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応用代数学 第 1 回レポート問題略解 (2015/12/22(火) 21:32 更新)
講義ページ: http://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/lab/tujimoto/appalg/
問題 1
(1) (2 点)可換群である.
(2) (2 点)n が素数のとき可換群,それ以外の場合は群ではない.
(3) (2 点)
• r = 0 のとき,n = 1 ならば可換群であり,n ≥ 2 ならば群ではない.
• r = 1 のとき,n = 1 ならば可換群であり,n ≥ 2 ならば可換でない群である.
• それ以外の場合は群ではない.
(4) (2 点)(任意の n について)可換群である.
問題 2
(1) (2 点)|G| = 6.
(2) (1 点)|G| = 1.
問題 3
(1) (1 点)略.
(2) (2 点)6 ({e}, {e, m}, {e, m, i, mi}, {e, m, j, mj}, {e, m, k, mk}, Q).
問題 4
(1 点)任意の a, b ∈ G に対し,ab = ba を示せばよい.
Proof. 任意に a, b ∈ G をとる.まず,G は群であるから,ab ∈ G であり,仮定から (ab)2 = abab = e となる.
また,仮定より a−1 = a, b−1 = b であり,abab = e ⇒ aba = b (両辺に右から b を掛ける)⇒ ab = ba (両辺に
右から a を掛ける)が成り立つ.
1
解説とコメント
15 点満点です.平均点は 7.1 点,最高点 14 点でした.
記述に不足があったり,誤りがあった場合に減点をしてします.
問題 1
集合 S に対する半群,モノイド,群の演算 ◦ は S 上の二項演算であること(S × S → S )が前提となって
いる.この問題では各演算 ◦ が G 上の二項演算であることは保証していないため,演算 ◦ が G 上の二項演算
(G × G → G)であることを最初に示さなければならない.
その後,(G, ◦) の組が群であるための条件
• 結合法則
• 単位元の存在
• 逆元の存在
について調べる.
(1) [解説]
|x+y|
まず,∀x, y ∈ G, |1+xy| < 1 を示す.その後,結合法則の成立を調べた後,単位元として e := 0 ∈ G,x ∈ G
の逆元として x−1 := −x を取れることを示せばよい.
[配点]
◦ が G 上の二項演算であることが示されていて 1 点,群の 3 条件を満たしていることが示されていて 1 点
[コメント]
◦ が G 上の二項演算であることが示されていない解答が多かった.
(2) [解説]
(a) n が合成数の場合: 2 ≤ a, b < n なる ある a, b ∈ Z によって n = ab とかけるが,a ◦ b = 0 ̸∈ G となっ
て,◦ が G 上の二項演算となっていない.
(b) n が素数の場合: 結合法則は成り立ち,単位元として e := 1 ∈ G とすることができる.a ∈ G の逆元
としては,フェルマーの小定理を用いれば a−1 := an−2 (mod n) と定めることができる.
[配点]
n が合成数のときに群とならないことが示されていて 1 点,n が素数のときに群となることが示されてい
て 1 点.
[コメント]
正しくないことが書かれている場合は減点した.n が素数の場合に任意の a ∈ G について逆元が取れるこ
とについては,正しく示されていれば正答とした.
(3) [解説]
det(AB) = det(A) det(B) = r2 より,◦ が G 上の二項演算となるためには,r = 0 または r = 1 が必要.
従って r ̸= 0, 1 の場合は群ではない.
r = 0 または r = 1 の場合,結合法則は成り立つ.
(a) r = 0 の場合
i. n = 1 の場合
G = {O1 } となり,O1 O1 = O1 から,単位元として O1 ,O1 の逆元として O1 が取れ,群である
ことがわかる.また,これは可換である.
2
ii. n ≥ 2 の場合
(i, i) 成分のみが 1 であり,他の成分が 0 となるような行列を Ei とする.単位元 E が存在する
と仮定すると,∀i (1 ≤ i ≤ n), Ei E = Ei が必要となるが,これを満たす E は E = In のみであ
り,det(In ) = 1 から不適.よって,単位元 E は存在せず,群ではない.
(b) r = 1 の場合: 単位元として In ,A の逆元として A−1 が取れ,群であることがわかる.n = 1 の場合
G = {I1 } であるから可換であり,
AB ̸=
[
]n ≥ 2 については,
[
] BA なる行列 A, B ∈ G を取れるため可
1 1
A2
O
換ではない.例えば,A2 =
とし,A =
, B = AT などとすればよい.
0 1
O In−2
[配点]
r = 1 のときに群となることが示されていて 1 点,すべての場合分けを網羅できていて 1 点.
[コメント]
r2 = r について考察できていない解答が多かった.すべての場合分けを網羅できている解答はほとんどな
かった.
(4) [解説]
deg(f ◦ g) < n, (f ◦ g)(0) ̸= 0 より,◦ は G 上の二項演算である.
結合法則は成り立ち,単位元として e(x) := 1 を取れる.逆元の存在については以下のようにして示せる:
任意の f (x) ∈ R[x] を
f (x) :=
n−1
∑
ai xi
i=0
と書き,その逆元 f
−1
(x) ∈ R[x] が
f
−1
(x) :=
n−1
∑
bi x i
i=0
であると仮定する.すると,h(x) := (f ◦ f −1 )(x) = 1 により,

