On-line HDF開始方法により 施行中TMPは変化するか

【B】
On-line HDF開始方法により
施行中TMPは変化するか
(医)徳洲会 大垣徳洲会病院 臨床工学科
内科1)
○久富 俊宏
旭 恵次 坂口 耕一郎 清水 慎太郎 中野 路子 中川紀子
野口 享秀1)
【目的】
On-line HDFでは、大分子量物質の除去とAlbの
漏出は主として治療開始初期に起きることから
TMPに依存しない、との見解がある一方、治療
中のTMPに依存するとの報告もある。
今回我々は、HDF治療開始から15分までの
間、さまざまな治療条件を設定し、治療中のTMP
の推移を観察することにより、そのメカニズムを
明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
【対象】
維持透析患者6名(男性5名 女性1名)。年齢67.4±11.9歳。
透析歴13.6±9年。原疾患 DM1名 nonDM5名。
【方法】
治療開始から15分間 (透析装置:NIPRO NCV-2 TMP自動補正OFF)
A:無除水透析を行う
B:除水を伴う透析を行う
C:無除水のHDFを行う
D:除水を伴うHDFを行う
の4条件で施行したのち、Pre on-line HDF(QS=200mL/min)を行い、TMP
の推移を観察する。また、溶質除去率、除去量、Alb漏出量を透析液廃液
(開始0~15分、15分~終了時)より観察する。
参考として、 E(治療開始から15分間透析液を流さず血液灌流のみを行
い以降同一条件でOn-line HDFを実施)との比較を行った。
ヘモダイアフィルタはABH-21Pを用い、治療時間5hr、除水は治療中にわ
たり定速で施行し、評価を行った。
廃液は部分採取し、濃度測定前に蛋白の剥離を目的に界面活性剤を
添加した。
統計的検定はANOVA+多重比較を行い、p<0.05を有意差ありとした。
【施行条件】
条件
QB
QD
QS
UF
(血液流量)
(総透析液流量)
(補液流量)
(除水量)
0-15
min
15-300
min
0-15
min
15-300
min
0-15
min
15-300
min
A
500
200
600
600
200
(mL/min)
0
100%
5%
95%
0%
100%
5%
95%
0%
100%
200
D
200
0%
200
C
E
15-300
min
0
B
200
0-15
min
600
(mL/min)
0
200
(mL/min)
総除水量に対する比率
(%)
開始~15分, 15分~終了までの平均TMP
n=6, mean±SD *p<0.05 **p<0.01
0-15min
15-300min
(mmHg)
(mmHg)
75
150
**
**
**
**
**
**
**
*
**
50
100
25
50
0
0
除水無
除水有
除水無
HD
HD
HDF
(A)
除水有 灌流のみ
HDF
(B)
(C)
(D)
開始15分までの操作
**
**
-
(E)
**
**
除水無
除水有
除水無
HD
HD
HDF
(A)
除水有 灌流のみ
HDF
-
(B)
(C)
(D)
開始15分までの操作
(E)
60min, 300min(終了時)のTMP
n=6, mean±SD *p<0.05 **p<0.01
60min
(mmHg)
150
**
**
**
150
**
**
終了時
(mmHg)
**
*
*
**
**
100
100
50
50
0
0
除水無
除水有
除水無
除水有 灌流のみ
HD
HD
HDF
HDF
(A)
(B)
(C)
(D)
開始15分までの操作
**
*
除水無
除水有
除水無
除水有 灌流のみ
-
HD
HD
HDF
HDF
-
(E)
(A)
(B)
(C)
(D)
(E)
開始15分までの操作
治療中のTMPの推移
(mmHg)
150
開始15分までの操作
100
HD 除水無
HD 除水有
HDF 除水無
HDF 除水有
QBのみ
50
0
0hr
1hr
2hr
3hr
4hr
5hr
(A)
(B)
(C)
(D)
(E)
HDF開始後のTMPの上昇
(mmHg)
50
開始15分までの操作
40
HD 除水無
