2016年の日米株式ストラテジー(後編)

2015.12.25
2016年の日米株式ストラテジー(後編)
~アベノミクス相場は参院選後に正念場を迎える可能性も~
図表① 中国のGDPと景気循環信号指数
~中国のGDP成長率が公表数字よりも低い可
中国の 2015 年 7-9 月期の実質 GDP 成長率は前年
能性は否定できない~
中国の景気は投資主導から消費主導に
同期比 6.9%と、中国政府が 2005 年の成長目標とす
る「7%前後」の範囲内に収まったが、計 10 種類の
月次の経済指標を合成した「景気循環信号指数」と
の比較では、実際の GDP 成長率がもっと低い可能
性は否定できない。実際に、中国の李克強首相が地
方トップ時代に重視していたとされる 3 種類の経済
指標(鉄道貨物輸送量・電力消費量・銀行貸し出し)
を使った日本経済研究センターの試算では、中国の
2015 年 4-6 月期の実質 GDP 成長率は 5%前後と中
国政府が発表した 7%を大幅に下回った。ただし、
中国の GDP 成長率が公表数字より低いとしても、
その中心は重厚長大型の製造業の不振であり、その
象徴が固定資産投資の減速である。一方、中国では
都市化に伴って中間所得層による購買力は年々高
まっていると考えられ、その象徴が日本を訪れる中
国人観光客の増加だろう(日本政府観光局によると
2015 年 1~11 月の中国からの訪日客数は前年同期
比 2.1 倍となった)。
中国で想定される景気減速は投資主導から消費
主導への転換に伴う必然であり、景気減速が雇用不
安を引き起こさない限り、中国政府が大規模な財政
出動を伴う景気対策を打ち出す可能性は低いと考
えられる。東京株式市場の中国関連銘柄で見れば、
建設機械を中心とするインフラ関連銘柄が再び注
目される可能性は低い一方、インバウンド関連銘柄
が今後も注目され続ける可能性が高い。
17
174
中国の実質GDP(左軸)
〃 景気循環信号指数(右軸)
15
155
景気循環信号指数とは、中国国家統計
局の中国経済景気監測中心とゴールド
マン・サックスが共同作成する月次の
経済指標。同指数は、計10種類の経済
指標を合成して作成する。鉱工業生産
指数や固定資産投資などの足元の景気
を表す指標のほか、金融機関の貸し出
しや消費者物価指数など景気に先行・
遅行する経済指標を取り入れている。
13
11
136
117
9
98
7
←15/7-9
79
←15/10
5
2006 07
出所
60
08
09
10
11
12
13
14
15
16
中国国家統計局
図表② 中国の固定資産投資と小売売上高
~中国で想定される景気減速は投資主導から消
費主導への転換に伴う必然と考えられる~
35
(前年比:%)
←中国の固定資産投資
30
固定資産投資の前年比は年初からの累計
(1月単月分は発表されない)
25
2012年以降の小売売上高は1-3月の累計が
3月分として発表されている
20
15/11まで
15
10
↑
中国の小売売上高
5
2006 07
出所
日本の景気底上げには消費の回復が必要
前年同期比(%)
08
09
10
11
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13
14
15
16
中国国家統計局
図表③
日本の実質GDP成長率(前期比年率)
2015 年 12 月 8 日に発表された日本の 2015 年 7-9
~日本の 7-9 月期のGDP成長率は米国の半分~
月期の実質 GDP 改定値は前期比年率 1.0%増と、速
12
報値の(同)0.8%減からプラスに上方修正された。 10 (%)
しかし、7-9 月期の GDP 成長率は米国の 2.0%増の
8
2015/10-12以降は
大和総研予測
6
(12/8発表)
半分である。米国では 7-9 月期の個人消費が前期比
←-----→
4
年率 3.0%増だったが、日本の個人消費は 1.5%増だ
2
った。GDP の 6~7 割を占める個人消費の伸び率の
0
差が日米の GDP 成長率の差の要因と言える。
▲2
「2016 年の日米株式ストラテジー(前編)」で ▲4
述べたように米国では「雇用と消費の好循環」が機 ▲6
能していると考えられるが、日本では雇用指標が改 ▲8
2010
11
12
13
14
15
16
17
善しているにも関わらず、個人消費の足踏みが続い
出所 内閣府、大和総研
ている。日本では雇用が増えても非正規労働者の割
