2014/12/26 知覚心理学:概要 • 日常生活のほとんどは, 「探索→選択→認知→行動」の繰り返し 知覚心理学 6.知覚と行動 ブレインサイエンスシリーズ17 「脳と運動」丹治 順著 共立出版 視知覚の役割 – 「探索」と「選択」に関係する注意機能 – 物体「認知」を支える記憶(知識)システム – 「行動」と知覚の関係は? 自分の移動(ロコモーション)に関する 視覚からのフィードバック 1. 物体認知 – 対象物の認知 – 獲物や天敵のカテゴリー判断 2. 状況の把握 – 顔色をうかがう – レスポンデント条件付け 移動にともない網膜上のイメージは変化する 3. 外界に対する適切な行動の支援 – 障害物をよけて歩く – 道具を使う 光流動(Optical flow) 視覚誘導性運動に障害のある患者の症例 飛行時の光流動 着陸時の光流動 健常者 右半球損傷患者の左手の動き 健常者 左半球損傷患者の右手の動き 1 2014/12/26 事前のプログラミングとオンラインの調整 Mohagheghi, Moraes, & Patla (2004) • 狭い路地を通ろうとすると,自然に肩を回す – 肩幅の1.3倍より狭いと肩を回旋する • 肩の回旋は,入り口の1m手前から始まる • 入り口の幅にしたがい,回旋角度が変わる • 歩行中に障害物を発見してまたぐ • 前方の小さな障害物をまたいで歩く ① 高さの調節:Max Toe Elevation ② 歩数の調節:Horizontal Distance ③ これらの協調:Toe Clearance アプローチ中の視覚 情報の有無が影響 • Toe Clearanceのデータ 障害物の数歩手前 でゴーグルを閉じる またいでいる最中の視覚 情報の有無は影響しない 障害物の高さによら ず見事に一定, 後足の方が小さい 結果のまとめ • どの条件でも,決してつまづかない • Max Toe Elevation – 障害物の数歩手前までに十分な情報を得ている アプローチ中,またいでい る最中の視覚情報の有無 が影響 • 遮断により,踏切位置はより手前に,踏み越える高さ は高く – 後からまたぐ足は影響を受けない » 後行する足の高さは事前に決定している – 障害物が高くなっても,いつも同じ余裕でまたぐ • (視覚入力がある場合)先行する足は22㎝,後行する 足は15㎝ • ⇒事前に動作を計画するが,アプローチ中の視覚情報 を基に微調整して,無駄なくなめらかに実行している 2 2014/12/26 2)運動学習 1. 適応的運動学習 – 個々の運動を速やかに正確に行うことを学習 2. 連続的運動学習 – 複数の運動を組み立てて一連の滑らかな動作と して行うことを学習 3)適応的運動学習 ぎこちない運動 滑らかで素早い運動 柔軟な運動 • 繰り返しにより学習が進む – 機械的な繰り返しではなく,多様な動作で繰り返し行うこ とが重要 「繰り返しなき繰り返し」 • 協応構造:複数の構成要素が結合して,全体として 働くシステムの構造 – ヒトの体は,多数の要素からなる複雑な供応構造をもつ • 制御が難しい • 多様な運動が可能 • 様々な補償が可能である 適応的運動の例 Grip force-load force coupling 適応的運動学習:回転マウス学習 実験参加者の課題: コンピュータマウスを操 作して、画面上を動く ターゲットにカーソルを 合わせ続ける。 ターゲットとカーソルの間の距離 腕の持ち上げに合わせてグリップ力を調節している Imamizu (2010), Review セッション マウス操作に伴う計算 1. 目標軌道の計画: – 始点と終点を確認して,経路と速度を決定する – 作業座標は,空間(視覚)座標系 2. 座標変換: 小脳:運動制御や学習に関係する – 目標軌道を身体座標系に変換する – 関節の角度や筋肉の長さ 3. 制御: – 身体座標系の値に基づき運動指令を決定する セッションの進行に伴うトラッキング誤差の推移 3 2014/12/26 新たな座標変換の学習 誤差学習のモデル 内部モデル(逆モデル) もともとの 座標変換 目標軌道 (空間座標系) マウスによらない 目標軌道と正しい運動指令の関数関係を学習 目標軌道 (身体座標系) マウスにより異なる 新たな座標 変換 (空間座標にお ける時間変化) (力量の時間変化) (もともとの座標変換に基づく) (実際の軌道) 目標軌道と実際の軌道の誤差を計算 閉ループ制御(ぎこちない)⇒開ループ制御(なめらか) 内部モデル(逆モデル) • ある動作を行うために,どのような操作をす ればよいかを表現する脳内のモデル(目標軌 道を身体座標系に変換する変換関数) • 道具によって使い分けることができる 外界からのフィードバックの時間遅れ 伝達時間 運動指令 脳 効果器 動作・作用時間 外界 感覚器 処理時間 内部モデル(順モデル) • どのような操作をすれば,どのような結果が 得られるかを表現する脳内のモデル(運動座 標系の目標値から,運動結果を計算する変 換関数) 順モデル 4 2014/12/26 適切なモデルの選択 • 私たちは,これまでの経験から多数の道具や 対象に関する順・逆モデルを獲得している 逆モデルを利用し て運動指令を出す 順モデルが 働くから びっくりする 順モデルの働きを示す実験結果 くすぐりーくすぐられ関係の操作 • どうして自分でくすぐるとくすぐったくないの? – (仮説1)自分でくすぐろうとすると感覚入力経路が閉 じられてしまうから – (仮説2)順モデルが働き,予想できてしまうから • 自己運動による感覚信号は,予測的に抑制 される – 運動指令の遠心性コピーが予測器を通って感覚 フィードバックの予測信号として出力され,実際の 感覚フィードバック信号と相殺しあう⇒予測キャン セル仮説 • 眼球運動による視界のずれを知覚しない理由 – 眼には眼を⇒1.4眼 – 「わが身をつねって人の痛みを知れ」は不可 5
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