HD 除水有
HDF 除水無
HDF 除水有
QBのみ
30
20
(A)
(B)
(C)
(D)
(E)
10
0
1hr
2hr
3hr
4hr
5hr
【AからE条件】
TMP上昇率に有意差なし
β2-m, α1-m除去量・Alb漏出量
n=6, mean±SD *p<0.05 **p<0.01
【開始0~15min】
β2-m
(mg)
30
α1-m
**
**
**
(mg)
30
すべてN.S
20
20
0.8
0.6
0.4
10
10
0.2
0
0
0.0
無除水 除水有 無除水 除水有
HD
HD
HDF
無除水 除水有 無除水 除水有
無除水 除水有 無除水 除水有
HDF
HD
HD
HDF
Alb
** *
*
(g)
HD
HDF
HD
HDF
HDF
【治療全体(0-300分)】
(mg)
(g)
(mg)
300
すべてN.S
200
* **
150
200
2.0
1.5
100
1.0
50
0.5
100
0
無除水 除水有 無除水 除水有
HD
HD
HDF
(A)
(B)
(C)
HDF
(D)
すべてN.S
0.0
0
無除水 除水有 無除水 除水有
HD
HD
HDF
(A)
(B)
(C)
無除水 除水有 無除水 除水有
HD
HDF
(D)
(A)
HD
(B)
HDF
(C)
HDF
(D)
除水量、Ht、血液濃縮率とα1-m, Alb漏出量の関係
α1-m除去率(%)
40
40
P<0.01
40
p<0.05
30
30
30
20
20
20
10
y = 6.851x + 8.0418
R² = 0.3763
0
1.0
2.0
10
y = 0.5998x + 1.4193
R² = 0.2371
0
3.0
25
30
35
40
10
0
45
p<0.001
y = 63.305x - 45.337
R² = 0.6766
0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3
Alb漏出量(g)
3
3
3
p<0.05
p<0.001
p<0.01
2
2
2
1
1
1
y = 0.3052x + 0.912
R² = 0.1655
0
1.0
2.0
除水量(L)
3.0
y = 0.0427x + 0.0676
R² = 0.266
0
25
30
35
40
治療前Ht (%)
45
0
y = 3.7215x - 2.426
R² = 0.5184
0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3
血液濃縮率
【結 果】
■治療開始からの15分間濾過を行った場合、濾過を
行っていない場合に比べ、この間のTMPは高値を示
したが、15分目以降のTMPは低値を示した。
■15分目以降のTMPの上昇は、いずれの条件でも大
きく異なることはなかった。
■α1-mの除去量、Alb漏出量は、開始15分目までは濾
過あるいは除水を行った場合に高値であったが、治
療中の総除去量、総漏出量では、高値を示さなかっ
た。
【考 察】
■開始から15分間濾過を行わなかった場合、15分目以降TMP
が高値となったが、その後の上昇はいずれの条件において
も差は見られなかった。今回の評価では、15分目以降、補
液速度を統一して評価を行ったことから(200mL/min)、TMP
高値の原因は濾過速度の増加によるものではないと考える。
■開始から15分間濾過を行わなかった場合に、15分以降濾過
を開始するとTMPが0mmHg近辺から80~90mmHgと、急激に
上昇した。HDFモードに切り替えた直後に何らかのTMPを上
昇させるメカニズム(ファウリングなど)が惹起された可能
性も考えられるが、詳細は不明である。
【結 語】
Pre on-line HDFにおいて、濾過を遅延
させることによるTMP上昇の抑制効果は
確認できなかった。
Alb総漏出量は、開始15分までの濾
過、除水以外の何らかの因子が寄与し
ていると考えられた。
日本透析医学会
CO I 開示
筆頭発表者名: 久富 俊宏
演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある
企業などはありません。