Java版分子モデリングソフ トウェアm。工viewの利用 - 九州大学

研 究 開 発
Java版分子モデリングソフトウェアmolviewの利用
鹿川佐千男* 堀意次† 池田大輔*
1 はじめに
化学の分野では,計算化学-の需要が大きくなってきている.これは,計算機の高速化と低価格化,さらには
MOPACやGaussianのようなソフトウェアの開発が進んでいることがその要因である.大半の計算化学を専門
としない化学者にとって,分子モデリングソフトは,計算化学的手法を用いるために不可欠なものとなっている.
最近ではWinMOPAC(富士通社製)など,比較的安価なソフトウェアも流通するようになってきたが,高機能な
ものは, -研究室でそろえるにはあまりに高価であることが多い.
堀は,平成7, 8年度に分子モデリングプログラム"disp"の開発を行ない,大型計算機センター(以下,セン
ター)のライブラリとして登録した甘しかしながら,これにはグラフィカルなユーザーインタフェースなどは
なく,計算を専門としない化学者には使いづらい面があった.そこで,今回このプログラムをJava言語を用いて
拡張し, ''molview"としてライブラリ登録した.新たなプログラムでは,モデリングされた分子に対して回転な
どの操作を容易に行なえるようになっている.
2 データフォーマット
molviewでは,表示する分子のデータは,あらかじめファイルに記述しておく.このデータファイルをmolview
が読み込むことで,分子の表示がなされる. molviewで表示可能なファイルのフォーマットは, MOPACで扱え
るZ-Matrixのみがサポートされている(図1参照)・ただし, molviewではMOPACと違い,ファイル名の拡張
子には制限がなく任意のファイル名で構わない. 1行目から3行目はコメントやタイトル行として扱われ,表示
図1:入力データ例(メタン).
T=1.0D NOINTER GNORM=0.1 PM3 GE0-OK
CH4
comment s
o
O
o
CN
o
CS
c o
CN
c o
i-1
H 1.090 1 109.470 1 -120.000
i-i
H 1.090 1 109.470 1 120.000
O
H 1.090 1 109.000 1 0.000
O
O
H 1.090 1 0.000 0 0.000
O -rH
O
C 0.000 0 0.000 0 0.000
には無関係である. 3行目の末尾を"+"にしておくと,コメント行が継続される.コメント行の次の行から,実
際のデータとして扱われる.
データは, 1行に1つの原子の情報を書きこみ,各行は,空白またはタブにより複数のパラメータに分けられ
る.各行の3, 5, 7番目のパラメータは構造最適化のためのパラメータであり,表示には無関係である.これ
*九州大学大型計算機センター({hirokawa,daisuke}◎cc.kyushu-u.ac.jp)
†山口大学工学部応用化学工学科(kenji◎sparklx.chem.yamaguchi-u.ac.jp)
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ら以外のパラメータは表1のようになっている.元素記号の大文字・小文字の違いは無視される.
例
NuN2,N3は,結合様式を定義するための既出の原子を指定するための数字である.この数字は,実際のデー
タが始まる行から数えたときの行番号である.図1の例では,最初のCが1番目である.よって,次のHの行の
NlはCを表わしている.各行の最初のパラメータで指定した原子(ここではNoとする)は, Nlと結合し,その
距離は結合距離で与えられる(単位はオングストローム).さらに,角iVoiViiVsの角度te,結合各で指定される・
最後に, △NoNMが張る面と△NIN2N3が張る面との角度が二面角によって定まるので, Noの位置が決定さ
れる.
以上を,データの読み込み順に説明すると,以下のようなアルゴリズムで位置が決定され,表示される.
1.最初の原子は原点に位置する.
2. 2番目の原子はZ軸正方向に結合距離だけ離れて位置する.
3. 3番目の原子は, 2番目の原子と結合させてⅩZ平面に位置する.位置は,結合距離と結合角によって定まる.
4. 4番目以降は,結合距離・結合角・二面角により決定される.
3 molviewの操作方法
3.1 起動と終了
molviewはセンターの新UNIXサーバkyu一cc上で実行できる. molviewはJava言語で書かれているが,アプ
レットとして動くわけではなく, XWindowのクライアントプログラムとして動く.よって,研究室などリモー
トホストから実行する場合には, X Windowのサーバが動いている必要がある.
molviewコマンドの絶対パスは"/usr/local/bin/molview"である. molviewをホストremothostから実行
するには,一度kyu-ccにログインしてからコマンドを起動する場合と, X WindowのⅩonコマンドを使って,
remohostからコマンドを起動する場合がある.一度kyu-ccにログインする場合は,ログイン後,
kyu一cc/,
molview
-display
remothost
:0
または,
kyu-cc'/, /usr/local/bin/molview -display remothost : 0
とすれば, molviewが実行される(図2左参照).
remothostから直接起動する場合は
remothost/, xon kyu-cc /usr/local/bin/molview
とする.
どちらの場合でも, remothostで動いているX Windowのサーバがkyu一ccのクライアントを表示できるよう
しておく必要がある.具体的には, X Windowのサーバが動いている計算機で
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図2:起動直後の画面と終了メニュー.
remothost% xhost kyu-cc. cc.kyushu-u.ac.jp
を,前もって実行しておく. xhostコマンドは,引数で与えられた計算機で実行されたXWindowクライアント
の表示などを許すためのものである.この場合 kyu-ccからremotehost-X Windowのクライアントを表示
できるようになる.
molviewの終了は, "File"メニューから"Quit"を選択する(図2右参照).
3.2 molviewの操作方法
分子を表示するには, "File"メニューの"Open"で,表示する分子のデータファイルを選択する(図3参照).
データファイルがmolvie甘を実行したディレクトリにない場合は,選択画面の"Folders"で望みのディレクトリ
図3:ファイルの選択画面.
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に移動してから,ファイルの選択を行なう.
データを読み込み終えると,図4のようになる.この例では,メタン(CH4)を表示している.
図4:左:表示直後,右:回転などの操作後の表示例.
"View"メニューには,元素記号の表示・非表示を反転させる"Show Atom Symbols"がある.デフォルトは,
非表示である.拡大・縮小は,表示画面の上のスクロールバーで行なう.スクロールバーの横の"R£set"ボタン
は,拡大率を初期化して,最初の大きさに戻す.画面の下と右についているスクロールバーで,表示している分
子の平行移動ができる.表示画面の任意の点からドラッグすることで,分子の回転ができる.回転は,画面の中
心を中心点として行なわれる.これらの操作をしたあとの表示例が図4の右である.
"File"メニューの"Reload"により,現在表示しているデータを再び読みこみ,再表示する.このとき,元素
記号表示や拡大率などは初期化され,図4の左のような状態で表示される.
4 おわりに
molviewは,まだ少ない機能しか実現していなが,分子の表示および,回転,緒小,拡大などの最低限の機能
は付加したつもりである.また,今後以下のような機能の実現を検討している.
●扱えるファイルフォーマット
●入力・編集機能
●アプレット-の移行と,ブラウザからのMOPACやGaussian-のジョブ投入
特に,ブラウザから座標を入力し,対話的に分子モデルを作成することができれば,特にソフトウェアのインス
トールの必要もなく,分子モデリングから構造解析までを行なうことができるようになる.
参考文献
ll]堀意次, "分子モデリングプログラムDISPとそれを用いたGaussian94の利用法"九州大学大型計算機セン
ター広報Vol. 30, No. 2, 1997.
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