第3節 水質汚濁.pdf(951KB) - 会津若松市

第3節 水質汚濁
1.貴重な水資源
会津は「山紫水明の地」といわれますが、会津若松市は決
して水が豊富というわけではありません。河川の上流部に位
置し、山間からの湧き水のような小さな流れが集まり河川と
なっているのが現状で、主要河川である湯川や不動川なども
水量は多いとはいえません。
そこで市では、水資源を有効利用するための工夫をしてい
ます。戸ノ口堰の水が市街地を経由して郊外の水田に送られ
ていたり、門田堰の農業用排水が住宅地の側溝を流れる等、農業用水として利用すると同時
に維持用水や修景用水としての役目も果たしています。そのため水田等の農業用水は、事業
場排水や生活排水の影響を大きく受けやすく、水田稲作で水を使わなくなる秋から冬にかけ
て、側溝や河川の水量が著しく減少する特徴があります。
2.環境基準の設定
水質汚濁に係る環境基準は「人の健康の保護に関する環境基準」と「生活環境の保全に関
する環境基準」の2つがあります。
■人の健康の保護に関する環境基準
⇒ 全ての公共用水域について一律に適用され、人の健康を保護するため、カドミウム、
シアン等の有害物質 27 項目について定められた基準。
■生活環境の保全に関する環境基準
⇒ 生活環境を保全する上で維持することが望ましいとされる、BOD・COD(52 ページ
参照)などの有機的な汚れの基準。各水域の利用目的・状況に応じて水域類型が指定され、
各項目ごとに基準値が定められている。 (関連資料:74~75 ページ 資料4~7)
3.公共用水域水質調査
市では、毎月1回河川の水質調査を実施しています(調査地点により1、2月は除く。ま
た、平成 23 年度以降は原子力災害対策を優先させ、年6回の調査とした地点有り)。平成 25
年度の調査結果では、主な河川の湯川・旧湯川等については、環境基準を超える時はあった
ものの、水質はおおむね良好です。また、湯川の南側から流入する古川・黒川排水路につい
ては、下水道等の普及が遅れている地区を流れるため生活排水が未処理のまま流入し、まだ
まだ水質が良好とは言えず、このことが湯川の水質を低下させる主な原因と考えられます。
しかし、この地域も含め市内全域で、下水道の普及や生活排水対策等により、河川の水質
は徐々に改善してきており、近年、湯川の中流域(古川合流地点から上流)
でもホタルの数が増え、市街地の細い水路でも小魚やザリガニが見られるよ
うになるなど、水辺の生き物の回復が見られています。
河川の水質汚濁の主な要因は一般家庭からの生活排水であることから、
市では、今後も水質調査を継続し、生活排水対策の推進、水質汚濁防止の
ための啓発等を行なっていきます。
49
平成 25 年度の主な調査地点および調査結果(BOD)の概要は図のとおりです。
◆平成 25 年度 会津若松市公共用水域水質調査結果
河東町水路
河東町
3.0
日橋堰
大工川
湯川橋
1.5
溷川合流前
平成 24 年度
( 1.1 )
溷川
金山川
倉橋
1.0
旧湯川
不動川
1.2
神指町
一箕町
町北町
柳橋
鍛治屋敷
2.1
2.9
不動川
新湯川放水路
阿賀川合流前
烏橋
1.9
2.4
小田橋
0.8
黒川排水路
5.8
北会津町
湯川
古川
城西橋
4.6
雨降り滝上流
門田町
1.1
BOD 年間平均値 (単位:mg/L)
(関連資料:76~78 ページ 資料8)
50
湯川
◆各河川のBOD値の経年変化 (BOD 年間平均値)
湯川流入河川
BOD(mg/L)
25
20
15
10
5
0
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24
元年 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
古川
BODmg/L
10
黒川排水路
旧湯川
BODmg/L
10
9
不動川
8
9
7
8
6
7
5
6
4
5
3
4
2
3
1
2
0
1
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24
元年 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
柳橋
0
湯川橋
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24
元年 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25
不動川
※ 環境基準値は主要河川にのみ定められ、市内では、湯川と旧湯川が対象です。