本資料は、投資の参考となる情報提供のみを目的としたものです。投資に関する決定はご自身の判断でなさいますようにお願い申し上げます。本資料は、当社が信頼で
きると判断した情報源からの情報に基づいて作成されていますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、本資料に記載された意見や予測等
は、資料作成時点の当社の判断で、今後、予告なしに変更されることがあります。なお、本資料のご利用に際しては、最終ページの記載もご覧ください。
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図表④
日本の個人消費と消費総合指数
合が高止まりしたままで、賃上げの効果が広がって
~日本では雇用指標が改善しているにも関わら
いないことに加えて、そもそも賃上げの恩恵がない
ず、個人消費の足踏みが続いている~
年金生活者の消費にも(食料品や日用品の値上がり
329
115
(2005年=100)
を背景に)節約志向が強まっている可能性も高い。 (兆円)
実質GDPベースの個人消費(左軸)
実質ベースの消費総合指数(右軸)
政府は 2015 年度の補正予算で低所得の高齢者に給
319
111
いずれも季節調整値
付金 3 万円を配る方針で、主要製造業の産業別労働
309
組合で構成する金属労協は 2016 年の春季労使交渉
←15/10 107
↑
15/7-9
で非正規従業員の賃上げを求める方針を初めて決
299
103
定したが、それらが個人消費の回復に奏功するか否
かは現時点で不透明と言わざるを得ない。
289
99
アベノミクス相場は正念場を迎える可能性も
2016 年前半の東京市場では日経平均が 20000 円
台を固める展開と想定する。2015 年 11 月末に政府
が開いた官民対話で、経団連の榊原会長が 2016 年
は 2015 年を上回る水準の賃上げに期待するとの考
えを表明した。2016 年春の労使交渉で高い賃上げ
率での妥結が相次げば、株式市場では賃上げによる
個人消費の回復期待が高まろう。一方、6 月末の株
主総会シーズンに向けて増配や自社株買いなどの
株主還元策を打ち出す企業が相次げば、これも株式
市場で好感されよう。日経平均は 7 月の参院選まで
に 23000 円程度まで上昇する可能性があると見て
いる。ただし、参院選後も株高が続くには個人消費
が実際に回復し、企業の増益基調にも変化がないこ
となどが必要となろう。個人消費の回復が鈍い場合
や、円安メリットや原油安メリットの減少などによ
って企業の増益基調に疑問符が付き始める場合に
は、アベノミクス相場が正念場を迎える可能性もあ
ると見ている。
日本の名目 GDP と TOPIX の関係を見ると、
TOPIX は名目 GDP の 2 カ月分~8 カ月分のレン
ジ内で推移している。また、1990 年代のバブル崩
壊後は、TOPIX が上昇しても名目 GDP の 4 カ月
分の水準が天井となり、その後は TOPIX が下落に
転じるということが何度も繰り返されてきた。安倍
政権が掲げた「2020 年頃までに名目 GDP を 600 兆
円に増やす」という目標が現実味を帯び始めれば、
TOPIX が名目 GDP の 4 カ月分の水準を超えること
は可能だろうが(日経平均で言えば 20000 円は通過
点のはずだが)、少なくともデフレからの脱却が果
たせなければ、日経平均が 20000 円を明確に超える
のは簡単でない可能性もあろう。
(野間口 12/25 記)
279
2006 07
出所
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09
10
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内閣府
図表⑤ 為替相場とPERによる日経平均の想定
~日経平均は 2016 年 7 月の参院選までに 23000
円程度まで上昇する可能性があろう~
2015年度予想
2016年度予想
直近
直近
税引利益
税引利益
増益率 (11/25) 増益率 (11/25)
(大和210)
(大和210)
PER
PER
PER想定/日経平均株価の水準
13倍
14倍
15倍
16倍
17倍
円高シナリオ
(110円/ドル)
14.0%
16.2倍
3.8%
15.6倍
16,600円 17,800円 19,100円 20,400円 21,600円
