計的に独立な要素からな
る直・並列システムとしては計算
できない.
並列要素間の相関を考慮する
必要あり.
図4.3(a)のシステムの最小パスセット
E6
カットセット(cut set)
最小パスセットとシステム構造関数
i 1
E5
E3
(a)
9
aS   (a)  1   (1  aSi )
E4
E2
11
a  0
when i
 ai  1
iI
otherwise
あるカットセットの部分集合にカットセットとなるものが存在
しないとき、そのカットセットを最小カットセット(minimum
cut set)と呼ぶ.
12
カットセットと最小カットセット
最小カットセットとシステム構造関数
m個の最小カットセットが存在するシステムの構造関数は,
最小カットセットの例
S1  E1 , E2 
aS   (a) 
S 2  E3 , E4 
S 4  E2 , E3 , E5 
S3  E1 , E4 , E5 
aSi 
最小カットセットでないカットセットの例
E5
E2
E3
E1
S 5  E1 , E2 , E4 , E5 
E1
(4.23)
E1
E2
E4
E3
E5
E5
(4.24)
ブリッジ型システムを並・直列
システムで表すことができる.
図4.6 図4.3(c)のブリッジ型システムの
最小カットセット
E4
図4.3 システム構造の例
E4
E2
E3
(i=1, 2, , m)
(c)
13
14
最小カットセットとシステム構造関数(2)
4.3 信頼性設計
(4.23), (4.24)よりブリッジ型システムの構造関数は
切替待機冗長システム:
主サブシステムが故障したとき,故障検出切替システム
(FDS, fault detection and switching system)が作動し,副
サブシステムに切り替えるシステム
aS  1  (1  a1 )(1  a2 )1  (1  a3 )(1  a4 )
 1  (1  a1 )(1  a4 )(1  a5 )1  (1  a2 )(1  a3 )(1  a5 )
 a1a3  a2 a4  a1a4 a5  a2 a3a5  a1a2 a3 a4  a1a3a4 a5
(4.25)
信頼度は, R (t )  1  1  R (t )1  R (t ) R (t )
W ,2
1
F
2
 a1a2 a3a5  a2 a3a4 a5  a1a2 a4 a5  2a1a2 a3a4 a5
(4.25)の状態変数を確率変数として,両側の期待値を
とれば,システム信頼度が求まる.
(4.26)
主サブシステム
R1(t)
直列なら同じ要素が2つ入ってもよい( ai  ai  ai )
RF (t)
一般的な機械・構造システムの破損モードはカット
セットに対応する.
FDS
15
図4.7
R2(t)
副サブシステム
切替待機冗長システム
1
2
待機冗長系
16
切替待機冗長システムの信頼度
m/n冗長系(m-out-of-n system)の信頼度
直列システムと並列システムの中間的なシステム.
同一の機能を持つn個のシステムのうち,少なくともm個以
上の要素が作動すれば,システムとして正常に機能する.
各サブシステムの故障が指数分布に従うとすれば(4.26)
は次式となる.
RW , 2 (t )  exp( 1t )  exp  (2  F )t   exp  (1  2  F )t 
n
(4.27)
切替冗長システムの信頼度は,FDSシステムの故障率の
分,並列冗長システムの信頼度より低下する.
Rm outof  n (t )   n Ci Re (t ) 1  Re (t )
( n i )
i
(4.28)
im
ここでRe(t)は構成要素の信頼度関数,nCiはn個からi個を
選ぶ組合せ数.
1
17
実例:火災報知器,地震計など
m/n多数決系とも呼ぶ
1/n :並列システム
n/n :直列システム
2
n
m/n
選択器
m/n冗長系
18
フェールセーフ機構の例
信頼性向上のための方法
フェールセーフ(fail-safe): システムの一部が故障しても,あ
る一定期間,機能が維持できるようにシステムを設計
免震装置の例
http://www.j-kensetsu.com/top/anshin_menshin.html
落橋防止装置
例)ボイラの安全弁:破壊に至る高圧力となる前に圧力を逃がす
石油ストーブ:転倒すると自動的に消火するよう設計
フールプルーフ(fool-proof): 間違えない工夫(馬鹿よけ)
利用者が誤った操作しても正常な動作を続ける,あるいはそのよう
な操作が不可能となっているようなシステム設計
例)全てのメモリを削除する際,各種の確認を求めるシステム
復元ゴム:水平方向への変形を抑え、
建物を原点復帰する装置(復元機能)
すべり支承:建物荷重を支え、水平力をカッ
トする装置(変形機能・荷重支持機能)
航空機の疲労亀裂が全体に伝播しない工夫
19
ストッパー:過大な暴風や想定外の地震で大
きな水平変形が発生した場合の安全確保
(フェールセーフ機能)
20
信頼性向上のための方法(2)
目標信頼度とコスト
フェールソフトリィ(fail-softly): 部分的な故障がすぐ破局的
破壊につながらず,徐々に機能が低下
劣化故障(degradation failure)  破局的故障(catastrophic failure)
例)パンクしても走れるタイヤ
独立なn個の要素(信頼度Rb)の並列化によるシステム
信頼度Rs
n
Rs  1  (1  Rb )
(4.29)
(1  Rb ) n  1  Rs
(4.30)

n
(4.31)
並列システムのコストはn倍となる
cs 
(4.31)
目標信頼度Rsを得るための並列システムによるコストの
増加率
cS ln( 1  Rs )

cb ln( 1  Rb )
n
http://www.michelin.co.jp/news/tms2003/tms2003pax_brocher.pdf
21
目標信頼度とコスト(2)
n
システムのコストは
i 1
直列システムのコストは単独のコストの和
n
i 1
n
並列システム化により目標信頼度Rsを得るための各要
素への信頼度配分Rs,i (i=1,2, ,n)
cS

cb
n
c
i 1
i
ln( 1  Rs ,i )
ln( 1  Ri )
i 1
ln( 1  Ri )
(4.38)
i 1
(4.39)
n
c
i 1
(4.36)
各要素が多重化すべき要素数とコスト増加率
c
ln( 1  Rs ,i )
(4.37)
ni  S ,i 
ci
ln( 1  Ri )
ln( 1  Rs ,i )
システムのコスト増加率は
(4.35)
RS  RS ,1 RS , 2    RS ,n   RS ,i
n
cS  cS ,1  cS , 2      cS ,n   ci
(4.34)
cb  c1  c2      cn   ci
22
目標信頼度とコスト(3)
独立なn個の要素(信頼度Ri)の直列システムの信頼度Rb
Rb  R1 R2    Rn   Ri
(4.31)
i
信頼性設計では,要求信頼度(4.36)を満足しつつ,シス
テムのコスト(4.38)が最小となるように,各要素への信頼
度配分を行う.
23
24