51
4.猪苗代湖および流入河川水質調査
本市では、猪苗代湖及び流入河川の水質を把握するため、昭和 59 年度から水質調査を
実施しています。これまでは赤井川、原川、猪苗代湖(中田浜)の3地点について毎月1
回(1、2月は除く)の割合で実施してきましたが、平成 23 年度以降は原子力災害の対
応等により、2ヶ月に1回の割合で実施しています。
猪苗代湖(中田浜)の水質は、他の河川や湖沼と比べ大変良好な水質であるといえます
が、平成になる頃からpHが上昇し中性化しており、総リンも上昇する傾向にあります。
猪苗代湖の流入河川である赤井川や原川でのBOD・COD値には大きな変化は見られ
ませんが、赤井川の窒素やリンは、5月、6月に高い値を示しており、水田の田植えや代
掻き作業による農業排水の影響によるものと考えられます。
(関連資料:79 ページ 資料9)
市では今後も継続して水質調査を実施し、猪苗代湖の水質保全に努めていきます。
~ ひとくちメモ ~
■BOD(生物化学的酸素要求量)
河川等の汚濁を表す指標で、主に有機性の
汚濁物質を水中の微生物が分解(酸化)する
際に消費する酸素の量を測定することで、間接
的に水の汚れを測定することができます。数
値が大きいほど汚れが大きいことを示します。
■COD(化学的酸素要求量)
有機物による水の汚れを示す指標で、有機
物を酸化分解するのに必要な酸化剤の量を酸
素の量に換算したもので、数値が大きいほど
水が汚れていることを示します。
河川の場合は BOD 、湖沼や
海域の場合は COD を用いて
水質を評価します
みずくん・たまちゃん
52
◆平成 25 年度 猪苗代湖流入河川調査結果
赤井川(戸ノ口橋)
BOD :
COD :
全窒素 :
全リン :
1.2
6.7
0.91
0.067
赤井谷地
湖 水(中田浜)
PH : 7.3
BOD : 0.8
COD : 0.7
全窒素 : 0.14
全リン : 0.012
赤井川
原 川(崎川橋)
BOD :
COD :
全窒素 :
全リン :
0.9
2.2
0.39
0.029
原川
年間平均値(単位: mg/L )
(関連資料:79 ページ 資料9)
53
BOD,COD
mg/L
pH
リン
mg/L
◆猪苗代湖および流入河川の水質経年変化
猪苗代湖水質の推移 ( 中田浜 )
リン
1.2
pH
7.5
0.40
0.040
1.0
7
0.35
0.035
0.8
6.5
0.30
0.030
0.25
0.025
0.6
6
0.20
0.020
0.15
0.015
0.10
0.010
0.05
0.005
0.00
0.000
0.2
5
0.0
4.5
COD
BOD
㎎ /L
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
5.5
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
0.4
窒素
mg/L
猪苗代湖水質の推移 ( 中田浜 )
pH
総窒素
総リン
BOD,COD
mg/L
pH
リン
mg/L
赤井川水質の推移 ( 戸ノ口橋 )
窒素
mg/L
pH
赤井川水質の推移 ( 戸ノ口橋 )
リン
リン
㎎
㎎ //Ll
4.0
0.16
10
8.0
3.5
0.14
8
7.5
3.0
0.12
2.5
0.10
6
7.0
2.0
0.08
4
6.5
1.5
0.06
2
6.0
1.0
0.04
0.5
0.02
0
5.5
0.0
0.00
原川水質の推移 ( 崎川橋 )
pH
総窒素
10
8.0
8
7.5
6
7.0
4
6.5
2
6.0
0
5.5
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
8.5
COD
BOD
リン
pH
12
総リン
窒素
mg/L
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
pH
原川水質の推移 ( 崎川橋 )
総窒素
54
㎎ /L
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
BOD,COD
mg/L
BOD
pH
COD
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
8.5
H2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
12
総リン
0.20
0.18
0.16
