聞こえない音を医療診断で有効に活用 ~超音波の不思議な現象を利用しませんか~ 医療診断や構造物の内部検査に使われる超音波。その新しい利用法の研究を進めているのが電気通信大学の野 村英之准教授。超音波診断は周波数が高く人の耳では聞こえない音を体の表面から入射し、臓器などにあたって 戻ってきた複数の周波数の音を拾って画像化すとことで、患者の負担が少ない精密検査前の診断法を提案している。 全体像を見るのに最適 超音波診断では、体表面から超音波を入射、反射して 戻ってくる音を検出して画像化している。従来は、発信 周波数と同じ周波数の音から画像を見ている。野村准 教授は、柔らかい対象物に発信すると、戻ってくる超音 波の周波数が少なくなることに着目、その現象を利用し たシステムを構築して生体の大まかな画像イメージを作 ることに成功した。 システムの構成図 反射音の風波数変化に着目 その鍵を握っているのが超音波信号を絞って照射するパラメト リックスピーカーと、対象組織から戻ってくる周波数の変化した 超音波を検出する受信センサー。周波数が数ギガヘルツ(ギカ は10億)の超音波を診断に使うと、発信時の周波数のままの超 音波と、周波数が100~500メガヘルツ(メガは100万)に変調さ れた音がもどってくる。後者に焦点をあてて音を検出、そのまま では信号処理をした後に圧縮することで分解能を改善した。 “差音”を見て分解能を高める また、照射時も1秒間に10回から20回程度のパルス発信と、周波数を連続的に増やす、 減らすという2種類の超音波を発信してその差(差音という)を見ることで、分解能の向上も図った。周波数が高くなる と体の深部を見にくくなるが、このシステムでは周波数が比較的低い超音波を検出することで、これまではつかみにく かった深部の画像も取得できる。 とはいえ、周波数が低くなる分、分解能は低下するため、精密診断にはやや不向きだ。しかし、患者にとって悩ましい のは、診断が難しい病気ほど検査の回数が多いこと。精密検査の前に、全身を大まかに調べて病変部を探り当てる ことができれば、検査の焦点を絞り、それに適した診断をすればよい。検査回数を減らせれば、患者のQOL(生活の 質)を落とさない療養にもつながる。 高機能センサーの開発で協業を この技術は医療分野だけでなく、液体や柔らな対象物では幅広く使える。ただし、実用化するためには、受信セン サーの性能向上が必要。とくに戻ってくる周波数の低くなった音を効率的かつ発信周波数から分離して効率的に検出 できるセンサーが必要。これは情報処理だけではカバーできないので、材料や構造などその分野の経験豊富な企業 とのコラボレーションが欠かせないと見ている。 一般社団法人コラボ産学官 経済産業省シーズ発掘事業大学発シーズ事業化コンソーシアム事務局(四元、工藤、杉原) 電話:03-5696-9425 メール:[email protected] A-3 電通大
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