やや円高
(115円/ドル)
15.1%
16.0倍
5.1%
15.2倍
16,900円 18,200円 19,500円 20,800円 22,100円
基本シナリオ
(120円/ドル)
16.2%
15.9倍
6.4%
14.9倍
17,300円 18,600円 20,000円 21,300円 22,600円
やや円安
(125円/ドル)
17.3%
15.7倍
7.7%
14.6倍
17,700円 19,000円 20,400円 21,700円 23,100円
円安シナリオ
(130円/ドル)
18.4%
15.6倍
8.9%
14.3倍
18,000円 19,400円 20,800円 22,200円 23,600円
(注1)為替前提は2015年10月以降の前提。対ユーロは全て130円/ユーロ前提。
(注2)利益予想、PERは11/25時点、利益予想は大和予想(大和210ベース)
出所
大和証券投資戦略部で取りまとめ
図表⑥ 日本の名目GDPとTOPIX
~日本株の中長期的な上昇には脱デフレが必要~
10000
(名目GDPの単位は1000億円)
A=名目GDPの8か月分
B= 〃 4カ月分
C= 〃
2カ月分
←TOPIX
1000
・名目GDP(季節調整値)は2015年7-9月期まで実績
・2015年10-12月期以降は、2020年10-12月期の名目GDPを
600兆円と想定した場合の定率成長予想
100
A→
・TOPIXは四半期末値(直近は15/12/24)
B→
C→
10
1955 61
出所
67
73
79
85
91
97 2003 09
15
大和証券投資戦略部で取りまとめ
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お取引にあたっての手数料等およびリスクについて
手数料等およびリスクについて
 株式等の売買等にあたっては、
「ダイワ・コンサルティング」コースの店舗(支店担当者)経由で
国内委託取引を行う場合、約定代金に対して最大 1.24200%(但し、最低 2,700 円)の委託手数料
(税込)が必要となります。また、外国株式等の外国取引にあたっては、現地諸費用等を別途い
ただくことがあります。
 株式等の売買等にあたっては、価格等の変動による損失が生じるおそれがあります。また、外国
株式等の売買等にあたっては価格変動のほかに為替相場の変動等による損失が生じるおそれがあ
ります。
 信用取引を行うにあたっては、売買代金の 30%以上で、かつ 30 万円以上の委託保証金が事前に必
要です。信用取引は、少額の委託保証金で多額の取引を行うことができることから、損失の額が
差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
 債券を募集・売出し等により、又は当社との相対取引により売買する場合は、その対価(購入対
価・売却対価)のみを受払いいただきます。円貨建て債券は、金利水準の変動等により価格が上
下し、損失を生じるおそれがあります。外貨建て債券は、金利水準の変動に加え、為替相場の変
動等により損失が生じるおそれがあります。また、債券の発行者または元利金の支払いを保証す
る者の財務状況等の変化、およびそれらに関する外部評価の変化等により、損失を生じるおそれ
があります。
 投資信託をお取引していただく際に、銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸経
費、等をご負担いただきます。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあ
ります。
ご投資にあたっての留意点
 取引コースや商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、上場有価証券等書面、契約締結
前交付書面、目論見書、等をよくお読みください。
 外国株式、外国債券の銘柄には、我が国の金融商品取引法に基づく企業内容の開示が行われてい
ないものもあります。
商号等 :大和証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第108号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
【保有株式等について】
大和証券は、このレポートに記載された会社が発行する株券等を保有し、売買し、または今後売買することがあります。大和証券グループ