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
5.猪苗代湖の現状
⑴ 自然の浄化作用
猪苗代湖には、猪苗代町北部から流れる酸川(すかわ)が長瀬川と合流して流入してい
ます。この酸川は強酸性の為、鉄やアルミニウムイオンが多く溶け込んでおり、猪苗代
湖に流入し中和される過程で、有機物やリン酸等がこれらと結びつき沈殿除去されると
いう特殊な条件が、水質悪化を防止していると考えられています。
【酸川の特徴】
長瀬川の支流の一つで、かつての硫黄鉱山からの地下水や、
沼尻・中ノ沢温泉の源泉の影響で強酸性(pH2)を示す河川
です。見た目は透明で川原の石もきれいですが、強酸性のため
鉄やアルミニウムなど様々な金属イオンを含んでいます。
◆酸川
【長瀬川の特徴】
裏磐梯から猪苗代湖に流入している河川です。猪苗代湖に流入 ◆長瀬川
する水の約 40%が長瀬川から入っています。途中で酸川と合流
し、酸性成分を湖に運んでいます。合流直後は、中和により酸性
度が下がり(pH3~4)、鉄分などが析出するため、川原の石
が茶色に染まっています。
⑵ pHの中性化及びCODの上昇
pH5前後の弱酸性を保ってきた猪苗代湖ですが、平成8年頃からpHが上昇しはじ
COD mg/L
め、平成 21 年度以降はpHが 6.8 となり中性化しています。
COD
〔 mg/l 〕
pH
中性 7
2.0
6
1.5
pH
5
1.0
4
0.5
COD
酸性
3
S5556 57 58 59 60 61 62 63 H1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
0.0
◆猪苗代湖心の水質の変化
中性化の理由としては、様々な原因が考えられますが、これまでの調査や専門家による検
討などの結果から、長瀬川に流れ込む硫酸イオンや塩素イオンなどの量が減少し、酸川の酸
性度が弱くなっていることが最も大きな原因であると考えられます。これに伴い、鉄やアル
ミニウムイオンの量も減少しており、猪苗代湖の自然の浄化作用が弱まって水質が悪化する
ことが心配されたため、県や流域市町村では水質改善に向けて様々な取り組みを行ってきま
した。平成 24 年度、25 年度とわずかですが湖心水質が改善傾向にあり、今後も継続的に水
質改善に取り組んでいきます。
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◎中性化の要因
① 硫酸供給量の減少
② 源流域の酸性水の性状変化
③ その他(裏磐梯湖沼の水質の変化、水生植物による影響、地下水の変化 など)
◆猪苗代湖の自然の浄化システム
長 瀬 川
その他の河川
アルミニウムの水酸化物
汚濁物質(有機物、りん等)
Al
鉄の水酸化物
3+
3+
Al
流入
Al
Fe
3+
Fe
鉄イオン
Al
Fe
Al
3+
Fe
アルミニウムイオン
吸着
Al
Al
Al
Fe
Fe
Al
Fe
フロック化して沈殿
Fe Fe
Al Al
Fe Fe
Fe Fe
Al Al
Al Al
堆積
Fe Fe
Al Al
(福島県資料より)
⑶ 大腸菌群数の増加
猪苗代湖は、環境省発表(公共用水域水質測定結果)において、平成 14~17 年度の
4年間、水質日本一になりましたが、平成 18 年度以降は、平成 20 年度に第2位になっ
た以外は、大腸菌群数が環境基準(1,000MPN/100ml)を超過したためランキング外に
なっています。平成 25 年度も最大値が 2,400MPN/100ml となっており、ランキング外に
なる見込みです。
大腸菌群数は、大腸菌を含む細菌を意味し、大腸菌のほかに、土壌などの自然環境に
生息する微生物も含まれています。一般的に自然界に生息する微生物は水温が高いほど
増殖しやすく、酸性やアルカリ性の水では生息しにくいといわれています。猪苗代湖の
大腸菌群数の増加は、湖水の中性化が大きく影響していると考えられています。
参考
【福島県猪苗代湖及び裏磐梯湖沼群の水環境の保全に関する条例】
福島県では、水環境悪化を未然に防止し、将来に渡って良好な水環境を保全していくため、平成
14 年3月に「福島県猪苗代湖及び裏磐梯湖沼群の水環境の保全に関する条例」を制定しました。
条例では、県民、事業者、行政の責務や富栄養化を防止するための窒素・リンの排出規制など、
水質汚濁防止のための各種規制等が盛り込まれています。
排出規制値は、霞ヶ浦など富栄養湖に対する基準値と同等の厳しいものになっています。
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