a0








O
a1
a0
a2
a1
···
···
a0
···
..
.

  
an−1
bn−1
0

  
an−2  bn−2  0

  

  
an−3 
 bn−3  = 0


  
...   ...   ... 

  
a0
b0
1
−1
が成り立つ.ここで,上式を Ab = en と書くことにすると,det(A) = an
en と書くこと
0 ̸= 0 から b = A
ができる.逆に,このように bi の値を定めると,f −1 (0) ̸= 0, (f ◦ f −1 ) = 1 となり,確かに f (x) の逆元
となっていることがわかる.
可換性についても成り立ち,G は可換群である.
[配点]
おおよその流れがあっていて 1 点.全てを示せていて 2 点.
[コメント]
正しく解答できている人は少なかった.
問題 2
生成元と基本関係式によって生成される群の位数を求める問題.過去に出題されていなかったことと,一般的
に群の特定が難しいとされていることから出題した.
3
(1) [解説] xyx = yxy を用いると,|G| ≤ 6 を示すことができる.また,x = (1 2), y = (1 3) ∈ S3 などとする
と,これは基本関係式を満たし |G| ≥ 6 がわかる.よって,|G| = 6 である.
[配点] |G| ≤ 6 を示せていれば 2 点とした.
[コメント] 説明が不十分に感じたものについては,1 点減点した.
(2) [解説] 基本関係式を用いて x = y = 1 を導出する問題.
想定解:
yxxx = yx1xx = yx(yyy)xx = y(yyxx)yyxx = (1)xxyyxx = xx(xy)
より,x3 と y は可換.これを用いて,更に
xy = x9 y = x6 yx3 = x3 yx6 = yx9 = yx
から,x と y は可換.つまり,xy = y 2 x2 から xy = 1 であり,x4 y 3 = 1 と合わせて,x = y = 1 を得る.
[配点] 正しく導けていれば 1 点.
[コメント] 正答は少なかった.
問題 3
Quaternion group と呼ばれる群である.
(1) [補足]
出題意図としては,演算が S で閉じていることと逆元の存在の確認を行ってもらうことであったが,逆元
の存在のみが示されていれば正答とした.
(単位元(あるいは結合法則)は集合 G と二項演算 ◦ の組 (G, ◦) に対して定義されるため,この問題での
演算 ◦ は二項演算である.この問題文では,◦ : S × S → S であるようにも読めるので,前者については示
されていなくても正解とした.
)
[解説] 各元について逆元が存在することは容易に示せる.群積表(乗積表)については省略する.
[配点] 逆元の存在を示せていて 1 点.
[コメント] よく出来ていた.
(2) [解説]
ラグランジュの定理(有限群 G の部分群を H とするとき,|H| は |G| を割り切るという定理)により,
|H| = 1, 2, 4, 8 となる集合 H についてのみ考察すればよい.
[配点] すべての部分群が示されていて 2 点.
[コメント] よく出来ていた.
問題 4
[解説] 特になし.
[配点] 証明が正しければ 1 点.
[コメント] よく出来ていた.
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