が、株式等を合計 5%超保有しているとして大量保有報告を行っている会社は以下の通りです。(平成 27 年 12 月 15 日現在)
北弘電社(1734) 大豊建設(1822) イチケン(1847) テノックス(1905) 高橋カーテンウォール工業(1994) アコーディア・ゴルフ(2131)
日本マニュファクチャリングサービス(2162) キャリアデザインセンター(2410) MCUBS MidCity投資法人(3227) サムティ
(3244) サンセイランディック(3277) インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298) ムゲンエステート(3299) 日本ヘルスケア
投資法人(3308) ケー・エフ・シー(3420) サンコーテクノ(3435) いちごホテルリート投資法人(3463) テックファームホールディング
ス(3625) エムアップ(3661) モブキャスト(3664) enish(3667) アバント(3836) 神島化学工業(4026) タイガースポリマー(4231)
セプテーニ・ホールディングス(4293) ラクオリア創薬(4579) 相模ゴム工業(5194) ノザワ(5237) 中山製鋼所(5408) 日本精鉱(5729)
東京製綱(5981) テクノプロ・ホールディングス(6028) リンクバル(6046) 日進工具(6157) 中村超硬(6166) オカダアイヨン(6294)
ワイエイシイ(6298) 三相電機(6518) ダブル・スコープ(6619) 寺崎電気産業(6637) ミツミ電機(6767) スミダコーポレーション
(6817) フェローテック(6890) エノモト(6928) アストマックス(7162) GMO クリックホールディングス(7177) ノジマ(7419) 大興
電子通信(8023) ニチモウ(8091) マネースクウェア HD(8728) マネーパートナーズグループ(8732) 大和証券オフィス投資法人(8976)
日本賃貸住宅投資法人(8986) セレスポ(9625) 帝国ホテル(9708) 丸紅建材リース(9763) パーカーコーポレーション(9845) バイテ
ックホールディングス(9957)(銘柄コード順)
【主幹事を担当した会社について】
大和証券は、平成 26 年 12 月以降下記の銘柄に関する募集・売出し(普通社債を除く)にあたり主幹事会社を担当しています。
大豊建設(1822) ダイユーエイト(2662) ヒューリック(3003) 鳥貴族(3193) ホットランド(3196) 大和ハウスリート投資法人(3263)
アクティビア・プロパティーズ投資法人(3279) イオンリート投資法人(3292) 日本ヘルスケア投資法人(3308) トーセイ・リート投資法
人(3451) ケネディクス商業リート投資法人(3453) サムティ・レジデンシャル投資法人(3459) ケイアイスター不動産(3465) テクノス
ジャパン(3666) オプティム(3694) テラスカイ(3915) マイネット(3928) メディカルシステムネットワーク(4350) 扶桑化学工業
(4368) 楽天(4755) 日本エンタープライズ(4829) デクセリアルズ(4980) クニミネ工業(5388) インターワークス(6032) ファース
トロジック(6037) 日本ビューホテル(6097) パンチ工業(6165) ブランジスタ(6176) 日本郵政(6178) GMOメディア(6180) ソネ
ット・メディア・ネットワークス(6185) ツバキ・ナカシマ(6464) ソニー(6758) かんぽ生命保険(7181) ゆうちょ銀行(7182) アトム
(7412) メニコン(7780) プラッツ (7813) TASAKI(7968) 極東貿易(8093) オリックス不動産投資法人(8954) 平和不動産リー
ト投資法人(8966) 大和証券オフィス投資法人(8976) ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) 日本賃貸住宅投資法人(8986) スマー
トバリュー(9417) エムティーアイ(9438) 広島ガス(9535) アイ・エス・ビー(9702) 学究社(9769) 蔵王産業(9986)(銘柄コード順)
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