佐賀県研究成果情報 (作成 平成15年2月) 肥育前期粗飼料多給による黒毛和種去勢牛の肉質の向上 [要約]黒毛和種去勢牛において、肥育前期に濃厚飼料を制限給与し、粗飼料を多給 して肥育すると、肉量に影響なく、肉質の向上が期待できる。 佐賀上場営農センター・研究部・畜産果樹研究室 部 会 名 上 場 営 農 専 門 畜 産 連 絡 先 対 象 0955-82-1930 肉用牛 [背景・ねらい] 当地域の黒毛和種の肥育に用いる濃厚飼料の TDN・ DCP はほぼ統一され、牛肉の高 品質化に寄与してきた。しかし、粗飼料については乾草等の種類やその給与体系は確立 されていない。そのため、このことが枝肉成績のバラツキと近年の5等級率の低下の一 因と考えられている。 そこで、乾草として流通量が安定しているチモシーと稲わら、ヘイキューブを用い、 肥育前期の飼料給与水準の違いが肉質等に及ぼす影響を検討する。 [成果の内容・特徴] 1.肥育開始後 1 ∼ 5 カ月間はチモシーのみ、 6 ∼ 16 カ月は稲わらのみ、 17 カ月以降は 稲わらとヘイキューブを給与し、また、濃厚飼料は、肥育開始後 1 ∼ 5 カ月間を制限給 与し、 6 カ月以降から飽食すると、肉量に影響なく肉質が向上する。 2.肥育前期に粗飼料を多給し、濃厚飼料を制限給与すると、濃厚飼料を飽食に切り替え てからの約4ヶ月間(肥育開始後 26 ∼ 44 週)の濃厚飼料摂取量が多い(図1 )。 3.肥育前期に粗飼料を多給し、濃厚飼料を制限給与すると、肥育開始後 6 ヶ月の 1 日当 たり増体量は低いが、終了時体重および 1 日当たり増体量に大きな差はない(図2、表 1 )。 4.肥育前期に粗飼料を多給し、濃厚飼料を制限給与すると、脂肪交雑(BMS )、バラ 厚は優れる(表2 )。 [成果の活用面・留意点] 1.供試牛は糸晴栄の産子である。 [具体的データ] (㎏/day) 12 10 8 6 粗飼料多給区粗飼料 慣行区粗飼料 粗飼料多給区濃厚飼料 慣行区濃厚飼料 4 2 0 3 6 9 12 15 18 (月) 図1 飼料摂取量の推移 注)チモシー・ヘイキューブは米国産、稲わらは佐賀県内産を用いた。 (㎏/day) 1.4 1.2 慣行区 粗飼料多給区 1.0 0.8 0.6 3 6 9 12 15 18 (月) 図2 1日当たり増体量の推移 表1 増体成績 区分 慣 行 区 粗飼料多給区 (単位:㎏) 体 重 開始時 5ヶ月後 終了時 258.0 ± 19.9 457.3 ± 8.2 763.8 ± 16.9 267.8 ± 15.7 446.8 ± 21.5 757.0 ± 50.3 増体量 505.8 ± 21.9 489.3 ± 35.4 1日当たり 増 体 量 0.87 ± 0.0 0.84 ± 0.1 表2 枝肉格付成績 区分 慣 行 区 枝肉重量 ロース芯面積 バラ厚 皮下脂肪厚 BMS BCS BFS 肉質等級 (㎏) (c㎡) (㎝) (㎝) ( No. ) (No. ) ( No.) (頭数) 493.4 ± 19.9 62.3 ± 8.1 7.9 ± 0.3 2.5 ± 0.7 5.8 ± 1.3 4.0 3.0 ± 0.0 ± 0.0 A-5:0 A-4:3 A-3:1 粗 飼 料 490.4 多 給 区 ± 37.6 62.0 ± 7.3 8.2 ± 0.8 2.3 ± 0.3 7.3 ± 2.1 3.3 3.0 ± 0.5 ± 0.0 A-5:2 A-4:2 A-3:0 [その他] 研究課題名:上場地域におけるコスト低減に向けた肉用牛の肥育期間の試験 予算区分:県単 研究期間: 2000 ∼ 2005 年 度 研究担当者:井上一輝、中島貞彦
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